17話 青空

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 黒戸美月:零維世の妹。

      小学六年生。

      鏡華と友達。

      非常にかわいく、ファンがいる。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黒沼直樹:ベル。

      黒羽学園高等部の数学と物理の教師。

      中等部生徒会顧問。

      融合者。

      聖国クリアの守護者。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           連合国クロトの守護者。

           閑話に登場。

 クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。

          文官長。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。

 ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。

 ロウル・ヒスリー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

 スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

            カシアルの弟子。

 リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。

 ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。

          月と太陽の国の神官兼付き人。

 レイ:『光の旋律』リーダー。

    長命種。

    血の繋がっていない子供がいる。

 ダズ:聖国クリアの守護者。

    リビアの代わりを務めている。

 ロウエル・ノキシュ:商業都市ノキシュの代表。

 テラセス・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          ライサムとは兄弟の様に育った。

 ライサム・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          テラセスとは兄弟の様に育った。

 セシル・マイカ:レイセの近衛兵。

         元一流の冒険者。

         お嬢様風。

 シャレット・キニクル:レイセの近衛兵。

            元一流の冒険者。

            お転婆風。

 ゼレア・ロットル:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          姉御風。

 シルドレ・ナバリ:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          不思議さん風。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

 長谷川さん:零維世のクラスメート。

       運動部。

 倉持君:零維世のクラスメート。

     剣道全国三位。

 キルッド・ババルイア:リアンナの執事。

            通称キル。

 ラン:元案内人。

    聖国クリアの守護者。

    天真爛漫。

    ベルと上手く行った。

 カー:元案内人。

    聖国クリアの守護者。

    好奇心旺盛。

 タロスト:元案内人。

      聖国クリアの守護者。

      寡黙。

 アル:元案内人。

    聖国クリアの守護者。

    血の気の多い性格。

 リトアニ:魔道国家ネストロスの宰相。

 ダリドベ:武闘国家メロイリスの守護者長。




 

