第6話 招き入れ

本性を表しやがった!

それが目的だったんだ!


「気持ち悪い…ストーカーめ」

通報しようとスマホを取り出した。

だが、その手を女が掴み邪魔した。

「待ってください!」

「もう付き合っていられない…通報させてもらう」

「やりたいくせに…」

女は睨み呟いた。


「殺し殺されあいたいんじゃないんですか?」

女は勝ち誇った顔で言い放った。

「私は貴方を殺してもあげますし、貴方の手で殺されてもあげます」


ゴクンと自らの喉が鳴った


「さあ…早く部屋に行きましょ?」

蛇のように女は腕を絡めてきた。

それを払いのける事なく、家路につく。


「何故こんなにも俺に執着するんだ?」

「一目見てわかったんです」


「貴方は死を求めている」

女は俺の腕に爪を立てる。

「私にはわかるんです…わかるんです…」

ぶつぶつと女は繰り返す。

あまりにも気味が悪いこの人間を家に引き入れようとしている自分にも寒気がした。


「なあ、例えば殺すのでなく普通に付き合ってみたいとは思わないのか?」

「それではいつかは別れて離れ離れになるじゃないですか」

「それはそうだが…」


「私は永遠が欲しい」


女が先に歩み始めて、俺がついていく事となった。

いつもと変わらぬ自らの家に着く。

ここで殺し合うというのだから不思議なものだ。

いまだにピンとこないものだ。酒でも買って気を紛らしても良かったものだ。


「さあ、着きましたよ」

「まるで自分の家かのように言うな?」

「何十回何百回と来ていれば我が家も同然です。」

「三十回じゃ飽き足らず…家には何百回も来ていたのか…」

改めて女の気味の悪さを肌で感じ鳥肌が立つ。


「さあ、行きましょ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る