9話 開放日

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒戸美月:零維世の妹。

      小学六年生。

      鏡華と友達。

      非常にかわいく、ファンがいる。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黒沼直樹:ベル。

      黒羽学園高等部の数学と物理の教師。

      中等部生徒会顧問。

      融合者。

      聖国クリアの守護者。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           守護者。

           閑話に登場。

 クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。

          文官長。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。

 ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。

 ロウル・ヒスリー;月と太陽の国の従者兼料理人。

 クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

 スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

            カシアルの弟子。

 リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。

 ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。

          月と太陽の国の神官兼付き人。

 レイ:『光の旋律』リーダー。

    長命種。

    血の繋がっていない子供がいる。

 ダズ:聖国クリアの守護者。

    リビアの代わりを務めている。

 ロウエル・ノキシュ:商業都市ノキシュの代表。

 テラセス・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          ライサムとは兄弟の様に育った。

 ライサム・マシア:ロウエルの護衛。

          孤児。

          テラセスとは兄弟の様に育った。

 セシル・マイカ:レイセの近衛兵。

         元一流の冒険者。

         お嬢様風。

 シャレット・キニクル:レイセの近衛兵。

            元一流の冒険者。

            お転婆風。

 ゼレア・ロットル:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          姉御風。

 シルドレ・ナバリ:レイセの近衛兵。

          元一流の冒険者。

          不思議さん風。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

 長谷川さん:零維世のクラスメート。

       運動部。

 倉持君:零維世のクラスメート。

     剣道全国三位。




 

 生徒大会で俺は生徒会長に成った。


 すでに会長と呼ばれ出している。


「長谷川さん、おはよう」


「会長おはよう」


「ごめん、会長は止めて」


「なんで?」

「いいじゃない」

「圧勝だったし」


「そうだぞ、会長」

「誇れよ」


 倉持君が加わって来た。


「いや、本人嫌がってるし」

「やめてあげたら?」


 山下さんナイスフォロー。


「そう?」

「じゃ、黒戸会長は?」


「それならいいんじゃない?」


 それもダメだ山下さん。


「嘘よ」

「冗談」

「黒戸君ってからかうと面白いわね」


 長谷川さんと倉持君も笑っている。


 ちなみに、山下さんは同じ美術部だ。


 からかわれていたのか、不覚。




 今度の土曜日が『ロストエンド』開放日だ。


 その日までは、普通の日常を送る事に成った。


 暇を見つけては、走り込みをしている。


 あれから数日しか経っていないが、大分走れるようになってきた。


 身体能力が強化されているのを感じる。


 筋トレもやりだした。


 こっちの世界で武器が出せた。


 自分しか出来ないとは限らない。


 鍛えておかないといけない。


 勘だ。




 日常は瞬く間に過ぎて行った。




 土曜日、夕方五時。


 待ち合わせ場所にみんなが来ない。


 俺は先に『ロストエンド』に入ることにした。



 客が多い。


 こんなにいるのか。


 店は広い。


 まだ十分スペースがあるが、開放日にはいつもこれだけいるのか?


