ソードワールド2.5ミニCP「約束のプラネテス」

2021年4月17日から、24日、5月1日の3日間で行ったミニCPの感想記事です。


◆シナリオについて

今回のテーマは「宇宙」そして「時を超えた約束」をテーマにした珍しくあんまり重くないシナリオ。いや重いのか? 一般平均がよくわからないけれども、最後は笑顔になれる物語(になるはず)である。実はもともとシナリオを公開することを前提に造っているため、楽しみやすい重さにしているつもり。


このシナリオは今を生きる「現在編」と、300年前の大破局直後を舞台にした「過去編」、そして現在・過去と物語が進んだ後で行う「未来編」の3部構成となっている。

物語の舞台はアルフレイム大陸、ブルライト地方。発見された魔動機文明の遺跡を舞台に、今と過去が交錯し、未来を紡ぐようなシナリオを目指した。


詳細は「ソードワールド2.5リプレイ『約束のプラネテス』」にて極めて詳細に書いているため、そちらを参照していただきたい。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220010214777


◆参加者

今回の参加者はこちらの方々。といっても、いつものメンバーになりつつある。


PL:はやみさん、じゃっくさん、ベーゼンさん、たけしんさん


尚、上記リプレイにてPC達の物語を書いている以上、ここでどのPLがどのPC担当だったのかの明言は避ける。というか、知ってる人は大体キャラクターやPLトーク集を見ていただければわかるだろう。知らない人は誰がどのキャラクターなのかを想像していただけると面白いかもしれない。

各キャラクターについても、上記リプレイに詳しく記載されているため、是非読んでもらいたい。というか、ここでGMが書くよりもそっちの方が良いと思われる。


◆感想

実のところ、今回のセッションはテスト的な要素がとても強かった。レギュレーションとして今回は1PL2PC(現在・過去)でそれぞれの時間軸にキャラクターを作ってもらい、動かしてもらう形をとっている。シナリオ的にも、二つの時間軸を絡めた物語を創る練習……といった側面が強い。

また、戦闘は“熟練戦闘”を採用しており、どれぐらいの戦闘負荷なのか? 何体まで敵を出しても大丈夫か? どういったギミックを入れたら面白いか? 上級戦闘とどちらがいいか? などなど、いくつかの観点でのデータ取りを行った。


シナリオとしては、非常にシンプルかつ王道な物語に仕上げることができたかと思う。「現在編」では過去編で動くことになる遺跡(研究所)を探索しつつ、この場で何が起こったのかをPLに想像させる場として。「過去編」では何が起きたのか明らかにしつつ、一気に物語に引き込み、「未来編」で現在・過去と見てきたPL達に最後の選択を迫りつつ、きゅっと物語を〆る構成にしている。


現在編は若干冗長に展開しつつ、ゆっくりと進めていった。ここに関しては、もっとPC達の深堀をした方がよさそうではある。というか、振り返ってみればPC達への深堀が少ないので、何かイベントや前半で介入できるNPCを配置してもよかったのかもしれない。


過去編については、PL達からもっとNPC「ライカ」に関して深堀したかったという要望が多かった。そうだよねライカかわいいもんね。GMももっとライカを動かしたかったが、時間的制約でいくつか予定していたイベントをなかったことにしていたりする。過去編は二日でもよかったように思えるが、そうすると全体を4日で終わる構成にするか、バトルを削る必要が出てくる。多分バトルを削るといい感じになるとは思う(もしくは上級戦闘にする)


未来編については特にいうことはない。“フォルトナ”としてDrメテオール(の中身)を登場させたが、ここは完全に“フォルトナ”という別人でもよかったのかもしれない。


今回のシナリオは「宇宙」をテーマにしつつ、二つの時間軸を行き来することで「PCは知らないけどPLは知っている」という状況になった時、PLはどんな選択を最後にするのか? をGMは見ていた。

過去編でライカと親密な仲になればなるほど、ライカを救いたいという気持ちが強くなるが……今を生きる冒険者たちは当然そんなことは知らない。PCとPLは別物である、という不文律をどれだけ壊して、PL達がライカを救おうとするのか。

「ライカ」は過去編のPC達と、必ず何かしらの約束を結んでくるが、その約束を果たすため、PCとPLはどんな選択と行動をとるのか。というところがこのシナリオの面白い所かもしれない。


このシナリオは、普段私が創るシナリオの中では一番万人受けするシナリオとなるように作っている(つもりである)。なので、シナリオ側からアプローチする物語の力が非常に強い。基本的にその物語に乗っていけば、どんな人でも最後の選択の前までこれる。ただ、その選択肢を選ぶときは、本当にライカを救いたいと思わなければ、その選択肢が選ばれないような仕組みにしたつもりである。ある意味、意地悪なシナリオだったかもしれない。


今回の冒険者たちは「ライカ」を救う選択肢を選んでくれた。

今を生きる冒険者たちには、メリットがないにも関わらず(もちろん、ゲーム的には依頼としてお願いするので報酬はあるのだが)、それぞれがライカを救うための“理由”を考えて、シナリオに付き合ってくれたのだ。これはとてもうれしかった……理由はそれぞれ凄い差があったけどね!


