第三話「食材探しは命がけ? ハルシカ栄華祭り」

2021年3月6日に行われた、長期CPリバティハーツ:第三話「食材探しは命がけ? ハルシカ栄華祭り」の感想記事です。


◆キャンペーンシナリオについて

というわけで、ベーゼンさんGMのソードワールド2.5キャンペーン。その第三話にあたる「食材探しは命がけ? ハルシカ栄華祭り」の記事となります! さっそく本編に行くぞ!


前回は白き小竜、プティがなんと人間形態に変身できる特別な子だったことが判明した回でした。それから数日、冒険者たちは元気なプティに振り回されつつ(?)にぎやかに過ごしたそうな。そんな一行に、さらににぎやかなイベントがやってきたようです。

ギルド「大三角トライアングル」にて昼食をとりにきた冒険者たち。プティと一緒に、全員が机を囲っています。このわずか数日で、たどたどしかったプティの言葉は劇的に向上し、かなり流暢な言葉遣いを獲得していたのでした。さすが竜の子、学習能力はかなりの物のようです。


プティ 「ママ、パパ今日はなんだろー」と昼食のメニューを期待するプティ。

イグアス「竜ってのはホントに知能が高えんだな……」

アルボ 「ふーむ、覚えるのは流石早いな。

     パパママについては何度言っても変わらなかったが」

ラッヘ 「違うって言ってるのに……」


とラッヘはうんざり顔。プティは「ぱぱとままなの!」と言いながらべーと舌をだしています。どうやら反抗期(?)らしい。プティはお腹が減った様子で


プティ 「イグアスのおしり美味しそう……」

イグアス「!?」

アルボ 「やめなさいプティ、イグアスのおしりなんて食べたらおなか壊すぞ」

イグアス「馬肉が喰いたいなら牧場にパパと買い付けに行ってこい、な!」

アルボ 「馬一頭買い上げさせるつもりか?

     いやしかし……成竜になったらそれぐらい食べるのか……?」

イグアス「足の折れた瀕死の馬なら食肉用の値段で買えますよ」


と、プティの恐るべき食欲について語っています。ここでギルドの受付嬢であり、二つ頭のうち一人、シウスが昼食用のハンバーグを運んできてくれると、プティは喜んで食べ始めたようです。どうも竜の子ということなのか、食欲は人並み以上で幼い躰の今でも、大の大人3人前程度はペロリと平らげてしまいます。わ、我が家のエンゲル係数やばそう。これ大人になったらマジで食費ヤバいことになるんじゃないのか? (食費が)末恐ろしいですね……


「おいしい!」と全て食べ尽くし、さらにおかわりを要求するプティを見て、ラッヘは「これはパーティ経費から捻出でいいのよね……?」とプティの1/4程度を食べながらつぶやきます。その隣でイグアスも「いつもそうしているし経費だぜ」と滅茶苦茶喰いながらつぶやいています。それはいいけど君は経費じゃないからな? 自腹で食べろ自腹で! シウスはシウスで「プロンの分ですけど……可愛いのでどうぞ」と実の弟の昼食をプティに与えます。餌付け力が強い。しれっと昼食抜きになるプロンくん可哀そう……


シウス 「でも、こうして人の形になると、

     部屋に閉じ込めなくて済むのはうれしいですよね」

アルボ 「竜の状態より人目につかないのは良いが、

     何するか分からないのは変わらんな。人の子どもの方が厄介かもしれん」

ラッヘ 「何度見ても不安になるのよ……」

イグアス「事実、ライダーギルドでやらかした時、この姿でしたからね。

     言葉巧みに盗賊の地下ギルドに連れてかれるのも時間の問題っすね」

アルボ 「まずは人の言葉を教えるところからスタートか……手間がかかるなぁ」

イグアス「なまじ言葉が解りますからね。こいつ多分知らんオッサンに

     ローストビーフ食べ放題の秘密基地があるとか言われたら行きますよ」

ラッヘ 「……プティ、知らない人についていったら駄目よ?」

プティ 「はーい!」


と返事だけはいいプティ、ほんとに大丈夫かなぁ。そんなやりとりを酒を飲みながら見つめているグレイスは


グレイス「うーん、度数が弱いなあ。もう少しお酒っぽいものを置いてほしい」

アルボ 「度数が弱いって、普通に火酒じゃないか。それ」

グレイス「人には燃えるようだってことなんだろうけど、

     蒸留技術も樽につけた時間も足りてないなぁ。水だよ、これは」


といって、アルボとプティに一杯ずつ酒を寄越します。一口飲んだアルボは「しっかり酒だぞ」と眉根にしわを寄せて小言をつぶやきます。プティはというと、ラッヘが止めるまもなく火酒を飲み干しますが、「にぎゃい……」と全く酔った様子を見せません。どうやら酒にも強いみたい、竜ですから生命抵抗ボーナスが高いのかもしれません。


グレイス「ほら、水だろう。

     お酒っていうのはこういうのを言うんだ」


と懐から小さなボトルを取り出し、再びアルボとプティのグラスにそそぎます。ダークドワーフのいう酒とか、度数ヤバそう。「いや、私は……」と断ろうとするも、注がれてしまうアルボ。それを見るイグアスはもはや消毒液なんだよなぁ……と内心でつぶやきます。そんなこんなで昼間っから食堂で酒を飲み騒いでいた一行ですが、徐々に食堂に人が増え始めてきていることに気が付きます。


そう、実は今このハルシカ協商国は街をあげてのお祭り『栄華祭』の準備の真っ最中なのです!


【栄華祭】とは

栄華祭は春に行われるお祭りの一つ

はるか昔、勇者エルヴィンが災厄竜を討伐した日だと言われており

そのエルヴィンたちを称えるため、この日にお祭りをしているようだ

栄華祭はその名の通り、栄えときめくことを目的としており

商売都市ならではの内容が多い


と、かつての偉業をたたえるためのお祭りなのだそう。現在においては、多くの行商人が行きかう商業都市として、この地方でも指折りの巨大なお祭りのようです。お祭りの話でにわかに盛り上がる一行。普段であればこの祭りに乗っかり人儲けを考えるアルボも、今は冒険者の身。プティもいることだし、どうしたものかと思案していると、そこに一人の人物が現れます。


黒い探偵帽に赤いネクタイ、茶色の瞳と髪はどこか親しみやすさを覚える、明るく快活な印象を抱く女性がギルドの扉をあけ放ち、こういうのでした。


??? 「こんにちは! ここにアルボさんがいるって聞いたんスけど」


その声に振り向くアルボ。そして驚いた様子で、


アルボ 「おぉカリンか! 久しぶりだな」

カリン 「お久しぶりっスね、アルボさん。いろいろ噂は聞いてるっスよ

     なんせ蛮族の美男美女と一緒に仕事をしてるとか!」


と、二人は親しく声をかけあい、挨拶を交わします。実はこのカリンという女性、かつてアルボが破産した際、貨幣神ガメルの神殿にて出会い、その後商売ごとでいろいろとお世話になった人なのです。PC的にとても縁深い人。

そしてPL達もおぉ~と声を上げるのでした。実はPL達にも縁のあるキャラクターで、このCPの一つ前のCP「デュエルワールド」や、かつてベーゼンさんが開催した単発シナリオにも登場していたり、私がGMを務めていたCP「300年目の英雄譚」にも登場しているキャラクターなのです。お久しぶりです!

ひとまず立ち話もなんだと、席をすすめるアルボ。久しぶりの再会を祝しつつ、カリンはギルドを見渡します。


カリン 「いや~、ギルドも久しぶりっスねぇ」

ラッヘ 「知り合い?」

カリン 「おっと自己紹介が遅れました!

     ウチはカリン・シアレンス。アルボさんの妹分、兼、先輩です」

アルボ 「あぁ、昔お世話になった人でな。商売上の仲間みたいなものかな」

イグアス「美男……美男か……」

カリン 「よろしくお願いします、グレイスさんとイグアスくん?」

イグアス「噂で聞いてるかもしれないっすけど、上半身が美男担当のイグアスっす」

グレイス「ボクはグレイス、まぁ用心棒のようなものだ」

カリン 「おっと、聞いてた通りの美男美女っスね!」

イグアス「だいたい体みて驚かれるんすけど、カリンさんはそうでもないっすね」

カリン 「この下半身なら……馬車ごと蛮族を轢いていけそうっス」

※かつてカリンは馬車の操縦中、蛮族と正面衝突を起こし事故ったことがある。

ラッヘ 「あら。私はラッヘ・ダイアモンド。

     私もアルボさんの仕事仲間みたいなものね。よろしく」

カリン 「ラッヘさんスね! 

     おお、仕事仲間ですか! よろしくお願いします!」

プティ 「プティはプティなの! で、ママとパパー」と手をつなぐプティ。


その様子にはわわ……と慌て驚くカリン。


カリン 「アルボ……さん!?

     やるときはやるんスねぇ」

アルボ 「非常に複雑な経緯があるのだが、

     成り行きでそういうことになっているらしい」

ラッヘ 「だから……ママはともかくパパはやめてって……

     っていうか、その表現火に油を注いでないかしら」

カリン 「今日はそんなアルボさんにプレゼントを持ってきたんスよ!」

イグアス「カリンさんわかってますね、ダンナ正直女っけがないっすよね」

ラッヘ 「私はあくまでビジネスパートナーであってそういう関係じゃ……」

カリン 「そうなんスよね~、大体髭をしっかり剃るところから……」

グレイス「まぁそうだね、本人は“旅商人は仕方ない”なんていうけど、

     イグアスだって髭は剃るのに」

アルボ 「髭大不評だなぁ……

     まぁこの子のことはおいおい話すとして、だ。……プレゼント?」

カリン 「結婚祝いみたいになりそうスけどね!

     取り出したるはこちら!!」


といって彼女が取り出したのは、なんと“栄華祭”での出店権利書! 本来は祭りの開催よりも前に抽選にて権利を獲得できる、文字通り金を産み落とす紙。今、アルボを始めとする多くの商人たちが喉から手が出るほど欲しがるものです。


アルボ 「出店の権利書じゃないか」

カリン 「そうすね、超レアな権利書っす。喉から手が出るほど欲しくないすか?」

アルボ 「それは勿論ほしいが、一体どういう風の吹き回しだ?

     カリンがタダでくれるなんて思ってはいないが……」

カリン 「まぁあげませんけど」

アルボ 「本当に何しに来たんだお前」

カリン 「あはは! 今日は商談しに来たんスよ!

     離せば少し長くなるんですけどね」


と、カリンは本当の話を始めてくれます。


■カリンの話

アルフレイム大陸とテラスティア大陸間へ商品を海上輸送していたが、魔物たちに襲われて船が故障。商品を海に捨て軽くしなんとか港へ到着したそうだ。

幸い海上保険には入っていたので、丸損にはならかったが"栄華祭"を行うには商品の数が足らない。持ち前の逞しさで、栄華祭までに何かは作るそうだがスペースがかなり空いてしまう。なので協力して屋台を運営できないか考えていたところ、アルボが帰ってきていることを噂で聞いたらしい。


と、割と波乱万丈な展開。大陸間、それも大きな海を越えての海上貿易は莫大な利益を生みそうですが、その分リスクも大きそう。ちゃんと海上保険に入ってるのがカリンらしい。つまるところ、出店を出す権利を持ってはいるものの、売り出すための商材がなくなってしまったとのこと。それは大変だ!


