26話 苦い勝利

 ニーナ:ニーナ・アイマー。

     黒戸美月と融合した。

     五章主人公。

 アリア:アリア・アランテ。

     篠宮美弥子と融合した。

     ニーナとは幼馴染。

 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

     すでにリビア・クロトと名乗っている。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

 リアンナ:リアンナ・ドバスカリ。

      海洋国家ドバスカリ女王。

      黒沢香織。

      ファガスと婚約。

 コナル:青井友介。

     連合国クロトの戦闘顧問。

     黒戸美月が気になる。

 ファガス:黄山十夜。

      海洋国家ドバスカリの重要処。

      リアンナと婚約した。

 ベル:黒沼直樹。

    聖国クリアの守護者長の纏め役。

    ランと結婚した。

    物理と数学の教師。

 ラン:聖国クリアの守護者長。

    案内人最後の七人の内の一人。

    案内人時代はリビアが師匠。

 ダズ:聖国クリアの代表代理。

    クリアの元上司。

    アリアにプロポーズした。

 フレド:フレドリック・ユルロア。

     ピナンナと婚約。

     連合国クロトの守護者長の纏め役。

 アル:聖国クリアの守護者長。

    案内人最後の七人の内の一人。

    戦闘は魔法タイプ。

    好戦的。

 ボーデン:ボーデン・バレット。

      婚約者がいる。

      フレドの補佐。

      元冒険者。

      戦闘は魔法タイプ。

 リトアニ:魔道国家ネストロスの宰相。

      出来る宰相。

      モテそうな見た目なのに独身。

 サッサラ:魔道国家ネストロスの魔道技師。

      ラナイア、へサルの上司。

      リトアニがモテないように火種を潰して回っている。

      リトアニには全く気付かれていない。

      マジックバック開発者。

 ツァーリク:月と太陽の国の守護者。

       実力はあるが長ではない。

       正確に難がある。

       優男。

 フィビニ:月と太陽の国の守護者。

      能力が突出し過ぎて別枠扱い。

      至って平凡な見た目。

 カー:聖国クリアの守護者長。

    ベル、ラン、とは兄妹同然で育った。

    琥珀聖。

    魔法タイプ。

 カイン:聖国クリアの守護者長。

     レナメントレアの元王子。

     レイセに父親を殺された。

 シェルミ:聖国クリアの司書長。

      賢者。

      レナメントレアの元姫。

      レイセに父親を殺された。






 レイセの穴は塞がった。


 そのかわり、レイセの蜃気楼は薄くなっている。


 存在が薄まっている。


 でも、レイセは死なない。


 そう信じる。



 穴が塞がった後、レイセは倒れた。


 リビアとプロミがレイセに駆け寄る。


 レイセは気絶したみたいだ。



 シェルミはスキップしている。


 嬉しそうだ。


 愛しのレイセに穴を空けたのだ。


 嬉しいのだろう。


 スキップしながら移動するシェルミを、茫然と見ていた。


 シェルミはギルバドが消滅した場所まで移動した。


 彼女はギルバドの魔石に用が有るらしい。


 大きな魔石を拾い、胸に沈めていく。


 ついに笑い出した。


 シェルミ:「あはははははははは」

 シェルミ:「まだ、終わってない」

 シェルミ:「終わって無いのよ?」

 シェルミ:「貴方達はどう踊る?」


 シェルミの焦点は定まっていない。


 彼女の銀色の目が怪しく光る。


 シェルミから銀色の空間が広がり、私達は飲み込まれた。


 ベルがフレドに、カーがフィビニに、ランがリアンナに斬りかかる。


 ベル:「な!?」


 カー:「え!?」


 ラン:「なんで!?」


 シェルミ:「貴方達は、選ばれていた」

 シェルミ:「ロレアムド様に」

 シェルミ:「さあ、その身を委ねなさい」

 シェルミ:「戻る道なんて在りはしない」


 ボーデン:「何か、何かカラクリがある筈です!」


 リトアニ:「三人とも、気をしっかり持て!」


 ランの双剣をファガスが盾で受けている。


 ランは執拗にリアンナを狙う。


 ベルとカーは、フレドとフィビニに相対しながら、必死に自身の動きに抵抗していた。


 ダズはシェルミに矢を放つ。


 矢は、シェルミの出した結界に弾かれた。


 ダズはシェルミに斬りかかった。


 ダズの紫に輝く剣は、シェルミの結界に阻まれる。


 阻む結界は一つだけ。


 ダズは剣を押し込もうと全力を出している。


 剣は紫の電気を迸らせていた。


 シェルミの結界はビクともしない。


 シェルミの結界はさらに強まる。


 ダズは結界に弾き飛ばされる。


 ダズは起き上がって、また攻撃。


 無邪気に笑うシェルミ。


 結界を挟んで、ダズは涙を流していた。


