13話 最悪な奴
レイセ:主人公。
黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。
融合者。
契約者。
黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。
ルビー・アグノス。
融合者。
契約者。
黒竜:真名、レムリアス。
神獣。
レイセと契約している。
四足移動。
背中に羽根がある。
黒沼直樹:ベル。
黒羽学園高等部の数学と物理の教師。
中等部生徒会顧問。
融合者。
守護者。
黄山十夜:春日高校一年生。
融合者。
契約者。
青井友介:七星学園高等部一年生。
融合者。
契約者。
エウェル:クリア・ノキシュの妻。
故人。
リビア:元守護者。
レイセと北の大地に旅立った。
聖国クリアを立ち上げた。
ボーデン・バレット:傭兵団ラーウム所属。
ソロのBランク冒険者だった。
閑話に登場。
ラトス・ミュラ:元ルピアスの将。
クルダム・ゼロス:ノスヘルの代表。
文官。
セムリス・リルム:クルダムの腹心。
文官。
ニシエラ・ラドラルフ:クルダムの腹心。
文官。
フレドリック・ユルロア:ノスヘルの騎士。
副騎士団長。
ピナンナ・ラクトリ:ノスヘルの騎士。
騎士団長。
十日経った。
七都市に目立った動きは無い。
準備を整えているだけだ。
準備しているのを隠す気は無い。
最悪な事に、七都市が連携を取っているのが確定した。
まあ、良い。
固まってくれた方が楽だ。
そう思おう。
そして、今回勝てば俺は王に推されるだろ。
俺が推されなくても、一国に力が集中する事に成る。
これで北は変わるだろ。
フレドはプロミの言った通り、敵国に噂を流したらしい。
『最初の冒険者』が俺で傭兵団を率いてノスヘルに雇われたと、近隣都市は知っている。
派手な話は広まり易い。
噂の所為で、冒険者がノスヘルに流入してきている。
宿屋は冒険者で溢れている。
俺は宿に部屋を取れなくて、民家を買い取った。
傭兵団『ラーウム』に入団者は増えていない。
冒険者は見物に来ている。
何かが起こると期待していやがる。
七都市の動きが遅いのは、敵兵士にやる気が無いからではないか?
敵兵士が『最初の冒険者』を殺すのを嫌がっているのではないか?
そう思い始めていた。
様子の分かるノスヘルだけでも、異様な熱気に包まれていた。
更に五日経った。
オアミ、クベルト、ミクトシアがついに動いた。
三都市はノスヘルより東に位置している。
ノスヘルに向かって来ている。
陽動だろう。
ノスヘルより西側はミスト、シーセー、ケダ。
南のテワ。
この四都市が本命のはずだ。
ケダとテワはノスヘルの直隣にある。
たぶん、精鋭をケダに集めて挟撃に出るはずだ。
わかり易い。
だが、防ぐ手立てが無い。
どうしたものか。
策が必要だ。
俺はオアミ、クベルト、ミクトシアを一人で相手し、俺以外ほとんどをケダ側に配置するよう進言した。
クルダムは渋っていたが、『光の旋律』がさらにケダ側につくと言うと承諾した。
どちらか一方に戦力を固める事に同意したのだ。
クルダムは意外と勝負師の様だ。
勝った後の地位を約束するよう迫って来た。
俺は仕方なく約束した。
勝ったら奴が王という可能性もあった筈だが、何故か俺に地位を約束させやがった。
クルダムはクルダムで、俺の事を認めているらしい。
俺、対三都市三千人の戦いだ。
自分でも馬鹿じゃないかと思う。
だが、出来そうな予感がある。
俺の良い予感は良く外れる。
逆に波乱が起きそうな気もしてきた。
たぶん波乱が起きるのだろう。
オアミ、クベルト、ミクトシアから千人ずつが合流し、ノスヘルに侵攻してきた。
俺の索敵範囲に入って来た。
さっさと終わらせて、ケダ側に移動しないといけない。
俺は集団の中心を目指した。
着いた。
見晴らしの良い平野だ。
敵兵は移動しやすい道を選んで来た。
一人で三千人に突っ込む。
『『ザ・ビュー シーン アット・ジ・エンド(最終到達点)』』
俺を中心に、黒い空間を広範囲に展開する。
範囲が広すぎて脳に負担が掛かる。
鼻血が出てきた。
耳からも。
黒い空間に入った者のすべてを把握する。
三千人の足元に黒い腕を形成し、全員の脚を掴んだ。
勝った。
後は頭を捕らえるだけだ。
そう思った時。
空から一人の男が降って来た。
その男は、浅黒い肌に銀髪、仮面を付けていた。
仮面は目が明いただけの簡素なものだ。
穴から見える瞳は緑だった。
俺は兵士たちを掴んだまま、無数の黒い腕を猛スピードで移動させていた。
男はたぶん契約者じゃない。
だが、危険だ。
兵士達を遠ざけないと、死ぬ。
クソっ!