カリン 「……ってなわけで、二つある出店の内、半分プレゼントしようかなと。

     まぁ場所代として1割を売上からいただくっスけど」


と、なかなかに商魂たくましいカリン。というわけで今回、PC達は「出店で出す商品の内容を自分たちで考え、商材を手にし、加工して売りさばく」ことに! 何というか学園祭みたいで楽しいね! なかなかこういうシナリオは珍しいので、PL達もなにを売り出すか考え始めます。

ひとまず、商材の確保先については目星がついており、第一話で探検した「ひぐらしの森」で出店で使う食材を集めることに。肉、魚、山菜に果物とこの森であれば大体の食材を手に入れることができそう。何が手に入るかはわからないので、森に赴き狩りをして、手に入った食材から商品を考えることになりました。


PC達もカリンからのプレゼント(?)を受け取り、売り上げの一割をカリンに収めることでおおよそ合意。かくして、冒険者たちのお祭り出店経営が幕を開いたのです!

お祭りまでさほど時間もないということで、冒険者たちは準備を整えさっそく「ひぐらしの森」へ。晴れ渡る空、どこかピクニック気分の一行は、パパとママと手を繋いで上機嫌なプティを先頭に進んでいきます。プティは皆と一緒にいるのがよほどうれしいのか、歩き疲れたらイグアスの背中に乗ったり、やりたい放題にわがまましていますが、それも可愛いものよ……(親バカ)


ひぐらしの森にたどり着いた一行。あたりはにぎやかで、ヒグラシの鳴き声以外にも、鳥や獣たちの息遣いを感じます。そして、ここで唐突に【異常感知判定】をオープンダイスで振るようにとのGMの指示。なんだなんだ??

結果はグレイスが成功! どうやら、以前来た時よりも鳥や獣の声が小さいようで、木々や草のところどころに赤く変色していることに気が付きます。どうにも、この森には何か異変が起きているらしい。プティはというと、変色したキノコとか明らかにヤバそうな色味のものまで口にしていますが、どうも平気みたい。どうやら竜の胃袋はよほど頑丈らしい。


ひとまず冒険者たちはあたりに注意しながら、さらに森の奥へと進んでいきます。今回の探索目的は狩りをして新鮮な食肉を得る事。大きく3段階の難易度の敵が配置されているそうで、難易度を選んでそのモンスターと戦闘、勝利することができれば新鮮な食材(肉)を手に入れることができます。高難度のモンスターの方が食材としてのレアリティが高くなるのか、より高い収益が期待できる形になっています。なんかモンハンみたいね! マスターランクのモンスターを屠ることとしましょう……


というわけで、今回は最も難易度が高いモンスターを狩ることに。その名も『雷砕熊 ライトニングベアー(Lv9)』。強烈な電撃を纏う熊で、放電を行うことも可能。鋭い爪の連撃に捕らわれれば、抱え込まれてしまい危険な状態へと引き込んでくるなかなかに危険な相手のようです。


林の中に、その巨大な熊を見つけた冒険者たち。大きな熊は蜂の巣を抱え込みながら、蜂蜜をぺろぺろとなめとっています。その周囲には、感電した蜂たちがぴくぴくと地面へと転がっているようです。


ラッヘ 「な、なにあの熊? 初めて見たわ」

イグアス「あ、なるほど。雷熊っすね。植物の焦げ方からして炎ではねぇと

     思ってましたけど、大当たりだったな」

グレイス「へぇ、肉が堅そうだけどなぁ」

アルボ 「ライトニングベアー、雷を従える熊だが……これは大丈夫か?」

イグアス「短期決戦で行きましょう。アイツに抱えられるとマズいっす」

ラッヘ 「わかった。出し惜しみナシでいくわ」


ということで、戦闘スタート!

先制判定はラッヘ・グレイスが13で失敗! しかし、ラッヘが敏捷の腕輪を砕き先制を奪取。危ない危ない。


1ラウンド目、冒険者ターン。

真っ先に動いたのはアルボ。今回のセッションからSW2.5サプリメント『モンストラスロア』より森羅魔法を2レベルまで覚えたアルボ。射程距離にいるグレイスに【ウイングフライヤー】をかけ、近接攻撃の命中と回避力を+1していきます。飛行状態になるこの魔法が、なんと1レベルから取れてしまうこの森羅魔法。動作も補助動作・戦闘準備で使えるため非常に便利! 反面、効果時間は1R(10秒)で消費MPは3点とかなり消費が激しいため、序盤からバカスカ撃ちまくるとMP切れが怖い魔法でもあります。

更に主動作で、操霊魔法2レベルの【ファナティシズム】を≪魔法拡大・数≫で3倍に拡大して味方の命中力を+2していきます。回避も-2されてしまいますが、基本的に回避するキャラクターがほとんどいないため大した問題にはなりません。耐久と防護点で耐えるのだ!


次に動いたのはイグアス。グレイス、アルボ、ラッヘから距離を取って最後方から【チャージ】で一気に敵へと接敵! アルボがグレイスにのみ【ウイングフライヤー】をかけていたのはこのためです(距離が遠すぎてかけれなかった)。≪全力攻撃≫も宣言しつつライトニングベアーに、その巨大なメイスを振り下ろします。無事命中し、ダメージは26点!

更に【獅子奮迅】の効果を使い、その大きな蹄で蹴り上げます! こちらも命中し、15点のダメージを与えていきます。初動のダメージが激烈ですね!

[ライトニングベアー/HP]頭:90⇒49


お次はグレイス。≪黒炎の遣い手≫の効果を発揮し、燃え盛る真っ黒な炎を武器にまとわせながら、前線のライトニングベアーへと接敵します。≪必殺攻撃≫を宣言し、獲物を掲げ熊の硬い毛皮へとウォーハンマーを殴りつけ、見事命中! 達成値は驚異の23! 相手の回避が13であることを考えると、凄まじい命中精度になりそう。殴りつけた巨大な鉄の塊は、的確に雷熊の頭を狙い打ちますが、ダメージは12点と伸びず。序盤の必殺ファイターは武器が軽いため、回転しないとなかなかダメージが伸びませんね。しかし、確実に雷熊を追い詰めていっています。

[ライトニングベアー/HP]頭:49⇒37


最後に行動したのラッヘ。リピータークロスボウを構えながら、目の前の巨大な熊へと照準を合わせます。【ヴォーパルウェポンA】【キャッツアイ】【ステーブルサイト】そして≪牽制攻撃Ⅰ≫を宣言し、命中をさらに底上げ! リピータークロスボウを一気に4連射していきます。その命中、22! しかし、ライトニングベアーも負けじと回避を振り、20の高達成値をマーク。命中はしたものの1HITに留まります。ダメージは9点。

[ライトニングベアー/HP]頭:37⇒28


イグアス「先に日和った方が敗れるぜぇ!!」


猛然と冒険者たちの後方から突撃するイグアス。ケンタウロスの屈強な馬脚が、地面に濛々と土煙を上げながら、目の前にそびえる巨大な雷熊へと突っ込んでいく。衝突する寸前に、鈍く輝くメイスが弧を描きながら雷熊の頭を打ち据えた。


グレイス「いやぁ、こいつから離脱できる気がしないな」


メイスを打ち付けられ大きくよろめく雷熊に、更なる追撃を加えたのは真っ黒な炎だ。巻き起こる土煙の中から、巨大な鉄塊を悠々と掲げる小柄なドワーフが現れ、黒炎を纏うウォーハンマーが雷熊の側面を的確に狙い打つ。

突然の攻撃にたまらずひるんだ雷熊だが、イグアスの攻撃はいまだ止まない。まるで巨大な山のように、後ろ脚だけで立ち上がったイグアスは、強烈な前脚での蹴りを雷熊へと叩き込んでいた。


グレイス「倒しきるか、ボクらが死ぬかだな」

イグアス「子熊だと思ってこの熊のガキを抱きかかえたら死んだっつー旅人も

     たまにいますね。こいつの雷は強烈ですよ」


怒りに燃える目をした雷熊。イグアスとグレイスの二人が相手取る中、その隙を狙って4本の矢が飛来する。風を切り、猛烈な勢いで飛ぶ矢だが、雷熊の振り下ろした強靭な爪がそのうち数本を叩き落し、強靭な毛皮から発せられた雷が矢を弾く。わずかに刺さった矢からは、ぽたぽたと鮮血が垂れていた。


ラッヘ 「うぇっ、雷に弾かれた!?」

驚くラッヘをよそに、現れたのは桃色の髪を揺らすプティ。彼女はラッヘの隣に立ちながら、目の前の雷熊へと相対する。

プティ 「プティも頑張るの!」


そういいながら、プティは大きく息を吸い、吐き出すと、その口からは紅蓮の炎が燃え上がる。一塊になった小さな火球は、あたりを照らしながらまっすぐに雷熊へと進み、直撃と同時に爆ぜた。器用なことに、グレイスとイグアスには当たらないよう、炎の加減を調整しているらしい。二人が巻き込まれることはない。黒炎と白炎が燃え上がり、何かが焦げたような匂いがあたりに充満する。


……しかし、立ち込める煙の中から悠然と雷熊は姿を現す。そして、雷熊の怒りを示すかのように、逆立った体毛からはパチパチと空気を弾くような音が鳴り始めている。


アルボ 「……おいおい、雷が凄いな。髪の毛とかえらいことになりそうだ」


といった感じ。何と今回の戦闘では、プティがフェローとして戦闘に一部参加してくれます。フェローといっても、行動はダイスではなく任意選択式なのでお助けNPCみたいな感じかも? 一つは火球を吐いて敵を攻撃。もう一つは、敵の攻撃を受け抱え込まれた時(敵のライトニングベアーの攻撃に被弾すると、抱え込まれてしまう)、それを解除するため引きはがしを行ってくれるというもの。あぁ~~さすがはうちの子。強いし賢いとかさすがなのね!


