七話――今後の方針
「己らも編入なのか?」
「ええ。初等科から中央校に入れるもとい通えるのはよほどの頭脳か、お金持ちだけよ」
「ヒュリアが言うともやっとする」
「ああ、もっともだ」
「?」
「ヒュリアの実家はナシェンウィルの最高十貴族のひとつに数えられていてまあ、金持ちの御令嬢なんだ。しかも、現時点で中央校一の頭脳を誇っている、と言っていい」
「本来ならもっと格式の高いお嬢様、お坊ちゃまの学校に通うんだけど……当人が学習レベルが低いって蹴って中央校に中等科から編入したの。まあ、なに? 反抗期?」
「お金持ちだとか貴族なんて称号なんの足しにもならない、が私の初期衝動で動機よ」
さらっとすごいことを言う御令嬢である。だが、わからなくもない。そういう家に生まれてもお高く留まったのばかりでないのは珍しいことじゃない。庶民の方に憧れを持つ貴族も多い、とどこかで誰かが言っていた気がする。貴族でいるのは雁字搦めも同然。
そういうひとはたいがいにおいて大きな目標を立てていたり自らに課している場合が多い。ヒュリアも今のところわからないがそういう傾向にあり、その学校に通っているのだろう。聞けば三人共、中等科から一緒になり、それから友達になったのだとか。
ザラは運動神経がいいので高等科にあがってからは武術科の授業を多く取り、クィースはまあ予想に違わずおバカなので普通科はヒュリアにかなり助けられ、芸術科の授業で必死に点を稼ぎ、二学年にあがれた。ヒュリアはまんべんなく高得点を取っているそう。
ただ一個の授業を除いて。と聞いた時、三人共非常に苦い、痛い顔をしたのでなにか問題のある授業を取ってしまった臭い。とだけ思ってシオンは以上に興味を示さず、中央国立小中高等学校の冊子に目を通している。
その中で目に留まったのは変わった学科が多い点。中でもどこの変人が取る? というような竜生態学などというのもあり、シオンは微妙な気分になった。もしも、竜ほど叡智に優れ、神々しく在る者があの戦国にいてくれたら、と思ってしまって。
もしかしたら、助けてくれたかもしれないのに。サイであったシオンのことを。それともそれすらもないものねだりで愚かな願望なのだろうか、と思いつつ冊子を読み終える。
それと同時に複数の、正確には三人の視線が突き刺さってきた。シオンが中央校に編入という道を取ってくれればいいなぁ、というのが伝わってくる。答は決まっている。
「必ず受かるものでもなかろう。特に私は学がない。試験などされても余裕で落ちるぞ」
シオンは一切迷いなく編入の道を取った。賢い選択かどうかは置いておいてたちまち食と住が困る。となれば、その教頭先生の厚意に甘えておく方がいい、と思ったのだ。
今まで学校など無縁の生活を送っていた。ならば未知の道なれどそこに身を投じてみてもいい。もし困った時はこの三人……ひとり不安要素があるも三人が頼りになる。
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