第19話

「......危なかった」

一時自室に退避した俺......なんだが、

「......どうして李緒が?」

自室に来たのは良いのだが、なぜか俺の部屋に李緒がいる。

「ん?ああ、ちょっと悠真を観察しようと思って」

李緒はそう言いながら、片目をつむり人差し指を立て前かがみになった。

「そ、そうか......まあ、別にいいけどさ」

「悠真が良いっていうなら、存分に観察してもらうよっ」

うーん、李緒に関して言う事があるとすれば、喋り方がちょっと独特と言うかなんなのか。

例えば、お嬢様っぽく言う事もあれば、ぼくっ娘のように喋ることも多々。

まあ、そういう人がいてもいいと思うけどさ。ただ、ツンデレっていうのはちょっと難しいかもしれない。

人それぞれ良いと所もありつつ、悪い所もある。

何が言いたいかというと、ただ単にみんな違ってみんないいってことさ。

「ふぅ......」

俺は、とりあえずため息をつくと、李緒はその光景を俺のベッドに腰掛けじーっと見ていた。

観察と言うのはこういう事か。

というか、なぜ観察をする必要があるのだろうか?

もしかして、朱莉かゆあに頼まれてやっているのか、それとも自らやっているのか。

いや、自らやっているという事にすると、なぜそんなことをする?

やっぱり、女の子が考えていることっていうのは分からないものである。

「というか、なんで俺を観察するの?」

俺は疑問に思ったことを李緒に訊いてみた。

李緒は、ベッドから腰を上げると、俺の椅子に座り答える。

「まあ一つ言うんだったら、『誰かのため』とでも言っておくよ」

「え、ええと......どういう事?」

もちろん李緒が言ったことが俺には分からなかった。

「ここではその意味は言ってあげない。なぜかっていうと、悠真が自分で探すものだから」

にーっと悪戯っぽい笑顔で言う李緒。

......どういうことだろう。

誰かのためということは、朱莉かゆあから言われてやっているのではないかと思った。

でも......そう断言はできない。

「ふふっ......」

李緒は、俺の椅子の背もたれに顎をつけて少し笑っている。

なんというか、その様子が俺としては微笑ましいというか、楽しい感じになってた。

性格はツンデレではあるものの、実際は優しかったり、物わかりがいいとか、そういう感じが見えてきた。

あくまでも見た目の面ではってことだけど。

「......なに?あたしの顔になんかついてる?」

俺は李緒の顔を見ていたのだが、李緒は少し口を尖がらせて言ってきた。

「えっ、ああ、いや、なんでもない」

俺はすぐにそう言い、自分のベッドに腰掛けた。

「あ、そうだ、悠真に一つ良いこと言ってあげる」

李緒はそう言いながら俺の隣に腰かけてきた。

そんなに朱莉やゆあのようにくっついてはきていないが。

「な、なに?」

李緒が俺の隣に来ることがあまりないので、俺はちょっと動揺しつつも反応する。

「ふふっ、あなたってちょっと鈍感じゃない?」

李緒に何を言われるかと思えば鈍感という言葉だった。

「鈍感?どういうこと?」

「ほらっ、そういう所だよ。朱莉やゆあに何か言われた時、その二人が望んでいる答えを返せてる?」

「ん......言われてみれば、返せてないと思うけど......」

「でしょ?まあ、あの二人は別に、望んでいる答えを返されなくても、悠真が言った事はなんでも大丈夫だと思うけど。あなたが、その二人にもっと好かれたいと思うなら、返す言葉に気を付けるといいね」

李緒は言いたいことを言い終わった後、すぐに俺の部屋のドアを開けた。

「まっ、とにかく頑張ってね。あたしは、別にあなたの事を好きとかっては思ってない。でも、あの二人には好かれてるかもね。これから先、あの二人がやることには気を付けてね」

俺の部屋から出て行く時、李緒はそう言い残しドアを静かに閉めて行った。

「......なるほど」

李緒が言ったことは、あまり理解は出来なかったが、最後に言われたことでなるほどなとは思った。

というか、あの言語力、あれで小学4年生なのかと、改めて疑ってしまった。

とりあえず、俺は李緒に言われたことを思い出しながら生活しようと思った。







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