なお、一番最後の未来編にて“カルディア・グレイス”から依頼される「ライカの救出」を拒否することもできる。その場合、ライカはラクシアへと帰ることは永遠に叶わない。

冒険者たちが拒否した後も、カルディア・グレイスはライカをラクシアへと戻すため、停止中だったカルディアを再起動させるが制御に失敗。冒険者たちは復活したカルディアと、逆に乗っ取られたカルディア・グレイスと戦うこととなる。

その後、二つの魔導知能を破壊したのちに、カルディアが攻撃衛星“イグニス”に攻撃指示を出していることが判明。皮肉にも、300年前と同じ状況に。そして今度は、“ルミエル”ではなくプラネテスに乗ったライカ自身が、ミサイルを発射する前のイグニス本体へと体当たりを敢行し、自爆してしまう。

最後には、イグニスの欠片とプラネテスの破片が振りしきる流星群の中で、物語は幕を閉じる……という流れになっていた。本当にそっちを選ばなくてよかったなぁ……


総括として、「約束のプラネテス」はまだまだ改良できる余地があるものの、GMが想定したもっとも最良のENDを迎えることができた。降りしきる星々と共に、ラクシアへと還る冒険者たち。彼女たちの生きる未来は白紙のままだ。願わくば、その真っ白なキャンバスに、“約束”を果たし、惑うことを終えた「ライカ」の笑顔も描かれることを願って。



◆とたけのこぼれ話

ここからは感想記事とは全く関係ない、こぼれ話である。

このシナリオができた流れや、細かな設定についてちょろっと書いていく。


◆このミニCPの発端

そもそもこのミニCPというかシナリオネタは、かなり以前から存在していた。2レギュ制ではなかったものの、「300年前の出来事を知る、宇宙を漂うキャラクター」という像はかつて行ってた長期CP「300年目の英雄譚」にて使おうと思っていたネタだった。が、CP展開的にねじ込むところがなかったので没となり、随分長い間放置されていたのだ。

で、2021年の1月末。最後にGMをやって1か月くらいたってから、公開することを前提にしたシナリオを作ってみようと作成を開始したのである。


◆コンセプトについて

上記感想記事でも「宇宙」をテーマにしており、結果的に全編通してシリアス寄りなお話だったのだが、実は最初はもっとギャグ寄りな話だった。なぜなら、このシナリオの元となった構想の一つに『────カルキノス、宇宙ソラに行く(仮)』という訳の分からないシナリオが存在するからである。


ある日空からカルキノス(カニ型魔動機)が降ってきた! というところから物語が始まり、空から降ってきたカルキノスと共に宇宙ソラへと行くとそこにはクソデカカルキノスが宇宙を漂っている……とかいう常軌を逸したプロットが個人的なメモ帳個人ディスコードに書かれていた。なんだこれは。


何はともあれ、「宇宙」というテーマの出発点はそんなよくわからないところからきている。その後、「300年前の出来事を知る、宇宙を漂うキャラクター」という像が追加されていった。


そして、2020年12月6日の「はやぶさ2」の地球帰還。2021年2月に火星探査船「パーサヴィアランス」が火星へ到着したなんてニュースを聞いて、「その時、ふと閃いた! このアイディアは、シナリオのネタに活かせるかもしれない!」と思い、このシナリオが生まれた。


◆シナリオタイトルについて

毎回クソ悩んでる。今回も悩んだ。

「約束のプラネテス」は、タイトル通り“約束”が重要な意味を持ってくるシナリオである。また、“プラネテス”は古典ギリシア語で「惑う人々」を意味する言葉であり、惑星(Planet)の語源となっている。300年間宇宙を惑いつづけたライカ。また、大破局の直後の混乱に“惑いつづけた”もの達を描くのに、これ以上ピッタリくる言葉は思いつかなかった。


◆NPCについて

今回のNPCちゃん。

・ライカ(性別:女/年齢:10才前後/種族:人造)

今回、宇宙をテーマに物語を書くにあたって、300年間惑いつづける少女としてのポジションを持つ子。名前から察せる通り、ソ連の宇宙犬「ライカ」のオマージュである。史実のライカは、打ち上げ時のショックで死亡してしまったのだが、このシナリオのライカの命を左右するのはPLである。

Drメテオールという研究者を中心に、人為的に産み落とされた「人造人間」。人間の体をベースに、頑強な肉体を持つリカントの特性と、魔動機と接続し、人間に限りなく近い人造の魂を埋め込むことからルーンフォークの特性を併せ持っている。