1ラウンド目、敵ターン。

ライトニングベアーは≪薙ぎ払いⅡ≫を宣言し、乱戦エリアにいるグレイス・イグアスを対象に爪で攻撃! 命中判定の達成値は18で、それぞれ二人とも回避に失敗。打撃点は2d+20点で、グレイス・イグアスにそれぞれ31点と26点をたたき出す驚異的な威力。ここで「◯ミニベアバッグ」が発動。爪の攻撃が命中した場合、その相手を腕で抱え込むこの能力。最大二人まで抱え込み可能で、抱え込まれているときはお互いの命中判定が「必中」扱いとなります。そして、この状態でライトニングベアーはバチバチと「▶雷鳴」を行使! イグアス・グレイスに雷属性の魔法ダメージを与えてきます。その威力なんと27点と22点!! イグアスに至っては最大値の[6,6]をたたき出して、『雷砕熊』の真の恐怖を見せ付けてくれます。

[イグアス/HP]:56⇒13

[グレイス/HP]:49⇒9


バチバチと嫌な音を鳴り響かせる雷熊は、イグアスとグレイスへその鋭い爪を横薙ぎに振るう。その鈍重な見た目とは裏腹に、眼にもとまらぬ斬撃が二人を捕らえる。発達した爪が、二人の防具をいとも簡単に引き裂き、鮮血が宙を舞った。

そして、もう一方の爪が二人の身体をがっちりと抱きしめる。平時であればどこか微笑ましい光景に見えなくもないだろうが、雷熊の身体から発せられる不気味な音と、青白く発行する毛並みが、尋常ではない魔力を秘めているのは誰の目にも明らかだった。青白く明滅する光が最大まで達した時、激しい雷轟と共に、雷熊の身体から強烈な電撃が放出される。空気を引き裂く音がひぐらしの森へと響きわたり、目の前が白一色へと染められた。


常人であれば、この一撃だけで神の御許へ旅立っていたであろう。しかしそこは冒険者。二人は雷熊に抱かれながらも生きていた。驚異的なタフネスと、これまでの経験からその絶大な威力に耐える術を二人は持っていたのだ。そして、敵の懐にいるということは、次に彼らが繰り出す攻撃は回避不可能、必中の一撃なのだ。


2ラウンド目、冒険者ターン。

といっても、上でも言ってるように抱えられた二人は次の攻撃を必中で当てられるため、もう勝ち確なのです。というわけで、グレイス・イグアスが嬉しそうに刃を振るい、見事ライトニングベアーの討伐に成功! まずは食材の確保が完了します。


流石に満身創痍な前衛組、今日のところは一度森にて野営を行い、体力を回復次第街へと戻ることに。熊肉の血抜きも行わねばなりません。手ごろな平地を見つけ、テントを張って野営の準備です。焚火をしながら、森へと沈む夕日を見送ります。


プティ 「夜ご飯~♪」

グレイス「これぐらいあれば料理には十分かな。主菜のほうはどう?」


と、沢山の木の実や山菜を抱えてグレイスが戻ります。イグアスは湖の畔にいたアイアンタートルを狩ってきたようで、甲羅や肉を引っ提げて戻ってきました。


イグアス「面白いモンがとれましたね。何なら討伐報酬も要求できねーかな」

グレイス「なんだ、亀か。好きだねキミは……

     いかにもバルバロスというか、野性味あふれるというか。

     嫌いではないけど、好き好んで食べたい味じゃないな……」

プティ 「ままー、ねーね、晩御飯なに?」

グレイス「しょうがない、少し待って」

イグアス「割るのが楽しいんですよ。あと血なまぐさいのが好きで」

グレイス「……香草をとってきたよ。じゃ、お好みで使う人は使うといい」

イグアス「生き血も取り分けておきましたんで」

ラッヘ 「何が集まってきたかな? とりあえず火を通せば食べれるわよ」


と、アイアンタートルの甲羅鍋(中身はごった煮)と焼き亀肉、臭み消しようのハーブにカメの生き血と野性味あふれる食卓に。イグアスはともかく、ラッヘが割と食に頓着ないのは意外だったかも。こだわりがあるかと思ったら、案外火が通っていればOKな様子。プティはというと、皆の食べ方を真似て一緒に鍋を囲んでいます。かわいい。臭み消しようのハーブをそのまま口に運び、もっちゃもっちゃ食べている様子。


プティ 「んー……」

アルボ 「ハーブだけ食べても美味しくないだろうに……」

プティ 「これはこれで美味しいの!」 えぇ……

アルボ 「しかしこれは何鍋なんだろうな?」

イグアス「甲羅鍋ですかね」

ラッヘ 「……さぁ? 肉と野菜が入って

     スープの味がおかしくなければ食べられるし」

グレイス「そのままは人族の味覚には──(食べてしまった)」

ラッヘ 「(無言で調味料を追加する)」

イグアス「血が嫌いだとダメかもな」

アルボ 「今更ながら、この面子で屋台運営できるのか不安になってきたな……」

プティ 「おーいしー!」

グレイス「売り子は別に雇った方がいいかもしれないな。

     ラッヘさんはうまくやるだろうけど、イグアスはおけないしね。

     ボクは力仕事に回る方が良いだろう」

ラッヘ 「私は一通りの手伝いはできると思う、けど……」ちらりとプティを見つつ

イグアス「オレは運搬でもやっときますよ」

ラッヘ 「ほっとくと何が起こるか分からないのよね」

プティ 「プティも頑張るの!」


と、和気あいあいと食事を共にする一行。いいですね……焚火を囲い、今日の獲物を調理してみんなでシェアする。かわいいプティもいて非常に和む……


アルボ 「問題は厨房の方か、料理上手なひとは……」

グレイス「ボクは好んで食べたい味ではないな」と酒を呷りながら

ラッヘ 「どうしたら美味しくなるのかしらこれ……」と汁に調味料を足したりして調整するラッヘ。

??? 「いや本当に美味しいよな」もぐもぐと肉を頬張る謎の人物

プティ 「うんうん~~」

??? 「このキノコも入れると美味しそうだ」

アルボ 「プティ、この香草はこう、肉にまいて……

     簡単に串で刺して軽くあぶるとコルガナ地方風の……」

??? 「コルガナはそういう感じだよな、だがあえてここは辛みペーストを……」

アルボ 「……地方風の……」謎の人物に気が付くアルボ

グレイス「鍋パーティーには持参品がマナーだよ」気にしないグレイス

イグアス「なんだこいつ……」

ラッヘ 「は? うわっちゃぁ!!」驚いて鍋をひっくり返しかけるラッヘ

??? 「おっと、それは失礼した」

アルボ 「まず招いた記憶がないんだが……誰だ君は」

??? 「オジサンかい? おっと、いけないばれてしまったね」


と、滅茶苦茶ナチュラルにやり取りに介入してきたこの人物。すらっと背の高い、すこし顔色の悪い痩身の男性。いつの間にやら鍋を囲うメンバー入りしていた彼は、よく通る声で自己紹介をし始めます。


??? 「オジサンはただの吟遊詩人さ」

といい、背中からギターを手に取り、演奏し始めます。うーん、怪しさの塊。


イグアス「バレるとかそういう次元じゃなかったな」

アルボ 「あまりにも自然に溶け込んできたから見逃すところだった……」

グレイス「良いじゃないか、野営に唄は味がある」

??? 「そうだね、名乗るとするなら────

     “死体屋”ベリル。そうみんなは言うね、まぁしがないアンデッドさ」

アルボ 「吟遊詩人の件はどこいった??」


と、どうやら鍋パーティーに紛れ込んだのは吟遊詩人のアンデッド、“死体屋”ベリルと名乗る人物のよう。怪しいどころの騒ぎではなくなってきました。吟遊詩人の前に物騒すぎる通り名が気になります。


アルボ 「アンデッドの吟遊詩人ということか……?

     一応私、これでも神官なんだが祓った方がいいのかね」(※ガメル神官)

ベリル 「祓うとはとんでもない!」

イグアス「ああ。こいつは『大三角トライアングル』の取引相手に絡んでいる可能性ありますよ。

     取引相手にアンデッドがいるって半信半疑でしたけど……」

ラッヘ 「いや、え? いや……

     でもさすがにこの状態の人? にすぐさま臨戦態勢とるのも……

     何この状況……」


すっとアンデッドのベリルに一杯酒を出しつつ、グレイスは

グレイス「アンデッドは初めて見たな。

     生者としては戦うべきだろうけど、面白そうだ。

     唄ってみてよ」

ベリル 「ではお言葉に甘えまして、一曲面白いお話を」

アルボ 「ふ、複雑な心境だな……まぁいい

     死者の唄を聞くのも神官の務め、と思っておこう」


ベリル 「そうだね……んー……

     では今日は、イグニスの怪物について」


彼はそういい、歌い始めます。


ベリル 「これは大破局の時のお話の一つさ、

     真実かどうかは誰も知らないけどね」

イグアス「初手からイグニスの話をぶっ放していくあたりはちゃんと穢れ者だな」


そして、アンデッドの吟遊詩人は焚火を前に月夜に歌う。暗く、静かな森にギターの音色と、独特なベリルの語りが響き始める。彼の語る、『イグニスの怪物』の物語は、しっとりとした音色と共に始まった。


■イグニスの怪物

事のきっかけは、とある蛮族の仕業だった

地下の世界にいた彼らは、空を見たいがために地下を抜け出し地上へと出た

外に出たからには戻ることはできない

命をかけて望んだ外の世界

それはとても魅力的なものだった…

だが、外には守りの剣が配備されており、地上には彼らの居場所はなかった


彼らは自分たちが住める場所を探しに探し回った

人族の開拓が進んでおらず、守りの剣がない場所……

そこで彼らは"始まりの剣イグニス"を見つけてしまったのだ


蛮族は願った

私たちに……自由と解放を……

弱かった彼は始まりの剣に耐え切れずに意識を失い、その願いは不完全なまま叶えられてしまった……

世界中の大地は裂け、海は荒れ、空は暗雲に包まれた

地下からは蛮族が這い出し奈落の壁は破壊され、世界は戦争に包まれてしまう


意識を失った蛮族は、イグニスの怪物と恐れられた。


アルボ 「大破局ディアボリックトライアンフの時の話か、興味深いな」

ベリル 「……これが『イグニスの怪物』、これには倒した者の英雄譚があってね」

ラッヘ 「(絶対おかしい状況なのに誰も突っ込んでくれない……!

     私がおかしいのかな……!)」

イグアス「弱いバルバロスの唄ねぇ。そうそうあるもんじゃないな」

グレイス「そうだね。バルバロスは弱さを徹底的に嫌うから

     伝承として残っている以上、残したのは人族側だろうね」

ベリル 「弱いといっても、君たちよりは強かったろうさ。

     神々であるライフォスたちは、剣を手にすることで神となった……

     けれど、その資格は誰にでもあるものとは限らない」

グレイス「キミが人だった頃の名残なんじゃないか。

     元が何だったのかは知らないがね」

ラッヘ 「(いやそもそもあんたはどこから来たのよ)」

ベリル 「で、続きが……あれ……

     どうしてオジサン、この曲を覚えてたんだっけ?

     そもそもここはどこだ? オジサンは……誰だ??」

イグアス「急にアンデッドっぽくなるじゃん」

ラッヘ 「私がききたいんだけど!!!」

ベリル 「ふふっ、こう点と点で記憶が繋がっていてね」

アルボ 「なんだこの壊れたアンデッドは、いや最初から壊れているのか?」

ベリル 「思い出せば、こんなことをしている時間はなかったよ。

     ってなわけで、続きはまた次回。いつの日か思い出したときに!」

グレイス「次は祓いたいな」お酒をのんびり呷りつつ

イグアス「オレは続き聞きたいっすねぇ~」

ベリル 「おっと帰るタイミングだけど、まだ聞きたいことがあってね。

     ────これ、見覚えない?」


そういって、彼が取り出したのは卵の殻のようです。そして、その卵の殻はプティが生まれたときの『竜の卵』の殻にそっくりだったのです。


アルボ 「……どうしてそんなことを聞くんだ?」

ベリル 「ちょっと探し物でね」

イグアス「変わった生き物の卵の殻ってとこか」

アルボ 「卵の殻を探しているとは珍しい、養鶏場に案内した方が良いか?」


ベリル 「“死体屋”として、強い生き物には目がないのさ。

     ……そう、君たちの“その子”みたいな不思議な生き物もね」

プティ 「……?」

ラッヘ 「……」すっと、プティを守れる位置に移動するラッヘ

グレイス「彼女はボクらもなんだかわかっていなくてね、

     キミが詳しいなら逆に聞きたいぐらいだ」

ベリル 「ん~そうかい、なら残念だ。

     なら、オジサンにその女の子をちょうだい」

グレイス「彼女の所有権はボクにはないのでね。交渉はそっちにしてもらおう」


グレイスは我関せずと、お酒を呷る。続いて間髪入れずに答えたのはラッヘとアルボ。


ラッヘ 「お断りします────」

アルボ 「────いくら出す?」


この差よ……こうして振り返ってみるとほんと酷いなこの人! 二人の全くことなるリアクションに動じることもなく、ベリルは「んー」と考えるポーズを取り


ベリル 「そうだな……君たちの、命かな?」


と、彼がそういい指を鳴らすと、地面から沸き起こるように、どろどろとした赤黒い液体があふれ出してきます。それは、見る見るうちに周囲を飲みこみ、冒険者たちの立つ大地は、瞬く間に真っ赤な血の海へと変貌していきます。


グレイス「無粋だなぁ。一飯の恩に預かりながら」

イグアス「結局これか、取引相手って感じじゃなかったな……」

アルボ 「話にならんな、何故こっちが払わねばならん。

     アンデッドどもはやはり滅ぼすに限る」

グレイス「僕は偏見というのはあまり好きじゃないけど、

     今のところは同感だね」

ベリル 「いやね? オジサン、戦闘が苦手でしたくないのよ?

