25話 倒せる

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           守護者。

           閑話に登場。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

            黒沢香織。

            大学生。




 

「王、あんた本当に料理出来るんだな」


「まあな」


「匂いで目が覚めました」


「良い匂いで起きれて良かったわ」


「ふふ、ですね」


「レイセ、早く食わせてくれ」


「腹減った」


「王の手料理とは……」

「光栄です」


「ボーデン、今更畏まるなよ」


 俺は空間から器とスプーンを取り出して、みんなに配った。


 そうだ、シチューをすくうオタマがいるんだったな。


 それも出す。


「好きなだけ入れて食ってくれ」

「味が薄かったら言ってくれよ」

「調整する」


 みんな順番に掬って配っていく。


「もう食べても良いですか?」


 リビアはクリームシチョー好きだなー。


「はは、遠慮せずに食べてくれ」

「熱いから、気を付けろよ」


「オカンか」


「それで、どう思う?」


「レイセ、何が?」


「ここは七十階層だと思うか?」


「思うわね」

「じゃ無いとやってられないわ」


「だな」


「あえて言わせて頂きますが、めちゃくちゃキツかったです」


「うん」

「諦めそうになったな」


「六十九階層で強く成りやがって」

「笑うわ」


「私は一回で行けましたよ」


「あら、リビア強気ね」


「プロミも一回で行けたんじゃ無いですか?」


「まあ、そうなんだけど」


「あんたら、ちょっと腹立つな」


「俺は二回水に触れて戻された」


「同じく」


「俺も」


「俺もだ」


「俺も様子を見に行った時に一回戻されてる」

「コツとか有ったか?」


「一番効率が良かったのは、光を放出して、一気に数メートル稼ぐやり方ですね」


「あ、私もそんな感じ」


「気付いたのが後半だったのが悔やまれます」


「なるほどな」


 光を放出して押し出すか、盲点だった。



 俺もシチューを食べておくか。


 よそおうとすると、プロミが俺の器を受け取る。


 やってくれるらしい。


「ありがとう」


「どういたしまして」


 リビアがこっちを見ている。


 リビアは、プロミから俺の器を受け取った。


 食べさせてくれるらしい。


「レイセ」

「あーん」


 俺は食べた。


 少し照れくさい。


 絶妙に冷ましてある。


「ありがとう」

「急にどうしたんだ?」


「端的に言うと、妬けました」

「攻略はまだまだ続きます」

「やっとか無いと後悔して集中出来ません」


「ちょっと、リビアやめてよね」

「私まで変な気分になるじゃない」


「変な気分って、私はそこまで言ってませんよ」


「いや、待ってくれ、気不味いのは俺達の方だぜ」


「そうだ、フレド、よく言った」


「くっ、リアンナ」


「ファガスの具合が悪くなります」

「見せつけるのはその位にしてください」



「みんな食事は済んだか?」


「ああ」


「次は行く順番を変える」

「俺が様子を見てからになるが、俺、プロミ、リビアは最後だ」


「は、そう来たか」


「真剣にやれよ」


「うっさい」

「切実な問題だ」


「仕方無いですね」


「リアンナ」

「…………」


「俺もピナンナに会てー」


「良し、じゃ、俺様子見て来るわ」


 俺は軽い感じで転送装置に入った。




 目に映ったのは、砂の壁だ。


 砂の海が細い通路で割れている。


 六十一階層から七十階層までの水がそのまま砂に変わった光景だ。


 少し進むと、たぶん砂人が出てくるんだろうな。




 左右の砂は俺の後ろに向かって、すさまじい速さで流れている。


 水の時と同じだ。


 たぶん水より砂の方が重い。


 触った時の衝撃は水の時より増えてそうだ。


 一応触って確かめないとな。


 俺は右手で右の砂壁に触れた。


 体ごと数メートル後ろに弾き飛ばされ、転送装置の屋根にぶつかる所だった。




 やはりだ。


 後は、砂人と戦わないとな。


 俺は十メートル進んだ。


 空中に砂の塊が出来た。


 砂は人型になる。


 やっぱり出やがった。


 サイズは二メートル程。


 両手にメイスを持っている。


 砂の流れで加速した攻撃が連続で放たれる。


 重い。


 攻撃の加速度が大きくなっている。


 だとしても、水の時の焼き直しだ。


 行ける筈。


 様子見で一階層は進む。




 きっちり、八時間で一階層降りた。


 やれる。


 今の所は、だが。


 急に強く成ったりしやがるからな、油断は出来ない。


 今の所は、だ。


