10話 彼女

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒戸美月:零維世の妹。

      小学六年生。

      鏡華と友達。

      非常にかわいく、ファンがいる。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黒沼直樹:ベル。

      黒羽学園高等部の数学と物理の教師。

      中等部生徒会顧問。

      融合者。

      聖国クリアの守護者。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           守護者。

           閑話に登場。

 クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。

          文官長。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。

 ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。

 ロウル・ヒスリー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

 スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

            カシアルの弟子。

 リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。

 ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。

          月と太陽の国の神官兼付き人。

 レイ:『光の旋律』リーダー。

    長命種。

    血の繋がっていない子供がいる。

 ダズ:聖国クリアの守護者。

    リビアの代わりを務めている。

 ロウエル・ノキシュ:商業都市ノキシュの代表。

 テラセス・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          ライサムとは兄弟の様に育った。

 ライサム・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          テラセスとは兄弟の様に育った。

 セシル・マイカ:レイセの近衛兵。

         元一流の冒険者。

         お嬢様風。

 シャレット・キニクル:レイセの近衛兵。

            元一流の冒険者。

            お転婆風。

 ゼレア・ロットル:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          姉御風。

 シルドレ・ナバリ:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          不思議さん風。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

 長谷川さん:零維世のクラスメート。

       運動部。

 倉持君:零維世のクラスメート。

     剣道全国三位。




 

 今日知り合ったチームとは友好的に接することが出来る可能性がある。



 向こうの世界で、今日会わなかったチームに会った時、どうするか。


 交渉の余地はあるのか。


 それが問題だ。



 そして、チームに所属せず、開放日にも顔を出していない奴もいる筈だ。


 あの世界は広い。


 表舞台に立たず、何千年も潜伏している奴もきっといる。


 そんな奴らにとって、俺はどう見えるだろうか?



 きっと良い気はしないだろう。



 仲間を集めるにはそいつらを引っ張り出さないといけない。


 どうすればいい?


 どうすれば引っ張り出せる?



 思い付くのは一つだけ。


 更にもっと目立つ事。



 すでに目立つ方法を取っている俺に出来るのは、その方向に突き抜ける事だけだ。


 ダンジョンを最初に攻略し、出来る限り目立つ。


 それしか思いつかない。



 ダンジョン攻略だけで、マスターの願いが全て叶うとは思っていない。


 ダンジョンは単なる試練だろう。


 問題はその先だ。



 俺は他に打てる手を全て打てているか?


 向こうでは打てている。


 王に成った。



 向こうでは順調だ。


 では、こっちでは?



 まだ、ただの中学生だ。


 生徒会長になったが、地位のある大人との繋がりが少ない。


 目立つ為に何か考えないといけないな。



 仲間集めを考えると同時に、魔物の王や仮面の男の情報を聞き出そうとした。


 魔物の王はどうやら南半球に居そうだ。


 南半球は魔物の動きが活発らしい。


 南半球は潰された町が多いらしい。



 魔物の王は人間を管理している。


 人が増えれば、叩きに出てくる。


 向こうから来る。


 条件がわからないが、可能性は高い。



 では、仮面の男はどうか?


 目的がわからない。


 あの時、何故姿を現した?


 そして、奴の服装。



 革のハイカットブーツ。


 下はジーンズ、ハイネックセーターの上にGジャンをシャツの様に着、その上から裾がボロボロになったダッフルコートを着ていた。


 肩から日本刀を掛けていた。


 『トゥルーオーシャン』の服装では無い。


 『ロストエンド』を通らずに向こうに行っている。


 銀髪、緑の瞳、高身長。


 西洋人か?


 洗練された動きから、剣術の経験が有りそうとわかる。


 剣術をたしなめば、死角への攻撃を全て撃ち落とせるのか?


 無理だろう。



 結界を貫く斬撃。


 灰にする力。



 説明が付かない。



 『ロストエンド』を通らないで向こうに行けたとして、どうすれば身に着く?


