15話 神が重すぎるんですけど

黒巣壱白:黒羽学園高等部一年生。

     自分自身の記憶がこの約一週間しか無い。

     四章主人公。

     全ての武道に精通している。

     達人クラス。

     『能力』が有る。

     記憶が無くなる前は『アルタイル』記憶が無くなった後は『シリウス』と呼ばれる。

     『能力』トゥエルブ・サテライト(精鋭六人の鋭い視線)、

     ランプ(煌々と輝く命の灯)、

     スライド(前動作の完全消去)、

     グレイ・フレイム(灰色の終焉)

姫黄青子:黒羽学園高等部一年生。

     類い稀な美人。

     『能力』を持っていない、らしい。

     壱白のビルに匿われている。

     『能力』部隊の隊員。

     管理者。

     終焉が見えない。

黒戸和馬:壱白の執事にして、後見人。

     管理者の中のバランサー・司会進行役。

紫幻唯康:ヤスさんと呼ばれている。

     大学生位の年齢。

     『能力』部隊の隊員。

     『能力』カット(結合との離別)


紫幻忠時:トキさんと呼ばれている。

     『能力』部隊の隊員。

     ヤスの1つ下の弟。

     『能力』ハイ・リフレクション(極大反射)

樹百枝(いつき ももえ):年齢不詳。

             姉役。

             テレパス。

             銀色の理知的な眼鏡を掛けている。

             長い茶色の髪。

             落ち着いた雰囲気がある。

池水雫(いけみず しずく):十五歳。

             サイコメトリスト。

             黒のセミロング。

アイナ=ロニック:事務処理全般担当。

         ボーイッシュなショートカット。

         身のこなしは達人クラス。

         髪は金髪。

長月瑠璃(ながつき るり):トランジスタグラマー。

              顔が小さい。

              童顔。

              『能力』ストレングス(超人の体現)と、

              ヒール(即時自己回復)




 

 状況を整理する。



 神は二人いる。


 いや、和馬を入れると三人か。



 三人いる。



 一人目、青子。


 二人目、和馬。


 三人目、不明。



 不明の三人目が青子を殺そうとしている。


 和馬は中立。


 らしい。



 和馬が封印とやらを行っているにも関わらず、敵が襲撃してきている。


 相手には大まかにこっちの位置が解る。


 こっちには全く手掛かりが無い。



 和馬は、公正な勝負と言っていた。


 これが、公正か?



 辻褄が合わなく無いか?



 不明の三人目から送り込まれている腕の怪物は、邪悪だ。


 『アルタイル』を嬲って楽しんでいた。


 性格が有る。


 喋る。



 戦闘技術はどうか?


 それ程高くは無い。


 気配に疎い。



 そもそも、『能力』には相性が有る。


 同じタイプの敵が十九体。


 …………。



 『アルタイル』は何処まで調べていた?


 今の俺の予想と同じ所まで辿り着いてたか?



 あー、イラつく奴だ。


 『アルタイル』、お前って奴は、本当に腹立つ。




 今日は日曜日。



 だが授業が有る。


 補習だ。


 登校しないといけない。



 朝九時から始まる仮面ラ〇ダーを見たかったのに。



 昨日は夜十時まで書類を処理した後、みんなの部屋を訪ねて回った。


 みんなは和馬の便利さに感心していた。


 神レベルで優秀だからな。


 …………。


 腹立つ。



 とにかく。


 眠い。



 顔を洗って、身支度を整えた。


 制服だ。



 五階のゲストルームに朝食を食べに行く。



 あれ?


 ドアを開けると、複数の気配が有る。


 まだ朝六時三十分なんだが?


