16話 敵

本編の前に人物紹介を入れています。

読まなくても大丈夫ですが、この人物紹介にしか出てこない設定もあります。

早く本編を読みたい場合は、スクロールしてください

ちゃんと本編もあります。


クリア 

 異世界の夢をよく見る。

 槍使い。魔槍のクリア。

 異例の十五歳で案内人になった。

 山育ち。気配読みと気配消しが得意。

 光を放つ攻撃が出来る。

 結界を出せる。

 結界は六角形の漆黒のプレート。

 七枚同時に出せる。

 結界は空間に固定されるが、自由に操作できる。

 大きさは畳一枚分まで大きくできる。

 実は日本語が話せる。


 リビア 数少ない女性案内人

 今やこの位置。

 剣と盾を使う。

 光刃のリビア。

 十七歳で案内人になった。

 クリアと同じグループ。

 光を放つ攻撃が出来る。

 結界を出せる。

 白く輝く半球体。

 コンタクトレンズみたいな形状。

 三つまで同時に出せる。

 トアスの弟子だった。

 性格は真面目。

 誰もが認める美人。

 クレストとは兄弟。

 

 ダズ 案内人のまとめ役

 クリアの上司。

 ベテラン案内人。

 ダガー二刀流。

 戦闘の出来る斥候。

 高レベルの気配察知、隠密、罠解除。

 素早い連続攻撃で、短時間で終わらせる。

 持久力もある。

 めんどくさがり。

 結界を出せる。

 形状は不明。 

 無精ひげ。

 クリアを案内人にスカウトした。


 アル 案内人

 クリアと同じグループ。

 クリアとは飲み友達。

 攻撃魔法と結界を使う。

 ティトレの弟子だった。

 性格は少々好戦的。


 トアス ベテラン案内人

 盾と片手剣。

 堅実な立ち回りで手堅く屠る。

 最短の動きを追う。

 長期戦闘にも耐える。

 結界を出せる。

 形状不明。

 好青年。真面目。


 ティトレ ベテラン案内人

 結界使い。

 スワルズと組んで任務。

 光玉を打ち出すこともできる。

 複数個所に巨大な防御結界を張れる。

 形状は円形。

 長期戦闘もできる。

 一撃の破壊力に欠ける。

 饒舌。


 スワルズ ベテラン案内人

 ハンマー使い。

 圧倒的破壊力で一撃粉砕。

 長時間の戦闘は苦手。

 直情的。シンプルな性格。


 クレスト 案内人

 大剣使い。

 美形。

 真面目。

 結界を出せる。

 形状不明。

 リビアの弟。

 トアスの弟子。


 タロスト ベテラン案内人

 弓術と短剣。

 中距離からの狙撃と近距離のとどめ。

 当て重視の狙撃。

 弓一撃の威力は低い、手数で勝負。

 結界を出せる。

 結界を杭状にできる為、それを弓につがえて放つことが出来る。

 もとは三角形。

 複数個生み出せる。

 非常に寡黙。

 

 ジグ爺 案内人の顧問的役割

 ダズの上司。

 一線を退きつつある。

 棒術。

 変幻自在の攻防。

 圧倒的見切り。

 後の先をつく動き。

 省エネルギーで立ち回る。

 紳士。


 ベル 新米案内人

 槍使い。

 槍はクリアに倣った。

 若いのに聡明。

 結界を出せる。

 形状は不明。

 日本語が話せる。


 カー 新米案内人

 魔法使いタイプ。

 アルに倣った。

 結界を出せる。

 形状は不明。

 好奇心旺盛。


 ラン 新米案内人

 女の子。

 剣と盾。

 リビアに倣った。

 結界を出せる。

 形状不明。

 天真爛漫。


 今登場人物はこんな感じです。

 案内人は皆、気配読みと気配消しはある程度できます。


 






 子供たち三人が案内人になるのに、三年掛かった。


 時間が掛ったのは、実力に合わせた魔物が出るからだ。


 ダンジョン五十階層を攻略するには、自分の限界を超える必要がある。


 実力がありすぎたのだ。


 それでも十五歳。


 俺と同じだ。


 最年少案内人。


 これで俺が目立たなくなる。






 案内人生活八年目。


 俺は二十三歳だ。




 最近はベルとよく日本の話をする。


 彼は何故か日本をよく知っている。


 俺は懐かしい気持ちで一杯になる。




 俺は自分が涙を流す理由に気が付いていた。


 俺の中には黒戸零維世がいる。


 流した涙の理由は妹の美月を思っての事だった。




 俺の中に黒戸零維世が入ってきて何年になるのだろうか?


 俺にはわからない。


 美月が心配だ。


 いったい何年一人にしているのだろう?



 俺はどうすれば良いのだろう?



