『美少女にまとわりつかれる件について』

 






 あれから俺と佐々木と氷翠さんは教室へ戻っていた。


 と言っても氷翠さんは何故か俺の横で歩いているという状況なので俺たちが何故か注目されてしまう。


 いつもなら俺なんか注目されることなんか一切ないはずなのにと思ってしまう。

 まぁ、それもおかしくはないと思う、だって皆関わりたいのに関われない氷翠天音が隣にいるんだからな。


 そう言われても氷翠天音とは別で人気なのがやはり幼馴染の篠崎真理亜だった。


 氷翠さんのように人を近づけないようにはせず皆に分け隔てなく接していることから女子からも男子からも信頼が厚い。


「なんでついてくるの?」


「同じクラスです」


「あ、そっか...」


 申し訳ないが何を話せばいいのか全くわからないので先程から似たような質問を数回繰り返している。


 俺が質問したら答えてはくれるけどすぐ話が終わってしまう。


 そんな感じの繰り返しだ。


「おい、愁お前目立ってるぞ...」


「ん?なんでだ?ただ教室に向かってるだけじゃないか?」


「お前と、氷翠が普通に喋ってるからだよ!」


「喋るのまずかったか?」


「まずいに決まってるだろ...」


 どうやら氷翠さんと話すことはまずかったらしい。


 何故かはわからないがこういうことで目立つのはなるべく避けたいと思う。




 ◇




 教室に着くと俺は机に突っ伏した、 もう目立ちたくないというのと昼食を食べて眠くなってきている。


「おい、愁寝るにはまだ早いぞ...」


「うるさい、もう寝させてくれ」


「それはいいけどお前、顔上げてみろよ」


「ん?どうし、うぉっ!」


 顔を上げたら目の前には氷翠さんが立っていたので俺はびっくりした。


「・・・どうかしたか?」


「いえ、お気になさらず寝ていてどうぞ」


「そろそろ授業始まるぞ?」


「大丈夫です、席はあっちなので予鈴がなるまでは気にしないでください」


「ん?あぁ、わかった」


 そう言って俺は寝ようとしているが視線が痛いので寝れない。


「佐々木ヘルプ」


「諦めろ」


「もう俺お前の友達やめるわ...」


「B定食で考えるぞ」


「お前...A定食でどうだ?」


「ふっ、じゃあ諦めろ!」


 A定食は好みじゃないらしい、あの和食も丁度いいと思うのにな...と思ったがB定食が高く豪華だから選んでるだけだろうと思う。


 俺の金を食うのが趣味ってレベルで財布を貪り尽くしてくるのでこいつに頼る回数を減らそうと思った。



 そんなことを考えていると予鈴が鳴り氷翠さんは席に着いたみたいだった。


 あまり意識しなかった為か氷翠さんの席は俺の右前だったということに驚きを隠せない。

 いや、今まで気づかなかった俺は異常すぎるのではと思うほどだ。


「佐々木、氷翠さんってあの席で合ってる?」


「ん?あぁ、氷翠はな前からあそこの席だったぞ」


「まじで.....?」


「愁、お前もしかして...」


「あぁ、今日初めて知った」


 辛辣な目で「は?」と言われた。

 よく思えば今日初めて会ったであろう人だし俺と関係性はないと思う。


 ちなみに佐々木は俺の後ろの席だ、なので起こしてくれるには最適の場所だと思う。



 気になることといえばあと2つほどあるな...突然の氷翠さんの行動も気になる、先程からチラチラと俺を見てくるのには理由があるのだろうか?と思ってしまう。


 もう1つは幼馴染の彼氏である西条渉という人物についても少しだけ気になる。




 ◇




 その後視線のせいで俺は寝ることができずしかも放課後まで「一緒に帰りましょう」と言われた。


 最初は断ろうとして佐々木に逃げていったが「B定食さん退いて下さい」と言われたらスっと俺を前に差し出してきた。


 佐々木は裏切り者だ。


 明日B定食奢らせる、絶対にだ。


 そう思いながら俺は氷翠さんと帰路を辿ることとなった。





 俺はその後この日を少しだけ後悔する。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る