突然ですが、最強武器無くしました

蓮悠介

プロローグ

プロローグ 魔神討伐

そこは荒野の真ん中、あたりの地面は色々なところが大きな衝撃でえぐられてボコボコになっている。そんなところに人間の四人組が各々の武器を持って立っていた。


その四人組の中の片手に魔導書を手に持つ青年が他の三人に声をかける。


「みんな、あと少しだ。行くぞ!」

「おう!」

「俺たちが勝ってこの世界を守るんだ!」


彼らの目の前には大きな翼と黒い角を持ち、邪悪な存在感を放つ悪魔そのものと言って良い姿の化け物が立っている。化け物の体は傷だらけの状態で俺たちを忌々しそうに見てくる。


「タカガ人間ゴトキニコノ私ガ破レルコトナドアリエナイ!」

「いいや、これで終わりだ。お前は負けるんだ」


魔導書をもつ青年は、右手に魔力をあつめる。これで魔人のとどめを刺すつもりだ。青年は三人に声をかける。


「みんな、俺に力を貸してくれ」

「蓮さん、使ってください!」

「トドメは任せました!」

「いけ、蓮!」


青年の言葉に三人は快く応じて魔力を渡す。青年の右手には自身と三人の魔力をありったけのせることであまりにも濃い魔力の密度が辺りの空気を震わせる。


「終わりだ!《光輝砲》!」


青年は最上級の光魔法の一つ《光輝砲》を発動し、魔神に向けて放つ。巨大な光の光線が魔神に向かって飛んでいく。


「ウオオオオオオオ!フザケルナアア!」


魔神は負けじと自身の前に防御壁を展開して青年の《光輝砲》から身を守ろうとするが、彼らの渾身の《光輝砲》は魔神の防御壁にヒビを入れていく。


「いけええええ!」

「クソオオオオ!」


魔神の防御壁を破った《光輝砲》は魔神の体を貫いて、空に飛んでいく。


「コノワタシガマケルノ…カ…」


魔神は徐々に塵のように粉々になっていき、消えていった。


「や…やったー!勝った!」

「よっしゃあ!」

「本当に勝てたんだ…」


全員が歓喜に沸いて叫んでいる。


彼らはこんな所で化け物と戦っているのか。彼らは異世界を救うためにこの世界に呼ばれた。この世界を破滅させようと目論んでいた魔神を倒すべくこの異世界に呼ばれたのだ。そして今ちょうどその元凶である魔神を倒したのだ。


「蓮、やったな!」

「最後の魔法は本当にすごかったよ!」

「やっぱり蓮の魔法はいつ見てもすごいですね」

「いいや、みんなの力を貸してくれたおかげだ」


そう魔導書を持つ青年、久城蓮くじょうれんはみんなに微笑みながら話す。


「俺一人じゃあんな威力は絶対に出せない。みんなが力を俺に預けてくれたおかげだ」

「それにしてもこれでやっと帰れるのか。本当にいろんな事があったな」


仲間の一人である空良がこれまでの冒険の日々を懐かしそうに話す。それにつられて乃愛は少し目元を潤わせながら頷いている。


「本当に色々あったな。最初は大変だったけどみんなで頑張ってきてここまで来れたんだよね」

「そうですよね。目が覚めて最初に言われたのが世界を助けてくれって言葉でしたね」

「確かに最初は意味が全然わからなかったもんね。私、何かのドッキリだと思っちゃったもん」


蓮たちがこれまでの思い出にふけっていると突然後ろから誰かから声を掛けられる。


「みなさん、本当にお疲れ様でした。みなさんのおかげで魔神を倒してくださって。これで世界の消滅は救われました。本当に…ありがとうございます」


一人の少女が俺たちに向かって頭を深々と下げて礼を言ってくる。その少女の頭には光る輪っかが浮かんでおり、背中には白く綺麗な羽がある。彼女の名前はアシーナ。この世界で戦の神として崇められている女神だ。彼女が蓮たちをこの異世界に呼んだ張本人でもある。


アシーナは蓮たちに告げる。


「それでみなさん、魔神を倒したらの願いは。最初にお話していたことで大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」


