21話 休ませろよ

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 黒戸美月:零維世の妹。

      小学六年生。

      鏡華と友達。

      非常にかわいく、ファンがいる。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黒沼直樹:ベル。

      黒羽学園高等部の数学と物理の教師。

      中等部生徒会顧問。

      融合者。

      聖国クリアの守護者。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           連合国クロトの守護者。

           閑話に登場。

 クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。

          文官長。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。

 ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。

 ロウル・ヒスリー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

 スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

            カシアルの弟子。

 リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。

 ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。

          月と太陽の国の神官兼付き人。

 レイ:『光の旋律』リーダー。

    長命種。

    血の繋がっていない子供がいる。

 ダズ:聖国クリアの守護者。

    リビアの代わりに代表代理を務めている。

 ロウエル・ノキシュ:商業都市ノキシュの代表。

 テラセス・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          ライサムとは兄弟の様に育った。

 ライサム・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          テラセスとは兄弟の様に育った。

 セシル・マイカ:レイセの近衛兵。

         元一流の冒険者。

         お嬢様風。

 シャレット・キニクル:レイセの近衛兵。

            元一流の冒険者。

            お転婆風。

 ゼレア・ロットル:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          姉御風。

 シルドレ・ナバリ:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          不思議さん風。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

 長谷川さん:零維世のクラスメート。

       運動部。

 倉持君:零維世のクラスメート。

     剣道全国三位。

 キルッド・ババルイア:リアンナの執事。

            通称キル。

 ラトス・ミュラ:ルピアスの守護者長。

 ピナンナ・ラクトリ:ノスヘルの守護者長。

 リドット・シルベスト:スロラの守護者長。

 ワイツル・アフガーニ:ラクラシの守護者長。

 マエン・マクガーレ:クジェトの守護者長。

           王の実力に疑問を抱いている。

 シズル・マルカ:クオスの守護者長。

         王の実力に疑問を抱いている。

 ラベーズ・ラズルト:ノクヨの守護者長。

           王の実力に疑問を抱いている。

 アフラ・ヘルツ:オアミの守護者長。

         一回目の会合には不参加。

 キーシ・キルツス:クベルトの守護者長。

          一回目の会合には不参加。

 べレク・ストマイラー:ミクトシアの守護者長。

            一回目の会合には不参加。




 

 しまった。


 いつの間にか寝てしまっていた。


 プロミに膝枕され、リビアが頭を撫でていた。



 今何時だ?


 三時二十五分。


 朝の三時二十五分。



 帰って寝直すか?



 俺達以外、誰も残っていない。


 そう言えば、起こされていた気がする。



 俺が言う事を聞かなかったんだ。


 仕方が無い。



 明日は一日打ち合いだ。


 持つか?