 ノスヘル以外での目撃情報は無かった。


 たぶんどのチームも把握していない。



 魔物の王を向こうの世界のルールの頂点としたならば、仮面の男は完全にルールを無視している。


 イレギュラーな存在だ。


 そして、情報が少なすぎる。


 探りようが無い。



 剣術や武術からそれらしいヒントが見つかったりしないか?


 可能性は低いが、試すしかない。



「そろそろ、美月ちゃんが心配するんじゃない?」


「ああ、もうこんな時間か」


 みんなで『ロストエンド』を出た。


「みんな、夕飯どうするんだ?」


「お前の家で食べて来ると言ってきた」


「俺も」


「僕は一人暮らしです」

「どうとでもなる」


「じゃあ、私家に連絡する」


「十夜、友介、勝手に決めてんじゃねー」

「直樹、お前、教師が頻繁ひんぱんに生徒の家でご飯食べるとか、良いのか?」


「自分で作るのが面倒です」


「お前らを連れて帰ったら、俺が作るんだぞ」


「そうなりますね」


「俺だって面倒だわ」


「てっきり、そういう趣味だと思ってましたが?」


「そんな訳あるか」

「王に作らせるなよ」


「こっちでは僕が命令する立場です」


 お前、師匠とか言っていた筈だろ。


 笑うわ。


「お前らも手伝え」


「「「えー」」」


「えー」

「じゃない」


「美月にも手伝わせる」


「俺、手伝う」


「俺も」


「仕方ありませんね」


 御し易い奴らめ。



 家に着いた。


 こ、この匂いは。


「ただいま」


「お帰り」


「みんなを連れてきた」

「カレー、人数分あるか?」

「ご飯炊いてるか?」


「そんな事じゃないかなって思って、多めに作っといた」

「ねえ?」

「何の集まりなの?」


「え」

「と、友達かな」


「黒沼先生も?」


「まあ、そんな感じです」


「意味わからない」


「鏡華ちゃん、説明して」


「鏡華は俺の彼女だから」


「「「!!!」」」


「…………」


 静かになるなよ。


「お、お邪魔します」


 十夜、友介、直樹が中に入っていく。


 俺も後に続く。


 事が出来なかった。


 腕を掴まれた。


「え?」


「零維世、あんた、もうちょっと説明の仕方が有るでしょ?」


「零維世?」

「あんた?」

「え?」


「あ」


「…………」


「あ、兄貴に、か、彼女」

「きょ、鏡華ちゃん?」


 おお、少しずつ理解していっているのが解る。


「…………」

「兄貴が最近まともなのはそれが理由?」


 全然まともじゃ無い。


 人間からかけ離れて行っている。


 元の俺はどう見えていたんだ。


「鏡華」

「私の事も呼び捨てで良いから」


「でも、…………」


「良いから」


 鏡華が一瞬こっちを見た。


 怖い。


「じゃ、美月」

「私も手伝う」


「うん!」


 美月がどういう思考なのか全く分からない。



 二人仲良さそうに台所で準備している。


 丸く収まったみたいだな。




 次の日、月曜日。


 俺は朝から落ち込んでいた。


 昨日食事が終わった後、近くの公園に呼び出された。


 鏡華に。



 めちゃくちゃ怒られた。


 あんなに怒る人間を初めて見た。


 彼女は怒りすぎて、支離滅裂だった。



 たった一人の妹を、突き放す様な態度だったらしい。


 そう見えたらしい。


 そんなつもりは無い。


 俺は美月が好きだ。


 愛している。


 きっとわかってくれる。



 と、思っていたが、今日は朝から美月の態度がよそよそしい。


 き、きっと、ちょっと時間が掛るだけだ。


 気持ちを振り払うようにランニングに出かけた。



 ランニングから帰って来て、朝食を食べる。


「美月、醤油取って」


「…………はい」


 何?


 その間。


 まあいい。


 返事が有った。


 前向きに考えよう。


 俺は支度して、先に学校に向かった。



 朝、教室では、ゴールデンウイークに何をするかで盛り上がっていた。


 直樹に運転して貰って、バーベキューはどうだろうか?


 きっと楽しい。



 俺、直樹、美月、鏡華、十夜、友介。


 六人でだ。



 リビアが居ないのが寂しい。


 どうにかして連れて来られないだろうか?


