10話 会議

クリア:主人公。良く夢を見る。案内人。

ダズ:案内人。無精ひげ。案内人のまとめ役。

リビア:案内人。クリアとコンビを組む。

トアス:案内人。タロストとコンビを組む。好青年。

タロスト:案内人。トアスとコンビを組む。寡黙。

ティトレ:案内人。結界師。饒舌。スワルズとコンビ。

スワルズ:案内人。シンプルな性格。ティトレとコンビ。

ジグ爺:案内人の顧問。

クレスト:案内人候補。トアスの弟子。リビアの弟。

アル:案内人候補。

ビレー:案内人だった。

爺:クリアの育ての親。行方不明。



 案内人になって約一年。


 今俺たちは兵士六人の育成を行っている。




 そう、一年経ったのだ。


 十五歳の案内人は史上初だったらしい。


 俺は随分目立ったが、今は落ち着いている。




 リビアとはコンビを組んだままだ。


 あの後、リビアはソロで五十階層を攻略した。


 今では俺と同じような実力になっている。


 リビアは俺より光を多く引き出せる。


 光刃のリビアとか言われている。


 俺は魔槍のクリア。


 二つ名とか、笑える。




 今案内人は八人だ。


 ビレーさんが抜けた。


 懇談会の時しか会っていなかったが、ジグ爺と揉めていたらしい。


 クレストさんとアルさんはまだ案内人になっていない。


 俺とリビアが早過ぎたらしい。




 今日は半年に一回の、案内人会議だ。


 春と秋にやる。


 今回は秋の方。




 今、グループはトアス、タロスト、クレスト組と、スワルズ、ティトレ、アル組、俺、リビア組の三つに分かれていて、ヘルプでジグ爺とダズが入っている。


 今回の会議にクレストさんとアルさんは参加しない。


 将来的にはダズがジグ爺の後を継ぐのだろう。


 俺とリビア組にはしょっちゅうダズが来てくれていた。


 反対に他の組とはあまりかち合わない。


 すれ違うだけだ。


 ダンジョンは、割と一本道が多いし実力に合わせた敵が出る面倒な階層もある。


 組が会わない様にジグ爺とダズが調整している。


 自由に入っているのは候補者だけだろう。


 最近はクレストさんとアルさんで組んでいることもあるらしい。




 俺は一大決心をした。


 言葉遣いを変えたのだ。


 普段喋る時の一人称なんかを変えた。 


 心の中での一人称は俺のままだが、普段喋るときの一人称は僕だ。


 敬意を示すのは重要だと気づいたのだ。


 でも、ダズとリビアは呼び捨てだ。


 『ダズさん』とか『リビアさん』とかむず痒い。


 『トアスさん』はむず痒くない。


 そういう事だ。




 兵士は三十階層まで、結界師は四十階層まで、案内人は五十階層まで育成する。


 俺はなぜか兵士も五十階層までやると思っていたが、そうじゃなかった。


 それならみんな案内人になれるからな。


 爺には、外に出るには五十階層まで攻略出来ないといけないと教わっていた。


 これは結構重要な情報らしい。


 サバスの住民も大抵はそこまで知らない。


 結界師は、ほぼティトレさんが面倒を見ている。


 結界師の数は兵士よりずっと少ない。


 受け持つ責任は兵士よりずっと重いだろう。




 会議は拠点の会議室で行われる。


 会議が始まる。


 会議というか報告会だが。


「はい、どーもー、えーそんな訳でこれから会議をやっていく訳ですけども」


 なんだその出だし、漫才師か。


 これ前にもやってないか?


 気のせいか?


「今回から俺が司会を務める」

「言っておく」

「俺の司会の方針は、『流れに任せる』だ」


 司会とは名ばかりだな。


 より良い方向に導けよ。


 ダズ、お前真面目に出来るだろ。


 やる気出してくれ。


「冗談はさておき、トアス、ティトレ、クリア、現状を報告してくれ」


「じゃあまず僕から」


 トアスさんだ。


「クレストの育成状況ですが、現在四十階層まで攻略出来ています」

「ただ、四十一階層から先に行くには実力が足りていないかと思われます」

「三十階層の攻略を続けさせ、四十一階層からはソロでこなせるように訓練を行います」

「兵士の方ですが、クリア君から十階層まで攻略した三人を受け取り、現在は十三人の兵士が十一階層から二十階層の攻略を行っています」

「二十一階層から三十階層までの兵士は六人です」

「予定通りに育成が進んでおり、次の春には三人卒業できる見込みです」


「次は僕か」


 ティトレさんだ。


「アルの育成状況は芳しくありません」

「四十階層を突破できず停滞しています」

「四十階層を突破するには何かきっかけが必要かもしれません」

「魔法のタイプが僕と違い過ぎる為、良い解決策が思いつかないのも問題かもしれません」

「結界師の育成ですが、現在一階層から十階層までが六人、十一階層から二十階層が六人、二十一階層から三十階層が七人、三十一階層から四十階層が五人となっており、予定通り育成が進むと春には三十一階層から四十階層の五人が卒業できる見込みです」

「二十一階層から三十階層を攻略している七人全員が三十一階層から四十階層の攻略に移れるには、最低一年は必要と思われ、結界師の数は相変わらず足りていないのが現状です」


