14話 契約

 ニーナ・アイマー:レナメントレアのはぐれ里出身。

          未契約だが黒戸美月の人生を追体験した。

          黒戸美月の精神が意識の中にある。

          五章主人公。

 アリア・アランテ:レナメントレアのはぐれ里出身。

          ニーナとは幼馴染。

 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:リビア・クロト。

     レイセと婚約。

     聖国クリアの元代表。

 ベル:黒沼直樹。

    聖国クリアの守護者の纏め役。

    聖国クリアの守護者と言えば彼を指す。

    物理と数学の教師。

    ランと結婚した。

 カー:ベルとは幼馴染。

    琥珀聖。

    鉱物が関係した魔法を得意としている。

    魔法タイプ。

 ダズ:聖国クリアの代表代理。

    レイセの元上司。

    昔は無精ひげだったが、今は剃ってる。

 フレドリック・ユルロア:通称フレド。

             連合国クロトの守護者長の纏め役。

             ピナンナと婚約。

 ボーデン・バレット:連合国クロトでフレドの補佐をしている。

           エーディンとは書類上では夫婦。

           結婚式がまだ。

 コナル:青井友介。

     大学生。

     連合国クロトの戦闘指南役。

     美月が気になる。

 ファガス:黄山十夜。

      大学生。

      リアンナ・ドバスカリと婚約。

      海洋国家ドバスカリの重要処。

 リアンナ:リアンナ・ドバスカリ。

      海洋国家ドバスカリの女王。

      黒沢香織。

      一流企業に就職。

 アル:聖国クリアの守護者長。

    クリアの飲み友達だった。

    火炎魔法を多用する魔法タイプ。

 ピナンナ・ラクトリ:連合国クロトの守護者長。

           フレドと婚約。

 カイン:元レナメントレアの王子。

     ダズが親代わり。

     レイセに父親を殺された。


 



 芋虫の様な形をした魔物が三体、壁に体当たりしてる。


 めちゃくちゃデカい。


 体毛の無い芋虫。


 足の、無数にある触手がぐにゅぐにゅと蠢いている。


 顔の部分は口しかない。


 人間のような唇があり、綺麗な歯並び。


 舌がだらりと垂れている。


 顔には艶めかしい女性の様な口だけ。


 触覚の様な突起物も無い。


 ぬめっとしたフォルム。


 きっしょい。



 小型の飛竜が上空を旋回している。


 今日は良い天気の筈だが光は射さない。


 千体は飛んでいる。


 街の上に展開された結界に体当たりを繰り返してる。


「ダズさん」

「私達がやります」

「見ててください」


「大丈夫なんだな?」


「まー、いけるでしょう」


「アリア!」


「うん」

「まずは私から」


 アリアは芋虫三体を指さして、四角を描く。


 アリアの視界からは四角の中に三体が収まって見えている。


 アリアは手の平を四角の面に向けて、押し出した。



 芋虫三体は、地面ごと、森まで移動させられた。


 空間を切り取って移動させた。


 空間に閉じ込めている。



 おおー!