 確認が済んだ。


 戻ろう。



「ただいま」


「お帰り」

「どうでした?」


「水が砂に変わっていた」


「…………」


「水の時とほぼ同じって事?」


「そうだな」

「同じ方向性だ」

「少し休んで良いか?」


「だな」

「休んでくれ」


 俺は毛布に包まって眠った。




 話し声が聞こえる。


「俺はまだピナンナと結婚式を挙げてない」

「攻略が終わったら、結婚する」


「俺も攻略が終わったら、リアンナと結婚する」


「私も実は付き合っている人がいまして、結婚を考えています」


「コナル、近衛兵四人組と仲いいわよね?」

「あの中の誰かと付き合う気無いの?」


「え?」

「何で?」

「そういうんじゃ無いと思うけど」


「コナルはコナルですね」


「お前ら、なんて不吉な会話してるんだ」


「あえて、死亡フラグを立てるらしいです」

「正確な意味は良くわかりませんが、なんとなく面白くて」


「そうか、言いたい事が解った」

「俺は攻略が終わったら結婚式を挙げる」


「それはいつも聞いてるから新鮮味に欠けるな」


「なら、俺は神に成るってのは言ったか?」


「は?」

「そんなの始めて聞いた」

「あんたプロミみたいに宗教やる気か?」


「違う」

「現人神じゃない」

「今、何人か神がいるとしたら、そのどれかと入れ替わる」


「レイセ」

「お前、ヤバいからその位にしておいてくれ」


「せっかく打ち明けたのに連れないな」


「あんたのは種類がちょっと違う気がするんだが」


「まあな」

「俺の休憩は済んだぞ」

「誰から行く?」


「コナル、ファガス、俺、ボーデン、プロミ、リビア、クロト王の順に決まったぞ」


「何の順番なんだ?」


「結婚の遅い順」


「認めるしか無いんだよな」

「早速行ってくる」


「ああ、コナル、絶対死ぬなよ」

「無理なら戻って来い」


「解ってる」

「まあ、行けるだろ」


「そうだな」

「行ける」


「じゃあ、お先」


 コナルは青い光の中に入った。



 五分経った。


 戻ってこない。



 緊張感が漂っている。


 ファガスが光の横に立った。


「俺も行ってくる」


「ええ、気を付けて」


「心配要らないさ」

「リアンナにもう一度会う」


 ファガスは光の中に消えた。



 五分経った。


 緊張感は増すばかりだ。


 フレドが光の隣に立つ。


「行って来るぜ」


「油断するなよ」


「ああ、当然だろ」

「後に行くのも案外緊張するだろ?」


「そうだな」

「甘く見てた」


「はは、じゃ行ってくる」


 フレドは光の中に消えた。



 五分経った。


 この緊張感に慣れることは、きっと無いな。


 次はボーデンが準備出来ている。


「では、行ってきます」

「思い返せば、あの時、王とリビア様と出会って…………」


「何よ、怖じ気づいたの?」


「いえ、急に懐かしくなって」


「らしくないぞ」

「大丈夫か?」


「私らしいとは?」


「絡んで来るなよ」

「どうした?」


「寿命が無くなった事に感謝を!」

「仲間に感謝を!」

「行きます」


 ボーデンは光の中に消えた。



 五分経った。



 俺はプロミを抱きしめた。


 長い事抱き合っていた。


 そしてキスをした。


「行って来るわ」


「ああ、向こうで待っててくれ」


すぐに行きます」


「ええ、待ってるわ」


 プロミは光の中に消えた。



 五分経った。



 リビアを抱きしめた。


 そしてキスをした。


 もう一度抱きしめた。


「行ってきます」


「うん」

「気を付けて」


「貴方も」


「そうだな」


「先に行って待ってますから」


 リビアは光の中に消えた。



 五分経った。


 次は俺だ。


 やっとか。


 そうそう、パパっと終わらせるんだったな。


 やってやる。



 砂人と戦い始めて二日になる。


 七十七階層まで来た。


 慣れとは恐ろしいものだ。


 良くも悪くも。


 俺は砂人を押し込む事に慣れて来ていた。


 だから、気が付くのが遅れた。


 水人や、砂人は、攻撃が通らない。


 と、思っていた。


 だが、奴らは防御する。


 矛盾している。


 攻撃が通らないなら、防御の必要は無い。


 弱点は無いと俺は思ってしまっていた。


 違っていた。


 こいつらは倒せる。


 タフなだけだ。


 いつものひらめきだ。


 倒せるなら、倒してから進んだ方が良い。


 これもひらめきだ。


 霧化する化け物への攻撃方法は見当が付いている。


 それと同じだったんだ。



 結論だけを言うと、俺は砂人を消滅させ、八十階層に辿り着いた。


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