27話 生き残るため

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           守護者。

           閑話に登場。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

            黒沢香織。

            大学生。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。




 

 転送装置の先はいつも通りだった。


 今回は体力に余裕が有る。


 次に来るのは誰か?


 しばらく待つ。



 五分後。


 フレドが出てきた。


「ハァ、ハァ」

「王」

「待たせたな」


 フレドは左腕が無かった。


 止血はされている様だ。


「話せるか?」


「済まない、休憩させてくれ」


「ああ、解った」

「眠れ」


 フレドは寝袋を出して寝た。



 五分後。


 ファガスが出てきた。


「到着」


「ようこそ」

「九十階層中間地点だ」


「レイセ、余裕だな」

「流石だ」


「まあ、な」


「なんだ、フレドは寝てるのか?」


「ああ、左腕が無い」


「ふー、何やってんだよ」

「今回は余裕だったぞ」


「そう言うな」

「あれはコツがいるからな」


「しかしな」


「ファガス、あんた厳しいぜ」


「フレド、起きたのか」


「そんな話されると眠れないぜ」


「…………、悪かったな」


「わかってくれて良かった」

「済まないが、眠る」


「わかった」

「説教は後でな」


「全然わかってねーじゃねーか」

「まあ、寝るよ」


「次は誰だ?」


「ボーデンだ」



「やれやれ、やっと着きました」


「うん」

「ボーデン歓迎するぞ」


「ファガス、貴方には嫌われていると思ってました」


「嫌ってはいない」

「ちょっと応対が苦手なだけだ」

「好感は持ってる」


「意外です」


「その分だと、余裕が有るようだな」


「私は、意外と素直な性格をしていたようです」


「どういう事だ?」


「『ファイヤーボール』の熱線で切り裂いたら、奴は復元出来ませんでした」

「一撃です」


「なるほどな」

「存在感に負荷を与える事が自然に出来たんだな」


「そのようです」


「休憩の必要は無さそうだな」


「ですね」


「だと思った」


「俺とトランプするか?」


「え?」

「そっちの方が疲れそうです」



 プロミが青い光から出てきた。


 髪を掻き揚げている。


 今日は髪をくくっていない。


 プロミは機嫌が良いと髪を触る。


 上手く行ったんだろう。


「順調の様ね」


「ですね」


「直にリビアが来るわ」


「次はリビアか」


「レイセ」

「また何か作ってよ」


「いいぞ」

「何が良い?」


「グラタンが食べたいわ」


「また、手間のかかる奴だな」


「良いじゃない、リビアはホワイトソース好きよ」


「お前もだろ」


「どうだったかしら」


「材料は有る」

「機嫌が良いからやってやる」


「そう来なくっちゃ」



 リビアが出てきた。


「みんな揃っています?」


「揃ってるぞ」

「後はコナルだけだ」


「それは良かったです」

「今回は楽でした」


「存在感に負荷を与えるイメージが掴めたんだな?」


「わかりませんが、攻撃を加えたあと、再生しなくなりました」


「リビア、それで良いんだ」


「ありがとうレイセ」

「何を作っているのです?」


「マカロニグラタンだ」

「え?!」

「ソース多目でお願いします」


「ん」

「プロミのリクエストだぞ」


「ふふ、プロミはわかっています」


「でしょ?」


「ええ」

「後で御礼に洗髪しましょうか?」

「コナルに水魔法を使って貰います」

「プロミは洗髪好きでしょう?」


「ええ、ありがとうリビア」


「私、洗髪マッサージ得意です」


「うん、いつも気持ちいいわ」



「よし、着いた」