全員がアシーナの言葉に頷く。アシーナが約束していたのは魔神を倒せば元の世界に戻すということであった。


「では、みなさんの世界につなぎますね。


アシーナは足下に魔法陣を描いていく。魔法陣を構築し終わると俺たちに言う。


「ではこの魔法陣の中に入ってください」

「やっと帰れるな!」

「本当だね。そうだ!元の世界に戻ったら集まってご飯でも食べない?」

「良いですね。せっかく一緒に冒険をした仲間ですもんね」

「あれ?蓮、どうして入らないんだ?」


空良、乃亜、奈々の3人が魔法陣の中に入る中、蓮は動かずその場に立っていた。空良はそれを疑問に思って蓮に尋ねてくる。


「もしかしてさっきの魔法で動けないのか?」

「そうですね。さっきかなりの量の魔力を使いましたもんね」

「いいや、俺は元の世界には帰らない」


蓮は首を横に振ってみんなにそう言う。そう蓮は元の世界には帰らない。


「どうしてだ?帰れるんだぞ?」

「帰らないというよりは俺は帰れないんだ。だから俺はこの世界に残る」


蓮が一つ3人と違った所がそれは蓮は転生者で他の3人は転移者ということだ。蓮たちはアシーナの召喚によってこの世界に呼ばれ、本当は蓮も転移者のはずだったのだが、その日不運にも事故にあってしまい、魂だけがこちらの世界にやってきたのだ。


「俺は元の世界ではもう死んでいるんだ。魂が帰っても死ぬだけになる」

「そんな…蓮は帰れないのか…」


空良たちはものすごく悲しそうな顔で蓮を見る。これまで苦楽を共にしてきた仲だ。かの突然の別れは3人には予想外であったはずだ。


「そんな悲しい顔をするなよ。別に死ぬわけじゃないんだ。まあ、向こうの世界では死んでるけど…。とにかく俺はこっちの世界で気ままに生きてくから。そっちはそっちで元気にやれよ!」


蓮はさんにんに心配ないと言うと空良が頬をつたう涙を拭いながら蓮に自身が持っていた剣を差し出す。


「…分かった。それなら蓮にこれをやる。俺たちにはもう必要の無いものだから。アシーナ様、俺の剣って蓮も使えるますか?」

「はい。所持者が自分の意志で他の物に手渡せば自動的に所持者の権限が移りますので」

「それは良かった。ほらよ、蓮」


そういって空良は自分の剣を蓮に渡す。それにつづいて乃愛と奈菜も俺にそれぞれの武器を俺に差し出す。


「私たちの武器もどうぞ!」

「蓮さんなら絶対に使えると思いますよ」

「みんな、ありがとう。大切にする」


蓮はみんながくれた武器を受け取って大事に抱える。蓮たちの武器はアシーナがくれた伝説級の最強武器だ。それぞれがとてつもない力を秘めている。


「みなさん、魔法陣の中に戻ってください。もうすぐ転移が始まります」


アシーナの言葉で3人は魔法陣の中に戻っていく。魔法陣の中から三人が蓮の方を見る。


「それじゃあな、蓮!」

「バイバーイ!」

「元気でいて下さいね」

「…みんなもな」


そして魔法陣の中の光が強くなっていくと、光の柱が真っ直ぐ空に伸びていく。

伸びた光は空の向こうへと飛んでいき消えてしまった。3人とも、元の世界に帰ったのだ。

空を眺めているとアシーナが蓮に話しかけてくる。


「蓮さんはこれからどうするんですか?」

「…そうですね。これから考えていきますよ」

「そうですか。それでは私も限界ですので」


アシーナの体が徐々に透けていく。アシーナのような神が実体を持って現界するのにはかなりの力を使うらしく、魔神との戦闘もあったせいで現界するのはもう限界のようであった。


「もし私と会いたかったら総本山の神殿に来て下さったら話すので、その時は歓迎しますよ」

「ありがとうございます」

「では、私も失礼しますね」


そしてアシーナも消えてしまい、蓮だけがその場に残る。


「さて、これからどうするか。特に今からしないといけないこともないし、時間はあるから気ままに過ごすとするかだけど、まずは帰るか。」


そして蓮は一人その場を後にするのであった。


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