10話 シリウス
黒巣壱白:黒羽学園高等部一年生。
自分自身の記憶がこの約一週間しか無い。
四章主人公。
全ての武道に精通している。
達人クラス。
『能力』が有る。
記憶が無くなる前は『アルタイル』と呼ばれる。
『能力』トゥエルブ・サテライト(精鋭六人の鋭い視線)、
ランプ(煌々と輝く命の灯)、
スライド(前動作の完全消去)、
グレイ・フレイム(灰色の終焉)
姫黄青子:黒羽学園高等部一年生。
類い稀な美人。
『能力』を持っていない、らしい。
壱白のビルに匿われている。
『能力』部隊の隊員。
黒戸和馬:壱白の執事にして、後見人。
出来過ぎる男。
紫幻唯康:ヤスさんと呼ばれている。
大学生位の年齢。
『能力』部隊の隊員。
『能力』カット(結合との離別)
紫幻忠時:トキさんと呼ばれている。
『能力』部隊の隊員。
ヤスの1つ下の弟。
『能力』ハイ・リフレクション(極大反射)
車は山道の中を進んでいる。
青い金属の門の前で車は止まった。
「俺が開けて来る」
「ああ、頼んだ」
トキさんは門を開けて、車が中に入るのを待っている。
車が中に入る。
トキさんは門を閉めた。
車に乗り込む。
「もうすぐ着くよ」
門の先は原っぱが広がっていた。
遮るものが何もない。
遠くに小さく、建物が見えていた。
あれか。
近づくと解ってきた。
小さく見えていたが、近づくと、デカい。
かなり大掛かりな施設だ。
地下に向かって、大きな通路が伸びている。
駐車場は地下らしい。
地下三階に車を停めた。
「さあ、到着だ」
「ヤスさん運転お疲れ様」
「『アルタイル』の足になるのは当然さ」
「労いの言葉は必要無いんだけどね」
「そう言われてもな」
「俺には『アルタイル』の記憶は無い」
「言わないと気持ち悪い」
「『アルタイル』と今の俺を区別するため、別の呼び名でも考えるかな」
駐車場から建物の中に入る。
入ってすぐに、ボディチェックと手荷物検査を受けた。
俺はショルダーバッグを預けた。
まさか、検査されるとは。
危険な物を持って来なくて良かった。
俺のビルの地下には、射撃訓練場が有る。
拳銃所持の許可は貰ってるんだろうが、所持して良い場合の条件が解らない。
副隊長に会ったら、確認しておかないとな。
全身を調べる為のセンサーを何回もくぐる。
たぶん入出国する時より、厳重だ。
ヤスさんは刀。
トキさんはライフルとハンドガンを持ち込んでいる。
説明に時間は掛からない。
二人は検査員と顔見知りらしい。
検査を受けた先に、女性が四人待っていた。
「お待たせ」
「遅いわよ」
遅いと言った彼女は、俺の方を見ない。
視線が俺を避けていた。
「食堂とか、有るか?」
「紹介はそこでしてくれ」
「解ったぜ」
「シズク、ただいま」
「おかえり、青子」
シズクと呼ばれた女性は、俺や青子と同じ年くらいだ。
黒のセミロング。
「ちょっと聞きたい事が有るんだけど…………」
「百枝さん、食堂じゃダメです?」
「ダメ」
「なんで彼とペアルックなのよ」
「た、たまたまです」
「偶然、色が被ってしまって……」
「そう、そうよね」
「瑠璃」
「偶然だからね」
「なんで私に言うのよ」
「関係ないわよ」
「そのような挨拶は、食堂に行ってからの方がよろしいかと……」
「お、アイナまで居るのか」
「今日は土曜日だぞ」
「『アルタイル』が見つかったと聞いて、来てしまいました」
「是非、決裁をお願いしたく……」
百枝と呼ばれた女性は、明るい茶色のウエーブした長い髪。
銀色の理知的な眼鏡を掛けている。
百枝は年齢不詳だ。
だが、落ち着いた雰囲気がある。
姉役って感じだな。
ツンツンした発言の瑠璃が、副隊長なのだろう。
背が低いが、起伏の激しい体型。
トランジスタグラマーという奴だ。
顔が小さい。
童顔。
髪を後ろで束ねている。
そしてもう一人いる。
日本人では無さそうだ。
アイナと呼ばれている。
決裁がどうと言っている。
事務処理担当だろうか?
