3話 自由意思

 ニーナ・アイマー:レナメントレアのはぐれ里出身。

          異世界の夢を見る。

          主人公。

 アリア・アランテ:レナメントレアのはぐれ里出身。

          異世界の夢を見る。

          ニーナとは幼馴染。

 ゼアス:レイセの偽名。

     堂々と偽名と宣言している。

     連合国クロトの幹部らしい。

     嘘ではない。

 トリポリ:リビアの偽名。

      偽名と宣言。

      連合国クロトの幹部らしい。

      嘘ではない。

 シロ:『ロストエンド』マスター、黒巣壱白の偽名。

    肩から刀をかけている。

    一応管理者。



 私達は野営していた。


 ゼアスが料理を振る舞ってくれた。


 ポトフと言う食べ物らしい。




 季節はもうすぐ冬になる。


 少し肌寒い。


 ポトフは美味しくて、体が温めまる。


 そして、落ち着く。


 ゼアスの味付けは、私の好みと合っていた。


 始めて食べたのに、食べ慣れた様な安心できる味。




 ゼアスは空間から調理道具一式と、テーブルとイスを出した。


 灯りも。


 食材が調理用の台車にズラリと並べられた。


 全ての道具を空間から出して、最後は仕舞った。


 普段から当たり前に行っているらしい。


 勿体つける動作は無かった。


 驚く私達を見て、ああ、忘れていた。


 そんな感じ。


「貴方達は何処から来たのです?」


「もう、話しても良いか?」


「そうですね」

「でも、驚かさない様に」

「徐々にお願いします」


「トリポリの許可が出たので話すが、連合国クロトから来た」


「馬車で、もっと大人数で移動していたんだが、襲撃に会った」


「『ドラゴンズ・クロー』だ」

「たぶんな」


「馬車は壊れて、別行動に成った」


「ところで、世界の情勢については知識が有るか?」


 アリアは知り得る全ての知識を説明した。


 こういう知識は彼女の担当だ。


「かくれ里ではそれが限界だろう」


「実は、聖国クリアは魔物の王の配下を一人葬ほおむっている」


「レナメントレアの王だ」


「え?」


「そんな…………」


「王は病死と聞いてました」


「魔物の王に竜と融合させられ、操られていた」


「…………」


「…………」


「では、カイン様、シェルミ様は、王の仇の国に亡命されたと?」


「そうだな」

「…………」


「今回、魔物の王は自身で動かなかった、配下を差し向けるだけらしい」

「前回、配下は一人だった」

「今回は、三人来る」

「聖国クリアは、他国と条約を結んでいる」

「魔物の王が攻めて来た時、共闘を約束するものだ」

「聖国クリアには、他国から精鋭が集まって来る」

「連合国クロト、武闘国家メロイリス、魔道国ネストロス、海洋国家ドバスカリ、月と太陽の国アウグストラ」

「元々、聖国に用が有って、移動の準備をしていた」

「俺達は先行している筈だ」

「今回の配下は準備が整うまで待ってくれると連絡して来た」

「前面戦争にはまだ時間の余裕がある」


「…………」


「…………」


「は、話の規模が大きすぎて…………」


「前置きの部分でビビられると話し辛いな」

「詳しい説明は、今度にするか」


「そうですね」


「今は、俺達の事は連合国クロトの幹部って認識して置いてくれ」

「お前達の良く見る夢だが、それは俺も見た事が有る」

「どこの国か解るか?」


「二人とも日本です」


『こんばんは』

『いい夜ですね』

「証明に成るか?」

「久しぶりにこっちでこの言語を使った」

「お前らの中に、異世界から来た人間が入っているんだ」


「入ってる?!」


「そうだ」


「ただ、夢を見ているだけじゃ無く?」


「夢じゃない、中に入っている奴の記憶を見てるんだ」

「里を出たという事は、百歳を超えてるんだろ?」

「流れ込んで来る情報は映像だけじゃ無い筈だが」

「感情も流れて来ていないか?」


「確かに」

「確かに涙が出て止まらない事が有ります」


「もしかして、まだ誰が入ってきているか、名前とか解らないのか?」


「その部分は、二人とも曖昧です」


「そうか」

「でも、はっきりするのは、時間の問題だ」

「その段階で、この情報を得られたのは運が良かったと言える」

「お前たちには、縁だけじゃない、センスが有る」


「センス?」


「ああ」

「違和感に気付いたろ?」


「レストランでの話ですか?」


「人数が増えてると気づいただけですよ」


「そうです」

「店に入って来る所は見てません」


