10話 本人が話すんじゃん

 ニーナ・アイマー:レナメントレアのはぐれ里出身。

          未契約だが黒戸美月の人生を追体験した。

          黒戸美月の精神が意識の中にある。

          五章主人公。

 リビア:リビア・クロト。

     レイセと婚約。

     聖国クリアの元代表。

 ボーデン・バレット:連合国クロトでフレドの補佐をしている。

           エーディンとは書類上では夫婦。

           結婚式がまだ。

 エーディン・バレット:戦闘能力は無い。

            ボーデンとは書類上では夫婦。

            結婚式がまだ。

 ファガス:黄山十夜。

      リアンナ・ドバスカリと婚約。

      海洋国家ドバスカリの重要処。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

            ファガスと婚約。

            黒沢香織。

 コナル:青井友介。

     連合国クロトの戦闘指南役。

     美月に気がある。



 レイセが北の大地で何をやったか大体解った。


 傭兵に成って、冒険者を十五人位スカウトして傭兵団を作った。


 そして、戦争で勝って、最後は仮面の男と戦い、皆に認められた。


 融合者とも戦ったらしい。


 レイセは自分の力で王に成れるか試したかったらしい。


 そして、ホントにそうなった。




 レイセはすぐそこで酒を飲んでいる。


 ドロドロの気持ち悪いの。


 しかも、水を飲むようにガバガバ飲んでいる。


 頭悪い。



 ボーデンさんが、レイセから酒を注がれた。


 ドロドロのやつを。


 え?


 飲むのですか?


 ボーデンさんは、グイっと一飲みした。


「何本持って来たんです?」


「二千五百本」


「心配性ですね」


「滞在期間を考えると、足りないかもしれない」


「考え過ぎです」

「そんな訳無い」


「いや、ドロドロだから減り易いし、この国でも人気が出たら直だぞ」


「…………」

「リビアは持ってきて無いのですか?」


「ほら」

「お前も心配に成ってるだろ」


「で?」

「どうなんです?」


「何本か知らんが、自分の分は確保してるだろ」

「プロミも持って来るはずだし、もうしばらくは無事かな」


「なら問題ない」

「…………」

「もう一杯」


「おまえ」

「…………」

「まあ、良いか」

「どうせ無くなるしな」


「その、どう見てもゲテモノなのに、なんなの?」


「この酒は、プロミも、リビアも好きですよ」


「嘘っ!?」


「ね?」

「それが、サンドブレイブスピリッツ?」


「そうだ」

「飲むか?」


「エーディン」

「最初は不味いからね」

「最初は」


「ふふ」

「何回も聞いた」

「貴方、夢中じゃない」


「まー、そうかも」


「私も頂いてよろしいですか?」


「よし」

「注ぐぞ」


「頂きます」


 レイセはエーディンさんのグラスに酒を注いだ。


 間髪入れず、スイと飲み込んだ。


「…………」

「なるほど」


「何の納得だ!」

「リアクション薄っ!」


「王に注いで頂いたお酒ですよ?」

「文句を言えません」


「根性でどうにかなる不味さじゃ無い筈なんだが…………」

「お前の嫁、凄いな」


「でしょう?」


「煽てないでください」

「貴方も真に受けない」


「いや、いや、いや」

「煽ててない、煽ててない」

「マジであり得ん」


「ですね」


「そんなに不味いの飲ますなよ!」

「趣味悪い!」


「ニーナ」

「怒ってるのか?」


「そんなんじゃ無いけど」


「お前も飲め」

「飲めば解る」


「私もね、大体話から予想ついてるのよ?」

「でもね」

「何かね」


「まあ、飲め」


 レイセは私のグラスに、気持ち悪いのを注いだ。


 ドロドロだし、瓶から出る時、ちょっと鼻水みたいって思ってしまった。


 飲み物にいだいて良い感想じゃ無くない?


 卵の白身の非じゃない禍々しさなんですけど。


 卵の白身が白いのは、火が通って固まった時だから。


 綺麗な白だから。


 こんな、生で白く濁ってぶよぶよした感じじゃ無いから。


 でも、根性の話しやがった。


 やってやろうじゃない。


 僕はグイっと一気に飲んだ。



 何でもしますから許してください。


 靴の裏舐めましょうか?



 そんな味だ。


 倒れそう。


 レイセ達の話の流れでは、ここから旨く感じる様になるらしい。


 絶対?


 例外もいるでしょ?


 私がそうでしょ?


 そうとしか思えない。


「……」

「ニーナさん」

「大丈夫?」


「エーディンさん」

「私、耐えました」


「……」

「なんだか気の毒に成って来たわ」


「どういう意味です?」


「私はオチを知ってるから」


「ええ?!」

「味方だと思ったのに」


「そんな!?」

「ご、ごめんなさい」


 隣のテーブルから男女のペアが移動してきた。


 移動は、お姫様抱っこ。


 女性には歩く素振りが無い。


 男性に完全に体重を任せている。


 ダンサーかよ!


 マジか?


 こんなのがいるの?


 ホントに?


「リアンナ!」

「歩け!」


 そら突っ込むわ。


 てか。


 リアンナ!


 黒沢香織?


 これが?


