22話 防衛

 ニーナ:ニーナ・アイマー。

     黒戸美月と融合した。

     五章主人公。

 アリア:アリア・アランテ。

     篠宮美弥子と融合した。

     ニーナとは幼馴染。

 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

     すでにリビア・クロトと名乗っている。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

 リトアニ:魔道国家ネストロスの宰相。

      出来る宰相。

      モテそうな見た目なのに独身。

 サッサラ:魔道国家ネストロスの魔道技師。

      ラナイア、へサルの上司。

      リトアニがモテないように火種を潰して回っている。

      リトアニには全く気付かれていない。

      マジックバック開発者。

 シロ:黒巣壱白の分かれた半身。

    仮面の男に力の三分の二を持っていかれた。

    一応管理者。




 私達は街から数キロ離れた、丘の様な少し高い場所に待機していた。


 ここからは魔物共の様子を見ることが出来る。


 ここから見える部分は全体の一部だけだ。


 地平の彼方まで魔物共の大群は続いている。


 その数ざっと三百万。


 こっちは三十人程度。


 普通に戦っては、負ける。


 解っていた事だ。


 それに、この離れた位置からでもわかる。


 あいつ。


 たぶんレイセの予想より強い。




 魔物どもの中央に目立つ色をした男が立っていた。


 二体のお供を従えている。


 真紅の角の生えた、赤い服を着た男。


 黒い長髪。


 発する気配は少しもない。


 それなのに、姿が目に焼き付く。


 ニーナ:「アリア」

 ニーナ:「あれよね?」


 アリア:「そうね」

 アリア:「きっとそう」


 レイセ:「まず間違いないだろ」

 レイセ:「奴の相手は俺がする」

 レイセ:「迷宮攻略者は残りの配下二人を、他は雑魚を頼む」


 プロミ:「残りの配下には見覚えが有る」

 プロミ:「奴らも強敵よ」


 リトアニ:「十日は必至だな」


 そのリトアニさんの声にみんなは笑った。


 笑う余裕がある。


 覚悟が出来てるんだ。


 レイセ:「みんな、配置についてくれ」

 レイセ:「俺達は突っ込むぞ」



 レイセ達迷宮攻略者以外は横一列に広がった。


 魔物共は多い。


 多すぎる。


 多寡が三十ほどでは陣形も取れない。


 首都まで抜けて行く奴が出ないよう、食い止める事しか出来ない。


 この一本のラインを守り抜く。


 作戦はそれだけ。


 仲間同士の連携は特にない。


 連携できる距離に仲間は居ない。


 気配察知をフルに使って、魔物の位置に気を配る。


 レイセ:「配置に着いたな」

 レイセ:「合図をする」

 レイセ:「宣戦布告だ」


 レイセが空間からラッパを取り出した。


 パーーーーーー!


 パーーーーーー!


 パーーーーーー!