 コナルは左足を引きずっている。

 左足首から先が部分融合に成っている。


「ふう、油断した」


「みたいだな」


「面目ない」

「相打ちみたいになった」


「奴に留めさした時に左足が風の壁に触れてしまった」

「めっちゃ痛かった」


「レイセ」

「お前自分で右腕切り落としたんだったな」


「今さらその話か」


「必死だったから出来たんだ」

「お前もだろ?」


「まあ、そうなんだけど」


「コナル、睡眠の必要は?」


「特に無いな」


「そうか、食事の準備が整う迄待っててくれ」


「ああ、わかった、楽しみだ」



 そろそろ、長めの休憩が必要だ。


 緊張感を一旦区切り、リラックスする必要がある。


 俺は皆に酒を薦めた。


 フレドも起きて酒を飲んでいる。


 サンドブレイブスピリットを持って来た。


 みんな夢中になっている。


 俺も飲みながら料理だ。


 もう旨味しか感じない。



 旨い。



 グラタンには、マカロニ以外に、エビ、ホタテ、イカ、鶏肉、玉ねぎ、ジャガイモ、ブロッコリーが入っている。


 具材は小さめ。


 ソースをバター多目で作って、チーズをふんだんに振りかけた。


 量はレストランなんかの二倍だ。


 業務用の魔道具で七人分一気に焼き上げた。


 酒は白ワインが合うはずだ。


 みんなサンドブレイブスピリットを飲んでいるが。



 チン。


 という音が鳴った。


 出来た。


「熱いから気を付けろよ」


「レイセ」

「御代わりある?」


「コナル、食べてから気にしろ」

「だが、あるある」

「じゃんじゃん食べろ」


「みんなも、遠慮するな」


 言っておくが、机とかイスとかも空間から出してくつろいでいるからな。


 みんなは食べながらしゃべっている。


「しかし、理魔法めっちゃ便利だな」


「だな」

「何でも有りになった」


「レイセ、お前やっぱ異常だわ」


「ホントだぜ」

「流石王」


「誉め言葉と受け取っておこう」

「しかし、王か」

「ここらでまた意識改革だな」

「フレド、ボーデン」


「なんだよ」


「なんです?」


「俺の事、王って呼ぶの禁止」

「プロミとリビアにも様って付けるな」


「それな!」


「前から思っていました」


「違和感は合ったな」


「そうね」


「俺に違和感は無かったんだが……」


「同じく」


「ダンジョン攻略が終わってからではダメですか?」


「ダメだ」


「ボーデン、弱ったな」


「フレド、ですね」


「なんか照れくさいから、反応するなよ?」


「フレド、それ言うと逆に意識してしゃべれなくなる」


「ボーデンわりぃ」


「わかった」

「ノーリアクションを俺が約束する」


「みんな頼むぞ」




「フレド、存在感に負荷を与えるイメージは掴めたか?」


「問題ないぜ」


「なら、何故左腕を失った?」


「それな」

「俺はナンバーツーらしいからな」

「検証に使った」

「あんたの話を簡単に鵜呑みにする事が出来ないからな」


「なるほど」

「で?」

「何を試したんだ?」


「攻撃が通る事を試して確認出来たから、後にやる事は一つだろう?」


「自分に攻撃が通るか試したのか!?」


「そうだ」

「一応誰かやらないとだろ?」


「まあ、そうだが」

「どんな感覚だった?」


「武器で攻撃されたと自身が認識してしまったら、ダメージを受けてしまう様だ」


「すべてはどう認識するかに掛かってる」

「攻撃を受け流すことも理屈上は出来そうだった」

「俺には無理だったが」


「うーん」

「やはりな」

「よほどイメージに自信が無ければダメージを受けてしまうだろうな」


「だぜ」

「難易度が高い」


「フレド、助かった」

「俺は自分が例外に成り得るとわかってるからな」

「他人の実例が欲しかった」


「は、つまり、あんたは自分だけ出来る場合が有ると思ってるんだな?」


「そうだ」

「悪いか?」


「いや、あんたらしいぜ」


「話が変わるが、左腕の部分融合は上手く行きそうか?」