     だから交渉しようと思ったんだけど……

     むずかしいね、こういうの」


彼はそういいながらも、どこか微笑を湛えながら冒険者たちに向かってこう続けます。


ベリル 「英雄譚の一つに、血の海を越えた物語があるらしいんだ。

     けど、実際血の海ってどういうものなんだろうね。

     ────試してみるかい?」

イグアス「血の海なら慣れっこだけどな」

ラッヘ 「くっ……なんなのよ、あんた!」

ベリル 「おっと、残念。……なら死体でも構わないか。

     先にも言った通り、オジサンは戦闘が苦手でね。

     君たちの死体も、その子の死体も、また明日に取りに来るよ」

アルボ 「死体にしてはよくしゃべるな。

     安心しろ、お前の遺体はちゃんと埋葬して、

     遺品はこちらで換金しておく」


冒険者たちの行動にも動じることなく、ベリルは「バイビー♪」とふざけた調子で木々に飛び乗って逃亡します。あたりの赤い液体は、徐々に形を取り、不気味にうごめきながら冒険者たちへと近づいてきます。


アルボ 「まだバルバロスの方が交渉の席に着くだけマシだな

     アンデッドとの交渉路線はこれでなし、か……」

イグアス「しっかし、アレでよく動きますね」

アルボ 「一体どういう原理なのかわからんが、あまり触れたくはないな」

グレイス「触って愉快なことにならないのは、想像に難くないね」

ラッヘ 「なんなのよこれ……!」

イグアス「でも『大三角トライアングル』はギルドとして中立、アンデッドも取引相手って

     公言してますよ。今度どんな奴なのかちゃんと聞きだしますかね」

アルボ 「最悪、ガメル神殿に掛け合って介入してもらうさ。

     相手はアンデッドだからな、ためらう必要などありはすまい」


そうこう言っている間にも、真っ赤な血の海は広がりを見せ、もう冒険者たちの足元は沼のように沈み始めています。そして、無数の蠢く血の塊と、女性の形を取り始めたそれらは、冒険者に襲い掛かります! そう、戦闘開始なのです!


状況としては、血の海が広がり冒険者たちの足元は不安定。水の上(浅い水辺)と同じような裁定とし、接地している状態なら行動判定に-2のペナルティ修正が入ります。これは結構きついぞ……!


まずは魔物知識判定、が。まさかの全員失敗! アルボ・イグアス・ラッヘが挑みますが、ダイス目が振るわず全滅……ま、そういうこともあるよね!


続いて先制判定。こちらは目標値16でしたがラッヘがストレートに成功! 無事に冒険者たち先制となりました。ほっと一安心……


戦闘準備で、グレイスは自身に【バークメイルA】を。アルボも、イグアスに【バークメイルA】を使用して防護点を底上げしての開戦!


1ラウンド目、冒険者ターン。

今回の戦闘、敵は4体。うち3体は血の塊が意志をもって動いているようなアンデッドで、1体は女性の形をとったアンデッド。なかなかに悪趣味かつグロテスクな戦場になってまいりました。地面は不安定であり、そのうえ今の配置はこんな感じ。


敵女性←→敵2体← →グレイス・イグアス← →アルボ・ラッヘ← →敵1体


は、挟み撃ちや! 後衛であるアルボ・ラッヘのさらに背後から敵が湧きだしている状態です。しかもこの血の塊スライムアンデッド、敵の女性を倒さない限りは無限に湧き続ける様子。これは速攻で女性を倒さないと後衛が持ちそうもないぞ!


といわけで、最初に動いたのはアルボ。味方にバフをかけるため最初の行動です。まずはグレイス・イグアスに【ウイングフライヤー】を行使。二人に≪飛行≫状態を付与することで、地面のペナルティ修正を無効化しつつ、近接攻撃の命中と回避に+1のボーナス修正を与えます。そして、自身とラッヘには【ウォータードゥエラー】を行使。これは、水の中でも一切ペナルティを受けずに行動できるようになる森羅魔法の一つ。効果時間は10分間と長めで、水中で自由な行動が可能になるばかりでなく、呼吸も可能。ついでに、海獣語で発声することも可能になります。今回の血の海は水と同等の裁定を取っており、足腰まで水に浸かった状態となっているため、飛ぶ必要のないアルボとラッヘはこちらの魔法を使っています。ただ、消費MP6とかなり重いのでやはり乱発はできません。

そして、≪魔法拡大・数≫で【セイクリッド・ウェポン】を3倍拡大して、3人にエンチャントでサポートしていきます。なお、5点魔晶石などを使っていますが、この一連の行動だけで20点のMPを消費しています。アルボのMP最大値が50ちょっとなので、かなりの消耗。さすがに森羅魔法は重い……


続いて動くのはイグアス。【チャージ】で一気に接敵し、錬技や【ヴォーパルウェポンA】を自身に使いながら≪薙ぎ払い≫を宣言して目の前、2体のブラッドスワンプ(敵の血の塊)に殴り掛かります。両方とも命中判定は成功! それぞれに18点のダメージを叩き込みます。さらに【獅子奮迅】で蹄による追撃! ブラッドスワンプの内1体を足蹴にし、13点の追加ダメージを与えていきます。

[ ブラッドスワンプ(1)/HP]:70⇒39

[ ブラッドスワンプ(2)/HP]:70⇒52


お次はグレイス。【キャッツアイ】【ビートルスキン】【メディテーション】【アンチボディ】などなど、錬技で自己強化をしつつ空を飛びながらイグアスのいる乱戦へと突入! ≪黒炎の遣い手≫≪薙ぎ払いⅠ≫を宣言し、乱戦にいる二つのブラッドスワンプへと巨大なウォーハンマーで殴りかかります。そして見事に命中させ、敵へそれぞれ15点ずつダメージを与えます。さすがに前衛二人から繰り出される強烈な範囲攻撃の数々に、敵のスワンプたちもごりごりとHPを減らしていく! これはなかなかいい感じに削っていってるのでは?

[ ブラッドスワンプ(1)/HP]:39⇒24

[ ブラッドスワンプ(2)/HP]:52⇒37


ここで、今回もお手伝いしてくれるプティの手番! この戦いでも「プチファイアーを吹いて敵を攻撃(範囲攻撃/魔法制御あり)」か「味方一人を選択してハンカチで盲目状態から回復させる」というコマンドがあるらしい。も、盲目状態……!? 今回の戦い、敵の魔物知識判定を抜いていないため、実は詳しい情報が参照できていなかったります(ハウスルール)。何をしてくるのか何となくしかわからないため、PL達は危険度の最も高そうな敵のボスらしき女性型アンデッドに、火力を集中させていたのですが、どうやら急いで倒した方がよさそうですね……


プティは息を吐きだすようにしてプチファイアーを乱戦へ発射! 真っ赤な火球が血の海を舐めるようにして走り、敵にぶつかり爆発を引き起こします。この攻撃で、敵にそれぞれ11点と6点の魔法ダメージを与えることに成功。やったね!

[ ブラッドスワンプ(1)/HP]:24⇒13

[ ブラッドスワンプ(2)/HP]:37⇒31


そして満を持してラッヘの手番。リピータークロスボウを構えながら、スワンプ(1)に対して≪牽制攻撃Ⅰ≫を宣言。各種錬技や賦術を自身に使い強化しつつ、4発の矢が宙を舞います。命中は見事成功! 21と高達成値をマークし、スワンプには計3発の矢が突き刺さります。これによって計44点のダメージを与え、蠢く血の塊は破裂するようにしてその形を失っていくのでした。

[ ブラッドスワンプ(1)/HP]:13⇒-31



ベリルと名乗る奇妙なアンデッドが仕掛けてきた“攻撃”は、見る見るうちにあたりを血の海で飲みこんでいく。つい先ほどまでは乾いた大地だった場所は、いまやどこからともなく湧き上がる真っ赤な血によって、血の海へと変貌していた。蠢く血の海に足を取られながらも、あたりを警戒する冒険者たちの目に映ったのは、奇妙な塊だった。

まるで、薄い皮に血を沢山詰め込んだような、不気味な塊。それが血の海から、音もなく現れ始めたのだ。大きさにはばらつきがあるようだが、ちょっとした岩程度のものから牛1頭ほどの大きさのものが、じわじわとこちらに近づいてきていた。冒険者たちを囲うようにして現れたそれらの奥には、真っ赤な、血に濡れた髪を振り回す女が、何かを呟きながらこちらを見ている。その瞳に生者の輝きはなく、真っ暗で悍ましい穴のような眼だ。


アルボ 「ふむ、水場か……森羅魔法を覚えておいて正解だったな」


真っ先に動いたのはアルボだ。背中から取り出したメイジスタッフを構え、小さな声で精霊たちに声を届ける。いくつかの小さな、祈りにも似た独特な言葉。森羅魔法は、真語魔法や操霊魔法のような、複雑な動きや呪文によって事象を再現する魔術とは異なる。精霊たちに語り掛け、一時的にその力を借り受けたり、使役する魔術である。故に、その魔術が引き起こす現象は自然や動物たちの持つ能力、といった要素を多分に含む。

精霊との一時的な“契約”を交わしたアルボは、その力を仲間へと振り分けていった。イグアスとグレイスには一時的に空を舞う力ウイングフライヤーを。ラッヘと自分には水の中で活動する力ウォータードゥエラーを……そして、穢れし者たちを払う、神の奇跡の力セイクリッド・ウェポンを、皆に分け与える。


その直後、水面を滑るようにして走り出したのはイグアスだ。アルボの動きを読み、森羅魔法の効果がかかると同時に走り出す。まるで水面すれすれを滑空する鳥のように、イグアスは水面を軽々と蹴りながら奇妙な血の塊へと接敵した。神の奇跡の力が宿ったメイスを、大きく横殴りに振り回す。ぐにゃり、と硬い水面を殴った奇妙な感触が、メイスを持つ腕に伝わる。血の塊は、奇妙にひしゃげながらもその形を未だ保っていたのだ。不気味な相手に、イグアスはさらに踏みつぶすようにして追撃を加えるものの、手ごたえの薄さは変わらない。血の塊たちは、イグアスを飲みこもうとせんばかりに、その形を変えて迫り寄る。