 数秒後、徐々に地鳴りのような、ゴゴゴゴという音が聞こえて来た。



 始まった。


 地鳴りが始まってすぐに、一人の男が降って来た。


 白い仮面を付けた、浅黒い肌、銀髪、碧眼の男。


 レイセ:「やっぱり来たか」


 仮面の男:「…………」


 レイセ:「話すのは、初めてだな」


 仮面の男:「…………」


 レイセ:「お前の目的は?」


 仮面の男:「管理者を全て殺す」


 レイセ:「やっと、話したな」

 レイセ:「しかし、それは手段だ」

 レイセ:「目的は?」


 仮面の男:「管理者は俺だけになる」

 仮面の男:「俺がシステムを変更する」

 仮面の男:「この世界はクソだ」


 レイセ:「おまえ一人で支え切れるのか?」


 仮面の男:「知った事か」

 仮面の男:「俺に制御できなければ、こんな世界、無くなって良い」

 仮面の男:「管理者を全て殺せば、俺にその権利が与えられる」

 仮面の男:「それもシステムなんだろ?」


 レイセ:「そう言うと思ったよ」


 シロ:「こいつは俺が見張っている」

 シロ:「お前達は戦いに集中してくれ」


 仮面の男:「出涸らしのお前に食い止められる程柔じゃない」

 仮面の男:「引っ込んでろ!」


 シロ:「今ここで俺を取り込めないのがお前の弱さだ」

 シロ:「吠えるなら、俺を取り込んでみろ」


 レイセ:「シロさん、そいつを頼む」


 シロ:「わかった」

 シロ:「俺は中立だが、こいつに関してはお前らの味方だ」

 シロ:「こっちは任せてくれ」


 二人は少し離れた所に陣取った。


 レイセはもう、構う余裕が無い。


 レイセ:「ニーナ、頼む」


 ニーナ:「私達の集中力と持続力をあげて、同時に魔物の頭を吹き飛ばすの行くわ」


 レイセ:「任せた」


 ニーナ:「――― 『―――』」


『――――― ――――――――― ―――――――』

『――――――――――― ――――――――――――――――?』

『―――――――――― ――――――「――」―――――』

『―― ――― ―――― ―――― ――――― ――――――――』


『――――――――――― ――――――――――――――』

『―――――――――』

『――――― ―――――――――』

『――――――――― “―――――”』


『――――――――――――――――――――』

『―――――――――――――――――――――――』

『“―――――――――――” ―? ――――――――』

『―――――――――――――――――――――――』

『―――――――――― ――――――――――――』

『――――――――――――――――――――――――――』


『――――――――― ―――――――――― ―――――――――――――』

『“―――――― ―――――――――――――”』

『―――――――――― ――――――――――――』


『「――――――――――」―――――――――――――』

『――――“――――――――――――――――――” ―』

『―――――― ――――――――』

『―――――――――――――――――――――――――――』


 五万は削った。


 魔法は予定通りの効果を出した。


 集中力と持続力も高まった。


 でも、大問題が発生していた。


 敵が全く怯まない。


 侵攻の速度が衰えない。


 私はかなり威力の高い魔法を使った。


 私で怯まないなら、作戦は失敗するだろう。


 レイセ達が配下三人に向かう事が出来ない。


 ニーナ:「レイセ!」


 レイセ:「解ってる!」

 レイセ:「今から考える」

 レイセ:「プロミ、予定通りやってくれ」


 プロミ:「…………」

 プロミ:「解ったわ」


 レイセ:「…………」

 レイセ:「思いついた」

 レイセ:「ニーナ、アリア、サッサラを呼んでくれ」

 レイセ:「リビア、いつでも動ける用意を!」


 プロミは、神獣を呼び出した。


 神獣に手を触れる。


 神獣に溶けて行く。


 完全融合だ。


 普段のフェニックスより二回り大きい。


 天高く舞い上がったフェニックスは、大きな光を放っていた。


 遅れて圧倒的な熱を感じる。


 炎の塊は敵に向かって降りて行った。


 炎の塊は敵を焼きながら、進んで行く。


 魔物の中央を抜け、赤い男まで到達する。


 配下の黄色い男が、結界を張った。


 結界を三枚破壊したところで、プロミは諦めた様だ。


 多数を巻き込みながら、フェニックスは帰って来た。


 戦果は敵二十万て所だ。


 プロミ:「どう?」

 プロミ:「時間は稼げた?」


 レイセ:「ああ、何とかなりそうだ」

 レイセ:「プロミ」

 レイセ:「連続で悪いが、お前も来い」

 レイセ:「ニーナ、アリア、リビア、サッサラ」

 レイセ:「行くぞ!」


 レイセの黒竜に跨り、先頭まで移動する。



 レイセは、部分融合で巨大な剣を創り出した。


 部分融合は作れる体積に限界が有る。


 神獣の体積の数倍までだ。


 レイセの作り出した部分融合の剣は、たぶん限界の大きさだ。


 レイセは剣を横に構えた。


 敵が近づいて来る。


 レイセ:「『大三連』!!!」


 巨大な剣が右から左、左から右、上から下に振るわれる。


 ただそれだけ。


 この三連撃一回で、十五万の魔物が倒れる。


 凄まじい轟音と土煙。


 地形が変わるほどの大技だ。


 敵がまとまっているからギリギリ成立する。



 ここからだ。


 どれだけ粘れるか。


 アリア:「『時空間魔法、再現』」


 レイセの『大三連』の斬撃を『時空間魔法』で再現する。


 単純な攻撃だから再現は可能だ。


 規模が大きく消耗は激しい。


 レイセは休んでいる。



 三連撃は再現された。


 十五万の戦果をあげる。


 サッサラ:「『時空間魔法、再現!』」


 リビア:「『時空間魔法、再現!』」


 プロミ:「『時空間魔法、再現!』」


 レイセ:「『時空間魔法、再現!』」


 レイセ:「『大三連』!」

 レイセ:「『時空間魔法、再現!』」

 レイセ:「はぁ、はぁ、も、もう一巡行くぞ」

 レイセ:「命令だ、やれ!」


 アリア:「『時空間魔法、再現!』」


 サッサラ:「『時空間魔法、再現!』」


 リビア:「『時空間魔法、再現!』」


 プロミ:「『時空間魔法、再現!』」


 ニーナ:「『時空間魔法、再現!』」


 レイセ:「『大三連』!」

 レイセ:「『時空間魔法、再現!!』」


 レイセ:「ふー、これで時間が稼げるだろ」

 レイセ:「戦果も上々だ」


 時空間魔法を使った私達五人は、疲労で崩れ落ちた。


 レイセは魔道具を取り出し、全員に繋げた。


 レイセ:「ラインを維持してくれ、俺達七人は配下を抑え込む」


 レイセ達は魔物達を掻き分け、配下のいる中心に向かってダッシュする。


 配下もそれに呼応するように前に出て来ていた。



 時空間魔法の消耗が激しいが、戦果は大きかった。


 たぶん残りは百万くらい。



 後ろでラインを張っていた仲間たちが戦闘を開始する。


 私も始める。


 休んでいられない。


『―― ―――』


 私はゴブリンの首に短剣を突き立てた。


『――――――――』


 短剣を投げて、オークの足に命中させる。


『――― ――――』


 態勢の崩れたオークに槍を突き刺す。


『― ―― ―――』


 矢を射ってオオカミの魔物を串刺しにした。


『――――― ―――――』


 双剣でリザードマンの片手剣をはじき、盾の上から両手斧を叩きつけ、肩から胴体を半分にした。


 歌が完成すると、前方のゴブリンとオーク、オークウィザードの頭が二、三弾けた。


 戦いは始まった。

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