 ダズは結界に攻撃を加え続ける。


 何度も、何度も。



 リビアは白い空間を広げ、シェルミの空間を侵食する。


 一瞬だけ、私達はリビアの空間に包まれる。


 しかし、またシェルミの空間に戻された。


 リビア:「魔石です!」

 リビア:「ベル達の体内にある魔石が反応しています」


 シェルミ:「ウフフ」

 シェルミ:「で?」

 シェルミ:「どうするの?」

 シェルミ:「どうするの?」


 プロミ:「挑発よ!」

 プロミ:「うかつに魔石を取り出せば、死ぬわ!」


 ベルは、ベルは胸に手を突き刺し、魔石を引き抜いた。


 ベルは、迷わなかった。


 ベルは、倒れた。


 プロミ:「もう!」

 プロミ:「何やってるのよ!」


 プロミは泣きながら怒った。


 フレドはベルを抱き起す。


 フレド:「馬鹿が!」

 フレド:「俺はお前がもっと賢い奴だと思ってたぞ!」


 カー:「ファガス!」

 カー:「コナル!」

 カー:「ランを気絶させてくれ!」


 ファガス:「解った」


 コナル:「ああ」


 カー:「見ていてくれ」

 カー:「こうするのさ」


 カーは自分の胸に手を差し込み、魔石を引き抜き、握りつぶした。


 カーは倒れなかった。


 考えが有るらしい。


 カー:「あぁーーーー!!!」


 カーは吠えた。


 倒れまいと、震える足を、体を、奮い立たせる。


 カー:「時間が無い」

 カー:「ランを!」


 コナルがランを気絶させる。


 力任せの単純な動きだったランは、当て身を受け、気絶した。


 カーは子供の姿に成っていた。


 カー:「肉体が大人になる概念を代償に、魔石の替りに成る核を作った!」

 カー:「ランをこっちに!」

 カー:「ベルもこっちに運んでくれ!」


 運ばれてきたランの胸にカーが右手を差し込む。


 カーはランの胸から魔石を引き抜き、握りつぶす。


 そして、カーは右手をランの胸に差し込む。


 そのまま右手がランに吸い込まれた。


 左手をベルの胸の穴に、カーの左手はベルに吸い込まれた。


 カー:「両腕を核にした」

 カー:「これで大丈夫だ」


 ニーナ:「貴方の両腕はどうなるの?」


 カー:「義手にでもするさ」


 ベル達が操られている間、シェルミは歌っていた。


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『「―― ――― ――――――」』

『「―― ――― ――――――」』

『「―― ――― ――――――」』

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『「―― ――― ――――――」』

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『――― ―――――――』

『―――――――― ―――――――』


 ダズの攻撃は止んでいた。


 嗚咽を漏らすダズ。



 シェルミはダズを愛おしそうに見つめていた。



 シェルミはカインを抱きかかえて、消えた。



 仮面の男とシロさんはいつの間にか姿を消していた。




 *      *




 数日後。


 レイセは意識を取り戻した。


 レイセの様子はいつもと変わらない。



 戴冠式は盛大に行われる予定だ。


 結婚式は小規模なものに変更された。


 表向きは、戦いの疲労から断念した事に成った。


 間違ってはいない。


 私達は疲弊していた。


 精神的に。



 シェルミとカインについて、仲間達は誰も触れなかった。


 ダズは辛そうな素振りを見せなかった。


 私達は奇妙な連帯感を共有している。


 たぶん私と同じ気持ちを抱いている。



 私達は大群を、配下三人を退けた。


 表向きは私達の勝利。



 しかし、私達は負けた。


 シェルミに。


 魔物の王に。


 今回は勝てなかった。



 戦いは今回で終わりではない。


 必ず続きが有る。


 カインが死んだ。


 シェルミは奪われた。


 レイセは、私達は、次に備える。


 このままでは終わらせない。


 絶対にこのまま終わらない。


 この負けは、次に繋げる。


 私達の団結はより強いものとなった。



 上から目線で、中途半端な試練を与えやがって!




 このまま諦めると思うか?


 私達をなめるなよ!



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ロレアムド:「魔石は回収できたか?」


 シェルミ:「ええ!」

 シェルミ:「ええ!」


 ロレアムド:「随分嬉しそうだな」


 シェルミ:「レイセの驚く顔が見られました、妄想が捗ります」

 シェルミ:「私達の、忘れられない思い出」

 シェルミ:「ウフフ、次に会う時が楽しみです」


『――――――』

『――――――――』

『――――――――』

『――― ――――』



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