「マスター」

「今日の客の入りはいつもと同じか?」


「いつもより多いですね」

「さて、何故かな」


 俺はカウンターに座って、コーヒーを頼んだ。


 こうしていると普通のカフェに見える。




 時間の流れが遅く感じる。


 コーヒーだけ減っていく。



 コーヒーをもう一杯頼んだ。


 カウンターで隣に座っていた男が話しかけてきた。


 男は黒髪に黒いニット帽、色の入った眼鏡、頬にはデカい絆創膏を付けている。


 大学生風だ。


「…………」

「開放日は初めてですか?」


「ええ、新入りです」


「…………」

「仲間を探していますか?」


「仲間もですが、ダンジョンの情報が欲しいですね」


「…………」

「何階層まで攻略しました?」


「教えられません」


「つれないですね」


「貴方が話を始めてから、静かになっています」

「貴方は注目されています」


「僕が、ですか?」

「それは間違っています」

「注目されているのは貴方だ、クロト王」


「はは、『ウォーターフォックス』は胡散うさん臭いと聞いてますよ」


「なんだ、芝居して損した」


 『ウォーターフォックス』は絆創膏を剥がして、眼鏡を外した。


 頬にはデカい入れ墨がしてあった。


「君、ちょっとは自重してくれよ」

「あの北を五年で治めるとか、どうかしてる」


「そんなのは俺の勝手だ」


「『最初の冒険者』の所為で、兵士志願、冒険者志願が増えて困っているんだけど」


「いい事だろ?」

「死体ばっかり働かせるな」


 『ウォーターフォックス』は両方の手のひらを上に向け、両肩を上げた。


 大げさなジェスチャーだ。


「プロミとつるんでいるだろう?」

「彼女は僕の事何か言っていたかい?」


「気持ち悪いと言っていた」


「彼女は照れ屋だからね」


 男は随分嬉しそうだ。


「何がそんなに嬉しい?」


「僕に怯まずに話が出来る人間は、限られているからね」


「それは大層な自信だな」


「自信とは別さ」

「あまりにも嫌われるんで開き直るしかない」

「今日はもう帰るよ」

「目的は果たした」


「何が目的だったんだ?」


「君と話す事さ」


「嫌な目的だな」

「陰湿な行為はやめてくれよ」


「失礼な奴だな」

「でも、気に入った」

「今度死兵国に寄ることが有ったら歓迎するよ」


「良い噂聞かないぞ」


「静かな良い所さ」

「じゃあ、またね」


 入れ違いで、鏡華たちが入って来た。


 十夜が入れ墨を見てギョッとしている。


「なんで先に行くのよ」


「時間通りに来ないからだ」


「なに?」

「時間通り行ったはずだけど?」


「五時に店の前だろ?」


「違うわよ」

「五時半にカフェよ」


「そうだったか?」


「そうよ」

「もういいわ」

「で?」

「『ウォーターフォックス』と話したのね?」


「ああ、なかなか面白い奴だった」


「でしょうね」

「あいつニヤついていたわ」

「気持ち悪い」


 飲みかけのコーヒーを持って、テーブル席に移った。


「どうも今日は人数が多いらしいけど、どう思う?」


「見た事ない顔が揃ってるわ」

「たぶん普段勧誘をしてないチームもいるわね」


「目的は、俺か?」

「自意識過剰な気もするけど、『ウォーターフォックス』にも注目されてるって言われてたな」


「連合国クロトと『最初の冒険者』、話題になるわよ」


「異世界人と何故分かった?」


「『最初の冒険者』の冒険者ギルドからじゃ無いかしら」


「なるほど」


「すいません」

「ちょっと良いですか?」


 三十代位のスーツの男性が話しかけてきた。


 名刺を出された。


「申し訳ないですが、生憎あいにく名刺を用意していません」


 直樹が答える。


「良いんです」

「大抵そうですから」

「受け取るだけ受け取って下さい」

「チーム『狂奔』の広報担当、ラドセスです」

「よろしくお願いします」

「先ほどの会話から、クロト王と耳に挟んだものですから」

「是非お知合いになりたく」

「向こうで本名を名乗るとは、豪胆ですね」


「どうせバレるだろ」


「私はどうかと思うけどね」


「お前とリビアが国名を名前にしなければ名乗って無かったがな」


「名前だと知ってる人にしかわからない筈だったんだけど……」

「不味かったかしら?」


「調べようとしてくる人間が出てきた場合、隠し通すことなどできませんよ」


「直樹、俺もそう思う」

「鏡華、気にするな」


「それで、ラドセスさん、要件は?」


「本当に、知り合いになる事以外に目的は在りません」

いて言うなら、そうですね」

「どんな方か調べて来いと」

「まさか、十二、十三歳ほどの少年とは……」

「チーム名は在りますか?」


「『フィナリスラーウム』だ」


「何名のチームか教えて頂いて良いですか?」

「うちはたぶん最多の五十人です」


「今の所五人だな」


「良い情報を頂きありがとうございます」

「出来たばかりなんでしょうね」


「ああ、そうだ」


「チームの良さは人数だけではないですから」

「王が二人もいるチームは前代未聞ではないでしょうか」


「では、失礼します」


 チーム『狂奔』。


 強豪チームだろう。


 ラドセスはかなりの実力者だ。


「こんなチームがまだ幾つもあるのか?」


「そうみたいね」

「私も『狂奔』は初めて会ったわ」


 それから、次々といろんなチームが挨拶してくれた。


 『創聖』三十人。


 『トパーズ』二十人。


 『メメント・モリ』六人。


 『ディープ・フォレスト』三十人。


 『アビス』二十人。


 『マギ』三十人。


 『静寂しじま』二十人。


 『トゥエルブ』十二人。


 挨拶したチームはそんな所だ。


 何処の街にいるかは分からない。


 ダンジョン攻略は急いだ方がいい。


 最初に攻略すると何かある筈だ。


 つまり、みな競争相手だ。



 だが、一番厄介なのは最初に会った『ウォーターフォックス』だろう。



 死の匂いのする男。


 奴とは長い付き合いになりそうだ。


「零維世、俺疲れた」


「何言ってる」

「一番疲れてるのは俺だ」


「まあそうな」

「その見た目で王として振る舞うのは疲れそうだ」


「見ている分には面白いけどな」


「そうですね」

「笑えます」


「俺の素を面白がるなよ」


「そう、疲れるのよ」

あがめられると」


「そうか、ならもっと気楽に接するようにする」


「貴方はもっと私をあがめないとダメよ」


「どうすればお前を愛している事に成るんだ?」


「自分で考えなさい」


「零維世、そういうの人前で言うのか」


「当り前だ」

「エウェルには言い足りなくて後悔してるんだ」

「その場で言う」


「それはいいですが」

「客観的に見るとなんとも……」


「どう見えようと知った事か」


「私はちょっと恥ずかしい」


「なら、今は黙っている」


「零維世、腹立つから余所でやってくれ」


「ダメだ、今は愛しているとしか考えられない」


「会話が成立してないです」

「しっかりしてください」



 馬鹿で良いだろ、王なんて馬鹿じゃないと出来ない筈だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る