『妹に欲情なんかしませんよね?』




「それで、何をするんだ?」


 家に着いた愛歌は先程から怒っている。


 まぁ頬を膨らませるくらいなので少し可愛らしい。


「とりあえずここを私とお兄さんの愛の巣にしま「そんなことは無いから安心しろ」」


 俺がそう言うと「むぅ...」とまた頬を膨らませて何か思いついたのか俺の部屋に向かって行った。


「何をしているんだ?」


 何やら俺のベットの下を漁っているようだった。


「エロ本を探そうかと...そこからお兄さんの好みの女性を探してそれに似せるという完璧な案を思いついたのですが、本がないです...」


「誰がそんなの持ってるかよ...」


「お兄さんはそういう本は持ってないんですか?」


「あぁ、持ってない」


 事実そういう本は持っていない、というか今後も持つ予定は無い。


 持ったとしてもベットの下には隠さないようにしよう...そう思った。



 ◇



 あれから数十分後愛歌が夕食は自分が作ると言い張っていた。


「お兄さんはリビングで待っててください」


「はいはい」


 少し睨まれたので大人しくリビングに行くことにした。


 俺的には何か手伝えることがあるだろうと思って後ろから眺めていたのだが見るのもダメらしい。


「何作るんだ?」


 リビングから料理をしている愛歌聞いてみたが「出来てからのお楽しみです」と言われた。


 不安で仕方ないのだがここは妹を見守ろうと思った。


 その後愛歌が持ってきた料理は綺麗なオムライスだった。


「得意料理はオムライスです。味は保証します!」


 確かに見た目も匂いも変な点はなかった、グロテスクなやつを作って持ってくるのかなと不安になったがそんなことは無かったらしい。


「それじゃあいただきます?」


「ちょっと待ってください。ケチャップの文字にはスルーですか!?」


 そうだった、このオムライス一見めちゃくちゃ美味しそうに見えたがケチャップで文字が書いてあった。


『大好きです』


 うん、まぁスルーした方がいいのかなって思ってスルーしていたがダメだったらしい。


「大好きですって、俺も大好きだぞ、家族としてな」


「お兄さんも大好きなんですね、相思相愛です」


「都合のいい耳だな...」


 家族として愛歌のような可愛らしい妹がいることは良いのだが、このような恋愛対象として愛を向けられるのは少し嫌だなと思う。


「早く彼氏作れよ?」


「お兄さんが彼氏になってくれれば問題解決です。それともお兄さんが彼女作って私に諦めさせます?」


「良いなそれ...」


「え?本気ですか?」


「妹のためならなお兄ちゃんは本気で彼女くらい作れるぞ」


 そう言うと少し拗ねてしまったが、本気で彼女作ってみるのもいいと思った。


 まぁ好きな人いないんだが...高校生のうちに一回は彼女くらいほしいと思う。


 それで愛歌が俺のことを諦めるなら一石二鳥だ、などと考えていた。


「ご馳走様」


 そう言って皿を洗おうとすると「風呂に入ってきてください。私が洗っておきますので」と言われた。


 もちろん俺が洗うと反論はしたが睨まれたので逃げて風呂に入ることにした。





「愛歌も一年で変わったと思ったんだが...」


「変わってなくて嬉しいですか?」


「いや、嬉しくない...っては?なんで風呂に入ってこれたんだ?」


 体にタオルを巻いている愛歌が風呂に侵入してきた、一応鍵は閉めたんだが...。


「鍵閉めたくらいだと普通に開けて入ってこれました」


 そう言って風呂場の鍵をチラつかせていた。

 そう、愛歌はこう見えて秀才だ。


「昔みたいに一緒に入りましょう?お兄さん」


「昔っていつの事だよ」


「私は恋愛対象じゃないなら欲情したりしないですよね?」


 そう言われ一緒にお風呂に入ることになった。



 ◇



「お兄さん、体洗いっこしますか?」


「しない...」


 正直に言って愛歌はスタイルが良い、愛歌に対して背を向けて俺は話をしていた。


 その後何事もなく、体と髪の毛を洗い愛歌に一言伝えた。


「もう俺上がるからな」


「お兄さんちょっと早くないですか?」


「いいやもう上がるのぼせそうだ」


 そう言って俺は一足先に上がった。


「もう、お兄ちゃんのバカ...」


 俺が上がる時にそんな声が聞こえた、懐かしい...昔みたいにお兄ちゃんと俺を呼んでいた気がした。


 欲情はしなかったが妹を意識しそうになっていたので即撤退、今日は何だか疲れたので、一足先に寝ることにしよう。


 そう思って瞼を閉じた。




(あとがき)



愛歌「お兄ちゃん起きてますか?」


愁「...zzZ」


愛歌「お兄ちゃんの隣失礼します...」


勝手にベッドに入り込むのであった。




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