14話 不意打ち

黒巣壱白:黒羽学園高等部一年生。

     自分自身の記憶がこの約一週間しか無い。

     四章主人公。

     全ての武道に精通している。

     達人クラス。

     『能力』が有る。

     記憶が無くなる前は『アルタイル』記憶が無くなった後は『シリウス』と呼ばれる。

     『能力』トゥエルブ・サテライト(精鋭六人の鋭い視線)、

     ランプ(煌々と輝く命の灯)、

     スライド(前動作の完全消去)、

     グレイ・フレイム(灰色の終焉)

姫黄青子:黒羽学園高等部一年生。

     類い稀な美人。

     『能力』を持っていない、らしい。

     壱白のビルに匿われている。

     『能力』部隊の隊員。

黒戸和馬:壱白の執事にして、後見人。

     管理者の中のバランサー・司会進行役。

紫幻唯康:ヤスさんと呼ばれている。

     大学生位の年齢。

     『能力』部隊の隊員。

     『能力』カット(結合との離別)


紫幻忠時:トキさんと呼ばれている。

     『能力』部隊の隊員。

      ヤスの1つ下の弟。

     『能力』ハイ・リフレクション(極大反射)


樹百枝(いつき ももえ):年齢不詳。

             姉役。

             テレパス。

             銀色の理知的な眼鏡を掛けている。

             長い茶色の髪。

             落ち着いた雰囲気がある。

池水雫(いけみず しずく):15歳。

             サイコメトリスト。

             黒のセミロング。

アイナ=ロニック:事務処理全般担当。

         ボーイッシュなショートカット。

         身のこなしは達人クラス。

         髪は金髪。

長月瑠璃(ながつき るり):トランジスタグラマー。

              顔が小さい。

              童顔。

             『能力』ストレングス(超人の体現)と、

              ヒール(即時自己回復)




 

 俺と瑠璃は自分の足で移動した方が速い、が、目立つ。


 バイクで移動だ。



 免許か?


