決着

 私の思考はまるで暗闇に飲み込まれたようだ。


 何も見えない。何も聞こえない。


 きっかけもヒントも確信も、全て得ることが出来ない。


 全部どこかへ消えてしまった。


「ねぇ有咲……どっちなの? 表? 裏?」


「えー……どうだろうね……」


 それでも私は抗って、何かを得ようと試みるが分からない。


 有咲の反応が全く違うのだ。


 ただ感じるのは有咲の得体の知れない余裕。


 だが表か裏か、しか有り得ないこのゲームで、こんな余裕を出せるはずもない。


 その反応が有り得るとしたなら……

 それは……


 一つの仮説が浮き上がる。



 それは……私の今までの考えを全て根本から覆してしまう衝撃的な真実。


 頭の中を電撃が駆け巡った。


 このゲームの有り得ない答え。


「ねぇ……京香、もういいよね?」


 まるで鎌をもった死刑執行人がもう思い残したことはないか、と聞いて来るかのような口振りで、有咲は尋ねてきた。


「うん、良いよ」


 私が答えると有咲は満足したように頷いた、と思う。


「もう答え、分かったから」


 そして、満足気な表情が一転して、疑問へと変わりゆく。謎に包まれる。

 それらが不思議と見なくても分かっていた。


 私は確かな答えを述べる。



「答えは“どちらでもない”」



 瞬間、有咲とゲームマスターである三人がハッと息を呑んだ。



「え……そんな、な、な、何言ってんの?」


 有咲は声を震わせながらも聞いてくる。

 その反応こそが正しい証明だった。

 もうそこに先程までの余裕はない。


「簡単だよ。

 さっきのお金をばら撒いた時……あの時音が鳴ったよね、私も凄い驚いたくらいに。かなり大きい音が。

 その時なら……出来るよね、ゲームマスターなら

 音に紛れて“机の上”にあるコインを取ってしまうことだって」


 私は三人に向けて静かに言い放った。


「え……すご……」


「うそ……」


「やっっば……」


 それを聞いた三人は口々に驚愕といった反応を示し、私の推理が的中している事を認めていた。


「つまり……“机の上”のコインが表か裏かを当てる、っていうこのゲームの答えは……“どちらでもない”……だよ」


 数秒の沈黙。のはずなのだが、私にはそれが数分、いや数十分にも感じられた。


 やがて、その沈黙を破るように声が響く。


「負けたよ……京香……」


 有咲が呟くと、次にアイマスクを外すように指示し、私は耳に掛けられた紐を指で引っ掛け、外した。

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