『心のざわつき』
家に帰ると俺は筋トレをしていた。
なぜ筋トレをしているかというと体力づくりをしているだけでガチガチにやっているわけではない。
特に食事制限をしているわけでもないし、毎日数セットやるくらいだ。
「今日はここまで...」
そう独り言を零し俺は汗を流すために風呂に入った。
シャワーを浴びながら考え事をする。
氷翠さんについてだ、今後関わらないでほしいとは思うがあの様子だと俺に関わってくることくらいわかっている。
いっそ嫌われよう...いやそんな度胸を俺は持ち合わせていない。
どうすればいいだろう。
佐々木は頼りにならないし、あんまり頼りたくないというのが本音だ。
幼馴染である篠崎真理亜はもう関わることがないだろうと思う。
「どうしたもんかな...はぁ」
自然と溜息が零れるのは仕方ないことだと勝手に思っているが、こういう小さな溜息でも俺の幸せは逃げていっている気がした。
結局考えは決まらず、後回しにすることになった。
◇
俺は今現在進行形で一人暮らしをさせてもらっている。
なのに俺の幼馴染は一人暮らしではないということだ。
別に俺の親が海外出張をしているわけでもなく、俺に実父、母は存在しないのだ。
どういう状況かと言うと、俺は両親に捨てられたらしく養子として今のおじさん、おばさんに育てられた。
この夫婦は神山涼(こうやまりょう)、神山遥(こうやまはるか)の2人だ。
この2人は子供が中々出来ずに困っていたところを俺と出会い、息子として育てたらしい。
だがその数年後、実の娘が産まれたそうだ、そしたらそちらに愛を傾けるのは当然だと思う。
俺も実際この歳になり色々なことを理解してきていた。
真理亜との幼馴染という関係も実際その通りであって違うと思っている。
真理亜は俺との関係を早く断ちたかったのだと思う。
だって、俺といても幸せなんかこない、自分できちんと幸せを掴み取りに行ったのだ。
いい事だと思う、哀れみで俺と関わらないでほしい。
ずっとそう思っていた。
俺の事情を知っているからこそ、哀れみの目でいつも見てくる、そんな幼馴染が好きとはいえなかった。
だけど俺にずっと話しかけてくれたのは幼馴染だけだった。
そういう意味では案外好きだったのかもしれないなと思う。
そして今回、関わった記憶がないはずの氷翠さんが突然話しかけてきた。
どういう理由があったかは知らない。
もう考えることをやめようと思い、瞼を閉じようとした。
その時俺のスマホから電話が鳴った。
おじさんからだった。
出るか出ないか、と少し悩むが結局電話に出ることにした。
『もしもし』
そう呟くとおじさんの声が返ってきて『もしもし』と放ってきた。
『愁、そろそろ家に戻ってこないか?』
久々に聞き、突然言い放った言葉は俺の心をざわつかせた。
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