第7話 アルコール

階段を上り、部屋の前に着く。

滑らかな動作で女は鍵を取り出し開けた。

「鍵まで持っていたのか…」

「運命の人の鍵なんて持っていて同然です」

「部屋の中まで物色していたのか?」

「それじゃあ住居侵入罪じゃないですか」

「じゃあ何の為に…」

「貴方を見守る為です!例えば強盗にあったら助けてあげられるように!」

「今も強盗みたいなもんだけどな…」


部屋に入った女は興奮ぎみに辺りを見回した。

「これが貴方を毎日映し出す鏡…これが貴方が毎日食事を取る机…素敵…」

部屋の一つ一つに感動し興奮し舐めとるかのように何度も擦り寄って、まるでマーキングされているようだ。


「気味が悪い事はやめてくれないか」

「はっ…すみません…あまりの感動に…」

「まあストーカーを家に入れた俺が悪いんだがな」

「ストーカーでなくて運命の人を守っていたんです…」

「どうでもいい…」

この異常な状況に吐き気を催し、冷蔵庫の中に冷やしてあったビールを手に取る。

「あって良かった…」

「待ってください!」

女に手を叩かれる。

「アルコールなんて摂取したら感覚が麻痺します!」

「いいだろう少しくらい…」

「最高の状態で殺させてください!」

床に転がるビールを眺める。落としてしまったからには泡立っていてすぐには飲めないだろう。

「わかった…まあ、この後どうせ何もないだろうがな」


「何を言ってるんですか?やりますよ?」


女は俺に跨り押し倒してきた。


「さて…どうしたいですか?」

手と手を絡めて女は問いかける。

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