 たぶん問題ない。


 そんな場合じゃない。


『百枝さん距離は?』


『三キロ先、二体いるわ』

『二人で当たって』


『敵の特徴は?』


『全部同じ、腕の奴よ』


『瑠璃、お前は攻撃を躱せない』

『一撃で片を付けろよ』


『了解』


『索敵範囲はどの位なんだ?』


『半径五十キロ』

『でも半径二十キロまで迫られてるわ』


『今向かっている奴の場所は?』


『黒井川三丁目、七十二の三』


『見つけた』

『俺の視覚を瑠璃に共有させてくれ』


『簡単に言ってくれるわね』


『で?』


『出来るわ』


『瑠璃』

『どう?』


『確認した』

『私の視覚を『シリウス』に』


『了解』


『俺は正面から行く』

『俺が敵に目視されたタイミングで、不意打ちしてくれ』


『了解』


 三キロなんて直だ。


 もう着いた。



 俺はバイクを止めて、『能力』スライドで奴等の後ろから近づく。


 一瞬で一体の真後ろに立った。


 右手で奴の腕を掴んだ。



 怪物は灰になった。



 隣にいた怪物が驚いてこっちを見た。


 こっちを見た瞬間、怪物の頭を何かが突き破った。



 不意打ち成功だ。


 頭を潰された怪物は、ぶくぶくと泡に成って溶けて行く。


 最後はシューシューと音を立てて消えた。



 瑠璃が頭を潰した武器は金属バットの様な鈍器だ。


 怪物は耐久力が半端ない。


 鈍器はひしゃげていた。


「瑠璃、手加減したか?」


「まさか、全力よ」


「武器の予備は?」


「三つ有るけど、無くても行けそうね」


「無くてもって……」


「その辺にある物をぶつけるわ」


「怒られない程度に頼む」

「責任者は俺らしい」


「う、気を付けます」


 脳内に声が響く。


『ヤスが一体倒したわ』

『トキとアイナがもう着く』


『トキさんの視覚を回してくれ』

『俺達は次に何処へ向かう?』


『『シリウス』はそのまま北』

『瑠璃は北西』


『了解』


『了解』


 バイクに乗り込んだタイミングで、トキさんが敵に遭遇した。



 トキさんは堂々と敵に姿を見せていた。


 敵が猛ダッシュしてくる。


 片膝をついて、両手で銃を構える。


 アイナは近くのバイクにまたがって待機。


 落ち着いて見ている。



 トキさんは、大口径のハンドガンの引き金を引いた。


 音は聞こえない。


 反動で両腕が跳ね上がる。


 特別仕様の銃なのだろう。


 弾は明後日の方向に飛んだ、かに見えた。


 怪物は痙攣を起こしている。



 額に穴が開いていた。


 視認できなかったが、弾は三回反射し、加速して、命中したのだろう。


 怪物は蒸発していく。



 完全に消える前に、アイナのバイクに二人乗りし、次に向かう。


『ヤスがもう着く』

『視覚の共有は?』


『頼む』


『了解』


 ヤスさんは、敵に気付かれた様だ。


 攻撃された。


 後ろに躱す。


 ヤスさんには目が無い。


 雰囲気でギリギリ避けている。


『俺の『能力』をヤスさんに繋いでくれ』


『ヤスに確認する』


『…………』

『やるわ』


『吐くなよ』


『わかってる』

『耐えて見せるわ』


 ヤスさんは、無駄の無い動作で腕の攻撃を見切り、敵に迫った。


 焦った敵が、大振り。


 ヤスさんは腕一本を切り落とし、踏み込んで、胴体を払った。


 上半身が滑り落ち、蒸発していく。



 残心。


 反撃は無い。


 ヤスさんは吐いている。


『『能力』の共有を解除してくれ』


『やったわ』

『……』

『貴方、あれを見続けて良く平気ね』


『……』

『俺だってまだ一週間だ』

『平気じゃない』

『次までの距離は?』


『二キロ』

『移動してる』

『民家の上よ』


『バイクを止めて追う』


『場所は?』


『北噛町、九の八の二』

『位置を覚えてるの?』


『そうらしい』

『聞くと思い浮かぶ』

『サテライトが先に着いた』

『視覚はいるか?』


『一応共有するわ』


『着いた』


 後ろから、音なく近づき、首を掴んだ。


 灰になる。


『瑠璃が一体仕留めたわ』

『トキとアイナは今戦ってる』


『次に、瑠璃が戦闘する時と、ヤスさんが戦闘する時に声を掛けてくれ』


『トキさんとアイナは遠距離攻撃出来る』

『問題無いだろ』


『了解』


 敵は順調に片付いている。


 波乱は起きそうに無い。


『瑠璃が着いたわ』


『繋いでくれ』

『あ、もう片付いた』

『……』


『どうした?』

『歯切れ悪いな』

『何か有ったか?』


『大した事じゃないわ』

『先に気付かれた瑠璃が、コンビニに止まっていたデコトラを投げたのよ』


『……』

『瑠璃に怪我は?』


『無いわ』


『敵は?』


『反応が無くなったわ』


『瑠璃と繋げられるか?』


『どうぞ』


『瑠璃』

『デコトラの運転手に連絡を受ける様伝えてくれ』

『うちの隊の予算で賄えるか?』

『問題が有れば俺が出すぞ』


『アイナに確認するわ』



 その後、敵を順調に処理し、作戦は終了した。



 全員が会議室に戻ってきた。


「やれやれだぜ」


「はー、疲れたね」


「デコトラって幾らするの?」


「瑠璃さんが投げたのは、七百万円らしいです」


「経費で落ちる?」


「落ちます」

「チタン合金製のメイスと同じような値段です」

「迷惑料が余計に掛かりますが、許容範囲です」


「そう、良かった」


「和馬、食事の用意は?」


「まだです」

「ここにいるのに出来ませんよ」

「私は神様じゃ無いんです」


「…………」


「食事を気にする前に、することが有ります」


「解ってるさ」


「俺の執務机とか無いのか?」


「有るわ」

「私たちのデスクに行きましょ」



 デスクに着いた。


 あ、俺の机が解った。


 偉そうな位置に、書類の積み上がった机が有る。


「アイナ、書類を片付けるのに必要な人員は?」


「私が補佐すれば十分でしょう」


「そうか」

「みんな先に帰ってくれ」

「和馬」

「先に帰ってみんなの世話だ」


「承知致しました」


「まって!」

「みんな、私の為にありがとうございます」


「実を言うとね、みんな薄々気付いてたの」

「だから、気にしないで」


「シズク……」


 青子はシズクに抱き着いた。


「青子」

「勝つ方法を模索する」

「ガッツリ訓練もするからな」

「そのつもりでな」


「僕らは今まで通り、青子を鍛えるだけだね」


「そうね」

「励んでもらうわ」


「ビルの地下に、射撃訓練場が有るんだろ?」

「さっそくやろうぜ」


「貴方は射撃したいだけじゃない」


「じゃあ、先に帰って、食べててくれ」

「アイナ、足は有るか?」


「自家用車で来ました」

「送ります」

「車を停める所も有ります?」


「地下に車庫が有る」

「問題ない」


 その日は夜十時頃まで書類とにらめっこした。

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