不意に視界が暗く染まる。イグアスが夜空を見上げてみれば、そこには月光を遮るようにして空を駆けるグレイスがいた。夜空よりも暗い炎を携え、時折爆ぜるような音を立てながら、黒炎を纏ったウォーハンマーが暴力的な音を立てて地面へと振り下ろされた。落下の速度も合わさったその一撃は、衝撃波と黒炎の熱を伴って敵の頭上へと着弾する。先ほどよりも大きくひしゃげ、幾つかその身の一部が飛び散った血の塊たちは、新たな襲撃者へとその不定形の腕をのばそうとする。


無数の触腕が伸びたその時、真っ暗な闇を切り裂くように、一筋の閃光が煌めいた。竜の力の一部を解放したプティが、その口から火球を吹きだしたのだ。血の海の上を舐めるようにして火球が走り、血の塊にぶつかると激しい爆発を引き起こす。いくつも伸ばしていた不定形の触腕は、爆発によって散り散りに四散した。そして、血の塊自身も激しい衝撃を受け、今にも崩れかけていた。


ラッヘは冷静に状況を分析し、もっとも激しい損傷を受けていた敵に狙いを定める。静かに息を吐き、精神を集中させる。今や、ラッヘの身体のほとんどは血の海に沈んでおり、常人であれば血の海で溺れていたに違いない。だが、ラッヘの周りに現れた精霊たちが、彼女の動きを支えてくれていた。まるで息をするほど簡単に、ラッヘは水の中でリピータークロスボウを構え、そのトリガーに手をかける。

────瞬間、放たれた4つの矢は血の塊の一つに命中し、穴の開いた風船の如く、血の塊は崩れて消えていった。



といった感じで、1ラウンド目の冒険者ターンが終了。まずは1体! なかなかいい出だしかな……?

そして続く、1ラウンド目敵のターン。

敵の後方に控えていた女のアンデッドは、イグアスとグレイスがいる前線の乱戦エリアに乱入! その体からしたたる血を矢の形に変形させ、後衛のアルボとラッヘに向かって発射します。この「▶血の雨」は単に毒属性魔法ダメージを与えるだけでなく、生命抵抗判定の比べ合いに失敗した対象の、防護点を-5点してしまうという恐ろしい効果も持っています。なかなかにえげつないスキル……! しかしここはアルボ・ラッヘともに何とか抵抗成功! とはいえ、アルボは12点、ラッヘは10点のダメージを負います。

[アルボ/HP]:36⇒24

[ラッヘ/HP]:31⇒21


また、この女アンデッドは補助動作でイグアスに対して、血の泥を駆けて目つぶしを行ってきます。「▶▶血に染める」という行動なのですが、2dの魔法ダメージ点を与えつつ、生命抵抗に失敗した場合3分間盲目にするというヤベー効果。特に盲目がきつく、近接攻撃の命中・回避判定に-4のペナルティが付くうえ、いろいろと不都合が発生するため、これは何としても抵抗したいところ(詳しくはルルブⅡ80頁を参照)

なおイグアスは余裕で抵抗(20>16)、さすがはケンタウロスといったところ。4点の毒属性ダメージを受けるにとどまります。

[イグアス/HP]:56⇒52


このことに業を煮やしたのか、女アンデッドは自身の形を大きく変形させ、より攻撃的な姿に。「◯形状変化」と呼ばれるスキルの効果で、2d6を振り、出た目の数だけ自身の防護点が下がる代わりに打撃点が上昇するというもの。なお、防護点がマイナスにまで下がった場合は、そのマイナス分も適用されるとのこと(つまり攻撃のチャンスでもある)。今回の目は[2,6]→8なので、8点防護点が下がりその分打撃点が上昇します。現在の防護点はマイナス3点。

しかし、この女アンデッド「◯二回行動」を持っているため、イグアスに殴り掛かります。回避力はそう高くないイグアス。これは被弾し、何と一撃で22点も削られてしまいます。超いてぇ。

[イグアス/HP]:52⇒30


そして、血の塊ことブラッドスワンプたちの手番。イグアスたちと同じ乱戦にいるスワンプは、女アンデッド同様「◯形状変化」「▶▶血に染める」を使い、グレイスに血の泥をかけつつ、防護点を8減少させ打撃点を8上昇させます。グレイスは何とか抵抗し、盲目状態には陥りませんが5点の毒属性ダメージを受けます。そして、スワンプの通常攻撃はGMの出目も走ったこともあり、16点のダメージ!

[グレイス/HP]:49⇒28


冒険者たちの後方から迫るブラッドスワンプの手番。このまま接敵されると不味いため、ここは防護点の高いアルボがスワンプの移動を妨害し、後方で乱戦エリアを形成。スワンプは「◯形状変化」「▶▶血に染める」でアルボにも攻撃を仕掛けてきます。敵スワンプは防護点を3減少させ、打撃点が3上昇。しかしここで、アルボは生命抵抗に失敗し盲目状態に! 9点の毒属性ダメージを受ける羽目に。これは非常にまずいぞ……アルボは魔法を行使するキャラクターであるため、盲目状態だとキャラクターを指定して魔法を行使することができなくなってしまいます。これは痛い。

そしてスワンプは通常攻撃でアルボに攻撃。13点のダメージをさらに受け、残りHPは2……2!?

[アルボ/HP]:24⇒2



────不意に絶叫が響き渡る。血の海に崩れていく血の塊の向こう側から、女が声を上げながらこちらへ向かって突き進んできたのだ。髪を振り乱し、血をまき散らしながらも進むその姿は、恐ろしくもどこか痛ましく見える。真っ黒なその双眸からは、悲痛と妄執の強い意思のみが感じられ、何かを求めるかのように手を伸ばしながら冒険者たちへと襲い掛かった。


女   「どこ……どこに……いるの」

アルボ 「……なんだ、この奇妙な感覚は」


じっとりと、血の海に沈みながら全員の脳裏に不安がよぎる。血の怪物たちに攻撃を行っているが、手ごたえは薄い。どの程度のダメージを与えられているかも不明だ。未だ血の海からは、ぞくぞくと血の塊たちが産み落とされ、少しずつ冒険者たちを追い詰めていっている。


……逃げずに戦ってよいのだろうか?


そんな弱気な考えが思い浮かんだ。そして、その疑念を表すかの如く、女の死人がだらりと下げていた腕を冒険者の方へと向ける。すると、周囲の血の海が意志をもった生き物であるかのように、蠢き、渦巻きながら、矢のように鋭く形を変えた。そしてそれは、雨の如く冒険者たちへと降り注いだのだ。真っ赤な矢は、後方に控えていたアルボとラッヘを襲う。一本一本が針のように身体へ突き刺さり、激痛が体を走る。無数の血の雨は、体を蝕む毒のように、二人の身体を弱らせていった。


そして、女の攻撃はそれだけにとどまらない。彼女の身体を包むようにして、周囲の血の海が彼女の元に集まり、その形を変えていく。先ほどまで人の形をしていた女は、まるで奇妙な人形のようにその形を変えていた。胴は今にも折れそうなほどに細くなり、腕や足は削り取られたかのようにしぼんでいる。そのせいで、体の節々が嫌に膨れて見える。反面、彼女の指先は異常なまでに伸び、刃物のように鋭く変貌していた。肉を引き裂き、削り取ることに特化したような波打つ腕は、不気味なことにルビーのような輝きを放っている。

突然のことに唖然とする冒険者たち。彼女はそれをあざ笑うかのように、腕を横薙ぎに振るう。その対象はイグアスだ。彼女が放ったその一撃をイグアスはよけようと深く沈みこむが、彼女は斬りかかるのではなく、泥のような血をイグアスに浴びせかけたのだ。常人であれば、その泥に呑まれていただろう。しかし、イグアスはその攻撃を察知すると体を引き起こし、寸前で直撃を回避した。泥のような血がイグアスの身体を掠めた。────多少触れただけでも、肌が焼けるように痛む。どうやら、あれはただの血でないらしい。そう考えていたイグアスだが、その泥の死角から迫る一撃には対処できなかった。血の海の中を潜るようにして現れた、女の一撃。異様に発達した指先が、イグアスの鎧を貫いた。気が付いたころには、肉を削られる痛みと共に、イグアスの身体には大きな傷跡が残されていた。


その隣では、グレイスが血の塊と戦闘を繰り広げていた。血の塊も女と同様、周囲の血を自身に集め、自らの身体を作り替えていく。先ほどまではぶよぶよとした不気味な塊が、今や奇妙な突起をいくつもそろえ、それらを攻撃的に振り回す怪物へと変貌していたのだ。血の海を叩くようにして自身の変化した体を振り回す血の塊。グレイスはウォーハンマーでそれをいなしつつ戦うが、全てをよけきることはできない。先ほどのイグアスと同じように、泥のような血が体に付着し、焼けるような痛みが体に広がっていく。そして、無数の触腕のうち一本がグレイスの身体を掴み、力任せに血の海へとたたきつけた。巨大な波紋が血の海に広がり、その中央からグレイスがウォーハンマーの柄を持ちながら、ゆっくりと立ち上がる。


そして後衛では、背後から忍び寄る血の塊をアルボが押しとどめていた。この血の塊もイグアスやグレイスと同じく、体を作り替え無数の槍のようなものを創り出している。勢いよく伸びた血の槍は、アルボの身体を突き穿つ。アルボ自身に近接戦闘力は皆無であり、繰り出される攻撃を無条件に受け続けることしかできない。それでも、金属鎧を着こんでいる分、致命傷は避けることができた。しかし、斬撃によって穿たれた傷からは血が溢れ、攻撃の合間に浴びせられた泥のような血が顔にあたり、目の前は真っ暗闇だ。ふらつく体を気力だけで支え、何とか立つことができている状態だった。それでも倒れられないのは、アルボが倒れれば、より装甲の薄いラッヘが次の標的になることが明らかだからだ。この一線だけは、何としても死守しなければならなかった。



さてさて、第2ラウンド。冒険者ターン! 1ラウンドにして一気に追い込まれた冒険者たち。無限湧きするブラッドスワンプに、強烈な攻撃能力を持つ女のアンデッド。しかし、女のアンデッドが周囲のスワンプたちを動かしているらしく、彼女さえ倒せれれば他は無力化できるらしい。ここで、冒険者たちは回復ではなく更なる攻撃を加え、速攻で彼女を倒す作戦にでます。作戦の要となるのは、リピータークロスボウで圧倒的な単体火力を誇るラッヘを主軸に据えた火力の集中運用。高い命中を何とか確保し、4発とも当てることで一気に敵の耐久力を削る作戦です。


最初に動いたのはプティ。今回、プティの行動は「味方一人を選択してハンカチで盲目状態から回復させる」を選択。対象は唯一盲目状態に陥っているアルボ。このままでは魔法も何も使えないので、ここでプティに回復してもらいます。攻撃もサポートもできるなんて……なんていい子なのかしら……!


愛娘のサポートを受け、行動するのはアルボ! 再びイグアスとグレイスの二人に補助動作で【ウイングフライヤー】を行使。そして、残るMPを使い切る勢いで【ファナティシズム】を3人にかけ、一気に命中力を強化していきます。最後に【ヒールスプレーA】をグレイスに使い、もしもの時の保険を掛けておきます。ここで倒せなければ、ほぼ確定でアルボは倒れてしまう……頼んだぞみんな、命は預けた!