 全員を相手だと、今の寝不足のコンディションだときついな。



 そうだ。


 あれをやろう。


 緊張感も出るだろう。


 丁度いい。



 これでこそ、ピンチをチャンスに変える俺らしい。




 少し仮眠を取って、朝一番に訓練場に急ぐ。


 流石にまだ誰も来ていない。


 俺はイスに肩ひじを着けて眠った。



『レイセ、そろそろ起きろ』


『ああ、レムリアスありがとう』


 みんな揃っているな。


「コナル、バケツ持ってきてくれたか?」


「ああ、用意した」


「王よ」

「お疲れの様子」

「俺達は明日でも大丈夫ですよ」


「は」

「馬鹿が」

「大丈夫なもんか」

「お前達はたるんでいる」

「気を引き締めさせる」

今直すぐにでも」


たるんでいるのは貴方の方だろ」


「違うぞ」

「マエン」

「逆だ」

「王はたるんでいない」


「王は自分を追い込み過ぎだ、昨日も飲み始める前から眠そうだった」


「…………」


「前置きは無しだ」

「今から霧化を体感させる」

「コナルとファガスを鍛えていた時には毎朝やっていた」

「これをやってから訓練してた」

「お前たちも体感しろ」

「マエン、お前からどうだ?」


「解りました」

「どうすれば良いですか?」


「結界の増幅と同じだ」

「手を繋いで意識を集中しろ」


 俺は、マエンと手を繋いだ。


「部分融合は、凝縮させるイメージだが、霧化は逆だ」

「拡散させる」

「マエン、散っていく感覚を手から感じろよ」

「じゃ、やるぞ」


 俺は静かに霧に成った。



 そして、手を繋いだ状態に戻った。


「うぐぇぇぇぇぇぇ…………!!」


 マエンはバケツに吐いた。


 朝に食べたものが全部出た筈だ。


「自分が散っていく感覚と、散った自分を引き戻す感覚には苦痛を伴う」

「特に引き戻す時の苦痛が尋常じゃない」

「だが、引き戻さないと一時間持たない」

「たぶん死ぬ」

「じゃ、次はシズルな」


「は?」

「ちょっと待ってくれ、王」

「こ、これを連続でやれるのか?」


「そう言うと思った」

「マエン」

「あと、シズル、ラベーズ、アフラ、キーシ、べレク」

「お前らは、俺がどの位霧化を連続で使ったか見てない」

「今なら、散って、引き戻してを繰り返して、一日は持つ」


「う、嘘だろ!?」


「マエン、本当だ」

「王がやれると言ったらやれる」


「さあ、次、シズルだ」


「は、はい!」


「一日続くだと!?」

「一回だけで足元がふらついて立ってられないんだぞ!」


 俺はシズルと手を繋いで、霧化した。


 しばらくして、手を繋いだ状態で実体化した。


 シズルはバケツに吐いている。


 用意しておいてよかった。



 バケツは必要だろ?



