最強武器全部無くした編
1 戦いから帰ってきて
蓮はあの戦いの戦場を終えたあと、一度王国の首都ヴァルキュラに戻ってきていた。魔神を倒した事を報告するためだ。
蓮は王宮の門の前まで着くと、門番に話しかける。
「すまない。王に話があるんだが通してくれないか」
「王にですか?どちら様でしょうか?」
門番の兵士は怪訝な顔で蓮を見てくる。正直、これは分かっていた反応だ。
なぜなら蓮たちの素顔を知っているのは王と重役くらいしか知らない。普通の人はともかくこの城の兵士の人たちも蓮たちの正体は知らない。蓮たちも別に名声が欲しいという希望は誰もなかったので無駄に目立つことを避けるために四人の存在は隠してもらっていたのだ。だけどそのせいでこのように少し面倒な事はある。
「あの、何か王と面会されるのを証明できるものを見せていただけませんか?」
「ああー…証明書ね…」
当然そんなものは無い。いつもは魔法で連絡していたけど、魔神との戦いのせいで少し体の中の魔力の流れがおかしくなって上手く使えない状況だ。
蓮がどう返答しようかと困っていると門番の兵士の表情は徐々に険しくなっていく。
「あの、早く許可証を出していただけませんか?それとも何か良からぬ事でも考えていたとか」
「あー、えっと…」
(なんかこのまま逃げたらヤバい雰囲気になってきたぞ。どうにかしてこの場から離れないと。)
その時だった。
「ちょっとそこの門番のお兄さん」
「はい何でしょうか?あ、あなたは!」
俺の後ろから誰かが門番に向かって声を掛けると門番は俺の後ろの人を見て、背筋をピンと伸ばして慌てて敬礼の姿勢を取る。
「ご、ご老公!どうしてこんな所に!」
「ちょっと前を歩いていたら知っている人を見かけたのでな。久しぶりだな、レン君」
「お久しぶりです。ご老公」
彼はフルコ・ルッフォ。昔から代々続く貴族、ルッフォ家の現当主だ。フルコには冒険の中で色々とお世話になった蓮たちの正体をしっている人物の一人である。
フルコは門番に言う。
「話を聞いていたんだが、この子は私の知り合いでな。私も少し王に用があるから通してくれないか?」
「ご老公がそう仰るならどうぞ!」
「ありがとう。王は執務室におられるのかい」
「はい。執務室の方に行っていただいたらおられると思います。連絡の方をいたしますので少々お待ち下さい」
門番は城の中に連絡を取るとこちらに戻ってくる。
「では王は執務室の方にありますので案内の者が来ますので少々お待ち下さい」
「いいや、案内は大丈夫だよ」
「そうですか」
門番は道を譲り、蓮とフルコは城の中に入って行く。
「ご老公、ありがとうございます。助かりました。連絡が出来てなくて」
「魔神を倒してんだってね。本当に君たちはすごいよ。そういえば他の三人は?」
「実は他の三人は元の世界に帰ったのでそのことを伝えに来たんです」
「そうなのか。他の三人は帰ってしまったのか。でもどうしてレン君は帰らなかったんだい?」
「俺はもう元の世界に帰れないので」
「それはごめんね」
フルコは失言をしてしまったと気まずそうな表情になるが蓮は笑って答える。
「いいえ、気にしていませんよ。こっちの世界も好きですし」
「そっか。それじゃあ私は他に用があるからここでね。また良かったら遊びに来てくれ」
「はい。分かりました」
そして蓮はフルコと分かれて、王のいる執務室に向かう。
「そういえばあいつを会うのも本当に久しぶりだな。王宮に魔神の手下が紛れ込んだときに護衛についた依頼だな。」
蓮は執務室の前にまで来ると、ドアをノックする。するとドアの向こうから声が返ってくる。
「入ってきて良いぞ」
蓮はドアを開けて、中に入り執務室で書類に奮闘している王に声を掛ける。
「よう、ユーリ。久しぶり」
「ん?レンじゃないか!久しぶりだな!」
ユーリは俺に気づくと椅子から立ち上がってこちらにやってくる。彼は現国王のユーリ・フレデリック。ユーリとは蓮たちと同い年でユーリの方が気楽にしゃべって欲しいというので普通に話している。
「連絡もなく、突然どうしたんだ?」
「実は魔神を倒すための魔法で魔力の流れがおかしくて魔法が上手く使えてなくてな」
「そうなのか。とにかく話でもしようか」
「書類の方は良いのか?」
蓮は机に置かれている大量の書類の束を見てユーリに尋ねる。するとユーリは疲れた顔で言う。
「良いんだ!一週間ずっと書類だぞ!さすがに疲れたし休憩だ休憩!」
蓮とユーリは執務室の応接用の椅子に座って話す。
「まず最初にレン。魔神の討伐本当にありがとう。レンたちのおかげでこの世界は救われた。なんとお礼を言って良いのか。そうだ。他のみんなはどうしたんだ?どこかにいるのか」
「いいや、みんなは元の世界に帰ったよ」
蓮はユーリにフルコと同じように説明をする。
「そうか。みんなは帰ったのか。みんなにも最後の挨拶が出来たら良かったんだけどな。それでなんだけど、レンに魔神討伐の報酬を渡したいんだけど何か欲しいものはあるか?何でもやるぞ」
「欲しいものか…。欲しいものっていわれてもこれという物がないんだよな。別に金もそこまえ困ってないし。武器も今のがあるし。特に今はないな…」
「それならまた何か欲しくなったら言ってくれよ。世界を救ってくれた英雄だ。どんな物でもやるからな」
「分かった。ゆっくりと考えておくよ。ユーリも忙しいだろうし。今日はもう帰るな」
蓮がそう言って立ち上がると、ユーリは少しさびそうに蓮に言う。
「まだいても良いんだぞ。久しぶりの再会なんだから」
「確かに話したいことはたくさんあるがその前にユーリはその書類を終わらせろよ」
「うっ…。分かった…」
ユーリはあからさまそうに嫌な顔をする。
「じゃあな、頑張れよ。国王様」
「ちょっと待ってくれ。渡したい物があるんだ」
蓮がそうして執務室を後にしようとするとユーリが蓮を呼び止める。そしてユーリは机の引き出しから金属製の札のようなものを俺に渡す。
「これは?」
「それは王宮に入るための通行手形だ。それを見せればわざわざ連絡をしなくても王宮に入ることが出来るからな。また気軽に来てくれ。俺もすっとここで仕事を疲れるから話し相手が欲しいしな」
「分かった。また遊び来るよ。お前は仕事頑張れよ」
そして蓮は城を後にした。蓮はこれからのことを考える。
「さてこれからどうするか。まだ特にすることは決まってないしな。気ままに旅でもしてみるか」
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