ボーイッシュなショートカットだ。
身のこなしは達人クラス。
髪は金髪。
人数的に、一人は『能力』を使えない。
たぶんアイナが使えないのだろう。
自己紹介してもらう前に、大体の予想が着いた。
瑠璃が副隊長で、アイナが事務員なら、シズクと百枝さんがサイコメトリストとテレパスだろう。
「じゃあ移動しよう」
ヤスさんを先頭に、八人が移動する。
一階まで移動した。
「先に注文を済ませようか?」
「そうね。」
トキさんは、ハンバーグ定食。
ヤスさんは、チキン南蛮定食。
青子は、オムライス。
瑠璃は、スパゲティーミートソース。
百枝さんは、きつねうどん。
シズクは、マカロニグラタン。
アイナは、醤油ラーメン。
みんなが俺をじっと見ている。
青子だけは気付いていない。
「俺はいつも同じのを頼んでいたんじゃ無いか?」
「そう、そうだね」
「当ててやろうか?」
「解るのかい?」
「カレーだろ?」
「……」
「正解よ」
瑠璃は泣きそうだ。
「真面目な奴だったみたいだからな」
「食事を味わったりしてなかったろ?」
「だな」
「今の俺は、何頼むかな」
「カレーも良いな」
「カツカレー大盛りあるか?」
「ありますよ」
「じゃ、それで頼む」
備え付けのタブレットにトキさんが入力した。
「自己紹介を頼みたいんだが、まずは俺からする」
「本名は、黒巣壱白」
「高校一年生」
「黒羽学園高等部に通っている」
「連絡を絶っていた間に大怪我して、記憶喪失になった」
「記憶が無いのは、『能力』を得る為の対価に使ったからだろう」
「もう、記憶は戻らない」
「悪いな」
四人は唖然としている。
だが続ける。
「今まで通り『アルタイル』と呼ばれると区別がややこしい」
「『シリウス』と呼んでくれ」
「チームは八人みたいだしな」
「解ったわ」
「『シリウス』」
「話し方に気を使わなくて良いのよね?」
「私は、樹百枝(いつき ももえ)よ」
「『能力』はテレパス」
「階級はヤス、トキ、瑠璃と同じ」
「年齢は、一番年上かな」
「次は私ですね」
「池水雫(いけみず しずく)」
「十五歳」
「高校には行ってません」
「サイコメトリストです」
「百枝さんの部下です」
「アイナ=ロニックです」
「事務処理全般を担当しています」
「階級は、ヤスさん、トキさん、瑠璃さんより下ですが、シズクさん、青子さんより上です」
「最後は私ね」
「長月瑠璃(ながつき るり)よ」
「『能力』は、ストレングス(超人の体現)と、ヒール(即時自己回復)」
「簡単に言うと、身体能力向上と超回復ね」
「怪力を出す為の、体の頑丈さも『能力』で向上しているわ」
「代償は…………」
「いや、言わなくていい」
「みんなに内緒にしてたんじゃ無いのか?」
想像付いてる。
驚いた顔をするなよ。
「代償は、味覚と嗅覚」
みんなは驚いてる。
言う通りにしろよ。
正直に言う必要無いだろ。
馬鹿か?
腹立ってきた。
「気を遣わせないために、今まで演技してたんだけど……」
「一番知られたくない奴にバレてたみたい……」
「笑っちゃうわ」
「……」
「俺は嘘をつくのが上手いな」
「香水は俺の好みだろ?」
「俺は、その匂いが好きと言ったんじゃ無いか?」
「ふふ」
「そうね」
「匂い、きつかった?」
「いや、俺の部屋にストックが有った」
「匂いの強さはちょうど良い」
「俺の好みの匂いだ」
「ストックが有った理由は、お前が忘れた時の為だろうな」
「俺が持っているどの鞄にも小さいのが入っていた」
「気付いたのは、表情からだ」
「食事が楽しそうじゃないのは、見ていて辛い」
「食事が辛いなら、栄養ゼリーとかで良いぞ」
「無理すんな」
「気付いてた、か……」
「カレーしか食べない筈ね」
泣いているんじゃねえ。
代償が、味覚だと?
ふざけやがって。
女性から味覚を奪ったんだ、さぞかし強力な『能力』なんだろうよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます