2話 五十階層の下

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 リビア:元守護者。

     聖国クリアを創設した。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黒沼直樹:ベル。

      黒羽学園高等部の数学と物理の教師。

      中等部生徒会顧問。

      融合者。

      聖国クリアの守護者。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           守護者。

           閑話に登場。

 クルダム・ゼロス:ノスヘルの元代表。

          文官長。

 フレドリック・ユルロア:フレドと呼ばれる。

             連合国クロトの守護者長纏め役。

 ノイトル・ロベスト:月と太陽の国の従者長。

 ヒルデ・ガント:月と太陽の国の神官長。

 ロウル・ヒスリー;月と太陽の国の従者兼料理人。

 クアクル・ロウナー:月と太陽の国の従者兼料理人。

 カシアル・シュース:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

 スレガリン・ラウナル:月と太陽の国の従者兼裁縫士。

            カシアルの弟子。

 リメア・ラメウス:月と太陽の国の神官兼付き人。

 ヒメア・ラメウス:リメアとは姉妹。

          月と太陽の国の神官兼付き人。

 レイ:『光の旋律』リーダー。

    長命種。

    血の繋がっていない子供がいる。



 

 ノスヘルが首都となって十年。


 俺が即位して十年経った。



 街は活気に満ちていた。


 人々は暖かくなったことに喜び、外出が増えていた。


 この日は天気が良く、青空が出ていた。


 ノスヘルの青空は珍しい。


 生きる喜びを感じさせる。


 少し大げさかもしれないが、今のノスヘルに合っているだろう。


 喜んでばかりもいられないが。



 四季が有るなら、今の時期は春に当たる。


 北のこの地には春が無い。


 ずっと冬だ。


 寒い冬と暖かい冬。


 植物は育たず、農作物の収穫量は少ない。


 鉱物資源が豊かな為、これらで外貨を得、農作物を輸入に頼り始めた。



 また、魔道具の開発に力を入れた。


 魔道具で温室を作り、農作物を輸入に頼らないで済むようにするのが目的だ。


 現状では自給は実現しない。


 魔石の数と質が不足している。


 特に魔石の質には苦労している。



 魔道具内で魔石は、集積回路であり、エネルギー源でもある。


 魔石の内部に、魔術刻印をプログラムの様に刻み込み集積回路の様に振る舞わせる。


 プログラムの処理量や処理数、データ保存量は、魔石の質と大きさに依存する。


 小型の魔道具を制作する場合、より質の高い魔石が必要になる。


 魔石の質は、現状の技術では向上させることが出来ない。


 魔石の純度は人口では上げられそうにない。


 その方向での試みは失敗続きだ。


 あと数百年は、質の良い魔石を強い魔物から直接得なければならない。



 俺が二百年素振りしている間に冒険者ギルドが成立したのは前に話した。


 俺が『最初の冒険者』を書いた当時は、人々は中世ヨーロッパの様な服装をしていた。


 それから二百と数十年の月日が経過し、人々の生活に大きな変化が起こった。


 魔道具の普及が本格化し、生活の中に行き渡った。


 服装も変化し、現実世界の洋服に近づいた。


 兵士や結界師、冒険者や守護者の服装は、ファンタジーからサイバーに変化してきている。


 魔石を使った繊維が作られ、魔術を付与できるようになるなど、変化が著しい。


 他国との貿易が成立し出した事も生活の変化に大きく関わっている。



 輸入にはノキシュ商会を呼び寄せた。


 ノキシュ商会の俺への対応は予想通りだった。


 やはり俺の存在は語り継がれていた。


 『最初の冒険者』の売り上げの一部を俺の為にプールしていた。


 俺はその金を遠慮なく使い、ノキシュ商会の支店をノスヘルに出させた。


 俺が王に成ったことで、更に『最初の冒険者』の売り上げも伸びているらしい。



 あれから連合国クロトに反乱は一度も起きていない。


 その予兆も無い。


 国は栄出している。


 栄えると、魔物の王が来るだろう。


 間引きに。


 備えなければいけない。


 北にはまだ沢山の街がある。


 もっと国を拡大し、動かせる兵を増やす。


 俺は王だ。


 総力戦となった時、俺は自分を温存しなければならない。


 言ってしまえば、そのための駒が必要だ。


 今はまだ不足している。


 ダンジョンは人を鍛えるための施設として用意されたのではないか?


