9話 ちょっと残念

ニーナ・アイマー:レナメントレアのはぐれ里出身。

         未契約だが黒戸美月の人生を追体験した。

         黒戸美月の精神が意識の中にある。

         五章主人公。

リビア:リビア・クロト。

    レイセと婚約。

    聖国クリアの元代表。

ベル:黒沼直樹。

   聖国クリアの守護者。

   聖国クリアの守護者と言えば彼を指す。

   物理と数学の教師。

ダズ:聖国クリアの代表代理。

   レイセの元上司。

   昔は無精ひげだったが、今は剃ってる。

フレドリック・ユルロア:通称フレド。

            連合国クロトの守護者長の纏め役。

            ピナンナと婚約。

ピナンナ・ラクトリ:連合国クロトの守護者長。

          フレドと婚約。

ボーデン・バレット:連合国クロトでフレドの補佐をしている。

          エーディンとは書類上では夫婦。

          結婚式がまだ。

エーディン・バレット:戦闘能力は無い。

           ボーデンとは書類上では夫婦。

           結婚式がまだ。

ファガス:黄山十夜。

     リアンナ・ドバスカリと婚約。

     海洋国家ドバスカリの重要処。

コナル:青井友介。

    連合国クロトの戦闘指南役。

    美月に気がある。




 ベルさんは話すのが上手い。


 流石教師。


 僕の、もとい、私の意識がとっ散らかったのを感じて、刺激の強い言葉を選んでくれたらしい。


 そのおかげで意識が引き戻された。


 逆に情報量が多すぎてパニックに成ったが、それも計算らしい。


 パニックに成ったせいで私の一人称が、僕に戻ってしまった。


 私の、素の一人称は、僕なのだろう。


 確かに過去にはそんな時期も有った。




 お父さんが管理者ってのは、一旦脇に置いておこう。


 気持ちの整理が必要だ。





 ふぅー。


 落ち着いて来た。


「ベルさん、貴方は、私が知らないといけない知識に見当が付いてます?」


「…………」

「話を整理したいんですね?」


「王の、レイセの話は、案内人時代、商人時代、月と太陽の国での訓練時代、北の王時代、月と太陽の国での訓練時代二、北のダンジョン攻略、が有りまして、その他に、『ロストエンド』の話が有ります」

「貴方は案内人時代の話を聞き、商人時代と月と太陽の国での訓練時代、北の王時代の概要を聞いた位でしょう?」


「そうか」

「商人時代の話と月と太陽の国での訓練時代はプロミさんに聞いた方が良いのですよね?」


「ですね」

「あと、北の王時代、太陽国での訓練時代二、北のダンジョン攻略の話は、今日着く、フレド、ボーデン、ファガス、リアンナ、コナルに聞いて下さい」


「!」

「今日着かれるのですか?」


「そうです」

「昼過ぎですね」

「フレド、ボーデンとは初めて会います」

「僕も楽しみです」

「なんでも、王と同時に結婚式を挙げるつもりとか」


「盛大な結婚式に成りそうですね」


「…………」

「貴方に、抵抗感は有りませんか?」


「美月は鏡華を認めています」

「僕が融合するとどんな反応するか解りませんが、私は大丈夫」


「ですか」

「それにしても、盛大な結婚式に成るなら、僕らも待ってればよかったかな?」


「え?」

「あの結婚式良かったやん」

「あー、兄貴が来れなかったのが引っかかってるの?」


「…………」

「そんなんじゃ無いけどね」


「今回の式用に、衣装代奮発したじゃん」


「まーね、主役食えそうなのになったね」


「それは不味く無いですか?」


「いーの、いーの、兄貴地味だし、どうせそうなるよ」


「リビアさんに勝つ気なんですね」


「う」

「それ言われると、キツイかも」

「プロミさんもいるし」


「プロミさんも目立つ感じですか?」


「…………」

「気に成る?」


「少し」


「現人神で狂信者を引き連れて歩く女王が、普通の見た目だと思う?」


「わー、凄そう」


「レナメントレアの貴方も負けて無いけどね」


「おっと、照れくさい」


「ふふ、反応が面白い」

「私達、友達に成ろうね」


「いいけど」

「プロミさんと対等に行くつもりなんで、付いて来れる?」


「え?」

「それってリビアさんも?」


「リビアさんは、……保留」


「うーん、やってやるわ」


「君ら、なんでリビアさんを特別扱いなんです?」


「なんとなく?」


「せやね」


 しばらく、レイセがいない間の聖国クリアの話を聞いた。


 リビアさん時代とダズさん時代があるらしい。


 ちなみに、今レイセは引継ぎ作業をやってる。


 ダズさんにしごかれてるらしい。


 戴冠式と結婚式を同時に行う。


 式はかなり盛大なものに成る。


 準備が大変そう。




 そして、外の魔物の強さが異常な事に成ってる。


 にもかかわらず、誰も慌ててない。


 魔物の王の配下が三人来るのなんて、聞いたことが無い。


 本当に大丈夫なのか?




