『ブラコンが悪化してた』




 朝起きると妹の姿があった訳でもなく、二度寝の誘惑にも負けなかった。


 妹の愛歌ならば家に入り込んでたりしそうだと思ったがそういう訳じゃないらしい。


 愛歌はどちらかと言えばサプライズで早めに来たりしそうだと思ったがこの一年で少しは変わったのかもしれないと思った。


「外に出るか...」


 この時期の外は寒い、と言ってもまだ12月になったばかりなのでこれからもっと寒くなるのだろう。


 駅前での待ち合わせなので予定の10時より早めの9時50分くらいに着けば良いと思う。


 とりあえず昨日作り置きをしていた朝食を食べ着替えてから外に出ることにした。


「さっむ...」


 この時期は家に引こもるに限ると思う。


 集合場所の駅前に着いたが予定より早くついた。

 こういう時に限って早く着くが、逆に普通に学校は遅刻ギリギリが多い。


 冬の寒さは嫌いではないがこの時期ならではの眠気には勝てそうにない。


「早く来ないかな...」


 外で愛歌を待たせるのは申し訳ないので早めに来たが俺が待つという立場になるのも結構辛い。


「・・・」


 そんなことを考えていると突然両手で目を隠された。


「愛歌か...?」


「正解です。お兄さん」


 そう言うと手を退けてくれた。

 一年前とは違いお兄ちゃんからお兄さんに変わっている。


 これはこれで愛歌の成長を感じられて良かったと思う。


「それにしてもおっきくなったな...」


 ここ一年で愛歌は成長していたみたいだ、一年前までは小さかった身長も伸びそこら辺のアイドルくらいは可愛いと言える。


 そういえば氷翠さんも可憐も真理亜も一般的に美少女と言えるくらい可愛いと思う。


 俺の周りは顔面偏差値が高い、なので佐々木を見ると妙な安心感を抱く。


「お兄さんも大きくなりましたね」


「ん?あぁ成長期だからな」


 そう言うと「そうですね」と返事が返ってきた。


「なぁ、さっきから気になってたけどなんで敬語なんだ?」


「何で?とは何ですか?約一年放置された私の身にもなってください」


 どうやら勝手に家を出たことを怒っているらしい。

 もちろん相談しようとは思ったが愛歌は絶対に反対しそうだったのでおじさんとおばさんに相談して...と言ってもどちらとも反対気味だったが俺が反対を押し切った。


「そろそろ好きな人の一人や二人、三人くらいできたんじゃないのか?」


「今も変わらずお兄さん一人だけです」


 キッパリと断言してきたので「そうか...」と返すしか無かった。


「何度も言うが俺は愛歌のことを恋愛対象として見てないんだ、だから俺より良い男を探した方がいいと思うぞ?」


「お兄さん、最近私わかったんです」


「・・・何をだ?」


 めちゃくちゃ嫌な予感がする。


「お兄さんが恋愛対象と見れないなら意識させてあげればいいんじゃないかと...それに勝手に家を出たことまだ許してませんので覚えておいてください」





 久しぶりに会った妹は、少しブラコンが悪化してたみたいだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る