x-Ⅰ.くらいみち

 十二月も終わりが近づくと、深夜は寒さがより増した。家では暖房をつけて、外出する時はコートを着込むような時期だ。吐いた息は白く蒸気のように舞い上がり、少し漂って消えた。こんな寒い夜だと言うのに、私はマフラーを巻いて暗い道を歩いていた。

目指すは学校だ。早いところはもう終電が走った後だろうか。家は学校から徒歩で十数分の距離にある為、電車が走っているかは関係ないが、ふと気になってしまった。そんな時間に外を歩いているなんて、妙に新鮮な気持ちだ。

 暗い夜に浮かぶのは小さな星と丸い月。寒さのせいか空気がとても澄んでいて、その光をとても美しく見せている。まだ日が変わる前だと言うのに、周囲はやけに静まり返っていた。抜き足差し足忍び足、とでも言うようにゆっくりと先へ進む。人目を忍ぶように歩き続けて、そこに辿り着いた。

 夜に沈んだように在る鉄の門を見る。手入れもされず風に晒されたからか、触れば浮いた錆が鱗のように落ちそうだった。その向こうに見える大きな木造校舎は、廃墟と呼ぶに相応しい汚さだというのに妙な威圧感があった。

そのせいだろうか、また別の『何か』のせいかはわからない。

昼間の寂れた雰囲気よりもずっと、何かが『いそう』だと感じた。

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