そして次に動いたのはラッヘ。スーパー命中バフを積み重ねた状態のラッヘは、先のターンと同じように、≪牽制攻撃Ⅰ≫からの【ステーブルサイト】を起動、さらに女のアンデッドに【パラライズミストA】を投げつけ、回避力を下げていきます。できることはやった……リピータークロスボウを構え、運命の命中判定!

ダイスロールの結果は、[1,4]+15で20! ここでさらに≪運命変転≫を使い、ダイス目を[6,3]へと変更、達成値は24。圧倒的な命中をマークし、敵の回避力(2d+9-1⇒14)を大幅に上回ることに成功! 4本の矢を命中させることに成功します。そしてそのダメージ、4本中2本でクリティカルが発生し、32、18、29、18のダメージを算出。……計97点!! 現在女のアンデッドは防護点がマイナス点までさがっているため、さらにダメージが入り最終的には109点の大ダメージを与えることに成功します。さすがにこの攻撃には敵も耐えられず完全に沈黙! 戦闘に勝利します!



僅かひと時の間だった。敵を押していたはずの冒険者たちは一転、女の死人による激烈な攻撃にさらされ、半壊一歩手前まで押されていた。特に後衛のアルボは、立っているのもやっとのありさまだ。前衛の二人も損耗し、そう長く戦うことができないのは明らかだった。不安が、現実へと変わっていく。突如として現れた脅威に、冒険者たちは敗北の色を濃くしていく。


アルボ 「ぐ……ぬ……、これは、不味い、か」


目の前の血の塊を前に、今にも膝をつきそうなアルボがつぶやく。すでにその鎧は、敵と自身の血にまみれ、真っ赤に染まっていた。ふらつく視線、限界を超え痛みすら薄れている体に鞭をうち、何とか立ち上がる。だが、いくら気合があろうとも、戦況をひっくり返すことなど容易ではない。女の死人は、もはや何も見ていない眼を見開きながら、血液の雨をあたりに降り注がせていた。


女   「……教えて……」


女は、ここにいない誰かを求めるかのように、その腕をのばし、何かを探し、求めている。だが、冒険者たちはそれを察するほどの余力すら残されてはいなかった。


アルボ 「イグアス、グレイス、ラッヘ。

     悪いが、後は任せてもいけそうか?」

イグアス「勿論。“今”しか無いっス」


イグアスはアルボの言葉を察したかのように、にやりと笑いながらそう答える。


プティ 「パパ……死なないでパパぁ」


プティはそういい、ひどく悲しそうな顔をしながら、持っていたハンカチでアルボの顔をぬぐってくれる。泥のような血が拭われ、アルボは再び明瞭な視界を取り戻した。綺麗だったハンカチを、真っ赤な血で汚しながらプティはアルボの隣で不安げに見上げていた。


アルボ 「……すまん、プティ。助かったぞ。

     ────何かあったら、あいつらについていけ」


不安そうなプティに、アルボは残された力を使ってわずかにそう告げる。そして、今一度杖を握り、魔力を練り上げ始めた。再度祈りの言葉を紡ぎ、翼あるもの達との契約パスを創る。空を駆けるための契約ウイングフライヤーを再びイグアスとグレイスに繋ぎ、今度は早口で魔法文明語を呟き始めた。詠唱は流麗で、決められた形に杖と腕を動かしながら、残された魔力を放出していく。


アルボ 『操、第二階位の精ザス・ゼガ・ユ・オラ高揚、戦意ヴァリキ・ファイス────────奮起!エコナーゼ


イグアス、グレイス、そしてラッヘの身体を高揚感が包む。操霊魔法、第二階位の魔術≪ファナティシズム≫の効果だ。戦意を向上させ、戦いに赴くすべてのものの恐怖を拭い去る精神操作魔術。恐れを奪い、絶望の中に希望を創り出すための道を開く。


その効果に合わせるように、前線のグレイスとイグアスが同時に動いた。再びメイスを握りしめ、大きく振りかぶったイグアスは、女の腕を跳ね上げる。金属同士がぶつかり合うような不快な音が響き渡り、鋭い指先が宙を舞う。グレイスは水面を駆けながら、女の周囲を回り込み、その巨大なウォーハンマーを水面へと振り下ろす。巨大な血の水柱が上がり、それに気を取られた女はもう片方の腕を振り回すが、水柱を斬るばかりで、グレイスにその指先は届かない。

二人は連携して、互いにそれぞれの腕を抑え込むようにして動く。時に力で、時に技で翻弄しながら、致命打を与えるわけでもなく、ギリギリの距離で相手の攻撃を回避し続ける。その動きに苛立ちを覚えたのか、女はさらに自身の身体を変容させ、より指先はねじくれ、鋭利となり、体は干上がるようにして薄く、もろくなっていく。


ラッヘ 「攻撃に回った分、液体が薄くなった……? 今なら!」


二人の行動を理解し、ラッヘは再びリピータークロスボウを構える。弾倉に矢を再装填する機械的な音が響く。カチリ、と冷徹な音が響き、クロスボウには再び矢が装填された。静かにサイトを覗き込み、照準を合わせる。距離、方向、風の向き、二人の動き。弾道を予測し、冷静に、焦らずクロスボウの先端を敵の急所へと合わせていく。≪ファナティシズム≫の効果で、心臓が大きく鼓動しているのが分かる。戦意は高まり、集中力は敵の急所ただ一点へと収束していった。前線では、未だ二人が女との戦闘を繰り広げていた。まるで祭りの舞のように、荒々しくもどこか流れるようなその動きは、確実に“二人の方へと”女の意識を向けさせる動きだ。そして、女がその両腕を大きく振りかぶった瞬間、ラッヘは静かにトリガーを引いたのだった。


放たれた4本の矢は、ちょうどイグアスとグレイスが飛びのいたその空間を引き裂きながら、女の薄くなった胴を貫き砕いた。攻撃のために強化した腕とは裏腹に、限界まで装甲が削られた本体は、矢を受け止めることはできなかった。その体はひびが入るようにして崩れていく。最期の瞬間、女は驚いたような表情を見せたが、その直後に崩れ、血の海へとその体は還っていった。



辺りにまき散らされていたった血液は、地面に吸い込まれるようにして再び消えていきます。しばらくすれば、夜の闇と、静かに木々のざわめきが響く、いつものひぐらしの森へと戻っていました。


ラッヘ 「アルボ、動ける?」

アルボ 「……ん、あぁ、なんとかな。

     だが……かなり危なかった」

プティ 「今のうちに……逃げないと」

ラッヘ 「さっさと逃げましょう。イグアス、よろしくね」

イグアス「おう、急ぐか」


と、冒険者たちは再度の襲撃に警戒しながら、ひぐらしの森を後にするのでした。いやー危なかった。普通にギリギリの戦闘でしたね! もしアルボが抵抗できていなければ、1ラウンド目で普通に倒されていたことでしょう。出目もさることながら、非常に凶悪なエネミーたちでした。こちらも今後は、より強力な武装や技能を手に入れなければいけないかもしれませんね……


さて、一行は当初の目的であったお肉をゲット。ぼろぼろになりながらも、朝方にはハルシカ協商国へとたどり着きます。


プロン 「おかえりなさい……って、随分と朝早くのお帰りですね」

ラッヘ 「ちょっと……いろいろあってね」

プロン 「みんな疲れてそうですし、とりあえず休憩されます……よね?」

グレイス「シャワーぐらいは浴びたいね」

ラッヘ 「私も……」

イグアス「しかし、今までで一番気の乗らない血なまぐささだったよ。まったく」


プティは戦闘が終わってからというもの、アルボにずっとくっついたまま。どうやら、ひどく心配をさせてしまった様子。実際死にかけたのでそれもそうなのですが、ちょっとかわいそうなことをしてしまったかも。


アルボ 「プティ、もう大丈夫だ。心配ない」

プティ 「ほんと……?」

アルボ 「ちょっと死にかけただけだ、まだ死んではないさ」

プティ 「むー! メッ!!」


ばしっと叩かれるアルボ。HP2しかないんだからやめてくれ! 今ならちょっとした段差から落ちただけでも死にそうなんだ。

と、ひとまずは休息をとり、体力の回復を図ります。この日は一日お休みを取り、本番に備えて英気を養うのでした。


さて、体力を回復し元気になった翌日。保存した熊肉を使った、出店で売るメニューを考え始める冒険者たち。それぞれメニューの案出しを行います。

プティは熊肉を使ったジューシーなステーキを提案。というかそれ、キミが食べたいだけじゃなかろうな?

ラッヘは熊肉をふんだんに使った、熊肉チャーシューを提案。確かに、香草なんかを入れて煮込めば、熊肉特有の臭さも取れるかもしれません。それに美味しそう。

イグアスは熊肉を使った熊汁を提案。なかなか野性的な味のスープになりそう。一度にたくさん作れるので、売り上げも見込める逸品です。

アルボはというと、熊肉を使った串焼きを提案。片手で食べれて、仕込みも比較的楽。かつ、1本当たりの値段設定が容易で売り上げ管理がしやすそうです。

グレイスが提案したのは、熊肉のスライス。酒飲みらしく、お酒にあったテイストと量を提供します。軽く火を通し、ロースト風レアスライスにすることで見栄えもばっちり!

それぞれの提案を元に試食を実施。一番ダイス目の高い人のメニューが採用されることに。第一回お料理合戦の栄えある優勝者は、グレイス! 彼女の提案した熊肉ローストスライスを提供することとなりました!


グレイス「食材はあるんだろう? たまには自分で作るよ」

と、彼女はギルドの厨房を借り、熊肉をローストしてスライスしていきます。


プティ 「ねーねの手料理! はわー!!」

グレイス「料理ってほどじゃないよ、手軽なつまみだよ。

     旅の道中でも簡単に作れるから重宝している」

アルボ 「ほう……これはなかなか(むしゃむしゃ」

プティ 「おいしい!!」

グレイス「本当は、味付けのために何日か寝かせたいところだが……

     ま、そこまではいいだろう。ってなんだ、ボクの自分用だったのだが」

ラッヘ 「それこそお酒と一緒に出したら行けそうね(もぐもぐ」

イグアス「おぉ、この感じなら蓋つき容器に入れりゃ3品以上持ち歩けますね」

グレイス「(ため息しつつ)まぁいいか、人数分用意しよう」

アルボ 「酒類か……隣で販売したらそこそこ売れそうだな。

     仕入れ先を確認しておこう」

イグアス「食べ歩き目当てで来てるヤツが多いんで、片手に一本ずつの縛りを

     破れる食いモンはなかなか強いと思いますよ!」


わいわいとみんなで試食するなか、グレイスは更に作るため厨房で調理をし始めます。


グレイス「コツはここだね」

そういい、彼女は≪黒炎の遣い手≫により、手の先から真っ黒な炎を生み出し、肉の表面を炙っていきます。あたりに漂う芳醇な肉の香り……


イグアス「(コツっていうか裏技じゃねーか……)」

グレイス「料理名は……雷熊のスライス、でいいんじゃないか?」


というわけで、我々のパーティが提供する雷熊のスライス~黒炎炙り~(酒類は別販売)のメニューが完成! 様子を見に来たカリンも満足げにOKサインをだし、とうとうお祭り本番へ!