 この世界の事をもっとよく調べないといけない。


 図書館で外の世界や神獣について調べてみた。


 サバスの図書館で調べても、この世界について欲しい情報は手に入らなかった。


 神獣について調べたのは、彼らには知性があるからだ。


 神獣に寿命は無いらしい。


 死んでも知性を残したまま、またどこかに生まれ直す存在。


 長い年月を経て、非常に多くの知識を蓄えているらしい。



 俺は神獣に会っている。


 あの黒い塊の事だ。


 奴は『小僧、俺はお前を助けねばならない、不本意だがな』


 そう言っていた。



 会わないといけない、奴と。


 奴が、鍵を握っている気がする。




 俺は仲間に打ち明けないといけない。


 ここを去る事を。



 別れを切り出すなら、ベルたちが一人前になった今だろう。



 だが最近外の魔物の様子がおかしい。


 町への襲撃頻度が増えている。


 何かが起ころうとしている。


 俺の嫌な予感は当たる事が多い。


 俺は問題を先延ばしにするしかなかった。






 そしてその日は訪れた。


 その日はトアスさんとクレストさんが兵士を連れてダンジョンに潜っていた。


 俺はベルに、アルはカーに、リビアはランに案内人としての最後の仕上げを行いに、町の外に出ていた。


 ダズとタロストさんは魔物の偵察に、町からかなり離れた位置にいた。


 ティトレさんは結界師の助っ人として町の警備を手伝っていた。


 ジグ爺とスワルズさんは完全にオフ、町の中にいた。



 ここ数年で俺たち案内人は純度の高い魔石を多く集めており、魔道具の技術はかなり進んでいた。


 特に遠方への連絡手段である、携帯電話の様な魔道具に力を入れていた。


 俺とベルが強く進言して力を入れさせた。


 丁度完成して、全員に魔道具が配られたところだった。


 通信範囲はそんなに広くない。


 まだ俺の索敵が届く範囲だ。




 突然、魔道具に警戒音が鳴り響いた。


 案内人全員に対する緊急通話だ。


 通話が始まった。


 ダズからだ。


「聞こえているか?」

「これは訓練放送じゃない」

「みんなよく聞け」

「魔物の大群が町に侵攻を開始した」

「俺はこれからタロストと、魔物の先陣を叩いて侵攻を遅らせる」

「合流するまでクリア、お前が指揮しろ」

「お前がやれ」

「ティトレはそのまま結界師をサポートしろ」

「ジグ爺聞こえているか?」

「兵士と結界師に連絡を取って出動させてくれ」

「非番でも構わない」

「全員だ」

「魔物一体一体は大した強さじゃない」

「ただし魔物たちは統制の取れた動きをしている」

「指揮している奴がいる」

「みんな死ぬ気でやれ」

「町を守るぞ」


 通信は切れた。




 俺は深呼吸をした。


 フゥー。


 落ち着け。


 通信が届いたという事は索敵範囲内にまで来られているという事だ。


 まず敵の位置を確認する。



 いた。



 東だ。


 真東の方角に大群がいる。


 数は……。


 数えきれない!


 数千はいる。


 ダズは、一体一体は大したことが無いと言っていた。


 でも強い気配も混じっている。


 距離はここから走って五日ほど行ったところだ。


 索敵範囲の限界境界上だ。


 油断していた。


 進軍に速度は余り無い。


 まだ時間はある。



 俺は焦りを自覚していた。



 もう一度深呼吸する。


 フゥー。


 落ち着いた。




 魔道具で連絡を取らないといけない。


 リビアが通信に応じた。


「リビア、アルと連絡を取って壁の前まで来てくれ」

「壁の前に一旦集まる」


「わかりました」

「また後で」


 次はジグ爺だ。


「ジグ爺」

「一旦壁の前に集まる」

「スワルズを連れて来てくれ」

「兵士達もだ」


 その次はトアスだ。


「トアス」

「今何階層にいる?」


「二十三階層」

「敵の位置は?」


「町から五日だ」

「間に合うか?」


「間に合わせるさ」

「少し遅れるかもしれないけどね」


「先に行ってるぞ」


 最後はティトレ。


「お前はそこで待機」

「町まで近づけたくないが、たぶん無理だ」

「押し込まれる」

「他の結界師とデカい結界を張る準備をしててくれ」


「わかったよ」

「腕が鳴るね」


 最適な対応は何か、冷静に考えて動く。


「クリアさん、口調が変わっています」

「落ち着いて下さい」


「ベル、敬語は止めだ」

「お前は知らんかもだが、これが俺の素のしゃべり方だ」

「大丈夫、俺は落ち着いている」

「聞いてただろ、行くぞ」




 始まった。






 東側の壁の前に着いた。


 兵士が整列して待っていた。


 壁の上には結界師が並んでいた。



 皆、見知った顔ばかりだ。



 兵士たちの前にはジグ爺とスワルズがいる。


 アルとリビア、カー、ランも着いていた。


 ティトレは町の中心の塔にいる、顔は見えない。



 誰も話していない。


 静まり返っていた。



 俺は指示を出す。


「ジグ爺はスワルズとここで兵士の指揮を執ってくれ」

「リビア、アル、ベル、カー、ラン」

「俺に付いて来い」

「ダズと合流する」



 俺は声を張り上げて皆に聞こえるように言う。



「聞け!」

「直に数千の魔物が押し寄せてくる!」

「だが恐れる事は無い!」

「俺たちは強い!」

「この時の為に鍛えてきた!」

「この俺が鍛えた!」

「俺たちの力を振るう時が来たのだ!」

「三十階層を攻略した時を思い出せ!」

「もう一度限界を超えて見せろ!」

「町を守るぞ!!」



 士気は揚がったか?


