13話 心の準備

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 黒戸美月:零維世の妹。

      小学六年生。

      鏡華と友達。

      非常にかわいく、ファンがいる。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黒沼直樹:ベル。

      黒羽学園高等部の数学と物理の教師。

      中等部生徒会顧問。

      融合者。

      聖国クリアの守護者。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           連合国クロトの守護者。

           閑話に登場。

 クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。

          文官長。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。

 ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。

 ロウル・ヒスリー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

 スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

            カシアルの弟子。

 リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。

 ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。

          月と太陽の国の神官兼付き人。

 レイ:『光の旋律』リーダー。

    長命種。

    血の繋がっていない子供がいる。

 ダズ:聖国クリアの守護者。

    リビアの代わりを務めている。

 ロウエル・ノキシュ:商業都市ノキシュの代表。

 テラセス・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          ライサムとは兄弟の様に育った。

 ライサム・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          テラセスとは兄弟の様に育った。

 セシル・マイカ:レイセの近衛兵。

         元一流の冒険者。

         お嬢様風。

 シャレット・キニクル:レイセの近衛兵。

            元一流の冒険者。

            お転婆風。

 ゼレア・ロットル:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          姉御風。

 シルドレ・ナバリ:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          不思議さん風。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

 長谷川さん:零維世のクラスメート。

       運動部。

 倉持君:零維世のクラスメート。

     剣道全国三位。




 

 三頭立ての馬車四台での移動だ。


 前と同じ。



 ロウエル達三人は随分前に商業都市ノキシュに帰っている。


 ロウエルは月と太陽の国に着いてすぐ、契約者になった。


 護衛の二人も同時だった。



 近衛兵四人も月と太陽の国で五十年過ごした。


 俺の護衛だから仕方ない。


 四人はノスヘルにいた時に契約者に成っていた。


 容姿は全く変わっていない。


 月と太陽の国が気に入っていたらしく、名残なごり惜しそうにしていた。


 ノスヘルは寒い。


 薄着で動き回れる月と太陽の国は楽園の様に感じたのだろう。


 暑い国だが、カラリと晴れた空は心を浄化する様だった。


 ノスヘルは雨や雪が止んでいても曇りが多いからな。


 雪に覆われた景色は綺麗なんだが。



 プロミの従者達はいつものメンバーだ。


 ヒルデは泣いて頼んだそうだ。


 ノイトルは他の候補を殺す計画を立てて居たらしい。


 相変わらずだ。



 他にも月と太陽の国には多くの知り合いが出来た。


 前に言っていた、司法を任せられそうな奴とも出会った。


 もう会いたくない奴もいる。


 心配いらない、また再会する。


 寿命が無くなった俺達にとって、時間は味方だ。


 刺激のある生活を送って、精神が摩耗しない様に気を付けないとな。



 死兵国には寄らなかった。


 プロミが嫌がったのも有るが、俺も今は避けたかった。


 戦力に不足のある内は近づきたく無い。


 噂によると、『ウォーターフォックス』一人で数千の死兵を動かし、魔物の王の配下を追い返しているらしい。


 被害は死兵だけ。


 国内では英雄扱いだ。


 実力が計り知れない。




 海洋国家ドバスカリに着いた。



 補給の為に寄ったが、やはり使者が宿に来ていた。


 前回より急いでいる。


 何かあった様だ。


 宮殿に急ぐ。



「リアンナ」

「何かあったのか?」


「ええ、貴方達が移動している間に城塞都市シャットリイが落ちたわ」


「なんですって!!」


「魔物の王の配下か?」


「王本人が動いた様よ」


「難民が月と太陽の国に流れて行くわ~」


「魔道具を貸して、私の国に連絡を取るわ」


 プロミは血相を変えている。


 プロミが魔道具で話している間も会話は進む。


「三日も持たなかったらしいわ」


「南半球は魔物の物だな」


「そうね」

「この話はこれでお終い」

「それより、そこの二人は初めてよね~」


 ファガスとコナルの事だ。


「俺の友人だ」


「髪をくくっているのがファガス」

「短髪がコナルだ」


「へ~、へ~、へ~~」


 リアンナの目が獲物を狩る、狩人の様になっている。


「ダメだぞ」

「こいつらは今から連合国クロトに連れて行く」


「ちょっと待て、レイセ」

「俺、興味ある」


 待てと言いたいのは俺の方だ。


 ファガス、話をややこしくするな。


 なんでもう気持ちが切り替わっているんだ、こいつ。


「ん、うふふふふ、決めたわ~」

「私も連合国に行くわ~」

「一度行ってみたかったのよ~」


 何言っているんだ。


 目的はファガスだろ。


「ファガス、お前責任取れるんだろうな?」


「何のだ?」

「俺は興味あるって言っただけだぞ」


 こいつ。


 そんなのが通用すると思っているのか?


