第20話

時間が過ぎるのは早いもので、もうすっかり午後になってしまっていた。

一応昼は、朱莉がご飯を作ってくれたのでいいとして......。

「ええと......それはなんの格好?」

「あ、はいっ、メイドのコスプレですっ」

朱莉は笑顔で答える。

「そ、そっか......?」

というか、なぜ朱莉が今メイドのコスプレなんかをしているのだろうか。

「というか、なんでまた......」

「ええと、以前秋葉原に行ったときに、服とか買ったじゃないですか。それで、メイドのコスプレを買ったので、今日着てみたら悠真さんが喜ぶかなって思って」

ああ、だからそんな格好ね......悪くない。むしろかわいい。

基本的にメイドっていうのは大人というか、若い女性だけど、ロリがメイドっていうのもいいもんだなぁ......ロリメイド喫茶......あったらいいな。ある訳ないけど。

まあともかく、朱莉がメイドのコスプレっていうのは少々目につくけど、それ以外は特になにもなくお昼ご飯を食べ終えた。


「そういえば、悠真って何の仕事してたっけ?」

お昼ご飯を食べ終えた俺は、リビングのソファーでゆあと一緒に寝そべっていった。

そこに、フリフリが付いたスカート姿の李緒がやってきた。

「あれ話してなかったけ?」

「うーん......多分。もしくは、あたしが忘れてるだけかも」

「ああ、俺は一応小説を書いてるんだ。一応だそ?」

「一応?それってどういう意味?」

「ええと、小説でもお金は少しは稼いでいるけど、それよりも朱莉のおかげが一番なんだ。だから俺は、小説を書いて稼がなくても、朱莉がいればなんでもできる。これが、小説を一応書いているってことかな」

「ふぅん......」と、李緒は納得したようなしないような返事と表情を返した。

「にゅぅ......お兄ちゃんのお腹あったかい......」

と、そこでゆあが俺のお腹のあたりに顔を押し付けてきた。

「......あんたはなにしてんのよ」

「みてのとおり、お兄ちゃんと戯れてる」

「まあ、別に好きにすればいいけど......はぁ、ゆあは悠真の事が好きなのね」

「うんっ、お兄ちゃんの事好きー」

面白半分で言っているのかもしれないけど、それでも好きと言われればもちろん嬉しくなる。

「ふふっ......悠真たちが羨ましいよ。ほんとに」

と、李緒が突然そんなことを言い出した。

「だったら李緒もきなよー」

ゆあは李緒をこさせようと言うが、

「いいってば、あたしはやりたいときにするからさ。少なくとも、今はいいって」

と、李緒はゆあに優しくそう言う。

「とりあえず、これからも仲良くね。悠真」

「う、うん......」

李緒はそう言うと、リビングからスタスタと歩き去って行った。

正直な所、李緒が最後に言った言葉はあまりどういう事か分からなかった。

でも、今は分からなくていいと思う。

そのうち、答えは出てくると思うし。

「ツンデレロリか......いいかもしれない」

ツンデレっ子は、俺は苦手意識があったのだが、実際の所李緒はそこまでツンツンしている感じは無いように思う。

「李緒も素直じゃないんだからぁ......」

ゆあは、俺の胸に顔を押し付けながらなにか言っている。

というか、なぜにゆあの顔の位置が変わっているんだ?

なんかだんだん上がっているような......。

「――っ」

と、そう思っていると、ゆあの顔が俺の顔の位置まで上がってきた。

そして、次第に目が合ってしまう。

「え、ええと..................」

言葉が出ない。

というより、ただ単に緊張と焦りが急に出てきたせいだろう。

幼い顔立ちで、しかもまん丸い目、そしてゆあの表情が次第に笑顔になっていく。

一言でいうなら、めちゃくちゃかわいい。

にーっと笑顔なゆあ。

やばい、理性が持たない......い、いや、持ちこたえるんだ悠真......い、いくらロリコンだとしても、理性だけは......!

ロリコンにはとてもきついような状況。

なぜかというと、こんなにもロリの顔が近くにあるのに、キスすら一切出来ないという、一言でいうなら拷問だ。

「......キス、しないの?」

「............えっ?」

ゆあはずっと笑顔のままそう俺に訊いてくる。

き、キスって......考えただけでも理性が......!

「......?」

笑顔のまま首をかしげるロリのゆあ。

やべぇ......かわいすぎる......!

そ、そうじゃない!それよりも、この状況を考えてみろって!

この状況、朱莉や李緒に見られたら、間違いなく終わってしまう。

「......ねぇ、まだー?」

小さな声で誘うよな甘い声。

しかも、ゆあも興奮しているのか、ちょっと息遣いが荒くなっているような気がする。

それに加え、俺の頭を殺すかのような、とんでもなく甘くていい匂いがするし!

やばい、これがロリの力か......。

考えてみれば、こんなのロリコンぐらいしか興奮しないであろう。

「じゃ、じゃあ......口がダメなら、ほっぺは?」

ほっぺぐらいならいいと思うけど......というか、どんだけ口でキスがしたかったんだこの子は。

ほんとに性に関して興味があり過ぎだろ。

「そ、それくらいなら――」

俺はそう言うと、ゆあの右頬に軽くキスをした。

「――ほら、これでいいだろ?」

「――えっ?あ、う、うん......」

ゆあはどこか不満がありそうな声を出したが、一応期待には答えられたらしい。

不満っていうのは、ほんとは口でしたかったんだろうね。

「ふぅ......じゃあ、俺は一回部屋に戻るけど......ゆあは?」

「ん......私は、ここでお昼寝」

「そっか、じゃあまた後で」

「う、うん......」

俺はゆあを起き上がらせると、すぐに自分の部屋に戻った。

「......口でしたかったなぁ......」

部屋に戻るとき、ゆあから何か聞こえた気がしたが、そんなことよりもキスしたことで頭がいっぱいだった。






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