「上手く行くね」

「実は道中四本腕で戦ってた」

「問題無い筈だ」


「フレドの左腕は油断からじゃ無かったのか」

「済まなかったな」


「ファガス」

「気にしないでくれ」


「油断は俺だけか」


「そうよ」

「コナル、気を付けて」


「わかってたんだけどなー」



「じゃ、様子見て来る」


「ええ、気を付けて」


「たぶん次は火だ」

「場合によっては戻る事が出来ない可能性もある」

「五分経って戻らなければ、進んでくれ」


「みんな、無理するなよ」


「じゃ、行ってくる」



 溶岩の海が割れている。


 溶岩の海の中央に細い道が出来ている。


 溶岩の表面は炎を纏っている。


 熱気が凄い。


 触って確かめようという気が起きない。


 絶対に触れてはだめだ。


 見ているだけで汗が噴き出る。




 まず十メートルだ。


 炎人が出た。


 大剣を振るってくる。


 めちゃくちゃデカい大剣だ。


 左右の溶岩に触れても関係なしに、振るってくる。




 受けたらダメだ。


 質量が有りすぎる。


 受けたら反動で左右の炎壁に触ってしまう。


 ここはゴリ押しだ。


 さっさと力ずくで倒さないと、いずれ炎壁に触ってしまう。


 俺は強く輝く槍で奴の大剣ごと貫いた。


 存在感ごと貫いている。


 修復出来ない。


 連続で穴を穿うがつ。




 何故か、ふと、背後が気に成った。


 大剣を振り上げた炎人が立っていた。


 俺はとっさに躱した。




 炎人の後ろにもう一人見える。


 進んだ方が良さそうだ。


 前方に出来かけの炎人が見える。


 出来切る前に槍を突き入れる。




 後ろから二体追ってくる。


 いや、二体じゃない。


 もっと複数だ。


 次々と気配が増えていく。



 前方に出来かけている炎人を消滅させながら、猛スピードで進む。


 立ち止まっていては囲まれる。



 やはり、今回は戻れない。


 とにかく前に進む。



 ふぅ、ふぅ。


 ついに前方に炎人が出来てしまった。


 後ろの炎人を躱しつつ、前の炎人を消滅させる。


 わらわら沸いて出て来る。


 大剣は隙が大きい。


 俺にはすでに、急所に一撃入れれば仕留められるイメージが出来ていた。


 双剣を使い、間合いを詰めて、早々にほうむる。


 どんどん行く。


 流れ出る汗がうっとおしい。




 ふう。


 なんとか抜けた。


 三日掛った。


 今回は一階層少ない。


 九十九階層に降りたら、炎人が消滅した。


 百階層はやはり特別らしい。


 今回はかなりハードだった。



 みんなは無事に来られるだろうか?


 ちょっと不安だ。



 転送装置に入る。


 抜けた先はいつもの光景とは少し違っていた。


 二十畳くらいの円筒形は変わらないが、細い通路の代わりに、デカい扉がそびえていた。


 あれは、あの扉は見たことがある。


 通ると完全に閉じる奴だ。


 いよいよ最終試練か?


 次に備えるために、今は眠ろう。


 先が見えてきた。


 熟睡してやる。





 寝た。


 めちゃくちゃ寝た。


 周りを見渡して、全員揃っているのを確認し、また寝た。


 二度寝だ。


 三徹とか、徹夜を連続でやったらダメだろ。


 眠るというか、ほぼ気絶だ。


 睡眠不足で死ぬ。


 寝溜めとか無理だ。


 気絶が始まるとヤバい。


 洒落にならない。


 どんどん休憩が長くなるが、無理は禁物だ。


 徹夜は一線を越えている。


 三徹なぞもっての他だ。


 本来なら訓練の時みたいに時間が来たらピタッと切り上げたい。


 無理だが。


 とにかく睡眠が必要だ。


 気絶が始まってしまった。


 判断能力が鈍って戦闘に成らなくなる。


 寝て回復しないと、取り返しがつかなくなる。


 もう一回寝る。


 生き残るためだ。

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