11話 ゲーム
レイセ:主人公。
黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。
融合者。
契約者。
黒羽学園中等部生徒会長。
美月は妹。
黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。
ルビー・アグノス。
融合者。
契約者。
月と太陽の国女王にして、現人神。
小学六年生。
美月と友達。
レイセと婚約している。
黒戸美月:零維世の妹。
小学六年生。
鏡華と友達。
非常にかわいく、ファンがいる。
リビア:聖国クリアの元代表。
レイセと婚約している。
黒竜:真名、レムリアス。
白竜と並ぶ最古の神獣。
レイセと契約している。
黒沼直樹:ベル。
黒羽学園高等部の数学と物理の教師。
中等部生徒会顧問。
融合者。
聖国クリアの守護者。
黄山十夜:春日高校一年生。
融合者。
契約者。
ファガス。
青井友介:七星学園高等部一年生。
融合者。
契約者。
コナル。
エウェル:クリア・ノキシュの妻。
故人。
エーシャ:エウェルとクリアの娘。
クリアとは血が繋がっていない。
ボーデン・バレット:フレドの補佐。
連合国クロトの守護者。
閑話に登場。
クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。
文官長。
フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。
ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。
ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。
ロウル・ヒスリー:月と太陽の国の従者兼料理人。
クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。
カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。
スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。
カシアルの弟子。
リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。
ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。
月と太陽の国の神官兼付き人。
レイ:『光の旋律』リーダー。
長命種。
血の繋がっていない子供がいる。
ダズ:聖国クリアの守護者。
リビアの代わりを務めている。
ロウエル・ノキシュ:商業都市ノキシュの代表。
テラセス・マシア:ロウエルの護衛。
孤児。
ライサムとは兄弟の様に育った。
ライサム・マシア:ロウエルの護衛。
孤児。
テラセスとは兄弟の様に育った。
セシル・マイカ:レイセの近衛兵。
元一流の冒険者。
お嬢様風。
シャレット・キニクル:レイセの近衛兵。
元一流の冒険者。
お転婆風。
ゼレア・ロットル:レイセの近衛兵。
元一流の冒険者。
姉御風。
シルドレ・ナバリ:レイセの近衛兵。
元一流の冒険者。
不思議さん風。
リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。
長谷川さん:零維世のクラスメート。
運動部。
倉持君:零維世のクラスメート。
剣道全国三位。
この前の日曜に『ロストエンド』の開放日に参加した。
つい先日だ。
それから俺達兄妹には、監視兼護衛が付いている。
美月は気付いていないが、俺に二人、美月に五人張り付いている。
義父だろう。
俺の監視兼護衛は隠れる気が余り無い。
殺気が出ておらず、気配がずっと付いてくる。
美月は全く気付いていないが、確実だ。
たぶん、六人全員に何人かづつ張り付いている。
昨日鏡華と会った時はその話をしなかった。
暗黙の了解というやつだ。
護衛が付くという事は、狙われているのだろう。
護衛は俺の朝のランニングに付いて来ている。
自分で言うのもなんだが、結構な体力だ。
今日も朝から走るつもりだ。
追いかけて来る人が居るのはなんだか楽しい。
自分の教室に着いた。
倉持君に剣術を使える知り合いが居るか聞かないと。
俺の言っている剣術は、真剣を振るう稽古をしている人を指している。
居るだろうか?
倉持君が朝練を終えて、教室に入って来た。
「おはよう、倉持君」
「おはよう、黒戸」
「倉持君、ちょっと妙な事聞くけど良いか?」
「なんだ突然」
倉持君は深呼吸した。
「お前がそういう事言うと、ただじゃ済まなさそうだな」
「なんだ?」
「言ってみろ」
「剣術を使う知り合い居るか?」
「真剣を使う感じの知り合いだ」
「居るが、理由を教えてくれ」
「居るのか!」
「理由、言わなきゃダメか?」
「そりゃそうだろ」
「…………」
「…………」
「未成年はまず触らせて貰えないぞ」
「そうなのか?」
「それでよく聞いて来たな」
「今度の土曜は練習が休みだ」
「空いているか?」
「紹介してやる」
「倉持君、助かるよ」
「紹介するだけだぞ」
「気難しい人だから、気に入られるよう頑張れよ」
