第4話 婚約裏事情1
***ラウラside***
ある日、お父様に呼び出されました。
そこには、お父様とお母様、そしてお姉様と何故かクラウディオ殿下がいらっしゃいました。
「君に頼みがあるんだ」
そして何故か婚約者であるお姉様にではなく、私にクラウディオ殿下がそうおっしゃられました。
お父様達を見ても事前に話は通っていたのか、反応はありません。
「何でしょうか」
「婚約して欲しい人が居るんだ」
「……婚約、ですか?」
私は貴族です。
貴族の令嬢は当主であるお父様が縁談を整えるのが普通です。
勿論、更に上のクラウディオ殿下が話を持ってきたのなら断れることではないでしょうが、どうして私に頼む形で婚約を持ちかけてくるのでしょうか。
何より我が家の将来が不安定な状態の為、私の婚約者の席はわざと空けられた状態でおりました。
大きな声では言えませんが、お兄様の当主適性疑惑があったことと王子妃予定のはずのお姉様とクラウディオ殿下の仲があまりよろしくなかった為です。
最近はお姉様とクラウディオ殿下の仲は改善されたようですが、クラウディオ殿下からのお願いでも埋めてしまって良いのでしょうか。
「彼は色々と複雑でね、君くらいにしか任せられないと判断した」
「ラウラ。貴方に任せる形になってごめんなさい。でも、
「陛下も危険ではないだろうとおっしゃられたし、私もそう思う。後はお前次第だ」
殿下、お姉様、お父様と次々に言われ、良く分からないけれど不穏な空気が漂っていることだけは理解しました。
しかし、取り敢えず話を聞かないことには返答も出来ません。
「その方のお名前は何でしょうか」
「トゥリオ・ニッツォーロだ」
トゥリオ・ニッツォーロ。
聞き覚えのない方です。
ニッツォーロという家自体は知っています。確か伯爵家だったはずです。
しかし、トゥリオというお名前には覚えがございません。
だけど、この空気を見るにそれなりの方、なのですよね?
「申し訳ございません。どのような方なのでしょうか」
「トゥリオはニッツォーロ伯爵家の三男だ。知らなくても無理はない」
伯爵家の三男を私の婚約者に?
益々意味が分かりません。
「彼は……簡潔に言ってしまえば私達の恩人なのだ」
「恩人、ですか」
やはり意味が分かりません。
恩人だからと言って、公爵家を継ぐことになるかもしれない立場にさせるのはどう考えてもお父様からしたら反対する縁談のはず。
けれど、誰も彼に相応の立場を与えること自体には反対していない様子なのです。
「簡単に言うとね、
「それは……素晴らしい方ですね」
でいいんでしょうか。
いえ、そういう話ではないはずです。
「ただ、そのやり方が問題だったんだ」
「やり方、ですか?」
「ああ。私はその……はっきり言うと最低の王子だった。シルヴィアの婚約者としても最低だった」
「クラウディオ様……」
「良いんだ、本当のことだからな。君が許してくれて、やり直す機会をくれたことを本当に幸運だったと思っている。自分の婚約者がこんな懐の大きな素敵なご令嬢であったことにも気付かずに自分本位で物事を見過ぎていた。本来なら私は見捨てられて当然だった」
何でしょう。
少し前のクラウディオ殿下では考えられないことを言っておられます。
本当に人が変わったようで、何があったのでしょうか。
「私がそんな最低最悪な王子であると気づかせてくれたのが、トゥリオなんだ」
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