『食堂で幼馴染と会った』

 


 俺と佐々木は少し喋りながら食堂へ向かっていた。


 と言っても佐々木が話しかけてくるんだ「A定食にしよっかな?」「いややっぱ豪華なB定食にしようかな?」「いやー人の金で食う飯は格別だしなぁー!」などと俺にニヤニヤしながら見てくる。


 一言いわせてもらえればうざいだけだ。

 あと眠いのにうるさいから目が覚めてきた。


「ところでさ俺は何食べればいい?」


「AでもBでもどっちでもいいし、それ以外選んでも別にいい。だから少し静かにしろ」


「おっ、言質ゲット〜」


 ちっ、嵌められたか。

 いつか佐々木に奢ってもらえる日がきたら高いやつ選んで返してもらおう。


 俺たちがそんなにやり取りをしながら食堂へ着いた。


「「あ.....」」


 そこに居たのは幼馴染の篠崎真理亜である。

 これでもかというくらいに目が合ってしまったがここは触れない方がいいだろうか。


 そんなことを少し考えていると真理亜に1人の男性が寄ってきていた。


「篠崎さん、お待たせ」


「う、ううん。私も今来たところだから」


 顔が真っ赤になりながら話している真理亜はいつもの元気さや迫力が見られない。


 まさに恋する乙女と言えばいいのだろう。

 そんな彼女を横目に俺は欠伸をしている。


 まだ眠気が完全に覚めたという訳ではないらしい。


「おいおい、本当に篠崎に彼氏できたんだな...」


「おいお前俺が嘘つくとでも思ってたのか?」


「ははっ、まぁな」


「正直だから許す」


「有り難き幸せ...ということでB定食ゴチになります」


「はいはい」


 そう言って食券を買う。

 篠崎はもう席に着いているみたいだ。


「そういえばさ?佐々木お前あの男について知ってることあるか?」


「西条(さいじょう)のことか?」


「西条って言うんだ。なるほどな」


「おう、あのイケメンは西条渉(さいじょうわたる)1年でサッカー部で唯一レギュラー入りしているって話だな。勉強は得意じゃないらしいがお得意のお顔とコミュ力が取り柄だな」


「お前詳しいな、役立つぞ...」


「お褒めに預かり光栄です?いや愁に言われても嬉しくないわ!」


「はいはい、おっとできたみたいだぞ」


 そう言って俺と佐々木は定食を取りに行った。

 もちろんB定食だ、佐々木だけ豪華なB定食を食べられてたらイライラするだろうし出し惜しみなくB定食を選んだ。


「おばさんありがと...」


「はいよ、いつもありがとねぇ〜」


 欠伸気味にお礼を言うがここのおばさんあんまり顔を覚えないけど俺のことは何故か覚えてくれている。


 もう俺の友達だなとか、勝手に思ってるがいつも食べてくれる常連くらいに思われてるだろう。


 ちなみに俺は朝眠いだけで料理ができないという訳では無い。

 料理中に寝ようとして手を切りかけたことが何度もあるだけだ。


 俺と佐々木が席に着こうとすると後ろから声をかけられる。


「席に着いていいですか?」


「ん?あぁ、いいよ」


 何気なく許可をした俺だ、誰と食べようがあまり意識しすぎると失礼なのでどうでもいい。


 それに、人が多い食堂では同席なんか多々あることの1つだと思う。


「おい、愁!」


 小声で佐々木が話しかけてくる。


「なんだ?」


「なんだ?じゃない、その人同じクラスの氷翠天音(ひすいあまね)だぞ!?」


「氷翠天音って言うんだ。へぇ〜」


「へぇ〜じゃない!氷翠さんから話しかけることなんかほとんどないんだぞ!?」


「同席するくらいなんてことないだろ?」


「そうだった、お前そういう奴だったな...」


 そんなことを小声で話し合っていると氷翠も見飽きてきたのか声をかけられる。


「ねぇ...」


「ん?なんだ?」


「座らないの?」


「?あぁ、座るけど...」


 俺と佐々木が隣で氷翠が向かい側で食べるのかと思ったらどうやら違うらしい。


 佐々木が向かい側になっていた...というか氷翠が俺の隣に座ってきていた。


「「いただきます」」


 俺と佐々木は気まずい雰囲気になりながら食べている。

 さすがに隣にいると俺でも気にしないとは言えない。



 普通に過ごしたいのにいつもと違う日常に心の中で溜息をした。



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