「おはよう」


「「「おはよう」」」


「「「おはようございます」」」


 フランクなのが、瑠璃、青子、百枝さん。


 丁寧なのが、和馬、アイナ、シズク。


「ヤスさんとトキさんは?」


「もう食べて、地下で訓練してるらしいわ」


「ふーん」

「お前ら日曜も朝早いのか?」


「一人で食べるのは味気ないだろうから、一緒に食べてやろうかなと思って」


「お前は食事を楽しめない事に疎外感あった筈だろ」


「うるさいわね」

「別にいいでしょ」

「私の勝手です」


「副隊長が本当の事言ってくれて、私、うれしいです」


「…………」


「青子!」

「私もそう思う」


「シズク!」

「でしょ?」


「貴方達が気付いて無いのに私は驚いてたわ」


「百枝さんはそうですよね」


「『能力』関係無しに、バレバレだったけどね」


「瑠璃も、私にはバレてるって解ってたわよね?」


「…………」


「き、今日の朝食は何かしら?」


「そんな、露骨な話の転換あるかよ」


「授業が終わる頃に迎えに行きます」


「百枝さん、ちょっと私に触れて下さい」


「え?」

「和馬、さん」

「何?」


「まあ、まあ」


 和馬はスッと手を前に出した。


 百枝さんは指の先に触れる。


「!?」

「何も読み取れないわ」


「神、ですから」


「青子は駄々洩れなのに」


「百枝さん、内緒ですよ」


「解ってるわ」


「和馬」

「そのアピールの意味は?」


「コンビニで会っていて、ドキドキしました」

「口説いています」


「うっ」

「…………」


 百枝さん……。


 口説きが効いているんだな。


 ……。


 もう放っておこう。



 夕方まで授業を受けた。



 俺の態度は悪い。


 自覚が有る。


 ついに、何か不満が有るなら言ってみろ。


 と、言われた。


 俺は、テストを受けて合格なら追いついた事にしてくれ、と提案した。


 もうすぐ中間テストだが、俺は少し早めにテストを受けることに成った。



 来客用の駐車場に向かう。



 アイナが車の中で、飲み物を飲んでいた。


 俺は助手席のドアを開けた。


 乗り込む。


「何を飲んでるんだ?」


「一杯どうぞ」


 アイナは自分の分を飲み干し、水筒の蓋に液体を注いだ。



 コーヒーだ。


 良い香りがする。


「旨い」


「ブルーマウンテン百%です」

「解り易い美味しさです」


「よく酸味が出ないな」


「焙煎方法と保管方法に工夫が有ります」

「浅くローストして、低温保管し、飲むときに飲む分だけ温めます」


「なるほど」

「水筒にも工夫が有るんだな?」


「その通りです」


「もしかして、少量しか無いのか?」


「ええ」


「手間かけてくれて、ありがとな」


「ふふ」

「では、基地に向かいますね」



 頑張った甲斐が有って、その日のうちに書類が片付いた。


 ほとんどは詳細にまとめがされており、分類も済んでいた。


 俺は内容を理解し、承認するだけで良かった。



 アイナは優秀だ。


 予想通り。



 瑠璃が思いの他、出来る。


 全ての書類に、自分が承認ないし否認した理由のメモが添付されていた。


 非常に丁寧だった。


 わかり易い。


 やはり、副隊長を任されるだけある。


 敵についての感想を聞かせて、意見を聞く気に成った。



 アイナが決裁を急いだ理由も解った。


 基地は、俺達実行部隊の他に、開発部隊もいる。


 書類の停滞は、装備の充実を停滞させる。


 『アルタイル』の発案も停滞するところだった。



 仲間の言う事は素直に聞くに限るな。



 俺のビルに帰って来た。



 遅めの夕飯。


 五階へ向かう。


 やはり、複数人の気配がある。


 実の所、サテライトで全て見えている。


 今夜は全員揃って待っていてくれた。


 律儀な奴らだ。


「ただいま、みんな」


「「「「「「「「おかえりー」」」」」」」」


「和馬」

「お前、これは?」


「百枝さんの好物が寿司との事でしたので、皆さんの了解を取り準備致しました」


「え?」

「つまり?」


「これから解体します」


 中央のでかいテーブルに、マグロが一匹。


 刀の様な包丁での解体が始まった。


「百枝さん、食べたい部位は何処ですか?」


「中トロと中落かな」


「壱白様、宜しいですか?」


「俺に了解を取るな」

「好きにしろ」

「あと、百枝さんにちょっかい掛けるなら、責任取れよ」

「中立のお前が肩入れするなら、安全なんだろうな?」


「百枝さんに関しては了解を取るつもりは有りません、勝手にします」

「当然安全を保障します」


「百枝さん、こいつは優良物件だ」

「もうすぐ億万長者になる」

「イケメン」

「神」


「神が重すぎるんですけど」


「まま、そうおっしゃらず」


「…………」

「神って重いんですね」


「あー、もう一人いたんだった」


「そんな会話有るかい?」


「ねーよ」


「ふふ」


「やれやれだわ」


「さっさと握って下さい」

「お腹減りました」


「では握ります」

「どうぞ」

「赤身の握りです」


 お前、なんでそんなに握るの上手いんだよ。


 思っているほど万能じゃないだと?


 想像以上に万能だろ。



 いい加減にしろ。


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