 一瞬の静寂の後、「わーっ!」と歓声が湧きたつ。



 成功したようだ。


 騙すようで悪いがこうするしかない。


「行くぞ、ダズが待っている」





 遠くの方に、緑の光が見えた。


 緑の光が地面に降り注いでいた。



 タロストの弓矢だ。


 やっと追いついた。



 俺に付いて来られたのはリビアだけだ、他はまだ追い付いていない。


 全速力で走った。


 解っていたが、敵はすごい数だ。



 ダズの姿が見えない。



 ダズは敵陣の中にいた。


 ハッキリ見えないが、誰か特定の奴と戦っているらしい。


 敵陣に空間が出来ていた。



 見えた。



 相手は、黒い角の生えた白装束の男。


 ベルの言っていた奴か?


 ダズは帯状の結界をコの字型に展開し、魔物の攻撃から身を守りながら戦っている。


 

 戦闘は数分だけだった。


 ダズは仕留め切れないと判断したようだ。


 こっちに合流する動きを見せる。



 援護しよう。



 俺は敵陣に向かって槍を向ける。


 槍を引き絞る。



 解き放った。



 大きな光が敵陣を貫いた。


 敵陣に空間が出来た。



 そこをダズが通ってくる。



 ダズが合流できた。


 ベルたちも追いついた。


「助かったぞ」

「俺が戦っていた奴を見たか?」

「たぶん奴が頭だ」

「奴を殺れば統制は崩れる」

「だが、恐ろしく強い」

「仕掛けてみたが仕留められなかった」

「逃げるのがやっとだ」

「軽くあしらわれた」


 ダズは強い。


 驚異的な瞬発力による連続攻撃で、短期決戦を仕掛ける。


 適正は対人型に特化している。


 ダズが自分の間合いで戦ったら、誰も勝てないと思っていた。


 あいつは人型だ。


 しかも短剣一本で、ダズの二刀を捌いていた。


 まだ余裕があった。


 恐ろしい相手だ。


「ベル」

「あいつがそうか?」


「はい」

「たぶん」


 ベルは震えていた。


 カーとランもだ。


「あいつの相手は俺たちベテランがする」

「お前たちは他をやれ」


 今、頭から潰すのは無理だ。


 周りに敵が多過ぎる。


 取り囲んで連携して当たらないと、きっと倒せない。


 単独では不可能だろう。



 もう少し数を減らして、向こうが焦れて出てきたところを叩き潰す。


 やるしかない。


「数を減らすぞ」


 ダズも同じ考えのようだ。




 タロストが連続で矢を放つ。


 矢を結界で代用している。


 放つ前の結界の形状は、頂点までが長い底辺の短い二等辺三角形。


 それが敵に届くころには、頂点までが短い底辺の長い二等辺三角形になっている。


 一つの結界で多くの敵を巻き込む。


 その結界がどんどん放たれる。




 リビアは剣から光を放射させる。


 強い光が周囲を照らす。


 剣は右から左へ振るわれた。


 強く輝く光は放射状に右から左へと広い範囲の敵を薙ぎ払う。


 更に左から右へ。


 右から左へ。


 連続で放たれる光が眩しい。



 敵の数はどんどん減っていくが、あまりにも数が多い。


 敵の進行は途絶えない。



 ダズは一体一体を丁寧に片付けていく。


 なるべく強い個体を狙っていく。


 静かにしなやかに動き、瞬く間に敵をほふっていく。


 丁寧に、丁寧に。




 アルは自分の周囲に結界を張り、身を守りながら魔法を放つ。


 特大の火球が連続で敵に放たれた。


 放たれた先に残るのは灰だけだ。



 ベル、カー、ランは連携を取っていた。


 ランが敵を引き付け、ベルがその援護を、カーが範囲の広い炎を放つ。


 対応力の高い連携で強い個体も弱い個体も順番に倒していく。



 俺は黒く輝く槍を突き入れる。


 放たれた光は細く長い。


 前方にいる敵全てを巻き込み一撃で多くの敵を殺す。


 角度を変えて連続で放つ。


 それと同時に、七枚の結界を展開し、大きさを最大にする。


 敵に向かって猛スピードで滑らせ多くの敵を切り裂く。


 魔物の死骸が増えていく。




 白装束の男の周囲は数を減らしていく。



 だが男は微動だにしていない。



 やはり戦いは長引く。


 魔物たちは数を減らしながらも町に近づいていく。





 男が動きを見せたのは、町が見え始めた頃だった。



 男を町に近づけてしまっていた。

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