頑強な肉体の特性でリルドラケンを選ばなかった理由は、人間の大きさや形から大きく外れるためである。人間が乗る魔動機のテストに使うので、当然形は人間形が好ましい。あと、宇宙犬「ライカ」をオマージュしているため、犬耳を生やせるリカントとしている。幼女にする必要はないのでは? それは私の趣味なので仕方ない。

人類崩壊後、生物の種子を詰め込んだ箱舟“プラネテス”の管理者件その魔動機一部品として、衛星軌道上にて数百年間漂い続けるために造られた。精神や記憶もDrメテオールなどによってデザインされており、「どんな酷い命令であっても人族を愛する」よう精神を造られている。

そのため、「過去編」にて冒険者たちが“カルディア”の提案に乗り、地上全ての人族を全滅させる選択肢を選んだとしても、彼女は地上の人族を守ろうと行動する。例え、PC冒険者に冷遇されてもだ。

因みに、一人称は「ボク」である。これは研究所から彼女が出たことがなく、産み落とされたばかりのライカと接していたDrメテオールの一人称が「ボク」であったため。その後、「私」にさせようとDrメテオールは躍起になったようだが、そのまま定着した。


・Drメテオール(性別:男/年齢:32歳/種族:人間)

研究基地“ヒュブリス・ベース”に勤める研究員の一人。ライカを作り上げた研究員の一人であり、魔航戦を使った衛星軌道上へ箱舟を打ち上げる計画にも参加している。名前のメテオールは「流星」のフランス語から。シナリオ上のポジションはPC達の誘導役といったところ。

研究者として「ライカ」を創り出した張本人であるが、もっとも長い間共に過ごしていたことに加え、ライカのその性格(性格に関しては自身で設定しているのだが)に引きずられ、愛情を抱いてしまった人物。ただの魔動機の部品や実験動物以上の存在となってしまったことで、苦しみや迷いを抱いている。

冒険者たちの行動如何で、愛情を抱え苦しむ「親」としてのDrメテオールと、合理性と自身の探求心を充たそうとする「研究者」としてのDrメテオールのどちらかがシナリオ上で発露する。

因みに、ライカの部屋に置いてあった机や椅子、洋服の数々はDrメテオールが買い揃えたものである。ただし、子ども用の女の子の服を買ったことがなかったため、妙に大人びた服か、シンプルな服が多い。


◆シナリオ分岐について

このシナリオは、基本的にEND分岐を二つ設けている。ライカを救うか、救わないかだ。救う場合、冒険者は宇宙へ行き迫りくるミサイルを迎撃して、守りきれればめでたくラクシアに帰還するENDとなる。救わない場合、上記でも述べたがライカは攻撃衛星イグニスに突撃し、自爆。イグニスとプラネテスの破片が降り注ぎ、流星雨となるなかでのENDとなる。


細かなところで分岐があるとすれば、過去編にて「瀕死の男から託されたプレゼント」を渡すか渡さないかの分岐が存在する。渡す場合は、ライカと親密な関係を気づくことができ、彼女の部屋に招待される。渡さない場合は、ライカの部屋に行くことはなく、ライカと友好的な関係を結ぶのが難しくなる。その場合、Drメテオールが現れた、彼の「研究者」としての面がより強く描写されることとなる。


◆戦闘難易度について

今回は熟練戦闘を採用していたため、結構がっつり難し目にした……つもりだったが、PC達には全く通用しなかった。マジで? それなりな敵を出したつもりなんだけど。怖い。

熟練戦闘については初めてではないが、ここまでがっつりとしたものは始めてだった。正直に言ってかなり処理が重い。あと戦闘MAPなどを用意する必要があった(別にチェス盤みたいなのでもいいのだけど)ので、準備に割と手間がかかるため、今後積極的に採用されることは多分あんまりない。

ある程度知能が高いエネミーであれば、前衛を回避して後衛直撃など、上級戦闘なんかではなかなか取れない動きをすることができるが、それが面白いかはまた別問題である。まともに運用すると、薙ぎ払いや範囲攻撃の価値が一気に下がる懸念もある。また、基本的に知能が高いエネミーは移動力もそれなりなものが多く、前衛が必死に前にでても、GMの動かし方次第で回避し完封することもできてしまう。それはPLサイドも同じことなのだが、エネミーはPCよりも大体数が多いので、基本的には敵の蹂躙を許さざるを得なくなる。

が、臨場感は格別のものがあった。また、市民を護衛しながら敵を迎え撃つといったシチュエーションや、T字路の先に進んだら両方から迫る敵と接敵した。など、リアリティのある様々な戦場を生み出すことができるので、部分部分で適用するのはありかもしれない。ただし、PCの戦闘特技の構成や戦闘にかかる時間にはかなりの注意が必要となるだろう。

今回は事前に“熟練戦闘”で行うことを告知していたので、それを前提としたビルドを見ることができた。普段では見れないビルド(影走り・足さばきでの移動妨害で敵の足を止めまくるムーヴ)も見れたので、なかなかに面白かった……が、次は大量にマジックユーザーを抱えていこうと思ったのであった。

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