閑話 勧誘

 俺の名はボーデン・バレット。


 ここ、北の大都市ノスヘルの冒険者だ。


 ノスヘルに冒険者ギルドが出来てから百年以上になるらしい。


 切っ掛けは『最初の冒険者』。


 この物語の影響でギルドが出来た。


 俺もあれを読んだ。


 嘘も多いと今なら解るが、妙なリアリティーがあった。


 俺が読んだのは文字を書き写しただけの海賊版だ。


 本物はもっと真に迫る何かが有ったらしい。


 アレを読んだ俺は、騎士を頼らず冒険者になった。


 腕は立つ。


 だが協力者はまだいない。


 ソロだ。

 

 俺のギルドランクはBランクだ。


 ランクはFから始まり、E、D、C、B、A、Sと上がっていく。


 俺はソロ。


 ソロでBランクは珍しい。





 その日は良い依頼が無く、ギルドの掲示板に新しい依頼が貼られるのを待っていた。





 二人組が突然ギルドに入って来た。


 気配は完全に断たれていた。


 強者が漂わせる雰囲気すら感じさせない。


 俺は自然と目で追っていた。




 男は、『レイセ・クリア・クロト・ノキシュ』と、そう名乗っていた。


 クリア・ノキシュは『最初の冒険者』の主人公の名前だ。


 女はリビアと名乗っていた。



 レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。


 クリア・ノキシュ。


 偶然の一致か?



 女の方は凄い美人だ。


 だが、男の方に意識は向いていた。


 何を喋っているか聞きたい。


「冒険者登録をしたい」


「私もです」


「わかりました」

「この用紙に記入をお願いします」


「紙を使っているのか?」


「はい」

「契約書になっていますので」


「なるほど」


 二人は用紙に記入を済ませて、受付嬢に用紙を渡した。


「この水晶に手を載せて下さい」


「これで良いか?」


「はい、結構です」


 水晶に手を載せるとステータスが魔道具の画面に表示されているはずだ。


 見たい。


「ほ、本名に間違いはございませんか?」

「ステータスをご確認ください」


「俺は自分のステータスを見たことが無い」

「それで良い」


「間違い無いのですね?」

「少しお待ちを」

「ギルド長を呼んできます」


 リビアと名乗った女は微笑んでいた。



 受付嬢が戻って来た。


「では、こちらへ」


「ちょっと待ってくれ」

「ステータスのこの部分、これはどういう意味だ?」


「も、申し訳ありませんが、ギルド長が部屋でお待ちですので……」

「お話が済んだ後ご説明致します」


「わかった」

「よろしくたのむ」




 二人は奥の部屋でギルド長と話をしているらしい。


 俺はまだギルド長と話した事が無い。


 ギルド長が係るのはAランクからだ。



 二人が奥の部屋から出てきた。




 二人はステータスを確認し終えた。


 何か特殊なスキルが有った様だ。


 受付嬢も知らないスキルだったらしい。


 聞こえてきたのは、七つの大罪、怠惰、そんな単語だ。




 二人はギルドを出る様だ。


 俺は二人の後を付ける事にした。



 俺はソロの冒険者だ。


 気配遮断には自信がある。



 二人は商店街の方に入っていく。



 商店街で二人は別れた。


 男の方を追う。





 しばらくして、突然見失った。



 俺は気を落として自分の宿に向かう。


 あの男は何だったんだ?



 部屋の扉を開けると男が座っていた。




「永遠の命に興味はあるか?」




  俺は安らぎを感じた。



  何故か聞き覚えのある声と感じていた。




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