 馬鹿なのか?


「コナル、何か言ってやれ」


「お幸せに?」


 祝福してどうする。



 俺か。


 訓練しかさせ無かった俺が悪いのか?


 リアンナは美人だが、女王なんだぞ。


 ちょっと試しに付き合ってみて、ダメだったら別れるとか、無理なんだぞ。


「コナル」

「リアンナは女王だから、お付き合いすると大きな責任が伴います」


 リビアがコナルに説明をしだした。


 コナルがそうかって顔をしている。


 ファガスは解っていたみたいだ。


 余計たちが悪い。



 プロミが魔道具での通信を終えた。


 一段落着いたみたいだ。


 こっちの話も大体わかってそうだ。


 表情でわかった。


 器用な奴だ。


「ルビー、どう思う?」


「んー、ファガス」

「貴方、浮気した事ある?」

「正直に言って」


「有るわけないだろ」

「娼館にも行ったことない」


「奥さんを亡くしてから十年位しか経っていないわよ」

「それは?」


「このまま別れるのは惜しいと思ったんだ」

「責任までは正直解らない」

「でも、もう少し時間が欲しい」


「そう」

「レイセ」

「リアンナを連れて行くわ」


 解った。


 腹をくくる。


 女王相手に、責任取る可能性も考えて、解らないと正直に言えるのは、見込み有るんだよな。


 俺だって、王としての責任が取れるのかと問われれば、首をかしげてしまう。


 簡単に取れる責任じゃ無いからだ。


 それでも、向かって行ってしまう。


 俺と一緒だ。


「リアンナ」

「準備にどの位かかる?」


「三日頂戴」


「三日で良いんだな?」


「ええ」

「大丈夫よ」


「解った」

「俺たちは引き上げる」


 一旦宿に戻る。



 夕食は酒場で取った。


 広いテーブルで飲みながら会話してる。


「悪いレイセ」

「お前にも計画とかあるよな?」


「無い無い」

「そんな物」

「俺は本当に無計画だ」

「それより、責任を無視して、気が有るかもと言えるお前に共感してる」


「なんだそれ」


「俺、王に成ってないのに二人同時にプロポーズしただろ?」

「責任とか考えてたと思うか?」


「ああ、そういう事か」

「まー、思わないな」


「そうだろ?」

「後から頑張るしか無いんだよ」

「たぶんな」


「まだ結婚してないし、安心するのは早いわね」


「ですね」


「…………」


「ちょっと上から目線だったか?」


「そうよ、調子に乗りすぎよ」


「本当にそうです」


「…………」


「急に連合国に行くと言い出したリアンナは本気よ」


「でも三日で準備出来るでしょうか?」


「相当無理してるのは確かね」


「レイセ」

「ちょっと胃が痛くなってきた」


「悪いファガス」

「今俺に発言権は無い」



 コナルはどうしてるかって?


 コナルは近衛兵のセシルと楽しそうに会話している。


 そうかと思えば、今度はシャレットが話しかける。


 次はシルドレ。


 その次はゼレア。


 五人グループが出来ていた。


 ちょっと会話を聞いてみよう。


「コナル様の思い人は相変わらずですか?」


 セシルだ。


「思い人は居ないって」

「諦めた」

「言わなかった?」


 美月の事だろうな。


「守ってあげたくなるんですよね?」


 シャレットだ。


「そうだったかなー」

「もう、俺の話はいいだろ?」


「今度アタシと外に行ってみないか?」


 ゼレアだ。


 外でコナルに守られたいらしい。


「ゼレア抜け駆け」


 シルドレだ。


「…………」


「ファガス」

「コナルが相変わらずだ」


「あいつが変わる訳無いぞ」

「あいつは、ああして躱し続ける」

「コナルはな、モテている事にも気付いていない」

「あいつの周りにはいつも女性がいる」

「でも、美月ちゃんしか見えていない」

「本人は契約する時に諦めたつもりらしい」


「美月さんはこっちに来ないのですか?」


「『ロストエンド』を紹介は出来るんだ」

「けどな…………」


「契約までたどり着けるかはわからないのよ」


「そうだ、それに全然別の時代という可能性もある」


「会って見たかったのですが…………」


「俺はもう、こっちで会うのは確定だと思ってるけどな」


「ファガス、お前の言いたい事もわかる」


「あり得ない筈の事が起こる世界なんだ、そうなる方が自然かもしれない」


「実は、俺とプロミはお前ら二人を巻き込んだ事を後悔している」


「わかってる」

「俺は後悔してない」

「今その話は良い」

「言いたいのはそこじゃ無い」

「彼女は自分で見つけるだろ」

「その前提で動いておいた方が良いと思うな」


「そ、そうね、気付かなかった」


 核心を突かれた。


 その通りだ。


「心の準備だけでもしておけよ」



 ああ、解っているさ。




 瞬く間に三日経った。

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