 話し込んでいると、お昼に成った。


 城の食堂で食べた。


 ランとベルさんも一緒。


 もうランは呼び捨てで良さそうだ。


 ハンバーグとスープ、サラダのセットを食べた。


 セットは三種類用意されていたが、三人とも同じのを頼んだ。


 ハンバーグがお薦めらしい。


 チーズインハンバーグ。


 考えた奴は天才だ。


 間違いない。


 パンとライスを選べたが、ライスを選んだ。


 ハンバーグとライスは合う。


 チーズ、肉汁、デミグラスソース。


 しかし、残ったソースを見るとパンのが良かったか?


 と、いつも思う。


 美味しかったんだ、解るだろう?




 食後のコーヒーを飲んでると、周りが慌ただしく動き出した。


 どうやら、ご到着らしい。



 大広間に集まる。


 私は城に居て近いから別だが、ベルさんが魔道具で招集をかけている。




 フレドリック・ユルロア。


 ピナンナ・ラクトリ。


 ボーデン・バレット。


 エーディン・バレット。


 ファガス。


 コナル。


 特にファガスとコナルが気に成る。


 十夜さんと友介さんだ。



「フレド、遅かったな」


「遅く無いだろ」

「ラトスら他の守護者達と近衛兵組」

「あと、プロミ達もまだだと聞いたが?」


「そういう意味じゃない」

「俺は代表の引継ぎをしてる」

「手伝ってくれ」


「はー?」

「馬鹿言うなよ」

「俺が手伝ってどうする」

「お前の仕事だろ」


「お前、俺のやり方知ってるだろ?」

「ダズに説明からやってるんだぞ」


「そうだ」

「ダズさんを紹介してくれ」


「紹介はする」

「当然だ」

「戦争までお前暇だし手伝えよな」

「命令だ」


「知るか」

「ダズさんは?」


「ダズは俺だが…………」


「初めまして、フレドリック・ユルロアだ」


「ダズだ」

「何だ改まって?」

「お前、レイセに俺の事なんて聞いているんだ?」


「昔の上司」

「命の恩人と聞いてるぜ」

「レイセとリビアの面倒見てたんだろ?」


「何か誤解が有りそうだ」

「無駄に評価が高い」


「俺がお前をフレドのライバルと認定した」


「ライバルね」

「フレド、いつも通りやれ」

「意識するな」

「上からで悪いが代表の先輩としての忠告だ」


「な?」

「クールだろ?」


「だな」


「俺を格好つけみたいに言うなよ」

「やれることを最大限やるだけの話だ」


「…………」

「参考に聞かせてくれ」

「突破口が思いつかない時どうする?」


「突破口は大抵何か有る」

「それも複数」

「思いつていないだけだ」

「と、思うようにしている」


「フレド」

「納得したか?」


「ああ」

「即答とはな」


「ダズ」

「仲良くしてくれ」


「フレド」

「こちらこそだ」


「フレドリック」

「ダズさんを意識し過ぎです」

「聖国クリアにはまだ粒が揃っています」


「わ、わりー」

「そんなつもりじゃ無かったんだが…………」


「ちなみに僕がベルです」


「あー、あんたがあの、異世界で先生やってる……」


「そうです」

「この国では守護者と言えば、僕です」

「何年も」


「おおー、グイグイ来るな」

「嫌いじゃ無いぜ、そういうの」


「そろそろ、黙って待ってるのが苦痛に成って来たな」


「だな」


「レイセ」

「もう、この感じ辞めて良いか?」


「そうだな」

「ファガス、コナル」

「バラけたいな」

「みんな、自由に歓談だ」



 私は紹介されなかった。


 少し寂しい。


 と、思っていたら、横にレイセが立ってる。


 えー?


 これからあんたの話聞くから、余所へ行ってよ。



 …………。


 立食パーティーに変わって、私のテーブルでオードブルをつまむレイセ。


 動く気配なし。



 ボーデンさんらしき人が来た。


 この人は話が上手いらしい。


 そして、女好き。


 ちょっと口説かれてみたい。


 レイセ?


 無視します。


「貴方がボーデン・バレットですか?」


「そうです」

「そういう貴方は、ニーナ・アイマーですね?」


「そうだ」


 レイセ。


 お前が返事するな。


 お前が会話に加わると、聞くことが聞けなくなる。


 どっか行って。


「レイセ」

「ニーナと話したいのですが?」


「…………」

「解った」

「黙ってる」


 いや、席を外せよ。


 もう。


「レイセがどうやって今に至ったのか、話を聞いて回ってるんですが…………」


「どうぞ」

「聞きたい事を聞いて下さい」

「お答えしますよ」


 繊細そうな眼鏡の男が、肩にリスの様な神獣を載せて、柔らかく微笑んだ。


 だが、隣には婚約者らしき人がいて、ギュッと手を繋いでいる。


 あ、これ、口説かれ無いわ。


 ちょっと残念。


「レイセに会った時の事、覚えています?」

「有った事を順に教えて下さい」


「レイセに会った時の事は、良く覚えています」

「初めての会話で、『永遠の命に興味あるか?』そう声を掛けられました」

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