2 あれがない

魔神を倒してから、二ヶ月がたった。今は蓮は旅をしている。これまでの冒険の中で気になっていた町や場所はあるのだが魔神を倒すという目的のために余裕がなかったのでよることが出来ていなかった。




今日来ているのはウィールの森の近くの町だ。この森の奥には神秘的な花畑が広がると言われている。そのために近くの町で花畑の事について聞くために寄っていた。




蓮は花畑の情報を集めるために町にいる人に話を聞く。




「すいません。少しお聞きしたいんですけど」




「どうしました?」




「実はこの森にあると言われている花畑を探しに来たのですが、花畑について知っている事ってありますか?」




「花畑?それなら今はやめておいた方が良いと思いますよ」




「どうしてですか?」




「実はね・・・その花畑の辺りには今は危険な魔物が住み着いてしまって。最近、その花畑にいった人が襲われて帰ってきたんです」




魔物の中にはフラフラと歩き回り住処を転々とする魔物が存在する。蓮も突然住み着いた魔物を見たことはある。




「だから今は行くのは危ないですよ」




「それじゃあ依頼をするというのはしないんですか?」




「そうはいってもあの花畑に住み着く魔物退治を依頼するのならこの村の誰かがしないといけないけど、だれもそんなお金は持っていませんし。魔物が去ってくれるのを静かに待つしか無いですね。あそこは私たちが神にお祈りする場所でもありますけど、命に代えられる物はありませんし」




「それなら俺が行きましょうか?」




蓮は村の人にそう言う。




「え?あなたが行かれるんですか?」




村の人は驚いた様子で俺を見てくる。




「はい。俺も腕には自信が少しあるんで」




蓮たちがこれまで戦ってきた魔物の中には国一つを滅ぼしてしまうような化け物もいた。それに比べれば簡単に倒せるはずだ。と蓮は考える。それに今の蓮にはみんなからもらった武器もある。




「でも危ないんじゃ・・・」




村の人は困っている。当然のことだろう。突然来た素性も知らない人間が魔物を倒すと言っているのだ。何か裏があると考えてしまうのも無理はない。蓮は出来るだけ優しい口調で喋る。




「良ければ村長さんに合わせてもらえませんか?村長さんの方にお話を伺うので」




「そうですか。それじゃあ村長さんの方にお願いします」




蓮は村長さんの所に案内してもらい、村長に見返りは何もいらないので花畑に住む魔物の退治をしてもいいのかと聞くと、村長は最初は疑いの目を向けていたが蓮の花畑を見たいと言う気持ちが伝わったのか蓮が行くことを許してくれたのだ。はれて蓮は森にいって魔物退治をすることになった。




「森に入ってから結構歩いた気がするけど出てこないな。さすがに道を間違えているとかはないよな」




蓮は森の中を進んで行くのだが噂の花畑が見つかる様子はない。村の方から花畑までの道順は教えてもらい、途中の目印も見つけて道順通りに勧めているはずなのだが、花畑の様子は全く見えない。




蓮は森の中を進んで行く、森の奥に進むにつれてどんどんと森の木々は多くなっていき、樹海のようになっていく。一度間違えば道を見失ってしまいそうな場所だ。




「目印はちゃんとつけておかないとな」




蓮は枝に赤色のヒモをつけて進んで行く。とにかく見つからない以上、進んで行くしかない。


その時だった。向こうから光が差し込んでいるのが目に入る。




「確か地図には森の中に一つだけ森が開けていて光が差し込んでいるとう場所があったな。それじゃあもしかしてあそこが花畑なのか?」




そして蓮が森の中を進んで行き、森の中を抜けて開けた所に出るとそこに広がっていたのは辺り一面に色鮮やかな花が咲く花畑だった。ここが目当の花畑で間違い無いだろう。




「まさかこんなにすごいとは…… これは来たかいがあったもんだ」




ここでゆっくりと休みたいのだがその前に蓮にはやるべき事がある。この花畑に住み着いた魔物の退治だ。




「村の人の話によると住み着いた魔物は四足歩行の化け物って話だけど、見た感じ何かの痕跡はないな」




その時だった。森の奥から何かの足音が聞こえる。おそらくここに住み着いた魔物の足音だろう。




(何かくる!)




蓮は森の奥からの足音に気づいてすぐに身構える。




その瞬間、森の中から魔物が姿を現した。その魔物は頭に大きな二本の牙をもっている。


これは俺も昔によく見たことがある魔物だ。




「フウウウウウ・・・」




四足歩行で鱗に覆われた巨体。蓮の目の前に現われたのは地竜であった。




「地竜か。これは町の人が危ない危ないな」




地竜は翼はなく空を飛ぶことは出来ないが、その巨体とその強い顎で敵を潰す竜種の一種だ。


蓮は冷静に地竜の分析をする。




「あのくらいの大きさならすぐに終わりそうだな」




目の前の地竜の大きさは体高で蓮の約2倍で体長は蓮の約4倍はあるが、この大きさはまだ子供のサイズだ。




「それじゃあちゃちゃっと終わらせるか」




蓮は鞄から自分の魔導書を取り出そうとする。この鞄は魔法で中の体積が拡張されており、多くの物を入れる事が出来る。




蓮は魔導書を取りだす・・・取り出す・・・取り出す。




「あれ?どこにいった?もしかして中でごっちゃになったか?それなら空良の剣だ!」




蓮は空良の剣を探すが空良の剣も見つからない。




「それなら乃愛のだ!」




だが乃愛のも見つからない。




「な、なら奈菜のはどうだ!」




しかし奈菜のも見つからない。




「ああ、もうめんどくさいな!」




蓮はカバンをひっくり返してカバンの中身をすべてだす。カバンの中から色々な物があふれて出てくる。蓮はあふれかえった物の中から探し出す。




「あれ?どうしてだ?」




蓮の目の前に広がる荷物の中には蓮の魔導書を含め、みんなからもらった武器が一つも無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る