「入って来る所で見つけるより、入ってしまってから気付く方が、難易度が高い」

謙遜けんそんするな」

「良かったら、道中鍛えてやるぞ」


「上から目線過ぎます」

「本人達から言い出したかもしれないのに」

「急ぎ過ぎです」

「この人、貴方達に見込みが有るから取り込みたいのです」

「自分自身でしっかり考えて下さいね」


「バラすなよ」


だまそうとすると逆効果です」


「ふう、俺が悪かった」

「お前達の自由意思に任せる」


「…………」

「…………」

「その前に、聞いて良いですか?」

「昼間の契約者って何ですか?」

「引っかかります」


「神獣は知っていますか?」


「何を知っていれば解っている事に成ります?」

「解っていない事の多い生き物です」


「ふふ、大体知っていそうです」


「私、付いて行けてない」

「何度も生まれ直す、知性の有る獣、って認識で良いです?」


「その認識で十分だ」


「契約者とは、神獣と一心同体に成る契約をした人間の事だ」


「契約すると、どうなります?」


「寿命が無くなる」

「自分の神獣と心で会話できる」

「神獣を霊体化させて、近くに待機させられる」


「つまり…………?」


「まて、まだある」

「契約すると、異世界から来た人格と融合出来る様になる」


「!?」


「!?」


「融合?」

「どうなるのです?」


「心が解け合って、別の一つの人格に成る」


「ふざけないで下さい!」

「死ぬのと、どう違うのです?」


「さあな」

「死んだ事はまだ無いからな」

「何とも言えないな」


「アリア」

「融合は一旦置いておきましょう」

「つまり、契約すると寿命が長くなるのですよね?」


「違う」

「長くなるどころじゃない」

「無くなる」

「寿命じゃ死なない存在に成る」


「…………」


「…………」


「うそ、ですよね?」


「神獣は死なない、生まれ直すだけだ」

「その神獣と一心同体になる」

「解るか?」


「長く生きる事が出来る肉体だと、精神が先にダメになります」

「それは?」


「有り得るな」

「生きられるだけ生きて行く」

「生き物とはそういう物だ」


「死なない訳じゃ無いのですね?」


「死に救いを求めるな」

「そこにはたぶん、何もない」

「悩みが有るなら、生きて解決しろ」

「死ぬと未解決で終わる」

「その後、どうなったか自分で確認できない」

「その覚悟なら、契約しない方が良い」


「…………」

「貴方は…………」


「トリポリ」

「不安なんだろ?」

「俺がやらかしそうだって」


「その時はぶん殴るだけじゃ済みませんよ」


「ああ」

「二人とも解ったか?」

「契約したら悩み続ける」


「どんなまとめ方ですか!」

「不安に成りました」


「全くです」


「どうせ、融合しろって言いだすんでしょう?」


「解るか?」


「当り前です」


「流れ位読めます」


「実はそうなんだ」


「腹立つ」


「同感」


「ふふ」


「鍛えるってどんな事するんです?」


「おお、釣れた」


「本音が漏れています」


「お前がバラしたんだろ」


「取り繕うのを止めてどうするのです」


「めんどい」


「ゼアス」

「頑張って」


「あのー、いちゃつかないで、質問に答えて下さい」


「結界出せるか?」

「結界を的にして、ひたすら打ち込むんだ」

「いろんな武器で」


「その前に、武器の具現化を教えないと」


「そうだったな」

「まー、一発だな、あんなの」


「…………」

「出来て当たり前と思う事が成功の秘訣です」



 シロさんは私達四人の会話をじっと聞いていた。


 眉間に皺が出来てる。


 機嫌悪いのかな。


 でも、イライラはこっちに向かって来てない。


 心配ない。


 たぶん。


 …………。


 何故か安心感が有る。


 不思議な人だ。



「夜も更けてきた」

「また明日な」

「テント出すからな」

「もう寝ろ」

「今日は気持ちが疲れてるだろ?」

「早めに寝ろ」


 ゼアスは宣言通り、寝床を出した。


 どっかから一瞬で出した。


 手品みたい。


 大きい。


 これって、コテージって言うんじゃないかな?


 中にキッチンが有るし。


 ベッドもばっちり有る。


 私、ここに住めそうなんですけど。


 これをテントと呼ぶのは納得できない。


 トリポリさんが中に入れと促す。


「さ、見張りはゼアスがやります」

「寝ましょうね」



 有無を言わせない圧を感じ、私達は寝た。

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