9話 副隊長
黒巣壱白:黒羽学園高等部一年生。
自分自身の記憶がこの約一週間しか無い。
四章主人公。
全ての武道に精通している。
達人クラス。
『能力』が有る。
記憶が無くなる前は『アルタイル』と呼ばれる。
『能力』トゥエルブ・サテライト(精鋭六人の鋭い視線)、
ランプ(煌々と輝く命の灯)、
スライド(前動作の完全消去)、
グレイ・フレイム(灰色の終焉)
姫黄青子:黒羽学園高等部一年生。
類い稀な美人。
『能力』を持っていない、らしい。
壱白のビルに匿われている。
『能力』部隊の隊員。
黒戸和馬:壱白の執事にして、後見人。
出来過ぎる男。
紫幻唯康:ヤスさんと呼ばれている。
大学生位の年齢。
『能力』部隊の隊員。
紫幻忠時:トキさんと呼ばれている。
『能力』部隊の隊員。
ヤスの1つ下の弟。
全員ホットコーヒーだ。
今日は何故か肌寒い。
俺はブラック。
青子はミルク。
ヤスさんとトキさんは砂糖を入れている。
「苦いのは嫌いだと思ってたんだけどね」
「さあな」
「味の好みも変わっているかもな」
「俺の好物を知っていたのか?」
「いや、打ち解けた会話は少なかったな」
「副隊長なら知ってるかもね」
「何故だ?」
「『アルタイル』が小学生くらいの時からコンビを組んでたらしいよ」
「そうなんですね」
「副隊長と僕、トキは彼女と階級が同じなんだ」
「ふーん」
「副隊長は女性か」
「何も思い出さないかい?」
「悪いが、たぶん対価に使ったんだ」
「思い出すのは無理だろう」
「…………」
「そうだね」
「次は僕の『能力』を話そう」
「カット(結合との離別)」
「刃物を使って、僕が切る動作を行うと、どんな物質も切断できる」
「ダイヤモンドの三倍の硬さのカルビンも易々と切断できた」
「この世に存在する物で切断できない物は無いね」
「なるほど」
「強力だ」
「バターナイフでも、ダイヤを切断できるという事だろ?」
「その通りだよ」
「じゃ、次は俺だな」
「ハイ・リフレクション(極大反射)」
「空間に八角形の見えない板を展開し、板に何かがぶつかった場合、倍の力で反射する」
「どんな衝撃でも板は壊れない」
「アンチマテリアルライフルの弾も倍速で反射する」
「ふーむ」
「板は何枚まで出せる?」
「三枚までだな」
「アンチマテリアルライフルでも三回目の反射に耐えられたか?」
「無論だ」
「どんな衝撃を与えても板が割れた事は無い」
「文句なく、強力だ」
「どうだい?」
「意外と役に立ちそうだろう?」
「ああ、侮って悪かったな」
「本当は、『能力』部隊を三チーム作って、それを『アルタイル』が率いる手筈だったんだぜ」
「そうなんだ」
「僕たち兄弟もサブリーダーの筈だったんだ」
「『アルタイル』が部下を厳選し過ぎて人員が足りてないんだ」
「全員と連携を取れる実力が必要だったんだろ」
「お前達の『能力』は把握した」
「俺を、基地に案内してくれ」
「他の細かい話は移動中に行う」
「…………」
「駅前の駐車場に車がある」
「ついて来てくれ」
俺達は店を出て、歩き出した。
「それにしても、青子、『アルタイル』と付き合い出したのか?」
「え?」
「何でですか?」
「どう見てもペアルックだろ」
「たまたま、色の好みが一緒だったんだ」
「そう、たまたまなんです」
「同じブランド品が複数あるようだけど…………」
「出会ってまだ間がない」
「髪を切るのが精々だ」
「まー、確かにね」
「副隊長がなんて言うかだね」
「あーそうか」
「わー」
「どうしましょう?」
「好みが一緒だから、永遠にかぶるぞ」
「諦めろ」
「そ、そういう問題じゃ無いのよ」
「お前ら、副隊長がそんなに気に成るか?」
「なるね」
「なるさ」
「なるに決まってるわ」
「いいかい」
「君は妄信されている」
「彼女は狂信者だ」
「さっき彼女は泣いていた」
「君が見つかった喜びで、泣いてたんだ」
う、ちょっと会うのが怖くなってきた。
「絶対に冷たくするなよ」
「傷つきやすい」
「そして意地っ張りだね」
「簡単に言うとね、ツンデレなの」
「だね」
「だな」
「狂信者なのにツンデレって、めんどくせーな」
「それ、一番言ったらダメな奴だからね」
「まー、心配ないとは思うけどな」
「そうなんだけどね」
「ですね」
「なんでだ?」
「悪いが、俺は思った事はストレートに言うぞ」
「かわいいのよ」
「は?」
「非常に、庇護欲をそそられてしまうんだ」
「俺も怒れなくて困ってるぜ」
「精神操作系『能力』か?」
「彼女はバリバリの脳筋だ」
「だね」
「そうですね」
「大体力任せですね」
「抱きしめたいって言われたら、俺が抱きしめるよって言わないと、潰されるわよ」
「いや、待ってくれ」
「どんな奴か全く想像できない」
「この車だ」
「さあ、乗ってくれ」
「運転は僕がするよ」
「片手で運転出来るのか?」
「問題ないね」
「特注車だしね」
「確かに見た事無い車だ」
「一見SUVだけど、防弾処理されてるんだ」
「ナンバーは軍用車両だったな」
「そういう事さ」
「少し、街から離れるよ」
「お昼ご飯は基地で食べよう」
「今からだと、遅めのお昼になりそうですね」
「副隊長に、段取りを簡単にメールしておくぜ」
車は駅前から離れて行く。
だんだんと景色が田舎に成っていく。
確認事項はそんなに無かった。
話題が尽きてしまった。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「何かしゃべって下さいよ」
「そう言われてもなー」
「青子、共通の話題に心当たりないか?」
「んー、そうだ」
「『アルタイル』はF〇Oやってました」
「マジでか?」
「流石『アルタイル』だね」
「黒巣君も引き継いでF〇Oやってます」
「お金の掛け方は私と同じ位でした」
「俺達と同じ位か」
「テンション上がるなー」
「だねー」
「誰かに聖杯を捧げてるかい?」
俺も楽しくなってきた。
この移動はあっという間に済んでしまうだろう。
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