栄華祭、一日目。

大通りにはそこかしこに屋台が並んでいる。カラフルな電飾や看板で飾り立てられていて、競い合うように存在を主張している。

とろとろのチーズをカリカリのピザに載せた石窯焼きのピザ。ふわふわ雲のわたがし。フルーツと様々なアイスと贅沢に生クリームをのせたクレープ。アルミホイルにくるまれたジャガイモにバターと醤油がかかったじゃがバター。大きな肉の塊がゆっくりと回し焼きにされ、香ばしい匂いを漂わせるケバブ。どれもが新鮮で、あちこちから美味しそうな香りが漂っている。


カリン 「こっちっすよ!」

と、カリンの誘導の元すすめば、そこには冒険者たちが二日間運営することになる屋台が出店している。看板には「酒飲みの為の熊肉プレート」と書かれていて、準備が進められていた。


さて、このお祭りパート。2日間にわたってイベントが進行していきます。両日ともに、それぞれで作戦を立案し、よりたくさんの人を集めるため、行動を起こすことができます。それとは別に、午前・午後のそれぞれで、ハプニングイベントが発生。イベントによって来店するお客さんが増減する模様。


とりあえず、1日目ということで、それぞれ作戦を立案し、多くのお客さんに来てもらうために行動を開始し始めます。なお、現在来店しているお客さんは300人。これをそれぞれの作戦でどれだけ伸ばすことができるかが、屋台運営の肝となっていきます。


ひとまずアルボは、知り合いを何人か捕まえ、熊肉スライスを食べてもらい、その評価を口コミで広めてもらう作戦を実施。お世話になった取引先の相手や、商売上の仲間、アルボに頭が上がらない人を集めて食べてもらいます。そして、その美味しさを口コミでどんどん広めてもらうのでした。美味しいと言え(脅迫)。この作戦が功を奏し、14人のお客さんが新たに来店。いいぞいいぞ、どんどん増えてくれー!


グレイスは、「グレイス+自分の分の酒を買い、飲み比べをして買ったら全額払い戻し」というサービスを展開し、更なる人を呼び込む作戦を実施。っていうかそれ、自分がタダで飲みたいだけだろ!! 客の金で酒を飲む女が今ここに爆誕します。この話題のサービスが酒飲みたちの中で広まったのか、ドワーフの団体さんが到着。ダークドワーフであるグレイスへの対抗心もあり、超酒盛りが始まります。ダークドワーフVSドワーフ、真の大酒飲みはどちらか……! グレイス的に勝っても負けても美味しいサービスは、新たに17人のお客さんを呼び込みます。


イグアスとラッヘはコンビを組み、大道芸で通りの人々を呼び込む作戦にでます。その内容は、大通りでイグアスがジャグリングをし、そのジャグリングして投げたものをラッヘがリピータークロスボウの連射で全て撃ち抜くというもの。ケンタウロスでただでさえ目立つイグアスと、射手として一流の腕を持つラッヘの特技がうまく組み合わさったこの作戦は、大通りで想定以上の人々を魅了することに! 15人+19人の新たなお客さんが集まります。うまい!


それぞれの活躍のおかげで、計65人の新たなお客さんを獲得することに成功! 合計で365人のお客さんがお店へと立ち寄ってくれているようです。これはなかなかの売り上げが期待できそう。


さて、今度はハプニングイベント! まずは午前の部。代表としてイグアスが1dを振ります。出てきた出目は[1]。その目を見たGMの第一声が「あ」……。えっ、何かマズいの……?



沢山の人が屋台を訪れ、売り子たちは大忙し。プティもお店の前で接客にあたり、入れ代わり立ち代わりくるお客さんへ、丁寧な接客をすすめています。さすがうちの子、かわいいしかしこい。


プティ 「ありがとうございました~!

     ……は……は……はっっくしょん!!」


不意にでたくしゃみ。ただそれだけならよかったのですが、くしゃみと一緒にプティの口からは小さな火の玉が発射されます。発射されます!? 発射されたらこまるよ!! しかも、その火の玉は屋台へと直撃!! ファッ!?


プティ 「ああああああああああ!!!!」

ラッヘ 「え? うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

プティ 「あわわわわわわわ!!! ごめんなさい~~~!!!」

イグアス「さっさと水持ってくんだよ!」

ラッヘ 「ちょっ、消化! ……駄目だ、お酒しか用意してない……」

カリン 「ちょっと黒炎だしすぎじゃないスか……!?!?

     ってああああああああ!! 燃えてる!!?!?」

アルボ 「おいおいおい、ボヤ騒ぎになってるぞ!」

カリン 「これはヤバいッス……マジでヤバいっス!!」


と、初日初手から文字通りというか見た通り大炎上!! 慌てて消火活動を始めますが、集まってきたお客さんは散り散りに。このイベントで30dのお客さんが減少することに。そしてその値は……102人!! 現在のお客さんの総数は263人に。プティ!! もう~~~~困った子だなぁ!!


アルボ 「なんとか鎮火したが……けが人は?」

カリン 「幸いなことにないっス」

イグアス「まあ屋台一つですからね」

ラッヘ 「よかった……」

カリン 「昔は幸運商人と呼ばれてたんスけどねぇ……」

アルボ 「不幸中の幸いだったな。プティの様子はどうだ?」

プティ 「ごめんなさい……」しゅんとした様子でうなだれるプティ。

ラッヘ 「プティ、大丈夫? けがはない?」

プティ 「ない……の」

ラッヘ 「ならよかった」

プティ 「けど……お客さんが」

アルボ 「なに、怪我がなければ問題ない。

     幸いなことに初日だし、今からでも手は打てる」

プティ 「怒らないの……?」

イグアス「怒られるヒマがあったら制御の訓練でもし直しておくんだな」

アルボ 「怒ったところで、客が戻ってくるわけでもあるまい。

     むしろここからどうやって増やすかを考える方が先決だろう」

ラッヘ 「反省してないなら怒るけど、プティは自分が悪いってわかって反省

     してるんだから、いいんだよ」

プティ 「……ママ……パパ……にーに……

     ……プティ、頑張る!!!」


と、プティも立ち直ってくれたようです。よかったよかった。なお、そんな一行を他所に、炎上する屋台を肴にドワーフ軍団Withグレイスは酒飲み中。おいぃぃぃぃ!!! クッソ陽気なドワーフたちの笑い声とジョッキを酌み交わす音が聞こえてきます。さすが燃えない奴らは動じない。なおダークドワーフは燃えるのが悲しい所。


そんなこんなで午前は終了。この屋台のメイン時間である午後へと時間は進み、再びハプニングイベントが発生します。1日目午後の部代表はアルボがダイスを振り、イベントダイスの出目は[4]。さて、今度は一体何が起こるのか……



ボヤ騒ぎから一転、衛兵たちに怒られながらも再び操業を開始した一行。そんな屋台に現れたのは、前回のセッションにて登場した、動物大好き迷惑な≪ライロット姉妹≫こと、リーチェ! どうやらお祭りに遊びに来ているようです。


リーチェ「あらあら、貴方たち屋台をしていたのね。

     ていうかぶちゃかわ(※)もいるじゃない……」(※イグアスのこと)

イグアス「鎧着てないのにその呼称を定着させんなよ。

     というか、オレの鎧もバカにすんなよ」

アルボ 「む……お前はいつぞやの迷惑姉妹」

リーチェ「迷惑……? あれは迷惑なのかしら。

     というか、いいの? 私を怒らせて」


そういうリーチェは何やら端末を操作して、魔動機の画面を見せてくれます。板状で、手のひらに収まるサイズのそれに表示されているのは、何かとても見たことのあるUI……ていうか、これスマホとツイッターじゃん!

どうやらリーチェはなかなかにツイッターをやっているらしく、フォロワーの数は万の単位。それをちらつかせて、彼女はこういうのでした。


リーチェ「せっかくだし、ツイートしてあげるわ。

     これ、ぶちゃかわのお肉よね……悲しいけど、美味しいじゃないの。

     ほら、アピールしなさいな。書いてあげるから」


まさかの店炎上(物理)の次は、ツイッターで店大炎上の危機! ひぇぇ、これ以上燃えたら立て直しは不可能よ!


リーチェ「ぶちゃかわ協会の会長だもの、フォロワーが多くて当然よ」

イグアス「そうそうお目にかかれない珍味と、これまた日常じゃ飲む機会のない酒が

     揃ってるぜ! 栄華祭におひとつどうだい!(ポーズを決める)」

あっ……ついやっちまった、という顔をするイグアスを、パシャパシャと写真を撮りまくるリーチェ。


アルボ 「イグアスのいう通り。これは鮮度のよい雷熊肉を使用した逸品だ。

     そのうえ、世にも珍しいダークドワーフの黒炎で調理されているぞ」

リーチェ「へぇダークドワーフの黒炎で、それは……沢山お客がくるわ」

アルボ 「(もし色よく紹介できたら、

      ライダーズギルドに便宜を利かせてもいい)」

リーチェ「あらあら……

     これで、ライダーズギルドをぶちゃかわにする野望が進むわね。

     ええ、イイと思うわ。せいぜい期待してなさい」

と、こそっと買収しつつ、リーチェにツイートをしてもらいます。これによって、20dのお客さん増加が見込める模様。その値は……73人の増加! なかなかいい値が出たようです。最終的にこの日としては336人で終了。


さてさて二日目、お祭りも最終日ですが今日も全力で客を集めて売り上げUPを目指していきます。まずはそれぞれの作戦を実行!


イグアスは昨日と同じ、大通りで大道芸を行い人を集めていきます。見慣れないケンタウロスはよほど人の目を引くのか、もう完全に大道芸のお兄さんとしての地位を確立し始めているようです。後ろの二本足で器用に立ちつつ、両手で持った傘をくるくる回す傘回しで沢山の人を集めることに成功します! なんと21人も集めることに成功! どうも子どもたちの人気が高いみたいです。


イグアス「……これ、一応氏族の足腰バランス修行法の一つなんすけどね。

     文化交流ツアーとか、もしできたらウケるんだろうなぁ」

グレイス「まぁ人は物珍しければウケるだろうからねぇ」

アルボ 「そうだったのか、てっきり飲み会向けの一発芸を覚えてるものだと……」

イグアス「ザルツォルガル氏族での飲み会の一発芸は、漫談がブームでした」

アルボ 「想像以上に知的」


グレイスも器用な指先とその技能をふんだんに生かし、在庫余りでちゃちゃっと作った小物アクセサリーをセット販売する作戦を実行。肉を買ってくれれば、さらにお安くついてくるという相乗効果を狙った、なかなかスマートな作戦。普通のドワーフが作ったアクセでもいい値段が付きそうなのに、ダークドワーフの作ったアクセはかなりいいお値段が付きそうです。それ目的に来る人もいそう。この作戦によって17人のお客さんが来店! 


