21話 英雄

 ニーナ:ニーナ・アイマー。

     黒戸美月と融合した。

     五章主人公。

 アリア:アリア・アランテ。

     篠宮美弥子と融合した。

     ニーナとは幼馴染。

 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

     すでにリビア・クロトと名乗っている。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

 リアンナ:リアンナ・ドバスカリ。

      海洋国家ドバスカリ女王。

      黒沢香織。

      ファガスと婚約。

 ダズ:聖国クリアの代表代理。

    クリアの元上司。

    アリアにプロポーズした。

 フレド:フレドリック・ユルロア。

     ピナンナと婚約。

     連合国クロトの守護者長の纏め役。

 リトアニ:魔道国家ネストロスの宰相。

      出来る宰相。

      モテそうな見た目なのに独身。

 クラウシア:武闘国家メロイリスの国家長。

       話術と人を見る目だけでのし上がった。


 




 レイセ:「二人を紹介する。」

 レイセ:「ルビー・アグノスとリビア・クロトだ」


 プロミ:「お久しぶりです」

 プロミ:「プロミと呼んでください」


 リビア:「初めまして」

 リビア:「リビアです」

 リビア:「よろしくお願いします」


 バランサー:「綺麗なお嬢さんたちですね」

 バランサー:「私は……、黒戸和馬です」

 バランサー:「よろしくお願いします」


 レイセ:「別に容姿だけに惹かれた訳じゃ無いぞ」


 バランサー:「私と貴方では、見え方が違うのです」

 バランサー:「私には魂の色が見えています」


 レイセ:「そうか」

 レイセ:「それならいい」

 レイセ:「オヤジの本名は?」


 バランサー:「有りませんね」

 バランサー:「今は黒戸和馬として挨拶しました」


 レイセ:「…………」

 レイセ:「百枝さんを今度紹介してくれよ」

 レイセ:「うまく行っているんだろ?」


 バランサー:「そうですね」

 バランサー:「機会が有れば」


 ニーナ:「私、聞きたい事が有るんだけど」


 レイセ:「ニーナ」

 レイセ:「オヤジは七割方役目で来てる」

 レイセ:「無理に聞き出すなよ」

 レイセ:「困らせるだけだぞ」


 ニーナ:「で、でも」


 バランサー:「…………」

 バランサー:「申し訳ないです」


 解ってたけど、なんだか悲しいな。


 歌いたくなった。


 けど、我慢しよう。


 悲しみが増すだけだ。


 バランサー:「ん?」

 バランサー:「仕方ない」

 バランサー:「もう、去らないと」


 レイセ:「何かあったのか?」


 バランサー:「ええ、管理の仕事です」

 バランサー:「内容は、話せません」


 レイセ:「そうか」


 プロミ:「もっとお話してお酒を一緒に飲みたかったです」


 リビア:「二人の子供時代とかも聞きたかったです」


 プロミ:「そうね」

 プロミ:「写真とか持ってないです?」


 バランサー:「ふふ」

 バランサー:「有りますよ」


 ニーナ:「え?」

 ニーナ:「有るの?」


 バランサー:「手帳に挟んで持ち歩いてます」


 レイセ:「手帳を使ってるのか?」

 レイセ:「全部記憶してると思った」


 お父さんは、スーツの胸ポケットから、手帳を取り出した。


 結構大きい。


 胸ポケットに入る大きさの手帳じゃ無かった。


 手帳を開くと、兄と私が並んだ写真が出た。


 保育園くらいか?


 同じ見開きに、青年とお父さん、その他何人かの写真が見えた。


 紫幻唯康さんもいる。


 あれは、アイナ先生?


