第5話 提案

ここで気味悪がって走って逃げればよかった。


だが、気づけば女の手を握っていた。

自分でもその行動に驚いていた。


「嬉しい…」

女も強く握り返してきた。


「本当の意味で結ばれましょう?」

にやあと笑う女の喋る言葉に合わせて動く喉元をジッと見ていた。


つつーっと人差し指で女の喉をなぞる。


「ふふっ…積極的ですね…」

女は恍惚の表情を浮かべていた。


これを潰せるのか…


普通の人間は越えるはずのない壁…


本当に俺は越えたいのか?


「やめよう…」

「何故ですか?」

「人殺しになんてなりたくない」

「人だなんて思わなくていいです!」

「そう思っても…捕まるじゃないか」


「じゃあ…じゃあ…」

女は息を荒くする。


「私が殺してあげます」

女は気味の悪い笑みを浮かべた。

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