x-Ⅱ.くらいめ
踊り場にあったのは鏡だった。それは私を映してもまだ余裕があるくらいに大きくて、余白とも言える場所には灯りの入らない闇があった。鏡越しだというのに吸い込まれそうで、思わず身体を震わせてしまう。爪先からじわじわと侵食してくる冷たい何かを払いのけるように、強く頭を振った。おかげで冷たいそれは霧散したようになくなるが、代わりにこめかみが揺られたせいかずきり、と痛くなった。
本当にどうして来てしまったんだろう。今更そんなことを考えても仕方がないのに、ちらちらと頭に浮かんでしまう。ただの怖い物見たさで来たのは間違いだっただろうか。顔は動かさずに視線だけ階段へと下ろしたが、すぐに鏡に戻す。
鏡は何も言わずそこにある。耳が痛くなる程の静寂に、恐怖心が少しずつ膨らんで行く。白雪姫に出てくるお妃さまは、どんな気持ちで鏡に語りかけていたのだろうか?
興味本位で来ない方が良かったかもしれない、そう口に出そうとして。
静寂に、音が響いた。
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