『今日も遅刻ギリギリになるみたい』

 



『愁、そろそろ家に戻ってこないか?』


 そう言われたが俺が返す言葉はもう決まっていると言ってもいい。


「ごめん、おじさんもう帰る気は無いんだ」


 当然の答えである。


『そうは言ってもあいつ(妹)も会いたがってるぞ?』


 そんな事言われても俺と血縁関係がないため散々悪口を言われた過去が少しある。


 ブラコン?なのだろうか、と思ったりもしたが俺は思った以上にメンタルが弱かったため、そんな考えもすぐに消えていった。


『だが、実際そこにずっと住めるわけではないだろう?』


 その通りの返答、俺だけでは家が借りられるわけでもなく、仕送りまでしてもらっている。


 学費も払ってもらっているし、甘えてしまっている部分が多々あった。

 それでも俺は卒業後でもいいからお金を返そうと言ったら『別に気にしてない』と返事が返ってきた。


「で、おじさんは俺にどうしてほしいの?」


『話が早くて助かる。今度の土曜日娘を頼めないか?』


「俺に?嫌われてるけど...」


『息子である、愁にしか頼めないことだ、私たちは愁を信頼しているからな』


「息子.....ね」


『あぁ、詳しくは追って連絡する。それじゃあおやすみ』


「おやすみ」


 そう言って電話を切った。


「はぁ.....」


 面倒なことになってしまったな...とまた溜息を繰り返す。


 俺の癖だったのでいつかは治さなくては...と思う。




 とりあえず今日は寝て明日考えよう...そう思った





 ◇




 翌日目が覚めると、昨日よりは早い時間に起きることが出来た。


 顔を洗い軽く朝食を取り、俺はいつもより早すぎるという時間で昨日の反省も含めて早く家を出ることにした。



 俺の歩く道は人通りが比較的に少ない道を通ることにしている。



 その道を歩いていると1人の女子を見かけた。


 この時間に出てくるのは早すぎないか...?

 俺の場合あえて早すぎる時間帯に行こうとしているが彼女はどこか違うような気がした。


「どうしたの?」


 そう声をかけるが俺の顔を見てきつく睨み「貴方には関係ない」と言われた。


 だけどその目は赤く、先程まで泣いていたということがわかる。


 氷翠さんに関わらないでほしいとか思いながらも、自分から他人に関わりにいってしまっている。


 泣いていた人を放ってはおけない、それくらいは俺でも思うので彼女のそばにいることにする。


 今日も遅刻ギリギリになるかもな...そう思った。


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