大人ニキビ

 最近、ウキウキしていたから、お肌のお手入れを怠ってしまった。そのことが、ちょっぴり悔しいのだ。

 いままで、人に好意を持つなんて、考えてもいなかったから。

 そう女はおもった。

 だって。


(┅┅ろくろ首のあたしに、“キミに会えるのを、首を長くして待ってるよ”なんて言ってくれる人が現れるとは、思ってもみなかったし)


 だから、嬉しい。

 だから、会いたい。

 でも。

 最近、悪戯好きの少年たちが、橋のたもとで待ち構えているのが、気がかりだった。


(たった一度だけ、驚かせてしまった少年が、まさか、妖怪マニアだなんて知らなかったから)


 だから、放課後、少年たちは誘い合わせて橋のたもとにやってくる。ろくろ首の女を写真に撮ろうと待ち構えているのだ。 


 そんかストレスがたまると、ぽつんぽつんとニキビが┅┅。

 あら、いやだ、と女はうつむく。

 ろくろ首でもいいよ!なんて言ってくれるあんな男は、そうそう現れるものではない。これは、最後のチャンスかもしれない┅┅。

 それに。

 チャンスは自分でつかみ取れ、と誰かの言葉にあったことを女は思い出した。


 そんなことをあれこれと考えながら、待ち合わせの場所に近づくと、やはり、今日も橋のたもとで、悪戯少年たちがヒソヒソと喋っている姿がみえた。

 野球のバットを持っている。虫獲り網まで持っている┅┅。

 ろくろ首の女を捕まえようとしているのだろう。


(あら、あたし、蝶々じゃないし)


 思わず笑い出しそうになって、女はハッと身を屈めた。

 向こう岸からが歩いてくるのが見えた。

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