先生が来た。
一日授業を受け、美術部に寄って帰った。
次の日、早朝。
雨が降っていた。
小さなカバンを肩にかけ、上から合羽を着て、ランニングに出かける。
学校の裏山を走っている時だった。
違和感がした。
監視の気配がいつもと違う。
そう思った時は遅かった。
たぶん俺は後ろから頭を殴られた。
俺は意識を失った。
久しぶりに夢を見ていた。
リビアとプロミ、二人と腕を組んで結婚式を挙げている。
美月が祝福してくれている。
みんないる。
俺は幸せだ。
『レイセ』
『そろそろ起きろ』
『今良い所なんだ』
『こんな夢めったに見られない』
起きたくない。
目隠しをされて、猿ぐつわをされ、手錠が嵌められ、イスに
イスは俺の体格より少し大きい。
俺の足が地面に触れていない。
イスの脚に、俺の脚が固定されている。
俺の監視役だった二人は、拘束されて後ろの方に転がされている様だ。
雨を感じない。
室内だ。
殴られた頭から出血がある。
止血されていない。
気を失ってから、そうとう念入りに殴られたらしい。
呼吸すると鋭い痛みが走る。
あばら骨が折れて、肺に刺さっている。
俺は部分融合で骨を補強すると同時に、骨を正しい位置に固定した。
呼吸が大分ましになった。
頭の血は大した量じゃない。
放っておく。
…………。
俺を襲った奴の気配がしない。
だが、近くにいるんだろう。
レムリアスが起こしたんだ。
間違いない。
「これは警告だ」
奴はそう言った。
位置が特定出来た。
随分甘い対応だ。
心が痛む。
『レムリアス、他は外にいるのか?』
『ああ、二人見張っている』
『一人いれば十分だろう』
『片付けてくれ』
『証拠を残すなよ』
『やっとか』
警告がどうとか言っていた奴を拷問した。
詳細は伏せる。
俺は拘束されたままの姿で、俺の持ち物からカセットレコーダーを動かした。
俺は拘束されたままだ。
部分融合で出した触手で全て行った。
奴はすべてを話し、殺してくれと喚いていたが、最後はすすり泣く声に変わった。
後ろで転がっている二人には意識が有った。
呼吸困難になっている。
レムリアスが警告しに来た奴を丸のみにして、すすり泣く声は無くなった。
後ろで転がっている二人は落ち着いて来た。
そのまま二時間ほど経ってから、迎えが来た。
義父の部下だ。
見たことがある。
黒戸和馬の息子を誘拐。
ありそうな話だ。
後の処理を全てその部下に任せた。
俺は一旦家に帰って、午後から授業を受けた。
痛みはあるが、頭の血は止まっている。
問題は無かった。
放課後。
今日は生徒会だ。
バーベキューの話で盛り上がった。
生徒会が終わった後、直樹に車を運転させた。
「テープを聞かせて下さい」
高速道路に入った。
パーキングエリアに着いた頃には、聞き終わっていた。
ナビをセットする。
「お前こっちで部分融合使えるようになったか?」
「まだに決まってるでしょう」
「なら、運転に徹してくれ」
「し、しかしですね…………」
遅くなりそうだ、美月に連絡しておかないと。
俺を襲った奴は『断罪の剣』というチームらしい。
俺の神獣が黒竜だと知らず、戦闘能力の無い神獣だと思い込んでいた。
情報を流したのは『狂奔』のメンバーらしい。
『断罪の剣』のメンバーは十三人。
残りは十人だ。
九人まで素性が録音されている。
後の四人については、これから解るだろう。
同じ地域に住む者同士のチームだ。
今日中に片付くと良いな。
朝までに片付いた。
テープをダビングして、『ロストエンド』のマスターに渡した。
『狂奔』の広報担当、名前何だっけ?
そうそう、ラドセスだ。
彼が良い。
それで解らなきゃ、仕方が無い。
マスターに渡すように頼んだ。
快く引き受けてくれた。
我ながら趣味が悪い。
他に方法が思いつかなかった。
朝方家に着いた。
いつもならランニングの時間だ。
ジャージに着替えて家を出た。
走りながら考えてしまう。
やりすぎたんじゃないか?
『断罪の剣』は出来たばかりのチームを潰して回る、質の悪いチームだった。
頭が回らない。
そう、因果応報だ。
『狂奔』も同罪な気がするが、奴らは一部だけだ。
五十人もいる。
統率が完全じゃ無いせいだろう。
今回の件で向こうが折れてくれれば良いが。
『狂奔』には、俺より強い奴がいる筈だ。
ラドセスの感じから大体予想が付く。
ぶつかり合ったらこっちが負ける。
人数が違い過ぎる。
『断罪の剣』が『狂奔』と繋がっているのが解ったのは、拷問の終盤だった。
引き返せなかった。
美月を、仲間を危険に晒している。
プレッシャーで吐きそうだ。
まさか本当に仕掛けて来るとは。
準備不足だ。
十三人も手にかける羽目に成るとは。
気分が悪い。
舐められる訳には行かなかった。
弱味を見せると押し込まれる。
家に着いた。
美月が起きて朝食を用意してくれていた。
食欲が無いが、美月が用意してくれた。
しっかり、いつも通り食べる。
美月には、何かあったとバレている筈だが、聞いては来ない。
優しい妹だ。
早めに家を出る。
家の周りに十人配置されている。
二人が俺に付いてくる。
美月には八人か。
護衛の質が上がっている事を強く願う。
いつもより早く学校に着いた。
まだ時間が有る。
少し眠るか。
『零維世』
『寝るな』
嘘だろ!
まだ何か有るのか?