ラッヘは、この世界にツイッターforアルフレイムがあることを知ったこともあり、急遽このお店の公式アカウントを作成。お店のメニューや実際の商品の写真、それにグレイスが売り出した小物アクセの紹介などを始めます。また、祭りに参加している人のツイートをいいねすることで、ツイッターマーケティングを実施! か、完全に使いこなしてる……!! これが若者に受けたようで、16人の新規お客さんを獲得することに成功します。うーむ、恐るべしツイッター。


さて、アルボはというと従業員たちの服装に着目。より目につきやすい、華やかな衣装にすることを提案します。ツイッターで拡散もされるかもだし、宣伝にちょうどいい。何より可愛いプティを見てほしいんだ! で、結論から言えば19人の新規客を獲得したのですが……


カリン 「アルボさん……この服は?」

と、カリンはアルボが渡した服を持ちながら、冷ややかな視線を送ってきます。その手に握られたのは可愛らしいメイド服。アルボは視線を無視し、従業員たちに新しい服を配っていきます。


アルボ 「テラスティア大陸ではメイド服を着て接客するギルドがあると聞いてな」

プティ 「プティもきるの~」

アルボ 「あぁ、プティもだ。ウチの看板娘だからな、当然着てもらう」

イグアス「オレは着ませんのでよろしくお願いします」

アルボ 「む、着ないのか? お前の分も用意したんだが……

     “ウマ娘”! で売り出して行こうと思ったが無理だったか」



と、いうところで合計73人の追加。二日目累計は403人で、初日の大炎上分を取り戻すことに成功! なんとか軌道に乗ってきたぞ!

そして、恐怖の(?)ハプニングイベント午前の部が発生。今回の代表者はラッヘ。1dを振ったところ出目は[3]。今度は何が起こるのでしょうか……



販売を続けていると、再び見知った顔が現れます。その人物は、第一回目のセッションにて現れた不思議な(胡散臭い)占い師。占い師なのに科学的に占ってあげる! と言い、他にも意味ありげな発言をしていた謎めいた彼女です。


占い師 「あらやだ、貴方たちは……この前のお客さんじゃない!」

アルボ 「確か胡散臭い占いをしていた……」

占い師 「胡散臭くないわよ! そう、科学的にね! ふふん!」

イグアス「あぁ、あんときのタカリか」

占い師 「一食買おうかしら……占い払いでもいい?」

アルボ 「なんだ占い払いって……初めて聞いたぞ」

占い師 「物々交換みたいなものよー」

ラッヘ 「面白そうじゃない、やってみてよ」


わりとラッヘは占いとかが好きな模様。一応15歳、そういうことに興味のあるお年頃のようです。アルボとイグアスは凄い表情してそうですが、占い師は何故か自信満々に占いを開始します。

この占い払い、2d6を振り奇数なら20dお客さんが増え、偶数なら20dお客さんが減るというギャンブル仕様。さぁ、運命のダイスロール! ……の結果、偶数! 減った! 20dの結果57人減少するらしい……


占い師 「……不幸が起きるわ、ええ、それは相当な」

ラッヘ 「ま、またぁ?」

イグアス「また火が……」

占い師 「見える……見えるわ……」

アルボ 「何が起きると言うんだ今度は……」

占い師 「あたりは……水に包まれて……あら、大雨ね!」


と、彼女が言った途端雲行きが怪しくなり始めます。しばらくすれば、ぽつぽつと大粒の雨があたりに振り始め、通りにいた人々は屋内へと避難していきます……


イグアス「……これはしゃーないっすね。雨が上がったらまた混みますよ」

グレイス「軒でも作ればよかったな、即席で」

ラッヘ 「あいつ……! 占い払いなんて通さなきゃよかったわ……」

アルボ 「占いじゃなくて呪いとかじゃないだろうな……」


大雨が明ければ、人々は再び戻りまた先ほどの賑わいがあたりを包んでいきます。祭りも最終日の夜を迎え、どの屋台もラストスパートに向けて今までにない活気で売り買いしているらしい。私たちも負けていられないぞ!



さぁ、二日目最終日の午後。最後のハプニングイベントが発生します。代表者はグレイス。1dを振ってイベントを決めると、出目は[5]。さて、今度は何が起こるのでしょうか?



プティ 「そういえば、料理は愛情ってシウスが言っていたんだけど

     屋台でも同じ……なの?

     まごころ籠めたら、人も増えるのかな?」

アルボ 「さぁ……どうだろうか。

     愛情、というが誰に向けて作るかでもかわるんじゃないか?」

プティ 「うぅん……」

イグアス「全方向に無償の何とやらをバラ蒔けるのは聖人聖女だけだぜ」

プティ 「イグアスがお客を集めて、ねーねが焼いて、

     パパが接客して、ママが宣伝する料理……」

ラッヘ 「プティがご飯をもらうとき、ぽいって目の前に置かれるのと、

     ちゃんとお皿によそって机の上で、皆と食べるの。

     どっちがおいしい? ってことなんじゃない?」

プティ 「それは机の上でみんなと食べる方なの!

     ……はっ、つまり気持ち?」

ラッヘ 「そういう心づかいが料理は愛情って奴なんじゃないかしら、多分」

イグアス「うまいこと言いますねぇ」

プティ 「誰に向けるかはわからないけど、できるだけ美味しく食べてほしいの!

     愛情をこめて……でも、どうやって……すれば」


クルクマ「愛情をこめる……それは難しいこと。けれど! 大事なことだよね!!」


相変わらず唐突に現れる愛の伝道師イグアス・ラブことサキュバスのクルクマ。今回もイグアスをストーキングしていたのかもしれない。ベリルにしてもクルクマにしても、突然現れるの最近流行ってるんですかね?


アルボ 「……ほんと突然出てくるなこいつらは」

ラッヘ 「物理的に愛情をこめてきそうなやつが出てきたわね」

クルクマ「はーい! 呼ばれて出てきました!!!」

イグアス「逆だよ逆、今だけは来るなって思ってた」

クルクマ「だってツイッターでイグアス様の姿が~~~♡

     写真にして飾りました!」

グレイス「通知ONにしてそうだ」

クルクマ「待ち受けにもしてますよ!」

アルボ 「お、おう……」

イグアス「まぁ写真とか私物は別にいいや」

クルクマ「っと……愛情のかけかたですね……誘惑しましょうか?」

イグアス「プティ、反面教師としてしっかり参考にするんだぞ」

アルボ 「しかし、曲がりなりにもサキュバスなら、

     愛情にも詳しいのではないか?」

クルクマ「愛情って言っても、人の数だけありますからね。

     今回はまじめにしますよ、えっとね~~」

グレイス「歪んでそうだなぁ」


そういいながら、クルクマは従業員やプティ、そして冒険者たちに「愛情」とは何たるかをみっちり仕込んでいきます。サキュバスが教えてくれる「愛情」って一体なんなんでしょうか……字面だけだと禁断感があります。ごくり。


プティ 「えっと……両手でうけとって~、あととびきりの笑顔?

     それで……『ありがとうございました!』」

クルクマ「そう! 完璧!!」


と、どうやら教え込んでくれたのは接客の仕方。真面目かな? しかし、サキュバスらしい、人を魅了する接客の仕方らしく、実際接客時の態度としてはパーフェクト。流石というか、サキュバスらしく(?)人の心を虜にする術は抑えているようです。こういう対人での接客業に向いているのかもしれません。


ラッヘ 「(普通のこともできるんだ……)

クルクマ「ほら、イグアス様もほら!!」

プティ 「パパもママもねーねもいぐあすも~

     売上アップのためなんだよ!」

イグアス「ありがとうございました!(ウィンクパチッ☆」

クルクマ「イグアス様ごと買い取ります!!(パシャパシャ」

イグアス「やらせんなよ……」


ラッヘ 「ありがとうございました」と、よそ行きの顔でラッヘは見事に対応

アルボ 「こうか……?(真顔」

プティ 「ママかわいい! パパ変わんない!」

イグアス「ダンナ、口角をこうっすよ、こう!(指でぐいぐい」

アルボ 「ありがとうございましたぁ(ニタァ」

プティ 「……」

クルクマ「アルボさんは商人失格だね」

グレイス「若干気持ち悪いな」

ラッヘ 「合わないね」

カリン 「そうっすね~、笑顔のできない商人とか」冷ややかな視線再び。

イグアス「ダンナは商人を超えてこう……あれだよ、歩く商売の

     昨日枢軸みたいなあれだから」

アルボ 「……そうか」

プティ 「パパ! イグアスのいう通り口角あげて!

     せーの! にー!!」


なんど笑ってみても、気持ちの悪い笑顔か悪徳商人の顔しかできないアルボ。

プティ 「だめだめ~~」

クルクマ「こうなったらみっちり教えるよ!」


ということで、接客スキルが大幅に向上! お客さんの評価が上がり、結果として30dの増加となりました。その結果は……119の増加! かなりいいダイス目! 二日目の最終計としては471人で〆となりました!


カリン 「お疲れ様っス!」

ラッヘ 「無事……無事? 終わってよかった」

イグアス「お疲れさんでした」

グレイス「お疲れ様、稼ぎの計算が楽しみだね」

アルボ 「ちょっとした小遣い稼ぎにはなったな、食費に当てれそうだ」

プティ 「これは打ち上げ楽しみなの!

     あ、あまったお肉食べていい?」

イグアス「打ち上げようだからそん時にな」

プティ 「やったー!!」

ラッヘ 「よく頑張ったね、プティ」

アルボ 「あぁ、よく稼いだ。いい子だ」

プティ 「パパやママ、ねーねとにーにのおかげなの」

嬉しそうにくるくると回るプティ。その様子を見て、彼女の手を握るアルボとラッヘ。この後の打ち上げを楽しみにするプティを、皆がにこやかに見つめます。


最終的にはかなりの儲けを出すことに成功した冒険者たち。売り上げをカリンに報告すれば、カリンもかなりご満悦の様子。

初日の火事に大雨と、かなりのアクシデントもありましたが、それを上回る良いイベントと活躍によって、無事大盛況のなか終えることができました! よかったよかった。こうして、栄華祭での冒険者たちの“一味違う冒険”は幕を閉じるのでした!


今回もわいわいとした楽し気な空気の中、セッション3「食材探しは命がけ? ハルシカ栄華祭り」は無事に終了しました! 本当にお疲れ様でした!


◆感想

今回はお祭り回、ベーゼンGM得意の回でしたね! 毎回、遊ばせていただいて思うのですが、こういった和気あいあいとしたシナリオって、本当にGMの性格がでるんだなぁと思います。ベーゼンGMの和気あいあいとしたシナリオは、最初から最後まで暖かな感じがして、NPCも含めてみんな楽しそうなのがいいですよね!

そして、とうとう今回からアンデッドサイドのキャラクター「ベリル」が登場。なかなか癖のあるキャラクターで、「イグニスの怪物」の話や血の海の話など、いろいろとキーワードになりそうな言葉も出てきています。アンデッドサイドが登場したことで、一応「人族」「蛮族」「アンデッド」の3大勢力が全てそろい踏みした感じなのかな……? 今後、「人族」勢力として王族など、より上位の存在が出てきそうな感じはしますが、どういった展開になるのかとても楽しみですねぇ!


今回の戦闘はかなりギリギリ……というか、出目が悪ければ普通に全滅していた可能性の高い戦闘でした。今後もかなり危険な敵が出てくる可能性があり、はらはらしつつもギリギリバトルで手に汗握る展開で面白いですね! 次回以降、PC達の冒険者レベルは7に到達。更なる力を得た冒険者たちが見れると思うので、戦闘も注目が外せません!


最後となりましたが、今回もありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


◆キャラシ

●PC:アルボ/PL:とたけ

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=nTmTBt


●PC:イグアス/PL:じゃっく

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=pjvTxS


●PC:グレイス/PL:はやみ

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=68Iv1j


●PC:ラッヘ/PL:たけしん

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=N5D28j

 

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