 という声が挙がった。



 飛竜に邪魔される隙間は無い。


 一瞬だ。


 次は私の番だ。


「歌じゃなくても良いのですが、観客が居られますので歌います」


「必要なのか?」


「威力マシマシ、数と範囲を大盛りにするには、これが最適です」

「ダズさん」

「結界を強める様に指示を」


「何故だ?」


「飛竜を全て落とします」


「では、歌います」


 らららんら、らんらんら、ららら


『、――――――』

『――――― ―――――――』

『―、―――、―――――――』

『―――――――――――――』

『――――――――――』

『―――、―――』

『が、が、が、』


 飛竜が落ちて行く。


 日が射してきた。


『― ―――――――』

『――――――――――――――』

『―――――――』

『―――――』

『――――――、―』


 飛竜は全て落ちた。



 飛竜の頭は全て弾けて居る。


 音、振動に、脳が弾け飛ぶイメージを載せて歌った。


 少しでも思考能力が有れば、イメージに影響され、脳が弾け飛ぶ。


 振動そのものに力は無い。


 振動から受け取るイメージに力が有る。


 振動を受けたら、逃れられない。


 即死だ。



 街を覆う結界は、球面に成っていた。


 上空に居た飛竜の死骸が、結界を滑って、外壁に流れて積み上がった。


「レイセが見せたがる訳だな」


「カイン」

「納得したか?」


「…………」

「ああ」

「圧倒的だった」


「曲にはまだ続きが有ったんだろ?」


「ええ」

「聞きたいですか?」


「聞きたいが、対価に命を取られそうだ」


「かも、知れませんね」


 カイン様は苦笑いだ。


「芋虫を片付けます」

「後は二人で出来ます」

「宴を楽しんでください」

「それに、森に用が有ります……」


「………」

「帰るぜ」


「フレド」

「良いのか?」


「ダズ」

「きっと大丈夫だ」


「ボーデン、行くぞ」


「イメージを音で伝える、か、この世界では確かに強力です」


「だな」


「ですね」


「アル、カー、参考に成りそうか?」


「いや、マネするのは難しいね」


「だな、魔物に通用するイメージを想像できない」


「芸術家にしか無理だね」


「ふふ、でしょう?」


「現金なところは、レイセそっくりだな」


「嫉妬ですか?」


「もう、からかわれてやらないぞ」

「気を抜くなよ」

「任せた」


「はい」


「では、行ってきます」


「アリア、気を付けて」


「ダズ」

「恋人気どりは止めて」


「…………」

「ニーナ、アリアを頼む」


「引き受けました」


「では」


 私達は森に移動する。



 森には空間に閉じ込めた芋虫三体が、出たい、出たいと暴れていた。


 アリアの理魔法は、視界に入っている事で、威力が増すらしい。


 近づいたのはそのためだ。


 アリアは、


「パン」


 と、手を叩いた。


 芋虫が入っていた空間は、面に圧縮された。



 私達は自分の前に、自分たちが隠れる様に結界を出した。


 アリアが理魔法を解除した。


 圧縮された空間から、芋虫の体液が飛び散った。



 ふう。


 そう思った時、ふわり、と、鳥が地面に降り立った。


 朱色の鳥。



 たぶん、四神。


 朱雀だ。


 レイセの『異世界転生録 ロストエンド』に出て来る。



 アリアの横には、透き通った衣をまとった老人が立っていた。


 人型の神獣なのだろう。



 契約の時だ。


 朱雀が語りかけて来る。


『お気持ちは、定まっておられる様ですね』


「はい」

「永遠を生きます」


『正しく理解されているご様子』

『問題無いでしょう』

『では、契約です』


 何も起こらない。


「どうすれば良いのですか?」


『契約は成されました』


「融合はどうすれば?」


『口に出さずとも話せるでしょう?』

『融合はすぐに解ります』


 私、兄貴の事、恋愛対象じゃ無いから。


 勝手な事言わないでよね。


 ニーナのバカ。


 この涙も直に止まるだろう。


 涙は自分の為に流すものじゃない。


 馬鹿は私だ。




 アリアはどうしたか?


 隣を見る。


 アリアも泣いていた。


 契約は済んだ様だ。


「帰ろっか?」


「うん」


 手を繋いだ。


 久しぶりだ。


 うれしい。


「美月?」


「なに?」


「ごめんね」


「何が?」


「『ロストエンド』に入ったの、私の所為だから」


「ああ、それね」


「どっちかと言うと、巻き込まれたのは、ミヤミヤじゃない?」


「うん」

「まあね」

「そんな気もする」


「でしょ?」

「ごめんね」


「お相子で」


「だね」


「鏡華まだかなー?」


「早く会いたいよね」


「ねー」


「ダズさんどうするの?」


「貢いで貰う」


「アリア、お金に興味あったっけ?」


「我慢してるだけです」

「七つの大罪は“強欲”よ」


「ニーナは?」

「コナルさんどうするの?」


「好感度は高いのよ、でも、もう一押し足りない」

「そんな感じ」


「えー、いい雰囲気だったよ」


「そっちは、雰囲気位作ってあげなよ」


「いきなりプロポーズされたんだよ?」

「有り得なく無い?」


「聞いた時は殺してやろうと思ったけど、ちょっと羨ましい気もする」


「えー?」

「なんで?」


「コナルは押しが弱い」


「そこがいいんじゃん」


「えー!?」


「えーじゃない」


「『最初の冒険者』いいよね?」


「レイセさんの前の奥さん、素敵」


「確かに」


「リビアさんの話、聞いた?」


「聖国を造ったんでしょ?」

「聞いた」


「プロミの事は?」


「現人神なんでしょ?」

「聞いた」

「納得してしまった」

「小学生のある時期から、妙に頼りになるなって、思ってたんだ」

「でも、異世界で、現人神やってるって思わないでしょ?」


「うん」

「思わない」


「た、対等に行くから」


「うん」

「解ってる」

「私もそうする」

「頑張る」


「リビアさんも呼び捨てだから」


「え?」

「ホントに?」

「それは、キツイ」


「だよね」

「さん、つけてしまうよね?」


「うん」


「でも、だめ、対等で行く」


「解った」

「頑張る」


「じゃ、戻ろう」


「うん」


 大広間に戻った。


 レイセを探す。


 居ない。


 あれ?


 後ろから頭を撫でられた。


 前にも有ったな。


 あの時か?


 今日は気持ち悪いって、言わないでやる。


 でも、払いのける。


 うっとおしい。



「兄貴、契約してきた」


「そうか」


「お前、今寮だな?」


「そうだけど」

「それが?」


「俺は初めてこっちに来た時、家事の仕方を忘れてた」


「ああ、それで料理当番変わったのか」


「久しぶりに帰ると、びっくりするくらい忘れてるぞ」


「でしょうね」


「お前、十五歳でこっちに来たんだよな?」

「詳しい話を教えてくれ」


「それ、ベルさんに話したけど、報告まだない?」


「聞いた」

「一応お前からも聞きたい」


「それと、紹介したい人がいる」


「リビア」


「はい」


「俺、リビアと結婚するから」


「うん」

「知ってる」

「今更過ぎて、笑う気も起きない」


「バーベキュー、リビアもつれて行きたかったー」


「リビアさん?」


「なんです?」


「プロミと対等なんだよね?」


「そうですね」


「じゃ、呼び捨てで良い?」


「当然です」


 リビアは今までで一番嬉しそうに笑った。


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