『番外編:田中の告白』
俺は田中圭一(たなかけいいち)。なんの取り柄もないただの高校1年生だ。
でも俺には特出したこともなければクラスでこれといって目立つことはない。
そんな俺には春から気になっている人がいる。
氷翠天音さんだった。
彼女はいつも無言で話す時は無表情と無愛想なイメージが皆あると思う。
自分は一目惚れで今までもこれからもずっと眺めてるだけでいいと思えた。
だけどそんな日々も終わってしまう。
氷翠さんが突然動き出して、昼休みは屋上で過ごしているはずなのに今日は食堂へ向かっていた。
『席に着いていいですか?』
そんな彼女から発された声はとても落ち着いていて綺麗な声だった。
氷翠さん本人から喋りかけることは全くない。
少なくとも俺は1度もなかった。
なのになんでか知らないが氷翠さんはその男に話しかけられても普通に返していた。
おかしい...何かいつもと違う、そんな気がしていてもたってもいられなかった。
『はい、あ〜んしてください』
そんな声がして振り向いてみたら彼女の顔は無表情...ではなくそれはまるで恋する乙女のような顔になっていた。
俺はそれが信じられなかった。
あんな男にそんないいところがあるのだろうか?
絶対に俺の方が彼女を幸せにできるだろう、いや絶対に俺が幸せにしてみせる。
そう思って俺はラブレターというものを人生初で書いてみた。
字はよくできたと思うが内容は簡単で『話があります。放課後屋上で待ってます』と書いた。
こういうのは長くなく、短い方が良いらしい、長々と書いたら気味悪がられ印象が悪くなるらしい。
俺はあんまりわかんなかった。
◇
放課後、氷翠さんはきちんと俺の呼び出しに応じてくれていた。
「話ってなんですか?」
無表情で、どこか怒っている気がしていた。
だけど氷翠さんの声を聞くとどことなくやはり好きなんだ、と思うようになってしまった。
気持ちが口に出てしまう。
「好きです。付き合ってください」
氷翠さんは俺の目をきちんと見て「ごめんなさい」と言った。
無表情だがわかる、本当に申し訳ないと思う気持ちが伝わってくる。
「なんで、ですか?」
「それは...貴方にはいえません」
ここで全てを察してしまった。
氷翠さんは彼が好きだということを...。
それなら──。
「わかった、応援してるよ氷翠さん」
「・・・ありがとうございます」
初めての恋だったけど、初めての失恋だった。
それでも、氷翠さんが困っていたら真っ先に動こう、そう思った。
彼女を幸せにするのは俺の役目じゃなかったみたいだ。
だから、彼女を祝福する役目くらい俺が貰ってもいいだろう?
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