 コナルとアルと三人でウォッカ的な酒を飲み比べている。


 三人とも足にきている。


 コナルが白目をいて気を失った。


 アルにはまだ意識が有る。



 次だ、次。


 次を飲む。


 もう一杯だ。



 グイと飲み干す。


 躊躇い《ためらい》は無い。



 完全にヤバい領域に入っているが、構わない。


 勝つ事だけ考える。



 アルが膝から崩れ落ちた。



 勝った。


 やっと勝てた。


 嬉しさで、泣きそうだ。


 非常に苦しい戦いだった。


 仮面の男と戦った時を彷彿(ほうふつ)とさせる。



 だが、勝った。



 さっさと解毒しよう。


 酒は黒竜の力で解毒出来る。



 数秒後、俺は素面(しらふ)に戻った。


 コナルとアルは重症だが、自己責任だ。


 俺に勝とうなんて、百年早いわ。



 観客たちは、俺が素面しらふに成っていくのをドン引きして見ていた。


「レイセ」

「それはひどい」


「俺に備わった能力だ」

「どうしようも無い」

「よく我慢した方だろ」


「違う、そうじゃない」

「先に言ってやれよ、解毒出来るって」


「なるほど」

「その手が有ったか」

「ファガス流石だな」


「何がだよ」

「普通思いつくぞ」


「もう挑戦者はいないのか?」


「いる訳ないだろ」


「酒はもういい」

「レイセ、ポーカーで借りを返したい」


「ダズ」

「ポーカーだって?」

「まだ根に持ってたのか?」


「お前、強すぎだろ」

「一回くらい勝ちたいぞ」


「あの馬車の時より前にトランプ作ってたんだ」


「そうですよ、プロミ」

「レイセは自信が有るから出すのです」


「なんだか好感度が下がるわね」

「リビア、嫌にならないの?」


「そういう子供っぽい所も好きです」


「まあ、かわいいかもね」


「やってやっても良いが、賭けるもんは賭けて貰うぞ」


「その、自分が負ける事を考えていない感じ」

しゃくに障る」


「おお!」

「リトアニ」

「やるか?」


「やるに決まってんだろ」

「何が二国の王だ」

「二人と婚約だ」

「俺は五百年独り身だぞ」

「ぶっ潰す」


「ダリドベ、ヤバいぞあいつ酔ってやがる」


「私は止めたのですが、聞かなくて」

「飲まないとやってられないとか、何とか」


「…………」

「俺も参加しよう」


「タロスト、お前このタイミングで喋るのか?」

「意味わからんな」

「他にいないか?」

「じゃあダリドベ、お前やれ」


「え?」

「嫌ですよ」

「嫌な予感しかしない」


「条約は破棄だな」


「兄貴」

「それはあかん奴や」


「そうですよ」

「あんまりです」


「ベル」

「ランに何教えてるんだよ」


「別に良いでしょう」

「響きが面白いんです」


 カーも別にええやんって言っている。


「そんな事より、パワハラは認められません」

「僕が制裁を加えましょう」


「じゃあ、俺、ダズ、タロスト、リトアニ、ダリドベ、ベルな」


「だから、ダリドベを外せよな」


「ベル」

「言葉遣い」


「失礼」

「ダリドベさんを外してあげて下さい」


「解った」

「俺、ダズ、タロスト、リトアニ、ベルな」


 ポーカーは、トランプ十二×四種、プラス、ジョーカー二枚の計五十枚で行っている。


 ジョーカーは好きな数字として扱える。



 俺は、強い手でも、弱い手でも顔に出ない。


 俺は良い手がよく来る。


 従って、強い手の時に賭けて、弱い手の時に降りて行く。



 最初は、そうする。


 そして、だんだんと、弱い手の時も賭ける。


 みんなは降りて行く。



 俺は次第に、勝ちが多くなる。


 いつもそうなる。



 今回もそうだ。


 今回、ダズが言い出したが、結果は前と同じだ。


 ベルも、大したことない。


 タロストはよくわからない。



 リトアニだ。



 こいつだけ、大きい手を作って俺を上回る事が有る。


 何という事だ。


 実は、ポーカーには絶対の自信を持っていた。


 それをこの口の悪い宰相に崩されようとしている。


 勝たねばならない。



 奴に、良い手が来たようだ。


 しかし、上には上がいる事を思い知らせてやる。


「俺の所持しているすべての魔石を賭ける」


 リトアニはチップ以外を賭けだした。


「リトアニさん」

「やめとけ、レイセはそう言う時、倍で返してくる」


「ファガス」

「その怖さを知ってるのは喰らった人だけです」


「リビア」

「貴方もやられてるのか?」

「婚約者なのに……」


「案内人の時に……」


「じゃ、俺は連合国のすべての魔石を賭ける」


「え?!」


「リトアニ、レイズは?」


「リトアニ、降りた方が良いわよ」

「こいつ容赦ようしゃないわ」


「今更降りれません」

「心配してくれるとは」

「くっ、プロミ様、タイプだ」

「そうだ」

「俺が勝ったら、プロミ様を頂きたい」


「良いぞ、俺は負けないから関係ない」

「リトアニ、お前は何を賭ける?」


「俺だ」

「俺が貴方の陣営に入る」

「宰相を辞めてやる」




「…………そうか」

「お前がかわいそうに成って来た」

「今降りるなら、全て無かった事にしてやる」


「そんな手に引っかかるか、俺の手で負ける訳が無い」


「本当に良いんだな?」

「その手に負けは本当に無いんだな?」


「クドイぞ、クロト王」



「お前の手を当ててやる」


「ふざけるな」

「そんな事出来るか!?」



「今、俺はキている」

「俺には解る」

「お前、ロイヤルストレートフラッシュだろ?」

「それで勝ったと思たんだよな?」





 リトアニから汗が流れだす。


 プロミはまだ間に合うと言いたそうだ。


