第3話 交渉

「どこかで買い物をしましょう」

女はスマホで調べものをしている。

「なぜだ?」

質問すると手のジェスチャーを加えながら女は力説する。

「絞殺なのか刺殺なのか毒殺なのかで必要な物が変わります。必要ならば、その後の死体の始末の用意もいりますからね」

まるでもう経験したかのようにベラベラと殺人の用意を女は話していく。


「その必要はない」

ただもう帰りたい。

「それでは…手で絞殺か家の包丁で刺殺という事ですね」

もうどうにかしてくれ…


「いいかい?俺は殺人も犯さないし、ましてや君も殺さない。ついてきても無駄だから」

言葉に拒絶の意思を込めて言った。


「いいんですか?人生に一度だけ…一度だけかもしれない体験ができるかもしれないんですよ…?」


咄嗟に歩みを止めた。


「一度だけなら…体験してみませんか?」


ジワリと手に汗をかいた気がした。

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