 お父さんの隣の青年は、黒巣壱白だろう。


 マスターに似ている。


 そうか。


 そうだね。


 バランサー:「私にとっては、彼も貴方達と同じです」


 レイセ:「うん、わかってる」

 レイセ:「俺達の写真の話がしたい」

 レイセ:「その写真覚えている」

 レイセ:「引き取られて一週間で、オヤジが仕事に行こうとして、美月がぐずったんだ」

 レイセ:「それで俺が宥めてたら、オヤジが写真を撮ろうとしたんだ」

 レイセ:「そしたら、美月は泣き止んでポーズを取りやがった」


 ニーナ:「そんなの覚えてない」


 レイセ:「俺が三歳」

 レイセ:「お前が二歳の時だ」

 レイセ:「俺はお前に呆れていたが、今考えると俺も大概だな」

 レイセ:「合ってるよな?」

 レイセ:「オヤジ」


 バランサー:「そうです」

 バランサー:「その通り」

 バランサー:「貴方はあの時からマセていた」

 バランサー:「美月はあの時からかわいかった」


 レイセ:「他にも会って行かなくて良いのか?」


 バランサー:「貴方が今シロさんと呼んでいる人物ですか?」


 レイセ:「そうだ」


 バランサー:「すでに挨拶は済ませました」


 私は、お父さんを思っている。


 お父さんにも人間だった頃が有り、黒巣壱白との思い出がある。


 やはり、歌おう。


 詩の解釈は人それぞれで有るべきで、物語の流れの中に勝手に組み込んではいけない。


 でもあの曲を歌いたい。


 ニーナ:「アリア」

 ニーナ:「歌って良い?」


 アリア:「『――』でしょ?」

 アリア:「仕方ない」


 ニーナ:「お父さん?」

 ニーナ:「まだ時間有る?」


 バランサー:「一曲位なら」



『―――――、――――――――』

『――――――――――――――』

『――――――――――――――――』

『―――――“――” ―――――――――』

『――――――――――――――』

『―――――――――――』


『――――――――――――――――』

『「――――――――」―――――――――――――?』

『――――――――――――――――――』

『―――――――――――――――』

『―――――――――――――――――』

『―――――― ――――――――――――――――』


『――――、―――――――――』

『――――― ――――― ――――――――』

『――――――――――――――――――』

『―――― ―――――――――――――――――――――』

『―――――――――――――――――――』


『――――――――――――――――――』

『――――――――――――――――』

『―――――――――――――――――――』

『―――――――――――――――――』

『――――――――――――――――――』

『―――――― ――――――――――――――』


『――――――――――――――――』

『「――――――――」――――――――――――』

『―――――――――――――――――――』

『――――――――――――――――』

『――――――――――――――――――』

『―――― ―――― ―――――――――――――』



 お父さんは笑みを浮かべている。


 どういう感情から笑ってるか、私には解らなかった。


 バランサー:「一人の、只の男の話をしましょう」

 バランサー:「その男は只の一人でダンジョンを攻略して回り、只一人で魔物の王を討ち、管理者となった」

 バランサー:「他人を信用せず、誰の事も引き上げなかった」

 バランサー:「誰も、彼を覚えていない」

 バランサー:「その存在も無かった事に成った」

 バランサー:「魔物の王は復活し、みな、元の生活を続けるだけだった」


 レイセ:「シングライト・クルフェムアだろう?」

 レイセ:「黒竜が覚えていた」


 バランサー:「…………」


 お父さんは姿を消した。


 瞬きした後、いなくなってた。



 みんなは涙ぐんでいる。



 プロミ:「昔の貴方は純真そうだったのに」


 レイセ:「仕方ないだろ?」


 リビア:「今は今でかわいいですよ」


 レイセ:「その言い方だと、素直に喜べないな」


 クラウシア:「神を実感した」


 リトアニ:「同感です」


 フレド:「刺身は旨かったんだがな」

 フレド:「緊張したぜ」


 ダズ:「まーな」

 ダズ:「しかし、神の子供か」

 ダズ:「スケールが違うな」


 クラウシア:「確かに」

 クラウシア:「二国の王も頷ける」


 レイセ:「オヤジの印象はどうだった?」


 プロミ:「私にとっては親戚のおじさんのままだったわ」


 リビア:「そうですね」

 リビア:「親戚のおじさんって感じですね」


 ニーナ:「貴方達も嫁ぐと、お義父さんと呼ぶのよ」


 リアンナ:「ま~そ~ね」

 リアンナ:「神の子供ね」


 リビア:「感慨深い?」

 リビア:「です」


 プロミ:「実感ないけど、不思議」


 レイセ:「そろそろ良い時間になった」

 レイセ:「一旦しめる」


 レイセ:「みんな、今日はありがとう!」

 レイセ:「良い懇親会になった!」

 レイセ:「明日からは合同訓練に入る」

 レイセ:「急がないといけない」

 レイセ:「魔物どもは待つ気らしいが、その間にも数が増えている」

 レイセ:「残りたいものは残れ、まだ片付けない」

 レイセ:「飲んでてくれていい」

 レイセ:「だが明日からは本気で行く」

 レイセ:「俺が指揮する」

 レイセ:「明日に影響する飲み方はするなよ」

 レイセ:「じゃ、解散!」


 ニーナ:「みんな!」

 ニーナ:「兄は頭どうかしてます」

 ニーナ:「気を付けて下さい!」


 みんなは歓声をあげた。


 一部笑ってない。


 マジだから。


 マジでキツイから。


 兄には戦争で犠牲者を出す気はさらさら無い。


 みんなを駒にして自分だけ楽する気もない。


 絶対に気が抜けない訓練が始まる。



 合同訓練は二週間行われた。


 兄は初日からかっ飛ばし、めちゃくちゃやった。


 ダンジョン完全攻略者達は黙々と熟した。


 熟す人間が存在することに戦慄し、逆に勇気づけられた。


 みんなはレイセに付いて行けば、間違いなく勝てると確信した。


 これで勝てなければ、もう仕方ない。


 そんな意見も聞いた。



 一通りの確認を終え、二週間の訓練は終了した。


 兄は、黒竜に書状を持たせて、魔物の王の配下に届けさせた。


 宣戦布告はこちらから行った。


 戦いが始まる。

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