『お前が寝ると、俺が寝られない』
お前。
お前。
くっ。
…………。
一旦落ち着こう。
『解った』
『寝ない』
『だがお前も起きとけ』
『…………』
寝やがった。
まあ、最近レムリアスはずっと起きて見張ってくれていたし、し、仕方が無い。
先生が来た。
授業が始まる。
逆に目が冴えてきた。
悪い兆候だ。
限界が近い。
気合で昼ご飯を食べた。
午後も起きたままだ。
授業が終わった。
今日は生徒会だ。
直樹の顔色が悪い。
直樹は帰りの運転途中に車を止めて吐いていたからな。
よく仕事に成ったな。
俺は淡々と事務処理をしていく。
直樹は笑顔を作って、楽しく会話している。
会話しながら、物理の小テストを採点している。
負けそうだ。
生徒会が終わった。
『レムリアス』
『帰るぞ』
『起きてくれ』
『あと五分』
『俺のマネか』
『お前は余裕だな』
『お前の常識は俺には通用しない』
笑わせるな。
気を遣うなよ。
『帰るぞ』
『ああ』
校門に男が立っている。
ラドセスだ。
動きが早い。
「テープを聞きました」
「だろうな」
「それで?」
「これを収めて下さい」
小さい木箱を渡された。
「ここでは開けないで下さい」
「今回の件、申し訳無いです」
「では私はこれで失礼しますね」
スタスタと歩いて行く。
木箱の中身は想像着く。
俺はヤ〇ザか。
『ロストエンド』に寄って帰るつもりだったが、予定変更だ。
家に着いた。
美月はまだ帰っていない。
木箱を開ける。
小指が三本入っていた。
はー。
俺はヤ〇ザか。
もういい、寝る。
制服のまま寝た。
いや、まだ駄目だ。
明日は倉持君と約束だ。
目覚ましをセットした。
今度こそ寝る。
俺はもう起きない。
「零維世、起きろ」
「ゲームするぞ」
十夜と友介だ。
鏡華もいる。
「美月が心配して電話して来たわ」
「悪い」
「寝不足で頭が回らない」
「直樹さんからも連絡が来たわ」
「あ、ああ、そうか」
「お前ら、ゲームは今度な」
「マジで限界そうだな」
「笑える」
「限界を超えるんだろ?」
「頑張れゼアス」
「お前らな」
「まだ訓練は続くからな」
「知ってる」
「仕返し出来るのは今しかない」
「ゲームするぞ」
マジかよ。
よりによって今か。
くそっ。
やってやるわ!
「コントローラー貸せ!」
「やってやる」
三時間はゲームした。
爆弾を配置する、懐かしいあれだ。
四人でやっているが、三人が組んで来やがる。
勝てない。
勝てる訳ない。
眠い。
そうだ、木箱だ。
「そこの木箱を取ってくれ」
「お前らに一本ずつやる」
三人が中身を覗き込んだ。
「いらねー」
「俺だっていらんわ」
「ぶっは」
「笑うしかないわね」
三人は泣いていた。
俺の勝ちだな。
三人は泣き疲れて寝てしまった。
十夜と友介は客室。
鏡華は美月の部屋で寝ている。
俺より先に寝やがった。
あのゲームは何だったのかって?
俺があいつらに相談せずに一人で片付けた事に不満が有ったらしい。
俺の疲れた寝顔を見て、怒るのを止めてしまった。
それでゲームだ。
俺はあいつらに相談しなかった。
直樹にも相談したくなかったが足が無いので仕方なかった。
俺はわかっていた。
わかっていて相談しなかった。
特に鏡華。
あいつはたぶん後で思い出して後悔してしまう。
正義感が強いんだ。
鬼に成れない訳じゃ無い。
やる気に成ったら出来るだろう。
だが引きずる。
そう言う性格だ。
どうせ部分融合出来るのは俺だけだ。
実行するのは俺だ。
そう思って、話さなかった。
間違っていたな。
相談するべきだった。
余計に傷付けてしまった。
鏡華は計画的に動く。
こういう場合は、たぶんもっと慎重に動く事を提案して来ただろう。
対して俺は、衝動的だ。
後悔もあまりしない。
予想通りに事が進んでしまって、カッと成ってしまった。
そして未だに、関わらせなくて良かったと思っている部分がある。
俺の性格も難儀だ。
つくづく思う。
直樹は黙ってやり過ごすと思っていた。
あいつは大人だな。
言うべきことをわかっている。
きちんと包み隠さず話したんだろう。
だから小指を見て、三人の想像に事実確認出来てしまった。
それで泣いたんだ。
俺の悲惨さに。
非情さに。
みんなの為にやれてしまう俺に。
反省した。
反省したが、またやってしまいそうだ。
相談だ。
相談しないといけなかった。
わかっていたんだ。
けど、無視してしまった。
俺は自尊心が高い。
たぶん高い。
そのはずだ。
だが、俺の存在なんてものより、みんなの命が大事だった。
言い訳だな。
相談するべきだった。
明日は倉持君と会うが、みんなも連れて行って良いか聞いてみよう。
俺は一人で行動しない方が良さそうだ。
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