 フレドとボーデンを入れて二十人と手を繋ぎ終えた。


「済んだな」

「じゃあ、模擬戦をやるぞ」


「あんた、わかってて言ってんだろ?」


「まあな」


「ほんと良い性格してるぜ」


「全員、無理そうだな」

「俺が疲れてても関係ないな」

「お前らは弱い」

「魔物の王は、俺が出来る事を、俺よりも旨くやるだろ」

「こんなのもだ」


 俺は、蜃気楼になった。


「なんだ、それ」

「近くにいるのに遠くに見える」


「これの良い所は、程よく散っている所だ」

「すべての攻撃は透過し、こっちは武器の触れる部分だけ具現化できる」

「制御は繊細だ」

「霧化以上に」

「俺が出来るという事は、魔物の王もやってくる」

「霧化も蜃気楼も攻撃が通らない」

「俺は通すための奥の手を考えている」

「お前らは考えてるか?」

「俺が月と太陽の国にいる間に、魔物の王が攻めてきたら、太刀打ち出来たか?」


「…………」


「魔物の王が動く周期はまちまちだ」

「だが、大まかに周期は長いと思っていた」

「城塞都市シャットリイが落ちたのは魔物の王が動いた為らしい」

「前に動いてから三百年ほどしか経ってない」

「周期なんてものは無いかもな」

「焦りすぎも良くないんだが、お前らはもうちょっとピリッとしろ」

「一時間だけ休憩してやる」

「一時間後、模擬戦だ」


 は、旨い事言って一時間稼いでやった。


 この隙に寝てやろう。


「王」

「もう一回霧化を体験したい!」


「俺も!」


「私も!」


「俺も頼む!」


「同じく!」


 ラトス、リドット、ワイツル、フレド、ボーデン。


 休ませろよ。


 笑いが込み上げてくる。



 良いぜ、良い感じだ。


 そう言うのは好きだ。



 やってやる。


「ふ、ラトスからな」


 ラトスと手を繋ぐ。


 霧化して、戻る。


 ラトスは吐いている。


 えずいているだけだ、もう出る物が無い。


「あんた、自分が初めてやった時どうだったんだ?」


「安心しろ、俺だって吐いた」

「霧化は一発で出来たが、戻り方が解らず死にかけた」

「お陰で、一発でコツを掴んだが、お前らは手を繋いで練習してからやれ」

「マジで死ぬ」

「じゃ、次は?」


「私です」


 ワイツルと手を繋ぐ。


 霧化して、戻る。


 ワイツルは吐くのを耐えている。


 膝がガクガクしている。


 一時的に、地面に立っている感覚が麻痺する。


 仕方ない。



 横で見ていたシズルが声を掛けてきた。


「や、休まなくて大丈夫なのですか?」


「大丈夫だ」


「フレド、お前が答えるな」


「大丈夫じゃ無いが、お前が心配する事じゃない」


「くっ、屈辱です」


「そうか、お前見込み有るぞ」


「一日続けられるなんて、嘘ですよね?」


「マジだぞ」


「ファガス」

「来てたのか」


「月と太陽の国を出る前に、限界を試しやがった」

「見ているだけで気分が悪くなったぞ」


「訓練に意味は有るのですか?」


「プロミとリビアも霧化出来るように成った」

「プロミ、感想は?」


「便利だけど、出来るだけ使いたく無いわ」


「リビアは?」


「精神的苦痛が酷いので割に合いません」

「使いたく無いです」


「仮面の男が来た時、霧化があんなだって知ってたら、やらせなかったわ」


「そうですね」

「脳が焼き切れてしまう」


「霧化は便利だし、魔物の王に攻撃を通すには必須の訓練だ」


「それよ」

「どうやるか、そろそろ教えなさいよ」


「まだ秘密だ」


「なんでよ?」


「練習で死ぬかもしれない」

「集中力が高まるぶっつけでやる」


「あまり、心配させないでください」


「リビア、ごめん」


「やめる気はないって事ね」


「次の覚悟が決まっているのね」

「貴方達、王が前線に立つつもりなんだから気合入れなさいよ!」


 ピリッとしてきたか?


 今後に期待だな。




 *   *




 朝起きると体が重い。



 これは、あれだ。


 風邪だ。


 久しぶりになった。


 昨日は遅くまで訓練に付き合い、今日は朝から守護者長達を見送りだ。


 それは良い。


 その後はフレドたちと訓練だ。



 訓練。



 普通なら安静にして過ごすべきだろう。


 だが俺は、七つの大罪“怠惰”持ちだ。


 安静にしてしまうと、サボった事に成り、無気力症状が出てしまう。


 態とサボった場合の無気力症状は長い。


 食事も億劫になるので、健康面も危ない。


 何とか踏ん張って訓練して、風邪が治るのを待つしかない。



 守護者長達を見送った。


 和気あいあいとした雰囲気の中に緊張感が混じっている。


 少しはピリッとしてきたかもな。




 さあ、訓練だ。


 マスクはした。


 頭がぼーっとする。


 フレドとボーデンの本格的な訓練は今日からだ。


 何か気の引き締まる一言を言うぞ。


「人は問題を認識したときから、その問題を解決する可能性を秘めている」

「自分に出来うる事、そのすべてをやり遂げたなら、どんな問題も解決する」

「したがって、自分に出来うるすべての事を行っている人は、ほとんどいない」

「人の悪口や、愚痴を言う時、自分が解決できるかもと言う可能性を棚上げにしてる」

「俺はそれをサボりと見なす、自分の問題から目を逸らしているからだ」

「せめて決められた時間内はサボるな」

「それが出来ないなら、その日は休んで次の日に備えろ」

「何を言いたいか解らなくなってきた」

「俺は今非常に愚痴りたい」

「だが我慢する」

「お前ら、愚痴るなら休み時間にやれよ」


 ダメだ。


 俺は何を言っているんだ?



 伝わったか?


 もういい。


 体を動かそう。



 夜十時。


 みんな息が切れている。


 フレドが片膝を着いた。


 ボーデンは座り込んでいる。


「食事に行くぞ」

「時間が無い」

「食べながら休憩しろ」


 コナルとファガスが二人に肩を貸している。


「フレド、解って来たか?」


「ああ」


「ボーデンは?」


「逃げたく成って来ました」


「そうか」

「本当は俺だって嫌なんだ」


「愚痴はダメなんじゃ無いのか?」


「今は休憩だ」

「許そう」


「何様だよ」

「ったく」


「明日は大丈夫か?」


「コナル」

「どういう意味だ?」


「フレド、違うさ」

「レイセに言ってる」


「悪い」

「今日だけでは治らない」

「もう少し待ってくれ」


「プロミとリビアは手加減してたぞ」


「ファガス」

「わかってる」


「体調管理も王の務めよ」

「何やってるのかしら」


「ぐっ」


「そうですね」

たるんでいます」


「がはっ」


「何が愚痴はサボりと見なす、よ」

「体調不良もサボりと見なすわよ」


「おっしゃる通りです」



 リアンナが居酒屋の前で待っている。


 ファガスが駆け寄る。


 嬉しそうだ。


 癒される。



 後は食って寝るだけだ。


 今日はさっさと寝て、明日に備えよう。


「ごほっ、ごほっ!」


「ちょっと、うつさないでよ」


「しばらくキス出来ませんね」


「…………」


 俺も癒されたい。


 早く治そう。

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