「最後は僕ですね」


 俺だ。


「現在受け持っている兵士は六人です」

「六人とも春には十一階層に降りられます」

「以上です」


「では順番に確認していく」

「トアス、クレストの育成の見込みはどうなんだ?」


「行けると思うよ」


「じゃ、そのまま様子見ていてくれ」

「トアスの兵士については問題ない」

「次、アルについてだが、一旦クリアとリビアに面倒を見させる」

「環境を変えてみようと思う」

「ティトレどう思う?」


「……アルはクリアに追い抜かれてずいぶん気にしていたんだ」

「刺激にはなると思うけど、良い方向に向くかな?」


「私はやらせてみた方が良いと思いますよ」


 ジグ爺だ。


「決まりだな」


「ちょっと待ってください」

「僕にだって攻撃魔法タイプの育成はわかりませんよ」


 完全に嫌われているんだぞ。


 正直きつい。


「やるだけやってみてください」

「私が責任を取りますので」


「ジグ爺がそこまでおっしゃるなら」


 俺の立場では、こう言うしかない。


「リビアも問題ないですか?」


 リビア、上手く反論してくれ。


「私は問題ありません」

「任務を遂行します」


 うん。


 わかってた。


 反論、出来ないよな。


「次、結界師の数が足りてないのはいつもの事だが、受け持ち出来る人数はもう少しなんとかならないか?」


「いや、変わらず二十四人が限界かな」

「一階層から十階層までの育成が辛いな」

「かかる時間が一番読めない」


「この問題は一旦保留だ」

「次、クリア」

「お前全員十階層まで攻略できるって本気で言ってるのか?」

「つまりは半年で十階層まで行けるって事だぞ」


「正確には七か月です」


「関係あるか!」

「一つの階層に一か月しか掛からなくても七階層までしか行けないんだぞ」

「どういう予定立ててるんだ!?」


「大丈夫です」

「クリアは教えるのが得意なんです」

「今全員五階層まで攻略できています」


 リビア助かる。


「クリア本当か?」

「まだ二か月しか経ってないぞ」


「本当です」

「五階層で鍛えてます」


「それを先に言え」


 ちょっと理不尽じゃないか?


 もう少し説明させてくれ。


「トアス、兵士の受入人数は何人まで行ける?」


「三十五人までなら何とか」

「あと十三人だね」


「クリア、来年の春に十人割り振る」

「必ず今の六人を十一階層に降ろせ」


「わかりました」


 これでいったん休憩かな。


「じゃ十分休憩」


 だと思った。




 十分たった。


「じゃあ続きだ」

「クリア、二か月で五階層まで攻略ってどうやったんだ?」

「何かやってないと不自然だろ」


「僕は日記を付けるのが日課なんです」

「一階層からの攻略方法について思ったことを同時にメモしていまして、それを読みやすく纏めたものを兵士に読ませました」

「十階層までの分しか無いですが」


「今持ってるか?」


「いや、今は……」


「私が持っています」


 リビアは気が利くな。


「ちょっと見せてくれ」


 いや、ただのメモなんだけど。


 効いたので思いつくのってそれくらいなんだよな。


 あとは実践させるだけだし。




 じっくり読んでいるな。


「ティトレ、今文字盤もってるか?」


「あるけど」


「結界師も兵士と共通点があるはずだ」

「コピーして結界師に読ませてくれ」


「なるほど」

「良いかもね」


「クリア、同じものを三十階層まで作れ」

「良く書けている」


「わかりました」


 ダズのさりげなく褒めてくる所、狡いと思う。


 やる気出た。


「次、もう一つ、クリア」

「お前、ティトレに結界の張り方を教われ」


「え?」


 ダズがなにを言っているかわからない。


「え、じゃない」

「マジで言ってる」

「多能化だ」

「わかるだろ」

「リビアも習え」

「お前ら、攻撃するとき光るだろ」

「あれ、原理は魔法と同じだろ」

「なら、やれない事無いだろ」


 無茶苦茶言うなー。


「なるほど」

「やってみます」


 リビア、真面目が過ぎるぞ。


 断ってくれ。


 俺も引き受けないといけなくなるだろ。


「わかりました」

「やってみます」


 俺も真面目だったー。


「真剣にやれよ」


 それはもういいよ。


「タロスト、何かあるか?」


「…………特に無い」


「スワルズは?」


「ティトレに任せている」

「問題ない」


「リビアは?」


「特にありません」


「他、意見のある奴は?」


 いない様だ。


「では私から」

「去年からクリア君とリビア君が加わり新体制となっています」

「ビレー君が辞めてしまいましたが、この新体制でこれから一丸となって町の守護の柱となって頂きたいと思います」

「つきましては、クリア君とリビア君には一階層から十階層までの結界師の育成を含めての新人枠を担当して頂きたく、結界の張り方を覚えさせるよう指示したのは私ですので、ダズ君の言葉を借りるなら、真剣にやるようにお願いしますね」

「私からは以上です」


「では、解散」




 会議の後もまだ何か話している。


 俺は帰るぞ。


 若い世代とはそういうもんだ。


 俺は若いんだ。


 会議って疲れるな。


 無くならないか?

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