『理事長の孫娘』
「初めまして?」
よく分からなかったのでそういうしか無かった。
目の前にいる鈴原先輩は可憐がいたバトミントン部の部長だったらしい。
正直に見た目だけで言うならば絶対に運動部より文芸部に居そうなイメージの人だった。
「きちんと今回は連れてこれたのね、忍下がってていいわよ」
「え...?あ、はい」
どうやらすぐに下がらせるとは思っていなかったらしい。
それに加えどうやら俺のことも心配してくれているみたいだった。
石川先輩自体、根は良い人なのだろうということがはっきりわかる瞬間だった。
「それでは...私はこれで」
「ええ」
そう言って渋々石川先輩はその場を出ていくことになった。
「それでは、邪魔もいなくなったから改めて自己紹介をするわね、私は鈴原奏よろしくね?神山愁くん」
「名前は知ってるみたいだけど一応紹介を、神山愁です。初めましてバトミントン部、部長さん」
そういえば鈴原という名前をどこかで聞いたことがある。
どこだったか覚えていないが名前を聞いたのは春くらいだった気がする。
「鈴原理事長のことかしら?あれは私のお爺様よ」
「そう...ですか」
この人はエスパーだろうか?こちらが考えていることは分かりきっているらしい。
そういえば鈴原理事長のお孫さんなら石川先輩もそう簡単には逆らえないはずだ。
大人しく言いなりになっている理由がわかった気がした。
三年生は部活を引退しているので現部長の鈴原先輩は二年生ということになる、見た目からしたら絶対に三年生だ。
雰囲気から大人だということがわからされる。
それにしても石川先輩と鈴原先輩で差がありすぎる。
石川先輩はどちらかと言えば一年よりの二年生、鈴原先輩は三年よりの二年生だった。
見た目で判断してはいけないとはこういうことだろう。
鈴原理事長のお孫さんなら社会をよく知っているかもしれない、社交辞令なんか当たり前で過ごしているのだろう。
「単刀直入に言うわ、四乃宮可憐をここに連れてきてほしいの」
「・・・どうしてですか?」
「彼女に謝りたいの、私が間違っているのはわかっていたから...」
どこまでが本心なのかは分からないが謝りたいという気持ちを信じてあげようと思った。
「自分も同席を許可していただけるなら本人に交渉してみようと思います」
「わかったわ、私の連絡先はこれね、それじゃよろしくお願いね」
「はい、それで自分はこれで...」
そう言ってその場を後にした。
◇
その日、メールで可憐に今日の出来事を教えると電話がかかってきてめちゃくちゃキレながらも承諾してくれた。
本人曰く呼ばれても一人で行くな、信用するな、が重要らしい。
そう悪い人には見えなかったが俺の勘違いだろうか?
とりあえず会う日の日程を休日にしたいと可憐が言い出したので今週の土曜か日曜空いているか聞くと鈴原先輩は家の都合上毎週日曜が空いてるらしい。
とりあえずは大丈夫かな、そう思って安心していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。