「ロイヤルストレートフラッシュに勝つ手はあるだろ?」


「う、嘘だろ」

「ファイブカードなのか?」

「ま、まさかだろ、そんな訳無いだろ?」



「今降りても良いぞ」

「これが最後だ」

「よく考えろ」




 本当にこれが最後だ。


 リトアニ、降りろ。



 お前の為だ。




「…………」




「…………」




「…………」

「酔いが醒(さ)めてきた」

「プロミ様を賭けの対象にするなど、どうかしていた」

「悪い流れに乗る所だった」

「俺は降りる」



「そうか」

「それで良いんだな?」



「ああ、俺の負けだ」



「ふふ、流石は宰相になるだけある」


 俺は手札を山に戻そうとした。


「レイセ」

「手札を見せてみろ」


「ダズ、マナー違反だぞ」


「今回は良いだろ、大目に見ろ」


「仕方無い」

「教えてやるか」



 俺は手札を机の上に広げた。


 エースのファイブカード。




「リトアニ」

「降りて正解だったな」


「ダズ様、解ってたのか?」


「まあな」

「レイセは悪い奴じゃ無い」

「宰相のお前を引き抜くとどうなると思う?」

「たとえ酔っていようとも、後先を考えろよ」


面目めんぼくない」


「しかし、エースのファイブカードとは……」

「勝負強さが尋常じゃない」


「怖い」

「洒落に成りません」


「ダリドベさん、参加しなくて良かったですね」


「ベルさんは良く参加しましたね」


「王が強いとはわかっていましたが、あれほどとは」

「僕も今回で最後にします」

「あれはあかん奴や」


「プロミさん、王に賭けの対象にされて、よく怒りませんでしたね」


「レイセの手札が見えてたのよ」

「唯一絶対に負けない手だったから見逃したわ」



 リトアニの手札はやはりロイヤルストレートフラッシュだったらしい。


 下手に良い手が来ると、欲をかいて大失敗なんて事がある。


 リトアニはそうならなくて本当に良かった。


 この一戦は名勝負として語り継がれるだろう。


 俺の鼻は高くなる。


 いい気分だ。


 やはり俺はポーカーが強い。


 俺に勝てる奴はいないのか?



 なんてな。



 まだ寝るまでに時間が有る。


 カーには、月と太陽の国と連合国の景色を描いて欲しいと言われていた。


 カーが面倒を見ている兵士たちに、他国を説明したいらしい。



 普段黒竜は背中に翼を収納しているが、出して空を飛ぶことが出来る。



 まー、翼を使って飛んでいる訳じゃ無く、魔法で飛んでるらしいが。


 バランスを取りやすいらしい。



 話を戻す。


 それで、空から両国の首都を一望した事がある。


 その絵を描く。



 俺の絵は、基本的に切り絵用だ。


 カーもわかってる。


 雰囲気が伝われば良い筈だ。



 喜んでくれれば良いが……。




 昨日は楽しかった。



 今日は一日休んで、明日出発する。


 ここにいると楽しいが、実はダズ達を邪魔している。


 本来、ダズ達は忙しい。


 十年ぶりの休暇とか言っていたからな。


 長居するとそれだけ動き出すのに時間が掛ってしまう。


 それに、昨日は全力で楽しんだから無気力症状が出なかったが、今日はそうも行かない。


 今日は目一杯体を動かそう。



 俺はホテル近くの公園で、素振りをしていた。


 ベル、ラン、カーが来た。


 無言で一緒に素振りする。



 タロストが来た。


 タロストも素振りに加わる。



 コナルとファガスが来た。


 リビアとプロミ、リアンナもいる。


 コナルとファガス、リビアとプロミが加わる。


 リアンナは座って見ている。



 ダズとアルが来た。


 二人が加わる。



 ダリドベとリトアニが来た。


 二人も加わる。



 何だ?


 この集まり。


 大人数で無言の素振り。



 近衛兵四人組も加わる。



 多い。


 身動きしにくい。


 忙しいんじゃないのか?


 もう、本当に困った奴らだ。



 四時間程やっていると、人数が減って来た。


 やはり、みんな忙しいのだろう。


 今日は一言も話していないが、なんだか楽しかった。



 平和な一日だった。


 あのメンツが揃っての素振りはきっともう二度と無い。


 何でもない、ただの素振りのつもりだった。


 それが、貴重な一日に化けた。



 みんなが来てくれたからだ。


 みんな、ありがとう。



 夕方に成って、コナル、ファガス、プロミ、リビア、リアンナとホテルに帰った。


 もう、明日出発する。


 名残惜しいが、仕方ない。


 本当に顔を見ただけだ。


 変わっていないと、確認しただけ。


 本当の再会は、もう少し先になる。


 みんなそれがわかっているのだろう。


 その日が来るのを楽しみにしよう。



 カーに頼まれた絵を仕上げた。


 悪くない出来だ。



 瞼を閉じれば、明日になる。




 まだ、もう少しだけ起きていよう。




 朝。



 準備が出来ていた。


 ダズ達が見送りに来てくれた。


 カーに絵を渡す。


 彼は喜んでいた。


 カインは来なかった。


 まあ、来ないと思っていたが。


 シェルミは来てくれた。


 いつもの複雑な表情。


 俺に対する恨みと好意の入り混じった表情。


 二人が気がかりだが、それは真に再会した時に取っておこう。



 ダズ、タロスト、アル、ベル、カー、ラン。


 それに、ダリドベ、リトアニ。



 またな。



 その日は、雲一つない青空だった。



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