閑話 出会い 篠宮美弥子

 私は篠宮美弥子。


 十六歳。


 高校一年生。



 そう十六歳。



 去年、黒羽学園高等部に入学するはずだった。


 入学前の健康診断で病気が見つかった。


 病名は、…………。



 それは、いいか。



 とにかく、治療に一年近く掛った。


 学校は休学扱いに成っていた。




 昨年度の三月。


 学生は冬休み。



 私は黒羽学園に登校した。


 授業に必要な教科書の受け取りや、入寮に必要な書類の提出だ。


 それと、寮の私の部屋に届いてる段ボールを片付けないと行けない。


 家具の受け取りも今日やる。



 病気は完治していたが、治療後の検査は有る。


 病気に理解のある先生が担任に成ってくれるらしい。


 私だけ特別に、先にクラス割りが知らされていた。



 先生に挨拶しに行く。


 黒沼直樹という名前らしい。


 職員室に入る。


「黒沼先生はいらっしゃいますか?」


「僕です」


 黒沼先生は手を挙げてくれた。


 先生の席に移動する。


 先生の隣には、生徒が二人いた。


 男子と女子。


「篠宮さんですね?」


「はい」


「初めまして、黒沼直樹です」


「篠宮美弥子です」

「お世話になります」


「こちらこそよろしくね」


 黒沼先生は何故か笑顔だ。


 初対面なのに、随分嬉しそうだった。


 少し不自然な気がした。


「では、書類を」


「はい」

「お願いします」


「うん」

「問題無いですね」

「受け取りました」


「篠宮さん、今日は寮で家具を受け取るんですよね?」


「そうです」

「十四時に予定してます」


「この二人は生徒会役員です」

「二人が手伝います」


「え?」

「いいんですか?」


「俺は二年、黒戸零維世」

「生徒会副会長だ」


「私は黒崎鏡華」

「会長よ」

「貴方と同じ高校一年生」


「ま、まだ生徒大会が終わっていないから、役職は予定ですけどね」


 何故か先生が補足する。


 流石、黒羽学園。


 先生より生徒会役員の方が濃い。


 その時はそう思った。


「ちなみに、僕は生徒会顧問もやっています」


「彼らは、僕の手足なんで、うまく使って下さい」


 二人はその言い方に不満そうだ。


「じゃあ、寮まで案内する」


「あ、場所解ります」


「ふふ、そう思うでしょ?」


「前を歩いてみるか?」


「?」

「良いですけど…………」


 たぶん、学園が広いから迷うって思ってるんだろうな。


 でも大丈夫。


 私、地図をしっかり確認してきた。


 一人でやるつもりだったし。



 十五分後、現在地が解らなくなった。


 え?


 なんで?


「な?」


「ふふ、付いて来て」


「同じような建物が多いんだ」

「始めは大抵どこにいるか解らなくなる」


 えー。


 納得いきません。



「着いたわ」

「ここは見覚え有るわよね?」


「はい」

「ありがとうございます」


「…………」

「どういたしまして」


 間が合った。


 不満そうだ。


「どうしました?」


「お前、硬いぞ」

「同級生だろ」

「もっと砕けてしゃべれって事だ」


 今までのやり取りでそれは無理では?


「まあ、いいわ」

「部屋の荷物を一旦外に出して、家具を入れる準備ね」


「わかりました」

「部屋を開けます」


 部屋の前に移動する。


 部屋の前に若い男が二人いる。


「その子か?」


「そうだ」


「篠宮さん、この二人は俺達の知り合い」

「大学生だ」

「手伝ってくれる」


 ちょっと個人情報に不安を感じるけど、生徒会関係者だし、断れない。


「よろしくお願いします」


「段ボールを一旦外に出そう」

「シートを敷く、十夜そっちの端頼む」



 家具を入れる準備が出来た。


 私は何もしていない。


 あっという間に男子三人がやってくれた。


 まだ十四時まで時間が有る。


「…………」


 副会長が缶コーヒーを投げてきた。


 落としそうになった。


「飲め」


 ?


 何処に有ったんだろう、缶コーヒー。

 温かい。


「クラス割りは見たか?」


「はい」

「それが?」


「お前のクラスに俺の妹がいる」

「仲良くしてやってくれ」


「そう、私の親友」

「私とも仲良くしてね」


「その子、名前はなんと?」


「黒戸美月」


「覚えました」


 四人は顔を見合わせ、笑顔だ。


「テレビを見ないんだよな?」


「確かに、疎いです」


「と、に、か、く、よろしくね」


「美月のセンスからして、貴方はちょっと面白いあだ名をつけられるでしょう」


「何ですか?」

「それ」


「予言」



 私達はその時出会った。

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