 リビアも美月に紹介したい。


 二人と婚約していると言ったら驚くだろうな。


 今度は、徐々に情報を流し、ショックを和らげよう。



 リビアを連れて来るのは無理だとわかっているが、想像してしまう。




 放課後、生徒会室。


 直樹にバーベキューの話を振る。


 直樹は上の空だった。



 ランと上手く行ったらしい。


 カーは心から祝福してくれたと言っていた。


 こいつは今、ランに意識を飛ばしている。


 絶対そうだ。


「黒沼先生」

「恋人の事考えています?」


 他の生徒が驚いた顔をした。


 直樹は仕事一筋に見える。


 女子生徒に憧れられている。


 直樹はカッと目を見開いて、言った。


「僕に恋人なんて居ませんよ」


 その一言に、書記と会計の女子生徒が嬉しそうにした。


 こいつ、しれっと嘘付きやがった。


 憧れられるのがそんなに嬉しかったのか?


 だけど、こいつ口だけなんだよな。


 浮気は絶対にしない。


 俺の方が罪深い。


「上の空でしたよ?」


「ちゃんと聞いてます」

「バーベキューの運転役ですよね?」


「そうです」

「引き受けて頂けると嬉しいです」


「良いですよ」

「僕の車は少し小さいので、大きい車を借りましょう」


 生徒会メンバーは羨ましそうに聞いている。


「ゴールデンウイークは長いですから、生徒会メンバーでも行きますか?」


「黒沼先生、良いんですか?」


 会計が嬉しそうに聞く。


 他のみんなも行きたそうだ。


「じゃ、決定ですね」


 俺も楽しみだ。



 向こうの世界で、十夜と友介は契約した。


 でも彼らの人生には区切りがついていない。


 特に十夜。


 妻と娘がいる。


 十夜の妻が逝くまでは月と太陽の国に居よう。


 その頃には十夜の娘は自立している筈だ。



 連合国クロトでは問題らしい問題は起きていない。


 魔道具で連絡を取っている。


 俺達には時間が有る。


 ファガスとコナルには恨まれているだろうな。


 わかってくれると良いのだが。



 次に『ロストエンド』に行くのはゴールデンウイークの始めだ。


 五人で行く。



 剣術を習っている知り合いはチームにいない。


 剣道部は部員が多い。


 きっと剣術と剣道は別物だ。


 だが、誰か剣術に通じる知り合いがいる筈だ。


 剣の扱いに関してのヒントにもなるだろう。



 美術部は休む。


 月水金が生徒会。


 火木土が美術部だが。


 しばらくは火木土で剣術の知り合いを探す。


 まず、倉持君に聞いてみよう。


 どんな反応をするだろうか?


 ちょっと不安だ。



 家に帰って来た。


 美月はまだ帰っていない。


 俺はイヤホンで音楽を聴きながら、切り絵を描く。



 落ち着く。



 制服のまま、しばらくそうしていた。



 気が付くと、部屋に美月と鏡華がいた。


 気配を読むのをおこたった。



 鏡華に怒られないだろうか?


 鏡華を見る。



 目をスイと逸らされた。


 まだ怒っているのか?



 美月を見る。


 下を向く。



 俺はイヤホンを取って言う。


「お帰り」


「「ただいま」」


 今度は目を逸らされなかった。


 いつも通りの美月だ。


「鏡華、夕飯食べて帰るか?」


「自分の家で食べるわ」


「貴方、自分が作るわけじゃ無いのに、よく当然の様に言えるわね」


 言葉遣いがいつも通りだ。


「鏡華」

「兄貴はそんな日は手伝うから」


「美月」

「でもこいつは、許してはダメよ」


「ああ、悪かった」


「口ではそう言うけど、信用できないわ」


「ああもう、喧嘩しないで!」


「ごめん鏡華」


「零維世ごめんね」


「そう、それで良いの」

「仲良くね」


 た、助かった。


 美月がいなかったらどうなっていたか。


 鏡華、本当に反省している。


 ごめん。

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