「ファガス、甘やかすなよ」


「…………」

「レイセ、俺には無理だ」

「ボーデン、笑うな」


「おっと、失礼」


「リアンナ、ファガスが恥かくんだぞ」


「むー」

「解ったわ~」

「立つ」


「リアンナ、無視すれば良いのに」


「ファガス!」


「ファガスごめんね」

「手、繋いでるから」


 あ、甘ったるい。


 香織姉が甘ったるい。


 もう、我慢できません。


「か、香織姉?」

「…………」


「ニーナよね?」

「レナメントレアの」


「そ、そうっす」

「レナメントレアっす」


「ニーナさん、しゃべり方がブレてます」


「…………」

「私は、黒沢香織じゃありません」

「違います」


「またそれかよ」

「認めろよ」


「だって、恥ずかしいし」


「恥ずかしいのは、お前の向こうの性格だ!」


「レイセに言われたくない!」


「「確かに」」


「おお、ハモった」


「ファガスさんが、十夜さんなんですよね?」


「そうだよ」


「コナルさんは?」


「言っとくけど、俺達はセットじゃないからな」

「コナルは照れて隠れてる」


「照れて?」


「そう、照れて」


「まだ、融合出来てませんよ?」


「知ってるけど、融合は始まってる」


「?」


「融合すれば解るよ」


「レイセ」

「俺、あれ言いたいんだ」


「ああ、聞いてたのか?」

「いいぞ」

「良いタイミングだ」


「二人とも、酒の味、覚えてるか?」


 はー、覚えてるわ!


 めちゃくちゃな苦味と、えげつないえぐ味。


 に、苦味とえぐ味?


 あ、あれ?


 え?


 凄かったのよ。


 凄かった。


 凄かった筈。


 でも。


 でも。


 どの程度だったっけ?




 なんでもしますから許してください。


 靴の裏舐めましょうか?




 って、どの位だっけ?


 気に成る。


 私、気に成ります。




 私が悩んでいる間に、酒を注いだらしい。


 手で酌をしてないが、兄妹だしいいか?



 飲む。


 マッず。


 ………。


 エーディンさんも意外そうな顔だ。


 解っててもそうなるんだな。




 はいはい、解った、解った。


 飲める。


 飲めるように成って来た。


 これ、アレだろ?


 旨い。


 味に目覚めたー!


 ってやつだろ?


 夢の漫画で見た。




 解ったから、それはもういいや。


「レイセは北で国を治めて、どうしたんです?」


「ダンジョン攻略をしたんだけど、進むのに制約があって無理だったんです」


「それで、俺達を育てる事にしたんだよな?」


「そうだ」

「一緒に俺自身も鍛えた」


「俺の人生はゼアスに消費された」


「ゼアス!」

「レイセの偽名」


「レイセじゃない」

「お兄様だ」


「まだ違うわ!」

「うざい、ちょっと黙ってて」


「み、美月に反抗期無かったのに…………」


「あんた今中一でしょ?」

「私その時小六だし」

「これからです」


「えー!?」

「こっわ」


「ちょ、ちょっと待って」

「美月ちゃん何歳でこっちに来たの?」


「十五歳です」


「こ、高校一年?」


「です」


「レイセ」


「解ってる」

「魔物の王の配下倒したら、一旦美月を待つ事に成る」


「だな」


「話を戻すよ」

「俺とコナルはめっちゃ鍛えて、契約して、リアンナと出会って、連合国クロトに向かったんだ」


「リアンナの情報いる?」


「いるわ」


「連合国クロトではどうしてたんです?」


「フレドとボーデンを鍛えた」


「本人が話すんじゃん」


「まどろっこしい」


「お前が話すなら、聞いて回る必要無かった」


「お兄様ね」


「ファガス、ボーデン、ついでにリアンナ」


「ニーナに追いつかれたぞ」


「はあ?」


「どういう事です?」


「なんで私がついでなのよ」


「お前戦闘能力無いだろ」


「追いついたって、戦闘能力の事?」

 

「そうだ」


「ニーナさん今何歳?」


「内緒です」


「百歳だ」


「バラすなよ」


「…………」


「…………」


「死にかけたら、限界を超えるイメージが掴めました」


「…………」


「…………」


「リビアは知ってるんだよな?」


「ああ、笑ってたな」


「ニーナを矢が貫いた時、リビアの結界を貫いてたんだ」

「リビアがブチ切れたの初めて見て、ビビった」

「『ドラゴンズ・クロー』を皆殺しにしたらしい」


「…………」


「…………」


「レイセ」

「そんな連絡聞いて無いぞ」


「リビアがいまだに怒っている」

「迂闊に話せなかった」


「じゃ、出発した時に襲撃してきた奴は『ドラゴンズ・クロー』じゃ無いな」


「ですね」

「私達が到着する頃にもちょっかい掛けて来てたのが居ます」

「つけられてました」


「ふーん」

「実力はどうだった?」


「逃げやがったからな」

「それなりだ」


「…………」


「話戻して良いです?」

「それで、鍛えてダンジョン攻略したと?」


「ダンジョン攻略を一言で済ますのは許されない」

「詳しく説明したい」


「じゃ、どうぞ」


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