 ならば、まだ使い切っていない。


 五十階層より下が手つかずだ。


 マスターの願いとは別に、ダンジョンで人を鍛える必要がある。


 俺を含めて、俺たちはまだまだ弱い。


 強くなるのだ。


 生き残るために。




 『光の旋律』レイからダンジョン五十一階層より下の情報を得た。


 しかし、得るものは少なかった。


 プロミが知っている情報と大差無かった。


 『光の旋律』はレイが突出している。


 以前はもっと並び立つ奴らがいたはずだ。


 だが、レイには今それが居ない。


 消えたのだろう。


 存在が消されて、レイの記憶も改変された。


 だから情報が無い。


 今解っている情報は六十階層までだ。


 五十一階層は丸い闘技場の様な空間になっており、中心に丸い台座がある。


 丸い台座から光の兵士が、五十一階層に入った人数分出てくる。


 光の兵士は全武器を具現化して組織立って動いてくる。


 かなりの強敵だ。


 武器は部分融合じゃないと破壊される。


 五十一階層より下は部分融合前提、契約者前提の様だ。


 しかも、神獣を具現化出来ない。


 霊体が傍にいて相談は出来るがそれだけだ。


 五十一階層には絶対に降りるなと、強く言われていた理由はそこにあったようだ。



 俺は一人で六十階層まで辿り着いている。


 問題は六十階層。


 六十階層には、扉が七つあった。


 七部屋同時に攻略しないといけないみたいだ。


 扉は中に入ったら閉まるタイプの様だが、一部屋に入っただけじゃ閉まらなかった。


 全武器で部分融合出来る仲間があと六人必要だ。


 今は、俺、プロミ、リビア、三人しかいない。


 プロミが連れてきた従者は全員、全武器で部分融合が使える。


 数合わせに連れてきてもらったが、伸びしろが少ないらしい。


 連合国クロトから伸び代のある仲間を出したい。



 俺はフレドとボーデンを呼び出した。


「フレド、お前何歳だ?」


「ついに聞かれたか」

「千七百歳位だ」


「そんな事だと思ってた」

「部分融合はどの程度出来る?」


「思いつく限り、何でも」


「お前今暇だろ?」

「ダンジョンに付き合え」

「何層まで潜った?」


「ここは六十階層で止まってる」

「あの階層は人数が必要だ」


「俺もそこで止まっている」

「決定な」


「ああ、解ったよ」


「ボーデン、お前はどの程度鍛えた?」


「全力でやってますが、皆さんとは程遠いでしょう」


「お前は魔法タイプだ」

「部分融合は必要ないだろ」

「支援魔法はどの程度行ける?」


「そこには自信が有ります」


「五十九階層まで付いて来られるか試す」

「お前も来てくれ」


「了解です」



 セラリア跡地で野営する。


 セラリアダンジョンの攻略だ。


 レイに承諾は得ている。


 潜るのは、俺、プロミ、リビア、フレド、ボーデン、ノイトル、ヒルデだ。


 あとは残りのプロミの従者全員が付いてきた。


 当然か。


 俺が周りに人を置かないだけだ。



 セラリアには朝着いた。



 五十階層まで全員で行った。


 二週間かかったが難なく降りられた。


 ここまでは予想通り。


 選抜しなかった従者はここに残る。



 五十一階層。


 神殿の様な厳かな雰囲気。


 中央の台座から光が放たれる。


「準備はいいか?」


「いつでも行けます」


「ええ、行けます」


「大丈夫よ」


「問題ないぜ」


「問題有りません」


「女神様……」


 若干名別の事を考えているが、まあ行けるだろう。



 台座から七体の白く光る人が出てきた。


 光の兵士だ。


 背中には羽根が生えている。


 地面すれすれを滑るように飛んでこっちに向かってくる。


 音は無い。


 静かだ。



 中央にいた奴が強く光った。



 俺はそいつに視線が動いてしまう。


 注視だ。


 やはり組織立っている。



 注視を使った奴は盾を具現化して待っている。



 面倒なので俺は全力を出す。


 俺は両腕を長く伸ばし、注視を使った奴の首を絞めた。


 一瞬だ。


 首をへし折る。


 光人は霧散し、魔石が落ちた。



 一人。



 横から槍で突いてきた。


 俺は後ろに躱す。


 一人片付けたんだ、後はみんながどう出るか知りたい。



 リビアは目の前にいた光人を片付けた。


 プロミもだ。


 フレドも片付けている。


 ボーデン、ノイトル、ヒルデはまだだ。



 ボーデンは部分融合の盾を出してガードし、魔法を放つ。


 指先からレーザーの様な熱線を出して光人を切り裂いた。


 光人は両断されて、霧散する。



 その頃には、ノイトル、ヒルデは待機していた。


「ボーデン、行けそうか?」


「少し手間取りましたが、皆さんが速すぎる」

「私に問題は無いのでは?」


「そうかもな」

「この分だと、五十九階層までは行けそうだ」




 やはり、五十九階層までは問題なく行けた。



 六十階層。


 七つの扉が有る。


 それぞれが扉の前に立つ。


 ボーデンが若干じゃっかん心配だ。


 だが行く。


 ここまで来られたんだ。


 信じる。


「行くぞ」

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