兵士の数が多すぎる。
脳への負担が大きすぎた。
間に合わない。
俺は黒い腕を解除した。
「逃げろ!!」
「死ぬぞ!」
男は兵士達の方に向くと、肩からぶら下げていた刀を抜き、連続で
俺は結界七枚を最大限に広げ、兵士たちを防御した。
斬撃が連続で広範囲に飛び、広がり、逃げる兵士たちを後ろから結界ごと切り裂いた。
奴は、ほぼ全員に斬撃を浴びせた。
結界は役に立たなかった。
俺は戦慄している。
全く
しかも、追いうちをかけようと仮面の男は、刀を構えた。
兵士達全員が死んだ訳じゃ無い。
うめき声が聞こえる。
俺が何とか、追撃までの時間を稼ぐ。
俺は殺気を男に飛ばした。
男は俺の方に向くと、刀を俺に向けた。
来い。
俺は連続で矢を放った。
男は刀で切り裂いた。
切り裂いた斬撃がこちらに飛んでくる。
全てが必殺の斬撃だ。
たぶん盾で防いでも防ぎ切れ無い。
躱すしか無かった。
何とか躱したが、後ろの方から何かが迫る気配がした。
地面にへばりつくように身を
さっき以上の速度で斬撃が戻ってきていた。
男は自分で出した斬撃を器用に躱していた。
ズウゥーン。
ズウゥーン。
ガサガサガサガサ。
散らばった斬撃が遠くの木を切り倒していた。
斬撃の射程が広すぎる。
間合いの内側に入らないと倒せない。
『『ザ・ビュー シーン アット・ジ・エンド(最終到達点)』』
もう一度、黒い空間を広範囲に展開する。
今度はさっきより狭い範囲で濃く広げた。
霧に成って奴に近づく。
奴の死角から双剣で切りつけた。
仮面の男は、スッと無駄なく避けた。
まるでわかっていたかの様に避けた。
余りに上手く躱されてしまったので、俺の方が硬直してしまった。
あんな躱され方、想定外だ。
一瞬の躊躇のあと、バックステップし、その後霧化した。
仮面の男の目の前に屈んで実体化し、薙刀で足を払う。
男は刀で薙刀の柄を切り落とした。
俺は切られるのを想定していた。
そのまま距離を詰め、双剣で右、左、右、と切りつける。
男は、俺の作った双剣を切り落としながら躱した。
双剣の刃の部分も関係なく、バターを着る様に切断してくる。
俺はとっさに霧化した。
霧化で後ろに回り込んで、すぐさま双剣で斬り下ろし。
解っていたかのような動きで振り向き、両手を掴まれた。
男の『掴む』という行為に対して、死の危険を感じる。
レムリアスから、焦りの感情が流れて来る。
レムリアスがブレードで男を切りつけた。
男は俺の左手から手を放して、レムリアスのブレードを掴んだ。
不味い!
『レムリアス、離れろ!』
『レイセ!』
『掴まれたままでは死ぬぞ!』
『解ってる!』
俺は左手で、右腕を切り落とした。
瞬間、奴が掴んでいた俺の右腕が灰になった。
『レムリアス!』
レムリアスはブレードを切り離し、飛びのいた。
勝てない。
俺はレムリアスに
追っては来なかった。
俺の時間稼ぎは短かったが意味はあったようだ。
俺を監視しようとついて来ていた冒険者たちが、生き残った兵士たちを手当てしていた。
少しでも生き残っていてくれ。
ケダに移動する。
さっきの男から大分離れた。
あの男は何だったんだ?
俺はレムリアスに乗りながら、魔道具で連絡を取る。
「…………」
プロミに繋がらない。
ボーデンに連絡を取る。
「そっちはどうだ?」
「壁の前まで押し込まれています」
「プロミは戦闘中か?」
「そうです」
「そっちは片付いたんですね?」
「!!」
「どうしました?」
「良いニュースと悪いニュースがある」
「良い方からにして下さい」
「こっちは片付いた」
「悪い方は?」
「俺がやったんじゃない」
「割って入って来た奴がいる」
「そいつが全滅させやがった」
「そいつに今追われている」
「悪い方は一つだけにしてくれ!」
「俺がそっちに行かないと不味いか?」
「プロミ様とリビア様は手加減して戦っています」
「手が足りない」
「最悪な奴を連れて行く事に成るぞ」
「ボーロー、ラクラシ、ルコールも加わって、こっちだけで七都市と戦っています」
「わかった」
「少し考えさせてくれ」
さっきの奴の殺気が俺に固定している。
ダジャレを言っている場合じゃない。
解っている。
言葉を選ぶ余裕も無い。
魔物の王と同等の怪物だ。
広い間合いで防御不可能、おまけに反射する斬撃。
近距離は、触れると一瞬で灰に出来る能力。
そして、全てを見透かした様に立ち回ってくる。
隙が無い。
連れて行かない方が良いんじゃないか?
いや、一つの都市で千人ずつ動かしていたとして七千人。
こっちは千五百位しかいない。
ルピアスとローベルに守りを残したのが利いてしまった。
フレドとピナンナも向こうにいる。
呼び戻しているだろうが、間に合わない。
数が足りなさ過ぎる。
だが、仮面を連れて行くと、戦争どころでは無くなる。
虐殺が起こる。
俺はノスヘルではなく、テワの、南の方に向かって進路を変えた。
「!!」
仮面の進行方向はノスヘルに固定したままだ。
俺を追ってこない。
俺に選択肢が無くなった。
クソッ、ノスヘルに向かうしか無い。
どうすりゃ良いんだ?
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